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interview with Shugo Tokumaru

interview with Shugo Tokumaru

会話をはじめた音たち

――トクマルシューゴ、インタヴュー

北中正和    Nov 07,2012 UP

子どものころはピアノをやっていて、10代半ばでギターをはじめて、ギターを突き詰めようと思ったんですけど、突き詰めようと思えば思うほど、だんだんほかのこと、ほかの楽器がやりたくなったりもしてきて。それで、いろんな楽器をいいなと思ってちょっとずつ買い集めているうちに、楽器のかたち自体というものにすごくとりつかれてしまって......


トクマルシューゴ
In Focus?

Pヴァイン

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歌でいちばん最初に録音したのはどの曲ですか。

トクマル:うーん、よく覚えていないんですよね。たぶんまとめて歌は録ったんだと思います。

アルバムにまとめようという段階で歌詞をつけていって、歌も録っちゃったという感じですか。

トクマル:歌詞はいちばんあとですね。

歌詞のイメージはどこから湧いてくるんでしょう? 曲によるかとは思うんですが。

トクマル:夢日記をつけたりしていたんで、いままでのアルバムはそこからとっていたんですけど、今回のは半々くらいですかね。1曲1曲に夢のイメージとプラス自分の言葉をつけ加えるといったかたちです。でも、歌詞はすごく苦手なので......

曲も詞もできない凡人から見ると、そのプロセスは本当に不思議なんです。

トクマル:そうですねえ、僕もポンポン出てくるわけではないので、どうやっていいのかわからないまま無理やりひねり出しているという感覚があって。もともと本当に作れなくて、たまたまつけていた夢日記からとってみたらなんとなく合った、というのが最初なので、その延長で足したり引いたりしています。単語のストックがあんまりないし、本もそんなに読むほうではないので、自分の想像できる範囲内でしか言葉が浮かんでこない。そのなかでなんとか......「でてこい」って感じで(笑)、がんばって当てはめてますね。

かつてロック畑には、でたらめな英語の鼻歌で歌って、後からそれに近い日本語に入れかえて、つじつまを合わせて歌を作っていった人もいました。一種の遊びなんだけど、遊びに終わらないものに仕上げていく。そういう、鼻歌で歌って、そのあと整えるといったようなことはあるんですか?

トクマル:そうですね、鼻歌のような感じでメロディを入れていくという、仮歌というのはありますね。

トクマルさんにとって歌詞はどのくらい重要なんでしょう? 夢日記からも使われているということですが。

トクマル:うーん、そうですね......。歌詞に関しては難しいところですけど、まずはじめに、夢日記を使い出したというのは、歌詞を書く段階でとくに誰かに伝えたいことがなかったからということがあったりして。夢日記の言葉を使うときでも、具体的な言葉を削除していくようにしていて、たとえば「Pヴァイン」っていう言葉があったとすれば「Pヴァイン」という言葉を使わないで、なにかほかの言葉に置きかえていく。そうすると自然とふわっとした歌詞になってしまって。それを乗せて自分の曲を聴いてみると、その、なにもわからないですよね(笑)。もう、なにを言いたいのかがまったく。自分でさえわからないという状況で、ただなんとなく物語や想像はどんどんふくらんでいくし、その状態をただただ楽しんでいるという感じに近いですね。歌詞が重要かといえば、その意味では重要なんですかね。逆に選び抜かれた言葉というか。

『新古今和歌集』の象徴的な言葉とか、説明されなければよくわからない、あるいはもうすでに意味のわからなくなっている枕詞とか。そういうようなものに近いんでしょうか。後世の人はそんなふうにこの詞を読むかもしれないですね。押韻はどうですか? 意識されているように感じますが。

トクマル:どうなんでしょうね。自然になっちゃうものかもしれないです。

フォークの人がギターでコードを弾きながら曲の構成を考えて、メロディを作っていったというのが一方にあるとすれば、ヒップホップ以降だと思いますが、リズム・トラックやループみたいなものを作ってそれにあわせてあまり起承転結のないメロディやフレーズを乗せていくものが他方にあるのかなと思うんですが、トクマルさんの音楽を聴いているとどちらでもないという感じがするんです。シンプルなメロディとギターがいちばん基本にあるのかなと思ったりはするんですが。

トクマル:いちばん強いメロディというか主旋律を軸にして、それを一本立ててから、そのまわりにたくさんの細かいフレーズをまとわりつかせているというか。ひとつの塔のようにしている感じです。コードで作りはじめたり、リズムで作りはじめたりというのではなくて。リズムから作るにしても、それはメロディアスなリズムであったりとか、わかりやすいものであることが多くて、そこにフレーズや楽器で色づけをして曲を大きくしていくっていう、そういうかたちですかね。

典型的なロックのバンドだと、まずドラムのパターンを決めてベースのパターンを決めてといったふうにフォーマットで曲を作っていくということが多いかと思うんですが、そういう束縛から自由であるように見えますね。

トクマル:作曲のしかたについては、現代音楽の人たちのやり方とかをよく本で読んだりするんですけど、固定の概念にとらわれない作り方がいっぱいあって、そのなかから自分に合うやり方を探していったというのが近いです。僕はなにかすごくアーティスティックなやり方ができたりするわけではなかったので、まずメロディを作って、というわりと基本的な方法をとっています。

ひとりでレコーディングをされているということが、それを助けてもいるんでしょうね。伝統的な意味でのポップスやR&Bに似ている部分もあるんだけれども、なにかちがうなと感じるのは、そういう根本的な曲作りのあり方のちがいなんですね。定形のポップスにおもしろさがあるのはわかるけれども、そこには同時に不自由さもあって、どちらかに開き直っちゃうとつまんなくなるんだけど、両方の可能性を探りながらやってらっしゃる感じがおもしろいです。
 ところで、楽器をたくさん使ってらっしゃいますね。ディスクにいろんな楽器の音源のサンプルが収録されて付属しています。これは何か、わけがあるのですか?

トクマル:子どものころはピアノをやっていて、10代半ばでギターをはじめて、ギターを突き詰めようと思ったんですけど、突き詰めようと思えば思うほど、だんだんほかのこと、ほかの楽器がやりたくなったりもしてきて。それで、いろんな楽器をいいなと思ってちょっとずつ買い集めているうちに、楽器のかたち自体というものにすごくとりつかれてしまって......なんだろう、これは? っていう(笑)。宇宙人とかからしてみれば、なんだか得体の知れないかたちをした、そのモノ自体。今度はそれを集めたいという衝動に駆られるようになってしまって、どんどん買っていくから楽器だらけになって、せっかくなんで録ってみよう、という感じが強かったですね(笑)。

そうは言っても、それぞれの楽器が要求する技術というものがあると思うんですが。すべての楽器に習熟されているわけではないでしょうし、大変だったでしょうね(笑)。

トクマル:そうですね、大変でしたね! もっと時間があれば。もっと楽器を練習してすべてうまくなりたいという気持ちはあるんですけどね......。

基本的にはめずらしいサウンドやかたちであったりというのが、使うきっかけみたいなものになったんですね。で、それが自分の音楽にふさわしいと。あるいは自分で探していた音に近いものが、そこでたまたま見つかったり。

トクマル:ああ、たまたま見つかる、ということはありますね。楽器を好きになったせいか、いろんな音色を探すためにいろいろなCDを買ったりするようにもなりました。「めずらしい楽器」みたいなCD。

自分で新しい楽器を作っちゃったりとか。

トクマル:そこまではしないですね(笑)。

文:北中正和(2012年11月07日)

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Profile

北中正和北中正和/Masakazu Kitanaka
1946年、奈良県生まれ。J-POPからワールド・ミュージックまで幅広く扱う音楽評論家。『世界は音楽でできている』『毎日ワールド・ミュージック』『ギターは日本の歌をどう変えたか―ギターのポピュラー音楽史』『細野晴臣インタ ビュー―THE ENDLESS TALKING』など著書多数。http://homepage3.nifty.com/~wabisabiland/

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