Home > Interviews > interview with Analogfish - プロテスト・ソングは何処に?
日本の洋楽の聴かれ方って、第二次大戦後の民主主義の入り方と同じで、歌詞の部分が拘らなさすぎているなって思うんですよ。洋楽を聴いて、愛の歌もあるけど、同じように政治の歌もあるじゃないですか。それはダサいものかもしれないけど、でも、あるものなんですよね。
アナログフィッシュ 失う用意はある?それともほうっておく勇気はあるのかい felicity |
■最初からは社会をテーマにしていたんですか?
下岡:そんなに面と向かってはいなかったけど、基本的にはずっと自分は変わってないと思います。初期の頃は......もっとモヤモヤしたものをやりたかったんだと思います。最終的にはちょっとかわしてみたりとか、ゆらゆら帝国のフォロワーの人たちがやっているようなことをやってみたかったんだと思います。
■じゃあ、敢えてナンセンスなものも取り入れたり?
下岡:「変だね」と言われるようなものを歌ったり。
■実は僕、ユニコーンって聴いたことないんだけどさ、ユニコーンって社会派の歌詞を歌っていたわけじゃないでしょ?
下岡:じゃないですよね。
■誰かの影響ってわけじゃないんだ?
下岡:ホント、どこから来たんでしょうね。
■だってさ、『ロッキングオン・ジャパン』とか読んでてもさ......って読んだことないんだけどさ、たぶん、社会のことを歌うロック・バンドって日本にあまりいないでしょ?
下岡:いない......と、俺も感じます。
■頭脳警察とかさ。ソウルフラワーとかさ、いないことはないと思うけど、圧倒的に少ないですよね。とくに若いロック・バンドでは。
下岡:いないですよね。なんでいないのかなぁ。
■まあ、そういういないなかで、なんでアナログフィッシュの言葉は生まれたんでしょう?
下岡:言葉遊びだったり......歌詞を書くときには他の要素もあるんですけど、僕が書くのはどうしても世界との確執、違和感のようなものになってしまうんですね。そういうのが多かったんです。それがどんどん直接的になってきたんです。ソニーでやってきたときに、「こういう歌詞はダメだよ」って言われたことがあって、「いやだって、ボブ・ディランとか普通に歌っているじゃないですか」と言うと、「ボブ・ディランはボブ・ディランだから」って言われて。
■そんなことを歌ったら売れなくなるよってことだよ(笑)。
下岡:そういうことだったのかなぁ。
■〈フェリシティ〉レーベルのボスである櫻木(景)さんは、今回の取材のときに「昔の作品は聴かなくていいです」って僕に言ったんだよ。「今回がデビュー作ですから」って(笑)。
下岡:ハハハハ。
■しかしいまボブ・ディランの名前が出たけど、やっぱ洋楽からの影響は受けているんですね。
下岡:僕はオザケン好きなんですけど、オザケンにも同じものがあると思っているんですよね。あと、ボブ・ディランも好きだし、ケイクも好きだし、REMとか......。
■たしかにアメリカの音楽には、社会について歌うという伝統があるよね。
下岡:僕自身もアメリカの音楽を聴いて育ったから、そういうことに違和感がないというか、それが普通というか、そう思ってきたから。逆になんで(日本のバンドは)歌わないのかな? とはずっと疑問だった。
■やっぱアメリカの音楽が好きだった?
下岡:イギリス、アメリカって分けて聴いてたわけじゃないけど、アメリカの音楽のほうが好きですね。
■REMのようなアメリカの音楽になぜ惹かれていったの?
下岡:それは俺が、日本の社会に違和感を感じているからだと思います。子供の頃からずっとあったものだったし、ただ、それが俺だからそう感じているのか、本当に世のなかがおかしいのか、その辺はぐじゃぐじゃでよくわからなかったけど、でも、何でこういうことになっているんだろう? っていう考えはずっと自分にあった。暮らしていて、気持ちにそぐわないことが多いなというか......。
■たとえば?
下岡:なんで大人はつまらなそうに働いているんだろう? とか。なんで働かなきゃいけないんだろう? とか。そういうのって子供っぽいけど、ずっと思ってましたね。
■うん、ホントにそうだよね。
下岡:で、そうした議論をしても結局、誰もが納得できる説明ができないけど、音楽というのはそのメッセージを共有することで何か解消できることがあるじゃないですか。結論はでなくても、何か気持ちを前に進ませるというか。
■なるほどね。そういうカタルシス以上に、伝えたいことがある音楽だと思うけどね。いまのところリアクションはどうなんですか?
下岡:うーん......まだ、そんなに返ってきているものはないんですけど、ライヴでやっていると熱くなり方は違ってきていますよ。そこは感じていますね。
■じゃ、それなりの手応えがあるんだね。
下岡:そうだね。
取材:野田 努(2011年5月12日)