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interview with kuki kodan

interview with kuki kodan

空気を録りましょう

――空気公団(山崎ゆかり)、ロング・インタヴュー

橋元優歩    Photo:TAKAMURADAISUKE   Nov 16,2012 UP

アニメ『青い花』と

いちばん最初にメジャーでデビューしたときの録音で、あたしはギターがほんの3音しか入らないアレンジを考えて、「ここにギターを3音入れたい」って言ったら、「ライヴしたときのことを考えてごらん」って返されたんですよ。ライヴすることを考えるものなんだなってそのとき思いました。


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ところで、話は変わるんですが、2009年にアニメ『青い花』のオープニング・テーマを担当されてますよね。この曲("青い花")はライヴ盤にも入っていますけど、お好きな曲なんですか?

山崎:あれはリクエストが多いっていうのもあって。

そうなんですか。アニメのOPって、もうエモーションを盛りに盛って、疾走感を出しまくってという、かなりはっきりとした感情表現が求められるのかなという印象がありますけれども、あの曲はピアノのシンプルなイントロが逆に強烈なインパクトを持ってますよね。

山崎:依頼をされて、出した案のひとつですね。こんな感じですかね? って。1曲めはちょっと違うかなってことになったんですけど。歌詞はほとんど添削なしでそのままでした。思ったとおりに書いていいですよって言われて書いたものです。

初めにある程度の指定を受けて作られるわけですよね。ストーリーや内容の説明を受けるんですか?

山崎:マンガ本をもらいました。それを見て好きに書いていいですよって。録音も好きにしていいよということでした。

あ、かなり自由なんですね。では依頼されたかたは、もしかするともともと空気公団のイメージでオープニングを考えていらっしゃったのかもしれないですね。

山崎:いつか(空気公団に)お願いしたいと思ってくださってたというお話をききました。

ああ。ちゃんと狙いが定まっていたような、すごく腑に落ちる引き合わせだと思いました。あれは女性同士の恋愛、しかもうら若い女子高生同士の恋愛が描かれた作品で、それが鎌倉の明媚な風景のなかで展開されるじゃないですか。淡い光と繊細な関係性、みたいなモチーフが大切にされてますよね。実際、そういう部分に対するひとつのアンサーとして曲が書かれているんでしょうか。

山崎:思ったとおりにやっただけ、という感じではあって......あんまり、オーダーに対して「わかりました」って応えられるタイプではないので。読んでみて印象的だったコマ、そこからふくらませた話を書こうと。そのときはまだ結末がなかったんですよ。

ああ、いちばん最初ですもんね。ちなみに印象的だったコマってどんな部分だったんですか?

山崎:女の人の横顔で、うしろに、その人の気持ちを表す吹き出しみたいなのがある......まだそれが言葉になっていない、そういうコマですね。言葉にしてないんだけど、なんだかわかるというか、奥行があるというか。そういうのが印象的だったかな......。

世間一般としてストレートな恋愛ではないわけなんですが、そういうテーマ性への意識などはありましたか?

山崎:いや、なんの抵抗もなかったですけどね。

先ほども触れた、山崎さんの歌詞のなかの「ふたり」問題もそうなんですけど、山崎さんの「ふたり」とか「あなた」というのは、恋愛関係があるようでいて、ベタな恋愛とか相聞歌に回収されないような種類のものだと感じるんですね。なんというか、届きようもない「あなた」というか。どこかで性別も年齢も関係ないような点に行き着く「あなた」というか......。2人称をどんなふうに使っていらっしゃるんですか?

山崎:見えてるものだけが正確なものじゃないから......人のなかにもう一個あるわけで。なんというか、心みたいなものが。だから「あなた」とか「きみ」とか言ってるけど、目の前に現れてる人っていうよりは、もうちょっともやもやした記憶のなかの人のことだったりするかもしれないです。これから出会う人とか。

つねに微妙な関係性に焦点があって、『青い花』の音楽を依頼されたかたも、山崎さんの音や詞のそういう部分を必要とされたんじゃないでしょうか。

山崎:さっき言ったことと重なりますけど、ヴォーカルがナレーションみたいだったらいいですね。男女でも、何でも、物語が繰り広げられているのを隙間からのぞいて、その様子を書いてるってふうにしてるんです。だから「あなた」とか「きみ」とか「ぼく」とかがちょっと遠く感じるのかもしれない。でも、それを見つつ、そのなかに入っていく自分という視点もある。あんまり深く考えてないかもしれない(笑)。

あまり激しい感情表現をされませんよね。「嫌い」とか「憎い」とか、どぎつくて直接的な表現を避けながら作っておられるのかなというふうにも見えます。

山崎:言葉が簡単だと、安いというか。直接的な言葉......たとえば「嫌い」って言うときの「嫌い」の範囲ってすごく大きい気がしませんか。言葉だけで何でも完結させる必要はないし、音楽だけで何かを理解させなくてもいいかなあとは思います。音楽と言葉が同時に鳴って、言葉の消えかける瞬間、和音、そんなところからいろいろなものを感じとってもらえるはずだから。みんなそこに潜んでいるものをおのおの見つけて、ああこれが空気公団かって思ってくれているという感じがしてますね。なんか空気公団のお客さんって、ひとりで聴いてくださっているかたが多いようなんです。

ああー。

山崎:みんなで聴いてほしいんですけど(笑)。

(一同笑)

いや、わかりますよ。それ重要な観察じゃないでしょうか。だから......その音楽が自分との間で成立してほしい、1:1で向かい合いたいという感じになる構造を持ってるってことかもしれないですね。あんまり人と聴くものじゃないかも。

山崎ゆかりとラヴ・ソング

言葉が簡単だと、安いというか。直接的な言葉......たとえば「嫌い」って言うときの「嫌い」の範囲ってすごく大きい気がしませんか。言葉だけで何でも完結させる必要はないし、音楽だけで何かを理解させなくてもいいかなあとは思います。

ちなみに、せっかくなので恋愛とかラヴ・ソングについておうかがいしたいんですが、音楽を作る上で恋愛というテーマを意識したことはありますか?

山崎:うーん、ないかな......。むしろ意識してできるようになりたいですよね。

でもほとんどラヴ・ソングに聴こえるって話もあると思うんですよ。

山崎:その相手の人がひたすら好きっていうよりは、その人を活力にしてるというか、その人がいるおかげで自分が生きていけるんだというような......結局、自分で完結してる。その人が死んじゃったらどうしようとか、そういうラヴ・ソングじゃないんですよね。誰かがいて自分が生きているという、そういう感じかもしれない。

「きみ」もたくさん出てきます。

山崎:まず、「ぼく」が主人公の曲が多いんですよね。ヴォーカルが女の人で、曲中で「わたし」って言ってたら、ズレがないというか。そこにズレが欲しいですね。歌ってる人が曲のなかの一人称と同一人物じゃなければ、聴いている人もそこに入っていけるじゃないですか。それで「ぼく」が歌うとなると、相手は「きみ」になるっていうことなんです。

ああー。べつに少年に仮託してるってわけじゃないんですね。

山崎:聴いてる人がもっと自由になったらいい。

主体がつねに歌い手とイコールじゃないっていうのは、ロックとかポップスのなかでは異端的ですよね。「I(アイ)」を中心にして表現をする、歌う言葉がすなわちその人の揺るぎない実存を表す、みたいな定式があるわけじゃないですか。そこを避けていくのはなぜなんですか? 

山崎:音楽ってもっと自由だったらいいのにって思ってたことですかね。バンって言い当てられちゃって、考える隙がないというのはもったいないって。

それが一種、引いたカメラみたいな構図を引き出すんですかね?

山崎:空気公団の音楽って、毎日のなかになんとなく流れてて、ふと気づいたらそこにある、みたいになればいいと思ってたんですよ。真正面から流れてるというよりは。ひとりのときにだけ流れていることがわかって、背中をポンと押すようなものであればいいなっていう。

むき出しの主語で実体験を書いたことはないですか?

山崎:嘘は書いてないですね。誰かの話を聞くのが好きで、その人の話してる表情が強く印象に残るし、そういう風景を写真で撮っている感じです。言葉で「これだ」ってひと言で表現してしまうと、みんな同じものしか見えなくなる。ズレてズレてズレて、空気公団というものができあがっているんじゃないかと思います。

なるほどなあ。空気公団とズレ......。"日寂"って曲は、詞がアナグラムみたいになっていますよね。ええと、「るいへくおの/ろここてせよに(/もととひにかず/しはみなんばざ/とつづく)」......

山崎:ああ、それは後ろから読んだだけなんですよ。後ろからよむとちゃんと歌詞になってるんです。リハーサルのときに違う歌詞を逆さにして歌ってたら、「それでいいんじゃない?」って感じになって。
 べつに、ふだんから歌詞がどう読まれてもいいって思ってるわけじゃないんですけど、そういうズレってすごくいいもので、しかもみんなが空気公団になれる。その音楽に入れる。それに、それぞれの思う空気公団の音楽もみんな違っていたりして、それがいいと思うんです。

これ、ニコ動(ニコニコ動画)だったか、逆回転させたものが上がってましたよ。

山崎:ええー、すごい(笑)。

楽しいですよね。ズラす人がいたら戻す人がいて、ちゃんと戻るわけじゃない......っていうかむしろもっとズレてるんだけど、そのときちょっとだけ世界の厚みは増している、みたいな。

山崎:いいんじゃないですか。かっこいいと思いますよ!

ズラしという仕掛けがあったからこそ、思いがけないコミュニケーションが生まれて、思いがけない作品の表情をえぐり出したというか。

山崎:中心はあるんですよ。どう読まれてもいい、どう思われてもどうズレていってもおもしろいんじゃないかって思う反面、やっぱり自分たちのなかに中心はあるわけなんです。それを明かさないというだけで。

詞ではなくてヴォーカルのほうはどうですか? 山崎さんの歌い方にも、空間にズレを生むようなものを感じます。

山崎:ほんとですか?

それこそ"青い花"の「きみがいて」の「て」とか。極端な話、その「て」の歌い方があるから、「あ、ここに出てくるきみって量産的なラヴ・ソングのきみじゃないんだな」みたいに感じるというか。「きみ」のニュアンスとかイメージも多層的になるんですよね。

山崎:歌詞のなかにもっと入っていってもらうためには、ヴォーカルにクセがないほうがいいというか、そこは気にしてます。登場人物を歌うためっていうよりは、景色を見せるために、って思ってますね。ライヴでも真ん中に行かないんですよね。いつも端にいるんです。空気公団を「町」だと考えると、ヴォーカルが中央にいる必要はないかなと。

取材:橋元優歩(2012年11月16日)

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