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Columns

BASSの時代

BASSの時代

――〈Outlook Festival〉から考えた、ベース・ミュージック、その奥行きと深い世界

文:NICE☆J  (http://nicejee.tumblr.com/ Aug 22,2012 UP

 2日目はひどい2日酔いのなか、昨日が夢のような1日だったため、目が覚めてもまどろみ状態がなかなか覚めなかった。そんな状態で、酒を飲む気分になれなかったので、この日はレッド・ブルだけを飲んで過ごした。
 会場に到着して、ブランチに虎子食堂のごはんを食べようと、真っ先にフードブースへ足が進む。フェジョアーダという黒豆ごはんを注文し、知人と一緒に「初めて食べる味ですねー」なんて話しながら、美味しくいただく。ふと、ブースの方へ向くと、Soi Productions(ソイ・プロダクションズ)がスタートダッシュのドラムンベースをブンブン鳴らしていた。会場の音も、昨日よりも開始直後からよく鳴っている印象だった。考えたら昼の2時だ。鳴らせる時間には鳴らさないと、サウンドシステムがもったいない。目もスッキリ覚めるほどのベースを浴びて、2日目がはじまったことを改めて確認した。

 バー・スペースではDJ DONがクンビアを気持ちよくかけている。今日はどうやって過ごそうかな? とタイムテーブルを見ながら周りを見渡す。ここは〈DUB STORE RECORDS〉や〈DISC SHOP ZERO〉がレコードを販売しているフロアでもある。ふと見ると、E-JIMA氏がレコードをクリーニングするサービスなんてのもあって、もしレコードをもってきてたら、超重低音でプレイする前にキレイにしたくなるだろうな、と思ったりした。

 入り口付近のグラス・ルームではKAN TAKAHIKOがダブステップのベースの鳴りをしっかりとたしかめるように、自作曲も交えながらプレイしていたり、2階へ行くと、DJ YOGURTがスモーキーで渋いラガ・ジャングルをかけていて、最高音響で聴くアーメン・ブレイクは体にスッと馴染みやすく刺さってくることを確認したり、NOOLIO氏との久々の再会がグローカル・アリーナで太陽を浴びながら聴くグローカルなハウスだったり、ホワイト・アリーナに戻っては、G.RINAの生で聴く初めてのDJにテンションが上がってしまい、BUNBUN氏とふたりしてかっこええわ~なんて言いながら楽しい時間はあっという間に過ぎていく。

 グラス・ルームでワイワイと楽しそうにやってたNEO TOKYO BASSの姿は、誤解を招くのも承知で書くと、やんちゃな子どもたちが はしゃいでいるようにも見えて、その楽しそうな姿に、ついついこっちまで指がガンショットの形になってしまった。クボタタケシのクンビア・ムーンバートンを交えたセットも素晴らしかった。この時にかかっていたKAN TAKAHIKOの"TOUR OF JAMAICA"のエディットはこのパーティ中に最も聴いたチューンのひとつだ。

 Tribal Connection(トライバル・コネクション)の1曲目は、ジャングル・ロックの昨日の決勝戦のチューンだった。昨日のバトルの雰囲気とはうってかわって、パーティ・チューンに聴こえたのもセレクター、DJとしてかける意味がかわって聴こえたりもして、趣が深かった。悔しそうに、そして楽しそうに。深いジャングルの時間だった。続くJxJxはグラス・ルームをファンキーに彩るムーンバートンで、大都会の夕暮れの時間を鮮やかに彩った。

 そうこうしている内にはじまったPart2Style Soundが、確実にメインフロアを唸らす。興奮もピークに近づいてきたところで、やってきたのはCharlie P(チャーリー・P)だ。まだ若いらしいが、堂々としたステージはベテランのようで、スムーシーに唄うその声は、ときに激しく、ときにまとわりつくように耳から脳へとスルリと入ってくる。続いて登場したSolo Banton(ソロ・バントン)は先日、大阪で見た時よりもキレがあり、"Kung Fu Master"や"MUSIC ADDICT"など、堂々としたステージングでオーディエンスをグイグイ引き寄せる。そして時には、ソロとチャーリーが交互に歌ったり、お互いの声質が異なることによるスペシャルなブレンド・ライヴを展開した。かなりマイクを回しあっただろう。時間が終盤に近づくにつれ、グルグルと回るマイクをもっと回せと口火をきったのはRUMIだ。"Breath for SPEAKER"の「揺らせ! スピーカー!」のフレーズで、正にスピーカーとフロアを存分に揺らした。すかさずソロがたたみかけるようにうたう、すると今度はなんと、CHUCK MORIS(チャック・モリス)が出てきては「まんまんなかなか、まんまんなかなか、ド真ん中!」と、すごい勢いで登場し、「たまりにたまった うさばらし! Outlookでおお騒ぎ!」と、けしかけては、「ハイ! 次! ソロー!」とソロ・バントンにマイクを煽る。ソロがすかさず歌い返すも、Pull UP! ちょっと待ったと、いきなり現れた二人のMCに たまったもんじゃないソロはなんと、ダディ・フレディの名を呼んだ。「ジーザス、クライスト!」とダディフレディが一言、そこからのトースティングは即座にフロアを頂点へとのし上げた!!! ダディ・フレディは会場に集まった皆と、Part2Styleに感謝を述べ、よし、マイクリレーしよう!と閃き、なんとスペシャルなことか、ダディ・フレディとソロ・バントンとチャーリー・P、3人の怒涛のマイクリレーがはじまった。これにはフロアもガンショットの嵐!! 最高のスペシャルプレゼントステージだった。Nisi-pが「もう一度、3人に大きな拍手を!!」と叫ぶと、会場は拍手大喝采に見舞われた。



 SKYFISHがクンタ・キンテのフレーズを流したのはその直後だ。ラスコの"Jahova"にチャック・モリスが歌う、"BASS LINE ADDICT"。続くRUMIのアンサーソング"BAD BWOY ADDICT"と、さすが、UK勢にも引けをとらないふたりのコンビネーションがフロアをぶちかました。今回のフェスで誰が一番のアクトだったかなんてことは、到底決められないけども、個人的にBASSを浴びる、いや、BASSをくらったのはNEO TOKYO BASSのときだ。腹にかなり直撃で受けてしまい、なんというかお腹のなかで内臓が揺れているのだ。いや、いま思い返せばそれが本当だったかはわからない。しかし、記憶していることは、体のなかが、なかごと、ようするに全身震えていたのだ。音が凶器にも感じた瞬間だった。ずっとフロアで聴いていたから低音には慣れているはずなのに、NEO TOKYO BASSがエグる、BASSの塊に完全にKOされてしまった。
 メインフロアを出た後、グラス・ルームでは、KEN2D-SPECIALが"EL CONDOR PASA"を演奏していた。どうやらラスト・チューンだったらしく、もっと見たかったが、そこで久しぶりの友だちと会い、話をしながらINSIDEMAN aka Qのかけるディープなトラックに癒された。少し外で休憩した後はクタクタだったのもあり、グローカル・エリアの帽子屋チロリンにて少し談笑したりした。すぐ隣にあるグローカル・エリアで見た1TA-RAWから大石始への流れはトロピカル・ベース~ムーンバートン~クンビア~民謡と、自然に流れるダイナミクスへと昇華され、僕が見たグローカル・エリアでは一番のパーティ・ショットだった。そして最後に見たのは、OBRIGARRD(オブリガード)だ。ハウスのビートから徐々にブレイクビーツ、クンビアへとビートダウンしてく"Largebeats"~"Ground Cumbia"の流れは素晴らしく、個人的にエンディング・テーマを聴いているような、寂しく、狂おしい瞬間だった。

 僕の〈Outlook Festival 2012 Japan〉Launch Partyは、こうして幕を閉じた。
 いまになって思い返してみても、なんて素晴らしく、楽しい体験だったのだ。体験したすべての人たちが、それぞれの形で、記憶に残る2日間になったと思う。そして日本のベース・ミュージックにとっても、キーポイントとなるような歴史的な2日間だったのではないか。
 出演していた あるアーティストに「今回出演できて、本当に良かった。もし、出演できていなかったら、自分がいままでベース・ミュージックを頑張ってきたことはなんだったんだろう? と、思っていたかもしれない」という話を聞いた。もちろん、自分も「出たいか?」と問われたら、即答で「出たい」と答えるだろう。それほどまでに、魅力溢れるパーティだ。個人的に思う〈Outlook Festival 2012 Japan Launch Party〉が残した大きな功績は、アーティストやDJたちが「次も出演したい」と、または「次は必ず出演したい」と、いわば、「目標」を主宰たちが知らず知らずのうちに創ったことだろう。その目標を叶えるためにも、来年、再来年と、また日本で〈Outlook Festival〉が開催されることを、切実に願っている。

 Part2Styleとイーストオーディオ・サウンドシステム、会えた方々、関係者の方々、そして体験する機会を与えてくれた「ele-king」の松村正人さんとモブさんに最大級の感謝をここに記します。

追記
 そしてこの夏、Part2Style Soundが2011年に引き続き、本場はクロアチアで開催される〈Outlook Festival 2012〉に出演する。本場のベース・ミュージック フェスティヴァアルに2年連続で出演し、何万人といった海外のオーディエンスを熱狂させることを思うと、同じ日本人としてとても誇らしい気分にさせてくれる。
 きっと彼らはまた素晴らしい音楽体験を得た後、その景色を少しでも日本へと、形を変えて伝えようとしてくれるだろう。
 進化し続ける「ベース・ミュージック」。未来のベース・ミュージックはどんな音が鳴っているのだろうか。
 僕はその進化し続ける音楽を体感して追っていきたい。

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