Home > Interviews > intervew with FURUKAWA MIKI - ――フルカワミキ、インタヴュー
そうか......、それでも僕がもし今回のアルバムのプロデューサーだったら、1曲目は"Bridge To Heaven"にしたな。
ハハハハ!
いちばんメランコリックな良い曲だよね。で、2曲目は"Amore"。
ハハハハ、それは野田さんの好みでしょ。
でも言いたいことわかるでしょ。ぜんぜん違って聴こえると思わない?
まあ、そうかも。
"Amore"は、ソニック・ユースかと思ったけどね(笑)。
そうですか~?
ソニック・ユースみたいで格好いいじゃん。そういう曲は後半に出てくる。で、しかし、1曲目の"I'm On Earth"から"サイハテ"までは"ストロボライツ"路線なんだよね。
"サイハテ"を作った(小林)オニキス君が"ストロボライツ"を聴いていてくれて......。ボーカロイド使って『ニコニコ動画』ですごく面白いことをやっている人がいて、それでコンタクトを取ったときに、そういう話になって。
どういう方なんですか?
一般の方です。
家で打ち込みをしている方なんですか?
はい。イラストレーターやグラフィックをやっていたらしいんですけど。で、ボーカロイドではなくて自分で"サイハテ"を歌ってみて......。
......なるほど。
ボーカロイドを通じて私を知った人もいるだろうし、ボーカロイドも『ニコニコ動画』も私はひとつの文化だと思っているし、だから"サイハテ"のリミックスをテイ(トウワ)さんに頼んだのも、ボーカロイドしか知らない人でもテイさんだったらどこか引っかかりがあるだろうと。
なるほど。
もともとは一般の人が作った曲なんです。それを私がオケを作り直して、さらにテイさんに手を加えてもらったということです(笑)。
ネットで誰かが作った曲をカヴァーしたってことなんですね。なるほど。ところで、アルバム全体について言うと、ものすごく前向きな印象を持ったんですよ。ふだん僕が聴いている音楽がゼロだとしたら1000ぐらい前向きですよ。
ハハハハ!
「何でこの人はこの人はこんなに前向きなんだろう?」って。僕にはありえないから、それは(笑)。
前向きというよりは賑やかな感じにしたかったんです。皮肉や暗いことは敢えて減らした。
これほど社会と関わりを持たない音楽も珍しいなと思ったんです。
ハハハハ! そうですね!
それは決めてる?
2枚目はけっこう皮肉が入ってるんだけど......。
だって......、2曲目が"金魚"だよ(笑)。
それはもう、歌舞伎町のお姉たちに踊ってもらいたくて(笑)。
そういうことだったのか!
ハハハハ。まあ、暗いことはいま敢えて言わない、それは意識した。
いやもうね、"New Days "とか、「なんでここまで前向きになれんだろう?」って(笑)。羨ましいよ、ホントに。
ハハハハ。まあ、移籍第一弾だし(笑)!
そこは意識する?
する。
僕は最後の"Harmony"ぐらいのダウナーな感じがちょうどいいな。アルバムの前半がアッパーなんだよね。後半はいろんなことやっているし、また違った展開がある。ちなみに『Very』ってタイトルは?
「際だたせる」っていう意味で。「とても」って、良いときも悪いときも、「とても」って言葉があるといいじゃないですか、そう、ただの「thank you」よりも「thank you very much」のほうがいいし、その「very」、つまり「とても」ということを意識しました。
実際のフルカワミキ自身のキャラはどうなんですか?
完全にネクラです(笑)。だからそれを出しても仕方がない(笑)。
写実的というか、リアリティのある表現っていうのはあんま好きじゃないでしょ? ヒップホップとかさ、曽我部恵一とかさ。
いや、好きですよ。ただ、その人がどういう生活をしいているのかってところまで歌で聴きたいとは思わない。やっぱ気になるのは音なんですよ。音から内容に入って来る。
やっぱザ・フィールドみたいなファンタジーのほうがしっくりくる。
はい。
それは『Very』を聴いているとよくわかるよ。ちなみにスーパーカー時代でいちばん好きなアルバムは何ですか?
『ハイヴィジョン』。もう1枚選ぶなら『アンサー』かな。
いちばん売れたのは?
『ハイヴィジョン』......、それか『スリーアウトチェンジ』。
『ジャンプ・アップ』は?
あれはダメだった(笑)。
僕はあれが好きだったけどなー(笑)。
あれはね、自分たちの精神状態も良くなかったんですよ。
『アンサー』が好きな理由は?
もう抜けてるっていうか(笑)。
じゃあ、後期のほうが好きなんだね。
やっぱ初期は恥ずかしい......聴けるんですけど、やっぱ若かったし。
『スリーアウトチェンジ』の頃は何歳だっけ?
18です。
高校生だもんね。
レコーディング中は17歳だったし。
ちなみにフルカワミキのルーツって何ですか?
やることがなかったからバンドやったようなもので......、気の利いたCD屋さんもなかったし、すごく退屈していたし、いまみたいにコミュニケーション・ツールもそんななかったし。楽器屋さんの張り紙で人と知り合うしかなかったんですよ。それでバンドをはじめたようなもので。
ルーツと呼べるほどの音楽体験がなかったんだね。
バンドはじめてから、いろんなものをいっぺんに聴いたから。とくに最初はUSインディをいっぱい聴きましたよ。
バンドのメンバー募集は誰が貼ったの?
私。
ホントにそうなんだね。
「全パート募集」って(笑)。で、足りない楽器を私がやろうと。もう捨て身ですよ。そうしたら彼ら(後のスーパーカーのメンバー)が集まってきた。で、結局私がベースをやることになって......ベースって、太った人がやっているイメージだったんだけど。
ないない、そんなイメージないよ(笑)。
ハハハハ、力強い人がやるんだと(笑)。とにかく通販でベースを買って、練習した。
何歳だったの?
16歳。
音楽の方向性については張り紙に書かなかった?
書かなかった。ヴィジュアル系の人が来ちゃったら止めようと思ってたけど。ただ目立つように絵を描いて......、それと、「急募」と書いた(笑)。
ハハハハ! 素晴らしいね。では......最後にプロモーション・トークをどうぞ(笑)!
とくにないです(笑)! あ、でも、ザ・フィールドの感覚がわかる人にはわかってもらえるかなと思います。
野田 努(2010年2月19日)