Home > Interviews > interview with the telephones - “あざとさ”を超えた先にある、愛と自由
だからね、ele-kingを読んでるような音楽をすごくよく知ってるような人たちに、「やっぱthe telephonesってクソだね」って言わせちゃうくらいの、そういうバンドになっていきたいですね。それでも、「あの曲はいいよね」みたいな。
■いまのtelephonesの現場には、ニートっぽい子はたくさんいる?
石毛:いや、全然いない。リア充ばっかだと思う。2ちゃんねるのスレッドとかも大して書き込みもないし(笑)。だからもうちょっと腐ってる奴らがいてもいいなって思うんですけど、逆に言うと、もう腐ってる奴らが聴きたいとは思わない音楽になっちゃったのかもしれないですね。それはたぶん、これまでの僕らのやり方があざとすぎたのかもしれない。でも、そのへんの連中に嫌われてもいっかいちゃんと上に行く必要があったと思うし、まだまだ上に行きたいところはあるんで。それが一段落したら、もういちどそこらへんにいる人たちに問いかけたいって気持ちは強いですね。
■自分で自分のことを「あざとかった」って言うのはそれだけ客観視できてるってことだと思いますけど、あざとさっていうのは、どこかでツケを払う必要があると思うんですよ。そういう意味で、今回の作品はそのツケを払ったような、丸裸の作品になってるのかもしれないですね。
石毛:なってるのかな? 基本的にはツケを払ったつもりではいるんだけど、もっといいツケの払い方もあると思うんですよね。これまで誤解させたきたところをどうやって解いていくか、それは難しいことなんですよね。でも、バンドが上に行くにはそういうこともしなきゃいけない。音楽がカッコよければ売れるっていう時代はやっぱり終わったと思うんで、自分たちがいいと思う音楽をどうやって広げていくか、あらゆる手段を講じるしかないと思うんですよ。で、そういうことに対して自分は積極的な人間だから、何でもやっていこうと思ってます、いまは。それが度を超えると、精神的にはつらくなったりもするんですけど。
■それは、別にこれまでのリスナーを裏切ってきたとか、裏で舌を出していたとか、そういうことじゃなくて、自分たちの音楽を限定した形でしか伝えてこなかったことに対するしんどさですよね?
石毛:そうですね......あぁ、そうかもしれない。うん、そうですよ! そうだわ!
一同:あはははははは!!
石毛:そういう意味で、今回の作品でようやく解放されたのかもしれない。いや、完全に腑に落ちたました(笑)。だからね、ele-kingを読んでるような音楽をすごくよく知ってるような人たちに、「やっぱthe telephonesってクソだね」って言わせちゃうくらいの、そういうバンドになっていきたいですね。それでも、「あの曲はいいよね」みたいな。たぶん、全曲好きになるのは難しいだろうけど、「the telephonesクソだけど、この曲だけはいいよね」っていう、それぐらいの耳のあるリスナーといっしょに走っていきたいですね。つねに時代と同期しながら新しいことをやっていきたいし、なるべくならその最先端を走りたい。基本的に人を引っ張ることは嫌いだけど、いまは引っ張ってもいいよって気分、なんでも背負ってもいいよって気分なんで。いろいろ背負うかわりに、先を走らせてくれっていう感じですね(笑)。
宇野維正(2010年8月09日)