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Home >  Interviews > interview with OTO - 抵抗と永遠のリズム

interview with OTO

interview with OTO

抵抗と永遠のリズム

――OTO、ロング・インタヴュー

野田 努    special thanks to Midori-Chan   Nov 17,2010 UP

持続可能な循環型社会という答えが見えたんだよ。で、それが見えた時点で、僕は自分でそれをやってみたくなったんだよね。だから、レコード店が客にレコード袋を出さないんじゃなくて、そう思うんだったらまずは自分でそれを実践すればいいと思うんだよ。


エド&じゃがたらお
エド&じゃがたらお春LIVE

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じゃがたらはひとつの分水嶺だったんでしょうね。80年代はまだじゃがたらのような文化は求められていたけど、結局、じゃがたらの理想主義的なところは90年代に駆逐されていくわけでしょう。江戸アケミのようなメンタリティはなかったこととして日本の音楽シーンは発展していくわけだから。

オト:たぶんね、88年ぐらいに、アケミとこだまさんはそのことを感じていたんだと思う。日本のなかでただ普通に音楽を演ることに大きな疑問を感じていた。篠田(昌已)君なんかはアケミの気持ちがわかっていたほうだったけどね。

時代はまさに中曽根内閣でしたからね。新自由主義のはじまりとともにじゃがたらははじまっているんです。

オト:そう、はじまっている。

僕なんかも当時の浮かれた日本のサブカルが大好きなひとりだったから、江戸アケミさんの言葉を心から理解できていたわけではないんです。

オト:ただね、社会に生きていて、本当に言いたいことがあってもそれが言語化できない人たちはたくさんいると思うんだよね。たとえば、僕がある野菜を食べたとする。で、農薬が入っていて身体受け付けなかった。「なんで野菜を食べないの」と言われる。それは野菜ではなく、僕の身体が農薬を受け付けていないってことなんだけど、食べている時点ではそれを言語化できない。そういう風に言えないことってあると思うんだよね。学校だって、会社だってそうだけど、そうなってくるとはずれるしかないじゃんね。で、はずれたほうがいいんだよ。ただ、はずれたあと、快適に過ごさないと悔しいじゃん。

ハハハハ、悔しいっすよね。ただ、逞しさみたいなものがあったんでしょうね。もうひとつ僕が好きなエピソードで、バンドで食えない頃に、アケミさんが下北沢のパチンコ屋の呼び込みやってて、それで夜には渋谷の屋根裏でライヴをやるというがあって。そうした逞しさ、地に足がついた感じで音楽をやっていたわけですよね。しかもあれだけネガティヴなことを歌いながら、ダンスに向かう。

オト:踊るのはあの頃、解放って言葉で言ってたけど。

フォークにはいなかったんですね。

オト:フォークにはいかないんだけど、"中産階級ハーレム"を持ってきて歌うときのアケミは完全にフォークなんですよ。だけど、それをフォークの文脈には絶対に入れたくないというね。

"中産階級ハーレム"はしかも長い(笑)。

オト:あんな長いフォークはない(笑)。

名曲ですよね。

オト:名曲だよあれは。こないだジョン・レノンの"ワーキング・クラス・ヒーロー"を聴いたときも、あれはアケミのアンサー・ソングなんだなと思ったよ。「日本じゃ、中産階級て言われて、ぷらぷら浮かれているよ」ってね。

だけど、いまほど中産階級に憧れている人が多い時代もないんじゃないですかね。

オト:どうだろうね。ヒップホップやレゲエみたいにミュージシャンやりつつ社長みたいな感じが出てくるとさ、案外みんな産業だと思っているんじゃないの。とにかく商売っていうかさ。どうなの?

うまくやれているのはごくいち部ですよね。そういえば、今回のじゃがたらお春では、かなり気合いの入ったブックレットを付けていますよね(執筆陣は、磯部涼、こだま和文、二木信、毛利嘉孝、湯浅学、それと筆者)。

オト:ただ出すだけでは無責任だなと思って。2010年に出すことの意味を考えたいと思ったんだよね。あのライヴ音源のマスタリングに関しては、実はずっと前にやっていたんだ。いつか出したいと思っていたんだよ。あとは毛利さんの『ストリートの思想』がすごいきっかけでしたけどね。

『ストリートの思想』は初めてちゃんと日本のポスト・パンクを政治的な文脈で説いていったところが良かったですよね。政治や社会の文脈でああいうことを書く人がいなかったから。

オト:まったくなかった。80年代の機運としてはまったくなかった。じゃがたらなんて、超浮いてたもん(笑)。

吉本隆明が広告になっている同時代に、屋根裏で血を流して踊っていたアケミとは何だったろう? って思いますよ。

オト:こう言ってはなんだけど、ポスト・パンク時代のノイズにしたって、音楽誌に書かれているアートとしてのノイズというベタな表現に思えてしょうがなかったんだよね。時代がさ、そういう時代だったでしょ。パンク、オルタナティヴ、ノイズ。映像作家だってノイズを入れて作品を出していた。僕からみたらみんなアンパイだよ。時代のなかのカラーリングでしょ。じゃがたらは全然関係なかった。パンクとは違うイディオムが入っているし、レゲエをやっていても、ミュート・ビートみたいにレゲエをそのままやるようなことはなかったしさ、アディダスをはいたこともなかった。まあ、みんな、そりゃあ、ダサいよ。アケミは赤いジーパンにピンクの腹巻き(笑)。「おい、そりゃあ、何なんだよ!」って(笑)。

ハハハハ、最高ですよね。80年代は、いま思えばニューウェイヴのセンスほうがメインストリームだったと言えるほどで、じゃがたらは本当に、まったくの反時代だったんですね。

オト:そんなんじゃ売れないよね、糸井重里が西武デパートで「おいしい生活」って時代にさ、「青空ディスコー!」じゃ(笑)。

ハハハハ。「おいしい生活」は終わったけど、「青空ディスコ」はレイヴ・カルチャーを予見したじゃないですか。そろそろ、サヨコオトナラの話をしましょう。現在のオトさんの活動のきっかけは、9.11にあるんですよね。

オト:そう、オルタナティヴへの流れだね。

環境問題と音楽の話でもありますよね。すごく重要な問題だし、同時に際どい問題でもあると思います。僕みたいなへそ曲がりは、たとえば、たまにレコード店なんかでも「うちは手提げ袋を出さないんです」とか言うのを見ると、「客に押しつけやがってー」「だったら10円でも安くしろ」と思ってしまうわけです(笑)。もちろん自分が正しいとは思ってませんが、今日では、下心見え見えのエコやオーガニックも少なくありませんし......。ただ、先日、サヨコオトナラのライヴをやった「土と平和の祭典」はとても面白かったです。行ってみないとわからないとはまさにあれで、普天間基地問題から原発問題とか、いろんな回路が用意されているんですね。僕は、ナチュラル系と言われるような、海辺でただ享楽的過ごしているだけのことをいかにも自然を愛してますっていう偽善的な態度が嫌いなのですが(笑)。

オト:ハハハハ。

そういうのとは明確に違った意識の高さをもったフェスでしたね。子連れが多かったのも良かったです。オトさんはどうしてああいう方向に行ったんでしょうか?

オト:僕はね、9.11の前から都会で音楽を楽しむことが減ってきてしまっていたんだよ。トランスであれ、レイヴであれ、祭りであり、都会から離れたところで音楽を楽しみはじめてしまっていた。新宿の風俗店で火事があった頃から、〈リキッドルーム〉に行くのにも、僕は覚悟していた。いつ死んでもいいようなね。飛行機に乗るときもそうだよ。こんな高いところ飛んでいるんだから、落ちて死んだって仕方がない。この景色を冥土のみやげにしようって、そう思って乗ってるから。それと同じように、都会はもう、自分で自分の身を守れるところではなくなってしまった。東京で音楽を楽しむことができなくなってきてしまったんだよね。

でも、全員が全員、田舎に住めるわけじゃないじゃないですか。

オト:そうだよ。ただ、いまはその角度からの話はちょっとおいてもいいかな。で、9.11があったときに、3日後に坂本(龍一)さんの「非戦」のサイトがあって、そこからいろんなリンクを追っていったのね。その前に、沖縄で少女暴行事件があったじゃない。それで地位協定について知って、で、「日本って、ぜんぜん独立してるわけじゃないじゃん」って。それまで僕は、世界のことや日本の政治のことを積極的に探ってなかった。スティングがアマゾンの自然危機を訴えるためのワールド・ツアーをはじめたときも、「そういうのは専門家がやれば」って感じで、「僕は音楽のことをやるから」って思っていたのね。だけど、9.11のときは、「これは子供がじゃれ合ってるなんてもんじゃないぞ、世界はもうドクターストップだ」と思ったんだよ。当時僕は映像をザッピングしていて、ペンタゴンには本当に飛行機は落ちていないし、どうも怪しいと、自分のなかに確信は持てなかったけど、ホントのテロじゃないなと思っていたんだ。そしたら、まあ、本を読んだり、ネットを調べると、陰謀説のようなことがいろいろ出てくる。しかし、テレビのニュースではまったく別の情報が流れている。これはもう、自分で把握できないと次に進めないなと思った。「僕は音楽専門で、環境系は専門家に任せます」っていう態度では次に進めないなと思ったんです。

しかし、その9.11から環境に進んだのはどうしてなんですか?

オト:で、いろいろと勉強してって、教育の問題、食べ物、医療、建築......この世は相当なまやかしでできていることがどんどん見えてくる。バビロンもへったくれもない。

思っていた以上にバビロンだったと(笑)。

オト:そう、こんなにもはっきりバビロンだったとはねー(笑)。これはもう、このままいまの流れを続けていったら人類はないと。

オトさんの場合、田舎に住んではいますけど、こないだ野音でライヴやったように、都会でもライヴをやってますからね。隠遁しているわけではない。

オト:隠遁してるわけじゃないからね(笑)。ただ、都会に住んでいるとアンチにならざる得ないよね。システムがあまりにも作られているから。持続可能な循環型の社会ではない。

なるほど。

オト:そう、持続可能な循環型社会という答えが見えたんだよ。で、それが見えた時点で、僕は自分でそれをやってみたくなったんだよね。だから、レコード店が客にレコード袋を出さないんじゃなくて、そう思うんだったらまずは自分でそれを実践すればいいと思うんだよ。買わないという意志をもつこととかも重要だよね。消費こそがいちばんの政治行動だから、イラク戦争のときにわかったのは、みんなが貯金しているなかの財政と融資という枠から国が好きなように使う権利を持っていて、そのなかから国が武器や爆弾を買ってるなんて......まあ、言語道断の話なわけだよね。銀行を使うってことはすでに民主主義でもなんでもないし、そしたら僕らの意志は関係ないってことだから。さらにお金についても考えたんだ。「お金って何だろう?」って思って。自分もそうだったけど、お金がないと困ることがたくさんある。生活するなかで最低限のお金は必要だからね。だけどね、お金がないと淋しい気持ちになるよね。

なりますねー(笑)。

オト:でも、精神にそこまで影響をおよぼすお金って何よって思うわけ。「人の精神を救うものがお金なの? それって正当なの?」って。お金の実態を知りたいと思ったんだよね。そしたら名古屋の在野の青木(秀和)さんって学者の書いた『「お金」崩壊』っていう新書が面白くてね。僕の知りたいことがいっぱい書いてあった。銀行の話から地域通貨の話とかね。それから阿部芳裕さんの書いた地域通貨に関する本を読んで......あとは太田龍っていう。

竹中労と平岡正明と3バカゲバリスタを組んでいた人ですね。

オト:太田龍がいっぱいフリーメーソンに関する翻訳をやっていてね、ものすごい仕事量なんだよね(笑)。もう死んじゃったけど、ものすごいスピードでものすごいたくさんの翻訳を出している。まあ、暴露本だよね。俺、ロフト・プラス・ワンで太田龍と対談したいって言ったくらいだから。

まあ、とにかく9.11以降、いろいろ勉強されていたんですね。

オト:うん、そう。じゃがたらの話に戻るけど、人びとがまやかしに踊らされない部分というかね、本当の日本の姿を見つめなきゃならないってアケミは言ってたんだよね。おそらく88年くらいから、彼の体調が急にアッパーにいくんですよ。それまでずっと安定剤を飲んでいたんだけど、86年ぐらいから日常生活では会話なんかも以前のように喋れるようになってくるし、筋肉もついてくるし、そうすると気が乗ってくるというか、彼のほうでもいろいろと話してくる。で、彼は日本の社会をできる限り見つめたいと思っていたけど、じゃがたらというバンドの中身が日本の小さな縮図みたいなもので、バンドのメンバーがアケミのことをぜんぜんわかってなかったんだよね、僕を含めて。だからアケミはライヴの演奏中に、バンドのメンバーに対しても「俺はじゃがたらなんかじゃねぇよ」という苛立ちを持ちながら歌っていた。これは『この~!!』というDVDに収録されているんだけど、"都市生活者の夜"のライヴ演奏で、意図的に音程をはずして歌ったことがあって、で、そのとき僕はそれが気にくわなくてね、「ふざけやがって」と思って、「そんな軽々しいフェイクで苛立ちを出しやがって」って。でも、彼のなかではその違和感がどんどん膨らんでいくんだよね。そうした、じゃがたらでの一連の出来事が、9.11があってから僕にはすごく透けて見えるようになった。アケミが感じていた部分が僕にようやく見えてきてね......アケミと僕が同じかどうかはもう参照することはできないけれど、でも、僕のなかでは「こういうことだったのかな」と思えたことがたくさんあった。僕なりに、バビロンの構造が透けて見えるようになったんだよ。

なるほど。

オト:そう、だから『この~!!』を観た人は、不快な思いをしたかもしれないけど、だとしたら、その不快感こそ、僕らが住んでいる日本に潜んでいる不快感に他ならないんだと言いたい。

文:野田 努(2010年11月17日)

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