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Interviews

interview with Derrick May

interview with Derrick May

語り継がれるもの

──デリック・メイ、インタヴュー

取材:野田 努    通訳:渡辺 亮  写真:小原泰広   Nov 29,2012 UP

 久しぶりだった。女子高生が踊っているような、10代が主役の若者文化の渦中にいたのは。その翌日この原稿を書いている。それで僕は、彼女たちにデリック・メイを紹介するとしたら、どう説明すればいいのだろうか......と考えている。
 デトロイト・テクノとは、テクノにとっての、ロックにおけるブルースのようなモノと言って通じるのだろうか。立ち帰る場所であり、一種のルーツだと。君たちがもし将来テクノを好きになったとしたら、いちどは訪れる場所だと。デリック・メイはそのルーツにおいて、3本の指に数えられる重要人物で、言葉がないゆえにカヴァーということのあまりないテクノ・ミュージックにおいては珍しく複数の人にカヴァーされている、当時もっとも多くの人に幸せを感じさせた曲"ストリングス・オブ・ライフ"の作者だと。
 世界でもっとも影響力のあったイギリスの『NME』というロック・メディアが、全盛期にもっとも肩入れしていたDJという説明もできる(その当時のデリック・メイの傍若無人ぶりと反抗を知れば、彼もまたロックンロールのひとりだということがわかってもらえるだろう)。
 実話としてこれもある。ノッティングガムからロンドンにやって来たふたりの青年のうちのひとりがマンチェスターのライヴハウスでストーン・ローゼズを発見して、もうひとりは1988年にデトロイト・テクノの記事を書いたと。1988年のその記事と同時に発売されたデトロイト・テクノのコンピレーションが、国際舞台で初めて「テクノ」という言葉が使われたときなのだと。そして、翌年にはデペッシュ・モードがそのゲットーな街を斜めに走るグラショット・アヴェニュー沿いの、デリック・メイのレーベル(そして当時は彼の住居でもあった)〈トランスマット〉を訪れている。

E王
V.A.(Compiled by DERRICK MAY) - MS00 / BEYOND THE DANCE ~ TRANSMAT 4
ラストラム

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 『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』は、デリック・メイと〈トランスマット〉にとって4枚目のレーベル・コンピレーションだ。デリック・メイの実質的な制作活動は、80年代で終わっている。自身の曲に関して言えば、90年代以降は未発表曲しか出していない。彼には完成間近だったアルバムがあったが、そのリリースは見送られ、結局、当時録音された曲はこの20年のあいだ、前触れなく、1曲ずつ、地味~に発表されている。『ビヨンド・ザ・ダンス』にも新しい"未発表"がある。パズルのワンピースだ。
 もちろん『ビヨンド・ザ・ダンス』は、未発表曲のために発売されるわけではない。CDにして2枚組、全23曲には、〈トランスマット〉の眩しい歴史が編集されている。  ブックレットには、懐かしい写真もたくさんある。カール・クレイグ、ロラン・ガルニエ、ケニー・ラーキン、ステイシー・プレンといったベテラン勢から、トニー・ドレイクやマイクロワールドといったマニアにはお馴染みの名曲、そして、地味~に発表されている〈トランスマット〉の新人までが並んでいる。なにせ10年ぶりのレーベル・コンピレーションなので、選曲にもパッケージングにも気持ちが込められている。当然、良いアルバムだ。
 僕にはこの機会に、突っ込んで訊いておきたい話があった。11月末、代官山のエアーのレストランでデリック・メイと待ち合わせた。

この男は、若くて、怒りに満ちていて、革命を起こしたくてうずうずしている。しかしこの男は、レコード・ビジネスに疲れてぐったりしている。DJをしながら世界を回って、女の子とセックスしてダンスして、たまに東京にも住んでいる。このふたりはまったくの別人だ。

まずアートワークがすごく良いね。ブックレットには〈トランスマット〉レーベルの歴史がわかるように、古い写真、関わった人たちの写真がコラージュされている。歴史を見せようという意図が伝わってくるよ。

デリック:歴史だけじゃなくて、これからのはじまりの〈トランスマット〉も出したかったんだよ。

今回の『ビヨンド・ザ・ダンス──トランスマット4』を出すに当たって、いくつか僕のなかで「おや」と思ったことがあって、そのひとつが、デリックが25年以上にもわたるレーベルの歴史を初めて振り返ったということなんですよね。

デリック:そうだね。

たしかに過去には、1992年の『レリックス』のような、80年代のベスト盤みたいなコンピレーションはありました。でも、あれは、あくまでリズム・イズ・リズム中心の内容でした。今回のように、カール・クレイグの"クラックダウン"(1990)からケニー・ラーキンの"ウォー・オブ・ザ・ワールド"(1992)、そしてロラン・ガルニエ(ルドヴィック・ナヴァールやシャズ)の"アシッド・エッフェル"(1993)とか、〈トランスマット〉というレーベルの歴史を綴っているのは、今回が初めてなんですよね。

デリック:ああ、そうだね。ただし、今回のコンセプトは忘れられているものを選んだんではない。いま聴き返されるべきものを選んだ。いまの時代でも古くなっていないもの。たとえばジョン・アーノルドの"スパークル"(2000)、この曲は当時も売れたけど、早すぎたんじゃないかと思っていた。いまこそ、あのドラム・パターンは聴かれるべきだってね。

最近はまた、シカゴ・ハウスやデトロイト・テクノへの回帰みたいなことが起きているので、良いタイミングではありますよね。世界的にダンス・ブームだし。

デリック:もちろん。逆に言えば、今回"ヌード・フォト"や"ストリングス・オブ・ライフ"のような曲を入れなかったのは、知られていない曲に光を当てたかったというのもある。これからの〈トランスマット〉をよくするものじゃないかと。俺は過去に生きているわけじゃない。「いま」を生きている。その視点で選んだ。そして、こうなった。

なるほど。もうひとつ......、まあ、個人的には最大の興味は、デリックの未発表曲が入っていたことなんですよね。

デリック:(日本語で)うっす!

はははは。

デリック:ああ、"ハンド・オーヴァー・ハンド"ね。

あれ、良かったよ。

デリック:(日本語で)ありがとございます。

俺は好きだね。

デリック:そりゃあ、良かった。本当に。入れないほうが良いんじゃないとも思った。ものすごく考えたよ。

古い曲だからね。

デリック:最初は2~3曲入れようかなと思った。でも、気が変わった。あまりにも多くの才能が〈トランスマット〉にあることを再発見したから、できる限り、たくさんの人のたくさんの曲を入れたいと思った。本当に良い才能が揃っているよ。彼らの曲への注目が削がれるようなことはしたくなかった。それで"ハンド・オーヴァー・ハンド"だけを残した。
 この曲は、もともとは15分の曲なんだよ。このアルバムのために8分にエディットしたけど、フル・ヴァージョンは12インチで発表するよ。

それは楽しみ。

デリック:どう思った?

デリックらしい、メランコリックで美しい曲だよね。あのー、1993年に『ヴァーチュアル・セックス』というコンピレーション盤が出たじゃない?

デリック:(日本語で)うっす!

あのコンピで、初めて"アイコン"を発表したわけだけど、あんな曲が未発表曲であるってことに当時はすごく驚いて。普通「未発表曲」というと、ボツにした曲だったりして、質は落ちるけどマニア向けの曲として価値があったりするものじゃないですか。でも、"アイコン"は、通常言われる未発表というレヴェルじゃなかったでしょ。で、あとからあの曲は幻のファースト・アルバムのために録音した曲のひとつだって知って納得したんだけど。

デリック:ああ、そうだよ。アルバムのために録音した曲は、他にも9曲ある。

取材:野田 努(2012年11月29日)

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