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このアルバムを買う理由が昔の曲だったりするのはちょっとね。過去に作った曲に頼ってることになるし。それに僕には新しいアイデアがつねにあるんだから、誰も聴いたことのないようなアルバムを作って独特なものにしたかった。
SBTRKT SBTRKT Young Turk/ホステス |
■サブトラクトはじめてから、あなたは実に精力的に作品を発表しています。2009年から2010年のあいだに実に8枚のシングルを出しているんですよね。リミックスもかなりの数手掛けてます。また、2011年に入ってからはすでに4枚も出している。この勢いはどこから出てきたんですか?
サブトラクト:わお。数えたのかい? すごいね(笑)。音楽を作るのが好きなんだよ。ライヴやDJより好きなんだ。毎日作曲するし、いろいろなアイディアが沸くからまったく飽きない。インストだったりテクノ調にしたりだとか、ヴォーカルを混ぜたりとかね、いろいろやりたくなるんだ。アルバムはただそのアイデアのうちのひとつで、これがサブトラクトって感じのものができたよ。
■アルバムには"Wildfire"、"Sanctuary"、"Pharaohs"など、スピリチュアリティをにおわせるような曲名がありますが、これらはアルバムのテーマと関係があるのでしょう?
サブトラクト:わからないな。曲ができる前にタイトルが決まってるやつもあるしまたその逆もある。ヴォーカリストが歌詞を書くんだけど、ヴォーカリストと一緒に確立していく感じかな。"Pharaohs"はちょっと説明できないな、基本的には曲を書くときに得るインスピレーションがすべてのように感じるけどね。
■歌詞について訊きたいのですが、たとえば"Trials Of The Past(過去の試練)"や"Right Thing To Do(ただしい行い)"のような曲では何を言いたいのでしょう?
サブトラクト:(きょろきょろしながら)歌詞を書いた奴がいるんだけど見当たらないなー(注:取材場所の近くにそれらの曲のフィーチャリング・ヴォーカル、サンファがいました)。
歌詞はヴォーカリストが書くんだ、彼に訊いたほうがいいね、僕が話すべきではないかも。曲を作るときはセッションを組んで、僕が楽器を弾きながらアイデアを出してヴォーカリストが歌詞を作るんだけど、作詞はいろいろなところから降って来るような感覚で書いてると思うよ。"Wildfire"のヴィデオは曲のイメージとは違ってみんな変わってるというんだよ、ただもともとこの曲は自分にとってメランコリックな印象だからそうなったんだけど、結局サブトラクトの音楽は作曲課程のインスピレーションが主体だと感じるよ。
■アルバムの題名も『SBTRKT』にした理由を教えてください。
サブトラクト:よくわかんないよ。どういう意味にも取れるし、シンプルだからかな。1曲1曲のテーマはしっかり考えてて、とくにアルバムとしてのコンセプトであったり、タイトルはそんな重要じゃないと考えているんだ。リスナーがどう解釈するかっていうところのほうが重要だと思っている。
■リトル・ドラゴンが参加した経緯を教えてください。
サブトラクト:ファンなんだ。ファースト・アルバムから彼らのオリジナリティに惹かれたし。ライヴもすごいし。本当にオリジナリティに溢れてるバンドなんだ。去年、彼らの"Never Never"のリミックスもしたし、ロンドンでライブにも参加してるから、コネクションができたっていうのもあるね。彼らとやってることは違うから面白いんだよね。ファンも好きなようだしね。
■"Look At Stars"が収録された「Step In Shadows EP」が出たあたりから日本でもあなたの新譜は入手が難しくなるほど人気が出ていました。それで「Step In Shadows EP」や「Living Like I Do」、「Soundboy Shift 」といった既発盤の収録曲をアルバムに入れなかった理由を知りたいんですが......(注:日本盤にはボーナス・トラックとして"Look At Stars"と"Living Like I Do"を収録)。
サブトラクト:さっき話したこととも似てるんだけど、僕はたくさん曲を作るから自分にとって古い曲をアルバムに入れるのは、新しいアイデアやクリエイティヴィティが失われるようで.......。それにみんながこのアルバムを買う理由が昔の曲だったりするのはちょっとね。過去に作った曲に頼ってることになるし。それに僕には新しいアイデアがつねにあるんだから、誰も聴いたことのないようなアルバムを作って独特なものにしたかったしね。これはすべてのプロジェクトに関して言えることだけど、リピートはあまりしたくないんだ。正直、人気が出ることについて考えるよりも、アーティストとしてチャレンジすることのほうが僕にとっては重要なことなんだ。
■「Laika」のような変則ビートや「2020」のようなミニマル x ガラージのようなビートもかなり好きだったので、あの路線もまたやって欲しいなと思ってるんですけど、もうああいうダンス・トラックは興味ないですか?
サブトラクト:そんなこともないよ。DJはEPやシングルを買うから、彼らが使いやすいにインストの曲をリリースするのは理にかなってると思う。ヴォーカル入りの曲をミックスするのは手間がかかるしね。アルバムではどちらかと言うと、いくつかの曲を通じてストーリー性を持たせることを重視してて、その利点としては、制限なく自分のやりたいことができるって部分だけど、EPとかだと使い手を意識して作らなきゃだめだからね。
今後もインストのダンス・トラックは作る予定だよ。ダンス音楽を作るのは好きだし、自分にとってはこれだけしか作らないとか、そういうことではないんだよね。ライヴを意識したものを作ったり、エレクトロニックやったり、レディオヘッドやビョークみたいにつねに変化してるバンドからはインスピレーションを得るよ。
■あなたが目指しているのは、モダンなフレイヴァーを持ったソウル・アルバムといったところでしようか?
サブトラクト:いや、こちらからとくにこんな風にアルバムを作ろうということは考えなかった。自分の好きなことを共有したり、新しい音を提供してリスナーに独自の解釈してもらうっていうことが重要だね。さまざまなジャンルの垣根を越えてサブトラクトの音はサブトラクトにしかだせない。言ってみればそれがテーマかな。いろんなところから影響を受けてそれをつなげていくことで、独自のアイデンティティを作り出すっていうことがメインだね。ソウルは重要な要素としてはあるけど、それが主体であることはないかな。
■最後に、あなた自身、いまのUKのベース・ミュージック・シーンをどう見ているのか教えてください。
サブトラクト:すべてのエレクトロニック・ミュージックからつねに良い曲は出てきてるね。いまはいろんな音楽が各ジャンルから派生してて多様性もあるし、誰もついていけないような、ものすごいスピードで変化してるから、とても面白い。たくさんの要素やプロダクションスタイルもある。こういったことは世界中でも起こってるんだよ。この前キャンプビスコってフェスに参加したんだけど、araabmuzikってアーティストがmp3を使ってヒップホップ・ベースの音楽をやるんだけど、ビートをライヴで再現してて、ダブステップだってテクノだってやるし、本当に素晴らしかった。そんな風に世界中のいろんなアーティストが、違ったフォーマットを使って音楽をやってることにはつねに感銘を受けるよ。プロデューサーやDJの垣根を越えてパフォーマンスの舞台に立つことは重要だと感じるね。
取材:野田 努(2011年8月07日)
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