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interview with the telephones

interview with the telephones

“あざとさ”を超えた先にある、愛と自由

――ザ・テレフォンズ、インタヴュー

宇野維正    Aug 09,2010 UP

たとえば僕は高校を途中で辞めて死ぬほど退屈だったんですけど、唯一音楽だけはほんとに好きだったからライヴハウスで働き続けて、なんとかここまで生きてきたっていう、本当に音楽に救われたっていう実感を持ってるんですけど。

たとえば、これはele-kingだから敢えて訊きますけど、the telephonesが歌ってるダンスフロアと、ele-kingの読者がイメージするダンスフロアっていうのは、違うものじゃないですか。

石毛:たぶん、真逆ですね。

それによって偏見を持たれるのは不本意なことだったりします?

石毛:うーん......。でも、どっちの現場も健全だし、そんなに違うとは思わないんですよね。ドラッグもないし。だから、どっちもあってよくて、それが混ざるのが一番いいと思うんですけど......なかなか水と油だから、どうなんでしょうね。その架け橋的なバンドになればいいなぁとは常々思ってるんですけど。

今作『We Love Telephones!!!』はいきなり「I Hate DISCOOOOOOO!!!」という怒りを表明した曲で始まるわけですが。この怒りの矛先はいまの音楽シーンに対して? それとも、社会全体に対して?

石毛:全部ですね。たまにすべてのものが嫌いになることあるんですけど、「I Hate DISCOOOOOOO!!!」の"僕を打ちのめしたとこで何の意味がある?""自分じゃできないくせに"というラインは、完全に田中宗一郎に言ってます(笑)。

(笑)。

石毛:まぁ、タナソーっていうか、そのへんのメディアの人たちやリスナーも含むすべてに対して。でも、そういうネガティヴな感情もつねに持っていたいというか、それがなきゃダメなんですよね。すごく充実して幸せを手に入れると不安になっちゃって、これは全部嘘なんじゃないかと思うような人間なんで。

いろんな批判もあるんだろうけど、言ってみればthe telephonesって、最初から隙だらけのバンドだと思うんですよ。

石毛:そうそう。ツッコミどころがいっぱいある。こんなに隙だらけなんだから、打ちのめしたところで何の得もないよって言いたい(笑)。

打ちのめされても、ヘラヘラ笑いながらまた立ち上がってくるような、そういうタフさを持っているバンドだと思うんですけどね。だから標的になりやすいのかな?

石毛:そうですね。そういう部分はタフになったような気がしますね。

もともとthe telephonesはメディア主導ではなく、現場から火のついたバンドだっていう、そこの自負もあるんじゃないですか?

石毛:それもありますけど、現場から生まれた僕らも、結局はメディア主導のフェスにのっかってるっていう現状もありますからね。それは僕らだけじゃなくて、他のバンドもそうですけど。別にそれが悪いって言いたいわけじゃないけど、もっと〈AIR JAM〉がやったみたいに、自分たちだけで磁場を作れるんじゃないかって思いはあるんですよね。せっかくここまで状況を作ってきたんだから、ついてきてくれるオーディエンスもいるんじゃないかって。そろそろ何かを仕掛けていかなくちゃなって。20代のうちになにかデカいことをやりたいなって思ってます。

そういうthe telephonesの持ってるカウンター意識って、あまりファンのあいだにも伝わってないような気もするんですけど。

石毛:表現の根本には、いつもラヴがありますからね。すごく理想主義的な部分が大きいから。僕たちって尖ろうとしても、結局は4人の人間性に部分で、どうしてもラヴとかピースな感じになるんですよ。

今作『We Love Telephones!!!』も、曲によっては"HATE"とか"DIE"とかっていうネガティブなフレーズも耳に残りますけど、基本的にはすごくラヴとピースな作品ですよね。

石毛:そうです。基本的にthe telephonesのテーマは愛と自由だと自分は思ってます。

愛と自由をこの2010年の日本で歌う意味は、どこにあると思います?

石毛:いま、バンドであんまり愛を歌うバンドっていないと思うんですよね。個人的な内面の葛藤とか、そんなのばかりが幅を利かせていて。自分もそんなにすげぇ考え込んだ上で、「愛と自由」だって思ってるわけじゃないから、ちょっと答えづらいんですけど......やっぱり、まだバンド・シーンは終わってないっていう希望の火をつけたかったっていうのがあって。これから音楽をプレイする若い子にも、音楽でもメシは食えるよっていうのを伝えたいのがある。いまってなんとなく、日本の音楽シーン全体が、メインストリームもアンダーグランドも、どんどんコアなものになっている気がするんですよね。

CDを買うという行為そのものが、マニアックな行為になってきてますからね。

石毛:でも、そんな時代でも普通の人がバンドをやってもいいんだよ、選ばれた人しか音楽をやっちゃいけないわけじゃなくて、普通の人間でもバンドはできるんだよっていうのを証明するバンドになりたいんですよ。それが結局は、愛と自由に繋がってるんじゃないかな。だから、いまの世界が退屈で死んじゃうよっていうような人たちに自分たちの音楽を届けたい。この気持ちが正確に届くかどうかわかんないですけど、たとえば僕は高校を途中で辞めて死ぬほど退屈だったんですけど、唯一音楽だけはほんとに好きだったからライヴハウスで働き続けて、なんとかここまで生きてきたっていう、本当に音楽に救われたっていう実感を持ってるんですけど。だからいま、学校も仕事も行かずに時間を持て余してるスーパーニートみたいな人がいたら、別に僕らの音楽じゃなくてもいいんだけど、誰かの音楽を聴いてそれに救われるような体験をしてくれればいいなって。まぁ、それが自分たちの音楽だったらいちばん嬉しいんだけど。

宇野維正(2010年8月09日)

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Profile

宇野維正宇野維正/Koremasa Uno
音楽・映画ジャーナリスト。洋楽誌、邦楽誌、映画誌、サッカー誌などの雑誌編集を経て独立。現在、『MUSICA』、『装苑』、『クイック・ジャパン』、『シネコンウォーカー』、映画誌『T.』、旅雑誌『4 travel』などでレギュラー執筆中。

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