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interview with Boys Noise

interview with Boys Noise

EDMには興味なし、〈4AD〉が大好き

――あまりにもいい人だった、ボーイズ・ノイズ、インタヴュー

斎藤辰也橋元優歩    通訳:青木絵美 photos by Björn Jonas   Sep 25,2012 UP

 ユニット名がその音楽を雄弁に物語っているようでもある。「騒音男子」。いや、「男子たち騒音」である。しかし、この違いはとても微妙に決定的である気がする。ドイツはハンブルグ出身のアレックス・リダは、ノイズ・ボーイと名乗らずにボーイズ・ノイズという名状を自らに付した。となると、オーディエンスがDJブースに立つ彼を見たときそこに映るのは騒ぐ男子たちであり、それはまぎれもなく(おそらく女子も含めた)オーディエンスたち自身の姿である。ボーイズ・ノイズの音楽は、果たしてただ個人的なものだろうか。それともヤングたちのパーティのための俗な音楽だろうか。音楽以上の騒音を奏で若さを爆発させるオーディエンスたちの描写であるかもしれないという想像もできる。彼はDJブースにおいてオーディエンスに対して向けた鏡(マジックミラー)の後ろ側に立っているのだから。


Boys Noize
Out of the Black

Boys Noize Records/ビート

Amazon

 ここ1~2年は、ディプロなんかとも関わっていたラッパー、スパンク・ロック(〈ビッグ・ダダ〉からのリリースで知られる)の作品を自身のレーベルからリリースしたり、コンピレーション『BNR Vol.2』ではベルリンのエレクトロニック・ミュージック・デュオ、モードセレクター、そのレーベルからセカンドを発表したシリウスモ、ファイストの(色々な面での?)プロデューサーであり、自身のソロ作品でも人気のあるゴンザレスなどなど、ジャンルにとらわれずにユニークな面々をそろえている。アンダーグラウンドとは呼び難いほど脚光を浴びているし、大舞台でプレイしている。なんと言っても、彼はスクリレックスのコラボレイターであり、そしてまたジャングル・ブラザーズの"アイル・ハウス・ユー"をスヌープ・ドッグに歌わせてしまえるほどの人物である。

 カフェに用意されていた別室に入ると、紳士的で笑顔を絶やさない青年と、彼が着ている「DC/AC」(もちろんハードロック・バンドのパロディ)のロゴとアウトバーンの標識が大きくプリントされていたTシャツがいっきに目に飛び込んできた。その標識とは、クラフトワークのアルバム・ジャケットに用いられていたグラフィックでもある。

 このインタヴューでは、4年ぶりのニュー・アルバム『アウト・オブ・ザ・ブラック』をリリースするボーイズ・ノイズ(アレックス・リダ)がDJブースの外でなにをどう見据えているか、また、ボーイズ・ノイズ自身とは舞台のかけ離れている(ように見える)類の音楽に対してどんな認識をもっているかを彼に語ってもらった。そこから、彼自身が自らをどう位置づけているのかが同時に浮かび上がるだろう。

ただのロック・マシーンには参ってしまうし、僕がそういったものとライヴ・セッションをするときにはもっと生命感を注ぎ込みたいと思ってる。とくにアメリカン・ダブステップが見失っているものだね。

今日は時間を作っていただいてありがとうございます。

アレックス:(にこにこしている)

ボーイズ・ノイズとしてアルバムを出すのは4年ぶりですね。その間にシザー・シスターズやスパンク・ロックなどのアーティストのプロデュースやご自身のレーベル〈ボーイズ・ノイズ・レコーズ〉の運営をなさっていたと思いますが、それらを経てご自身のアルバムを完成させてどう思いましたか。また、完成したアルバムについてどう思っていますか。

アレックス:そうだね。僕にとって、自分の音楽を作ることとプロデューサーを務めることはまるで違っていて、自分の音楽ではメロディやハーモニーよりもサウンドに重点を置いていて、サウンドが音楽なんだ。たくさんの機材を使って何回もライヴ・セッションをして、自分でもコントロールできないちょっとした偶発性のあるところでサウンドが生まれる。曲とかメロディじゃなくて、サウンドが主題で、僕はそれに興奮するんだ。
 僕はDJでありプロデューサーでもある。他のアーティスト――たとえばバンドやラッパーと仕事をするときには、まずアーティストとしての僕自身の音楽を作るわけじゃないということを第一に認識する。手がけるのは他の人の音楽作品だからね。だから、彼らが何を欲しいのか気づかなくてはならない。それは繊細な関係であって、ときにはダイレクトに「ちがう。これはよくない。もっとこんな感じにするべきだ」なんて伝えなければならない。それは自然に成り立つものでなくて、特別な関係なんだ。
 プロデューサーとは音楽を作っているだけのものだと思っていたけれど、実際にはそれ以上にコミュニケーションが大事で、なにをすべきで物事がどうなるべきかを把握する立場の人間だった。いいプロデューサーになるためにどうするべきかを学べて、いい経験だった。僕自身の音楽では、僕がアーティストで、どうするべきだと伝えてくる人もいない。思うがままに行動するだけだよ(にこにこ)。

昨年、リミックス集である『ザ・リミキシーズ 2004-2011』がリリースされましたね。デヴィッド・リンチやファイストなどの幅広いアーティストにまたがるトラックが収録されていますが、いわゆるダンス・ミュージック――テクノやハウス以外のアーティストがあなたに求めてくるものはどういうものだと感じていますか。

アレックス:僕が推測するに、彼らが求めるボーイズ・ノイズ・サウンドというようなものがあって、リミックスを手がけはじめたころ、たくさんの人から「きみの過去の作品と同じようにやってくれ」といわれることが多かったんだ。僕はファイストのリミックスを手がけたんだけど、「ファイストのリミックスみたいなのを作ってよ」と言われたりね。でも僕は自分自身を絶対にコピーしたくないから、同じことは絶対にできない。でもいつしか、「よし、彼を信じよう。好きなようにやってもらおう」というふうに人から任されるようになった。業界にウケるように作り出すのではなく、ただただ自分がいいと思うように手がけるように都合をつけていくのは大変なんだ。
 僕にとって大事なのは、僕がよしとしたことに相手が誠実でいてくれることなんだよ。人からリミックスを求められた際には、僕自身がリミックスにベストだと思うようにトライするよ。いままでふたつベストのリミックスを手がけたから、こういうのをあと10パターン作ろうというのではなくね。まったく違うし、難しいことなんだよね。これまでのリミックス作品はすべて手がけることができて嬉しいものだし、それぞれはまったくちがうものだけど、最終的には人びとがボーイズ・ノイズ・サウンドだと思うものになっているんだろうね。

橋元:ノイジーでグリッチーなサウンドをデヴィッド・リンチやファイストにぶつけたのはおもしろかったですよね。

アレックス:ありがとう(にこにこ)。

"サーカス・フル・オブ・クラウン"に、すこしダブステップっぽいというか、グライムのテイストを感じました。スクリレックスともタッグを組み、ドッグ・ブラッドとしてEPをリリースしていますね。そこでダブステップについてどう感じているのか、なぜダブステップからの影響を欲したのかが気になりました。

アレックス:不思議なもので、"サーカス・フル・オブ・クラウン"を手がけたのはおおよそ2年前なんだよ。その頃にはスクリレックスのことはまるで知らなかった。ダブステップとはあまり思わないけど、ハーフ・テンポだよね。〈ヘッスル〉サウンドではなく。
 全般的にダブステップにはいい要素がたくさん詰まっていて、例えばDJセットなんかをすべて通して聴くことはできないのだけど、とくにアメリカン・ダブステップに関して感じるのは、ときどき......なんというか、ある意味で包括的すぎていて、完璧すぎで、機能的すぎるということ。僕もアグレッシヴな音楽は好きだから、そういうアグレッシヴネスに溢れたスタイルがいいとも思える。それでもまだ、いいとは思えない要素もたくさんあって、ときにベタで安っぽすぎると感じるし、クレイジーなヴォーカルが挟まれるブレイクダウンとか、トランスみたいな要素とか、僕にはときどきトゥー・マッチに感じられる。
 ただのロック・マシーンには参ってしまうし、僕がそういったものとライヴ・セッションをするときにはもっと生命感を注ぎ込みたいと思ってる。とくにアメリカン・ダブステップが見失っているものだね。もちろん、僕はどんなスタイルにもいつでもオープンでいるし、そういうものをミックスするのも好きだよ。

ウォッシュト・アウトに代表されるようなチルウェイヴというムーヴメントについてはご存知ですか?

アレックス:うん、もちろん(にこにこ)。

それについてあなたはどう感じていますか?

アレックス:すばらしい作品がたくさんあると思うね。いい作品がたくさんあって僕も追いきれないくらい。僕はウィッチ・ハウスと呼ばれる作品も好きで、全体的にスロー・ダウンなものが。プロデューサーとして、レーベルのA&Rとして、なによりミュージック・ラヴァーとして僕は新しい音楽を毎日探しているし、サウンドクラウドをランダムにチェックしているよ。チルウェイヴもクールな作品がたくさんあるよね。聴いていて、いい音楽だと思う。でも、繰り返しになるけど、たくさんありすぎてひとつも名前を覚えたりできていないんだ(笑)。だって、とにかく多いんだもの! 
 それに、これまでの音楽作品はレーベルから出すものだったけど、いまはもっと個人でサウンドクラウドにアップしたりしていて音楽が増殖しているでしょ。そんなんだから、把握するのがほんとうに大変だよ。どのアーティストが、どんな名前でとか。でもとにかくいい作品がいまはたくさんあって、それは高額な費用をかけたりせずにベッドルームで作られているのだろうし、そういうチルウェイヴの持っているラフな要素がとてもクールだと思う。

橋元:とくに"サーカス・フル・オブ・クラウン"には先述のようなチルウェイヴと共通するところがあると思います。スクリューみたいなテクスチャーがあり、それがドローンのように用いられていておもしろいなと思いました。

アレックス:ふむふむ。

橋元:ある種のインディ・ミュージックの潮流がアンビエントやドローンのようなものに向かっているのと"サーカス・フル・オブ・クラウン"のサウンドが無関係ではないと感じました。それらを踏まえて、ご自身の新しい音楽についてヴィジョンがあれば教えてください。

アレックス:僕にとってもっとも重要なのは、いつだってサウンドなんだ。ビートは4ビートみたいにシンプルでもいいんだよ。(足踏みとハンド・クラップで)ズン、チャ、ズン、チャみたいにね。サウンドが僕にとってナイスで新しくて素晴らしければビートがシンプルでもいい。僕はそのシンプルさが好きだけど、もちろん、ご存知のとおり、いまはブロークン・ビーツが流行しているよね。僕はそのヒップホップとかテクノとかさまざまな要素が同時にミックスされているものも好きだし、DJとしてもちがうリズムの音楽をプレイすることが好きだよ。
 興味深いのは大きくなっている「トラップ」という新しいシーンで、クールなリズムがたくさんあるんだけど、サウンドがよくなければ興奮させられないんだ。ドラムやビートのサウンドがどんなふうに鳴っているかが大事なんだ。サウンドがフレッシュですばらしいかぎりはどんなものにもオープンでいるよ。

取材:斎藤辰也、橋元優歩(2012年9月25日)

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Profile

斎藤辰也/Tatsuya Saito斎藤辰也/Tatsuya Saito
破られたベルリンの壁の粉屑に乗って東京に着陸し、生誕。小4でラルク・アン・シエルに熱狂し、5年生でビートルズに出会い、感動のあまり西新宿のブート街に繰り出す。中2でエミネムに共鳴し、ラップにのめり込む。現在は〈ホット・チップくん〉としてホット・チップをストーキングする毎日。ロック的に由緒正しき明治学院大学のサークル〈現代音楽研究会〉出身。ラップ・グループ〈パブリック娘。〉のMCとKYとドラム担当。

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