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interview with 5lack

interview with 5lack

震災後

――スラック、超ロング・ロング・インタヴュー

二木 信    写真:小原泰広   Mar 12,2013 UP

オレがラップする「適当」を、気を抜いてとか楽天的にとか、ポジティブに受けとられれば良いですけど、責任のない投げやりな意味として受けとるのは勘違いかなって。

僕が今回インタヴューさせてもらおうと思ったきっかけは、去年の9月28日の〈エル・ ニーニョ〉のスラックくんのパフォーマンスに感動したからだったんです。PSGのライヴでしたね。

スラック:はいはいはい、あの日、やりましたね。

これまで感じたことのない鬼気迫るオーラを感じて。

スラック:オレがですか?

うん。「適当」っていう言葉は当初は日本のラップ・シーンに対する牽制球みたいな脱力の言葉だったと思うんですね。もう少し気を抜いてリラックスしてやろうよ、みたいな。

スラック:はいはいはい。

それが、より広くに訴えかける言葉になってたな、と思って。

スラック:漢字で書く「適当」の、いちばん適して当たるっていう意味に当てはまっていったというか。要するに、良い塩梅ということです。だから、いいかげんっていう意味の適当じゃなくて、ほんとの適当になった。まあ、でも、最初からそういう意味だったと思うんですけど、時代に合わせるといまみたいな意味になっちゃうんですかね。ちょっと前だったら、もうちょっとゆるくて良いんじゃんみたいな意味だったと思う。

自分でも言葉のニュアンスが変わった実感はあるんですか?

スラック:オレがラップする「適当」を、気を抜いてとか楽天的にとか、ポジティブに受けとられれば良いですけど、責任のない投げやりな意味として受けとるのは勘違いかなって。

なるほど。

スラック:あの日のライヴは良かったっすね。

自分としても良いライヴだった?

スラック:そうそうそう。

どこらへんが?

スラック:楽しみまくりました。アガり過ぎて、終わってからも意味わかんなかった。

さらに言うと、スラックくんにとっても東日本大震災はかなりインパクトがあったのかなって思いましたね。スラックくんのライヴを震災後も東京で何度か観てそう感じたし、『この島の上で』のようなシリアスな作品も出したじゃないですか。実際、東京はシリアスになって、それはますます進行してると思うし、そういう緊迫した状況に対して、あの日のライヴの「適当」って言葉が鋭いツッコミになってるなって感じたんですよ。

スラック:いまやるとたしかに地震前とは違いますね。

野田:『この島の上で』を出すことに迷いはなかったの?

スラック:えっと......

野田:なんて真面目な人間なんだろう、って思ったんだけど。

スラック:そう言われますね。「真面目過ぎだよ」って。でも、自然に出しましたね。かなり混乱はしましたね。

混乱というのは、『この島の上で』を出すことについて? それとも東京で生きていくことに?

スラック:人の目はぜんぜん意識してなかったですね。たまたまああいう曲調の音楽が作りたかっただけだと思うんですよ。そこに自分の精神が自然にリンクした。自分が真面目になったイメージもなかったんですよ。

野田:わりと無我夢中で作っちゃった感じなの?

スラック:そうっすね。でも最近まで、「元々自分が音楽をどういう精神でやってたんだっけ?」ってずっと悩んでたような気がしますね。

野田:ぶっちゃけ、日の丸まで使ってるわけじゃない? 「右翼じゃないか」って受け取り方をされる可能性があるわけじゃない。

スラック:あの頃は、愛国心というか、「自分は日本人だ」みたいな意識が強くなってたんです。

『この島の上で』のラストの"逆境"はストレートに愛国心をラップした曲だよね。

スラック:なんて言ったらいいんですかね。あれはある意味ファッションですね。日本人がいまああいう音楽を残さないでどうするっていう気持ちがあった。歴史的に考えて、日本の音楽のチャンスだった思うんです。

野田:よく言われるように、国粋主義的な愛国心もあれば、土着的な、たとえば二木みたいに定食屋が好きだっていう愛国心もあるわけじゃない?

ナショナリズムとパトリオティズムの違いですよね。

野田:愛国って言葉はそれだけ幅が広い。いまの話を聞くと、あれだけ時代が激しく動いたわけだから、記録を残したかったっていう感じなの?

スラック:うーん、いろんな気持ちが同時にありました。いま上手くまとまりませんけど、全体的に描きたかったのは日本でしたね。

僕はタイトルの付け方が面白いと思ったんですよ。「この国」って付けないで、「この島」と付けたところに批評性を感じた。その言葉の違いは大きいと思う。

スラック:そうっすね。とりあえず、日本人がいまこういうことやってるぜっていうことを主張したかった。だから、音楽のスタイルも日本っぽい音を使いました。

国もそうだけど、震災以降、「東京」もスラックくんの大きなテーマになった気がしました。どうですか?

スラック:そうっすね。いろんな街に行って、東京って形がない街だなって思ったんですよ。

今回のアルバムにも東京に対する愛憎が滲み出ているじゃないですか。東京を客観的に見る視点があるじゃないですか。

野田:でも、"愛しの福岡"って曲もあるよ。

それは東京から離れて作ったからでしょ。

スラック:けっこう東京は嫌いではありますね、いま。

野田:おお。

スラック:嫌いっていうか、他の街に行くと、自分が実は騙されてんじゃないか、みたいに思うんです。

東京に住んでいてそう感じる?

スラック:はい。東京は「パラサイティスティック」ですね。

「パラサイトが理由をつけて徘徊」("早朝の戦士")っていうリリックがありましたね。ここで言うパラサイトってどういうことなの?

スラック:自分で生み出す感じじゃないということですね。

たとえば、誰かに乗っかってお金を儲けるとか。

スラック:そうですね。

もう少し具体的に言うと?

スラック:言い辛いんですけど。

他人をディスらなくてもいいので(笑)。

スラック:そうっすね。多くの人が自分発祥のものじゃないことをやっている気がするんです。

それはたとえば、日本にオリジナリティのある音楽のスタイルが少ないと感じる不満にも通ずる?

スラック:それもそうですし、市場とかを考えても......、うーん、何か落ち着か なくなってきた......

野田さんがいきなりディープな話題に行くからですよ! もうちょっとじっくり話そうと思ってたのに(笑)。

野田:そんなディープかねぇ?

ディープでしょう。

スラック:いや、ぜんぜん大丈夫です。

取材・文:二木信(2013年3月12日)

Profile

二木 信二木 信/Shin Futatsugi
1981年生まれ。音楽ライター。共編著に『素人の乱』、共著に『ゼロ年代の音楽』(共に河出書房新社)など。2013年、ゼロ年代以降の日本のヒップホップ/ラップをドキュメントした単行本『しくじるなよ、ルーディ』を刊行。漢 a.k.a. GAMI著『ヒップホップ・ドリーム』(河出書房新社/2015年)の企画・構成を担当。

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