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interview with Takkyu Ishino

interview with Takkyu Ishino

2010年のテクノ・クルージング

――石野卓球、ロング・インタヴュー

野田 努    Aug 05,2010 UP

俺、このあいだ中国でやったんだけど、野外フェスだったのね。そのときは時間もそんな長くなかったら、レコードをCDに焼いて持って行ったのね。使うであろうレコードをさ。そうしたら、4枚ぐらいで済んじゃうんだよね。4枚で行くのも気が引けるっていうかさ(笑)。


石野卓球 / CRUISE
Ki/oon

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話が変わるんだけど、ヴァイナルとダウンロードに関してはどんな意見を持っている?

石野:俺はどっちも使うんだけど、レコードのほうが音が良いっていうか......まあ、ハコによるよね。アナログ盤にチューニングされているハコは、レコード針がモニターから拾ってしまうフィードバックが聞こえないということを前提で作られているから、ヴァイナルをかけると音がすごくいいんだよね。その逆で、CDを前提で作られているハコでヴァイナルをまわすと、音がまわり過ぎちゃって、低音とかモコモコになっちゃうし、だからケース・バイ・ケースだな。「絶対にレコードでないと」っていうタイプでもないし、レコード買ってもCDに焼いて、どっちもいけるようにはしている。でも、どっちかとえばレコード派だけどね。使いやすいしさ。

いろんなダンス・ミュージックがあるなかで、いまでもテクノの人がいちばんヴァイナルを使うって言われるじゃない。

石野:そうだね。

ドラムンベースやダブステップでさえもいまデータが増えちゃってさ、ヒップホップはもうほとんどデータじゃない。テクノだけがいまだDJがヴァイナル使っているから、お店でもレコードが売れるっていうんだけど。

石野:ドイツが強いっていうのがあるんじゃないかな。あと、ヒップホップ以上に、その辺の兄ちゃんがレコード出せるっていう、その機動力っていうか。ドイツはいまでもレコード使うDJ多いからさ。イギリスももう、レコード使ってないでしょ。

CDが多いよね。

石野:レコードいいんだけど、かさばるよね。

CDになったのも、移動するときに面倒くさいというのもあるからね。運ぶのが楽だからね。とくに飛行機乗る人にとってはさ。

石野:最近のCDJはだって、USBでいけるじゃん。すごいことだよ。(メディアの選び方も)場所によるけどね。俺、このあいだ中国でやったんだけど、野外フェスだったのね。そのときは時間もそんな長くなかったら、レコードをCDに焼いて持って行ったのね。使うであろうレコードをさ。そうしたら、4枚ぐらいで済んじゃうんだよね。4枚で行くのも気が引けるっていうかさ(笑)。

4枚、ハハハハ!

石野:考えが古いのかもしれないけどさ、それでもう何十枚かいちおう持っていったんだけどさ(笑)。

中国はともかく、東南アジアは気候的にもレコードが合わないっていう話は聞いたことがあるけどね。

石野:ダウンロードのおかげで、地方のDJと東京のDJとの情報の格差がなくなったよね。それはいいことだと思う。昔だったら、通販でしか買えないとか、コアなものは東京ですぐに売れちゃうからとかさ、そういう情報格差がなくなって、フェアになったと思う。

自分で買うときはレコード?

石野:うん、なんでかっていうと、レコードのほうがまだ周波数帯域が無限の可能性があるように思えるからなんだよね。もっと性能のいいディスコミキサーと針との組み合わせで、さらにもっと良くなるんじゃないかって。デジタルの音もよくなっているけどね、それでも上下は切られているから。まあ、こんなこと気にするのも俺の貧乏根性だと思うけどね(笑)。デジタルでもいま96kHzってあるじゃない。たしかに96kHzにもなりうるけど、441で買ったら441は441じゃん。mp3はmp3だし。レコードで持っていれば、これから来るであろうもっと高いサンプリング・レートの対応もできるっていう安心感もあるよね。

なるほど。

石野:だからiTunesをほとんど買わないのは、あれはmp3じゃない。昔のミュージックカセット買っている感じ。

俺は意外と買うんだよ。

石野:個人で聴くにはいいんだよ。でもあれで(DJやって)お金は取れないっていうか。あれは個人で聴くものでみんなで聴くものじゃない。レコードはひとりで所有するもっていうよりもみんなで聴くものっていう俺の概念があってさ(笑)。CDはどちらかといえば自分で聴くもの。まあ、最近はCDのあり方もレコードに近づいてきているけどね。

CDの寿命が20年だっていう説があるじゃない。ケースにもよるんだけど、CDをケースから取り出すときにどうしても盤が曲がっちゃう。それで、いつの間にかCD盤のなかで亀裂が生まれて、そこから酸化しちゃうっていうね。

石野:あとね、なかのインクだって説があるよ。いまのCDは違うけど、昔のCDは銀紙を貼っただけのものもあって、その銀紙に文字が書いてあって、その文字から酸化してっちゃうっていうね。

それで読み込めなくなっちゃうんだよね。CDって、80年代に出ているじゃない。ゼロ年代になって、聴けなくなったCDが出てきたってね。

石野:当時は100年保つって言われてたのにね(笑)。

いや、俺は永遠に保つって聞いてたよ(笑)。

石野:ハハハハ。永遠に保つってことほど信用できないことはないからね。

俗説かもしれないけど、CDは20年、レコードは200年とかってね。結局、レコードのほうが保つんだよね。

石野:ホントにそう思う。実際にいくつかのソフトで、レコードは持っているけどCDで買い直して、で、さらにリマスターのCDが出て買って、結局、何枚かCDでも持っててさ、「そういえばレコードも持っていたな」と思ってレコードを聴いてみたら、すごくホッとしたことがあったんだよね、パレ・シャンブルグなんだけどさ。ガキの頃に聴いていた帯域をレコードでぜんぶ覚えていたんだよね。いくらリマスターされても、最初に聴いたのとはやっぱ違うよ。

パレ・シャンブルグ(笑)。

石野:CDっていうのは自分で焼けちゃうからね。でも、CDRは便利なメディアだと思う。

ちょっと大きな話なんだけど、そういうメディアの変化とも関係しているかもしれないんだけど、音楽が売れなくなっていることに関してはどう思う?

石野:当然だと思うけど。だってさ、簡単に無料で手にはいるようになったしさ。

違法ダウンロードが原因だと思う?

石野:それだけじゃないよね。値段が高いとかさ。あとは情報がすごく入ってくるようになったから、1曲1曲の音楽の重みが昔よりも軽くなったというかさ。所有することもエネルギーが必要だったじゃん。レコードを大事にするとかさ。データを大事に扱うってあんまないからさ。

俺は絶対に違法ダウンロードしないんだよ。やっぱ音楽がタダになったらマズイと思ってさ。

石野:エコだねー(笑)。ちゃんとゴミ分別するでしょ。そこはでも、なるようにしかならないと思うからさ。

俺らが子供の頃はFMでエアチェックして、録音していたじゃん。

石野:でも、俺らはマニアだから、いずれそのレコードを買いたいと思っていたじゃん。いまはそういうハード・リスナーが減ったんだと思うよ。違法ダウンロードで満足しちゃうヤツが増えたんじゃないかな。

悲しいよな。

石野:でも、しょうがないよ。だって、何万曲とかが持ち歩けたりするんだしさ。昔はだって、ウォークマンなんてさ、20曲とかでしょ。それを何度も繰り返し聴いているんだから。もっと聴きたければさらにカセットテープを持ち歩くっていうかさ。それってもう立派なマニアじゃん(笑)。だってさ、ウォークマンが出る前なんかさ、新しいレコード買ったら早く学校から帰りたくて仕方なかったじゃん。いま普通に授業中でも聴けるからね(笑)。

インターネット文化についてはどう思う?

石野:俺はそんなにどっぷり浸かってない。

YouTubeであるとか。

石野:YouTubeは使ってる。ありがたい話だよ、俺の人生時代の映像とかアーカイヴ化されているしさ(笑)。俺すら知らない映像まであるしさ。でも、コミュニケーション・ツールとしてはそんなに使ってない。ブログやってるわけでもないし、twitterも頻繁にやらないし、あんまり言葉で発信したいことがないっていうか。駄洒落は言ったことあるけどね(笑)。

それはね(笑)。しかしこの10年で音楽をめぐる環境がホントに変化したよね。

石野:ホントだよね。さらに変わっていくんだろうね。それこそさ、うちらの孫の世代なんか、「えー、音楽作ってお金になったの?」っていう時代になると思うよ。

いや、それはなっちゃいけないよ。

石野:いや、なるよ。

なんで?

石野:だって、いままでタダだったものを課金するのって無理だし、よほど大きな力が働いたとしても地下に潜ってやるだろうから、結局はいたちごっこというか。だから......、入場料を取るとか、投げ銭みたいなところに強いミュージシャンはやっていけるとは思うけど。あるいは、昔のドーナッツ盤の頃に戻るとか、あとはものすごく値段が下がるとか、そういうことじゃないかな。

難しいね。

石野:難しいと思うよ。俺はパッケージも含めて好きだから。自分がミュージシャンをやる前から好きだから、そういうのがなくなっちゃうのが淋しいと思う。

いまでも新譜、中古問わずに買っている?

石野:ぜんぜん買っているね。レコードもCDもすごい買ってる。

文:野田 努(2010年8月05日)

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