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interview with Analogfish

interview with Analogfish

俺は忘れない

──下岡晃、インタヴュー

野田 努    写真:小原泰広    Mar 15,2013 UP

あのときで俺がいちばん話したかった論点は、アベノミクスじゃなくて、どうやって幸せになっていくんだってことを考えるってことじゃないの、っていうかさ。アベノミクスっていうのはまた元の状態に戻そうって声高らかに言い出したってことだから。


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"抱きしめて"みたいな曲は、希望に溢れている曲とは思わないんですけど、やけのはらが参加した最後の曲("City of Symphony")なんかは、ちょっと無理してるんじゃないかなと思ってしまったぐらいで(笑)。

下岡:たしかに。でもさっきの「自分たちから絶望を奪うな」じゃないけれど僕も絶望することっていまとても大事な事だと思うんですよ。けど、僕が思う奪われるべきでない絶望ってのは例えば仕組みとか、システムとかそういうものについてであって、生きていくこと自体にじゃないって思うんですよね。このアルバムで僕らが歌った希望はただ生きてくことの個人的な希望で、いまの社会で生きる事への漠然とした不安とかについてだと思う。逆に仕組みとかについてはいままで以上につっこんで表現したつもりですけど。
 "City of Symphony"に関して言えば、ちょうどさっき言っていたみたいに疎開というか、ひとが出て行っちゃう、俺自身もそういうことしたほうがいいのかなって考えてる時期があって。でもあるときに、東京に住み続けようって世のなか的にも気持ちがぐっと戻ってきた瞬間があったんですよ。で、そのタイミングでその勢いをそのまま作ったっていう感じなんですよね。

なるほどね。

下岡:希望に満ちていると言いつつ、"Super Structure"とか、こうやって自分の作った曲見てると――。

前作からの延長は感じるよね。その"Super Structure"の曲中で、曲の場面が転換する部分、「踊る阿呆に見る阿呆」っていうのは何を意味してるんですか?

下岡:自分の好きなようにやろうってことじゃないですか(笑)。

ははははは、でも大事なことだよね。

下岡:あと持つ者と持たざる者じゃないけど、そういう奴らと僕も含めてつい踊らされてしまうひとたちのことです。

その踊らされてしまうひとたちも、べつにいいじゃんって感じなの?

下岡:この「踊らにゃソンソン」は、自分の好きなように踊れよっていうことです。風営法のこととかもあったし、911の後とかすごくよく覚えてるんですけど、あの後にテレビが保険のCMをガンガンやりはじめた感じとか。そういうのにかこつけて固まっていく感じっていうか、ああいうのがすごく気持ち悪いんですよ。

なるほどね。ちなみにこの1曲目の"Super Structure"は、最初のヴァースの、どこに息継ぎがあるんだっていうのもミソですよね(笑)。

下岡:そうですね(笑)、たしかに。上京してすぐのときに金がなくて、けっこう都庁で時間を潰したんですよ。タダで上れるじゃないですか。で、都庁ってスーパーストラクチャー工法っていう構造で作られてて。

へえー。

下岡:そのときに俺それ覚えて。10年以上前だけど、ずっと気になってて。石原さんみたいなひとが、あのてっぺんから見下ろしているイメージっていうか(笑)、なんかこうやってるイメージとか浮かんで。

社会っていうとすごく大きな言葉だけど、具体的に下岡くん個人がとくに問題意識として考えていることは何なんでしょう?

下岡:僕がいま気になってることは倫理とか道徳とかモラルとかって呼ばれる物がこの先どうなっていくんだろう? って思ってる。やっぱりどんどん薄まっていってる気がするから。僕自身もきっと僕の上の世代より希薄だし。
 でも例えば原子爆弾を作れるってなったら原子爆弾が作られてしまうように、きっとクローン技術であるとか永遠の命であるとか、そういうのっていつも興味が倫理観を越えていっちゃうから。なんかそれってどうにもなんないのかなって考えてる。平和とか幸せとかってなんかその先にある気がいまはするから。全部無いほうがおもしろいとか思うときもあるけど。あとはいまの形の資本主義やお金のこと。

そのあたりのことは今回のアルバムではとくに......?

下岡:やっぱり"Super Structure"とか"Watch Out(サーモスタットはいかれてる)"とかだと思う。

"Super Structure"みたいな曲は、歌っててやっぱり気持ちよさっていうのはある? 言いたいことをわーっと言ってるみたいな。

下岡:いやあ(笑)。アップアップしてます。息が続かないっていうか。

いや、気持ちよさそうに聞こえますよ。

下岡:ほんとですか。でもいいリズムのノリがありますけどね。

佐々木健太郎さんが歌詞を書いている"STAR"という曲で「聞こえてくるシュプレヒコールが僕を歩かせようとしたけれど/あの夜僕を閉じこめたのは同じ声だった気がしていた」っていうフレーズがありますよね。これがどういう意味なのか、彼には聞かなかった?

下岡:俺は聞かなかったです。

(笑)なんで? いちばん気になるフレーズじゃない(笑)!

下岡:うん。

受け取り方によっては、デモに対する違和感なのかなっていう(笑)。

下岡:俺はそういう風に取らなかったな。俺は最近の何となく忘れていったり、違うところに焦点を合わせようとしてるような、ぼんやりとした空気とかに対して歌ってると理解してる。とりあえず目先の希望みたいな。それって何となく僕らや、世界をここに導いたものと同じなんじゃない? って。だいたい僕らデモに対してそんなに違和感ないですからね。そうやって自分の意志を表現することは別にちっともおかしいことだと思わない。もっといろんな手段があっていいとは思うけど。

下岡くんはデモには行かないの?

下岡:行かない。行かないっていうか、いまのところ行ってないですね。あ、でも1回行きました。

アメリカではブルース・スプリングスティーンみたいな人が、そういうところにも積極的に参加するよね。アナログフィッシュにはブルース・スプリングスティーン的なところもあると思うし。ああいうさ、社会の矢面に立つ著名なミュージシャンは、日本では坂本龍一ぐらいしかいないと思うんだけど、そういうものに対する共感っていうのはやっぱりあるわけでしょう?

下岡:共感は全然あるし、ブルース・スプリングスティーンも好きなんだけど――。「ちょっとな」って思う部分もなくはない。音楽として最高に好きな音楽じゃないっていうのはあるけど、最高に憧れはしないです。坂本さんは尊敬してるし、すごくカッコいいと思ってるけど、自分がそういうことやるかって言ったら、少し違うとは思う。

スプリングスティーンのちょっと違うかなっていうのはどういうところ?

下岡:うーん......。なんだろうなあ......。少しマッチョな感じがする。そうやってひとの心をひとつにすることは、俺すごいと思うしカッコいいと思うけど、もしかしたらそういう風な束ね方をしたいんじゃないんじゃないかって感じが俺はすごくしてるっていうか。

もうちょっと違う伝え方をしたいっていう。

下岡:そうですね。なんかみんな自由にやってほしいって思いますね。

ところで、さっきラヴ・ソングという話が出たけど、今作はラヴ・ソングに落とし込もうとしているような痕跡がいろんな曲で見受けられるんですけど、それはどうなんですか?

下岡:健太郎に関してはわからないけど、でもこの"Good bye Girlfriend"って曲がほんと俺好きで、秀逸だなと思うけど。でもなんか、ラヴ・ソングを書いたっていう気は俺としてはあんまりないんだよな。たとえば"Isay"にしても――。

えー、これもかなり直球なラヴ・ソングな感じだけど。

下岡:そうですよね。「愛されるより愛せ」って思ったんですよね、ほんとに。

それはパーソナルな出来事なの? それともこれは象徴的な言葉として自分で書いてる?

下岡:あー、どっちなんだろうな。両方あるけど......

キリスト教だったら「隣人を愛せ」って言ったときに寛容さとか、そういうようなことを意味するじゃない?

下岡:そういう意味ではパーソナルな出来事かもしれないけど、なんかI sayってメッセージを歌ってるって意識なんですよね。自分にとってラヴ・ソングってそういうものじゃなくて。
 震災のニュースとか見てたら大事な人のこと考えちゃって。僕は結婚もしてないし子供もいないんですけど。僕もやっぱり愛されたいし、それ自体は否定しないけど、「愛する」があって「愛される」があるんだなって思ったんですよね。その逆じゃなくて。
 コンビニで音楽が流れてるじゃないですか。聴いてたらアイドルが「愛してる」っていう主旨のことを歌ってて、で、アイドルが歌ってる「愛してる」って結局あのひとたちは愛されるためのひとたちだから、「愛してる」って歌ってるけど表現の全体としては「愛して」っていう表現になってるっていうか。だから「愛せ」っていう表現ってそんなにあるのかなって思ったことをいま思い出しました(笑)。

そこが重要だったんだ(笑)。

下岡:いやわかんない。それが重要だったかは(笑)。でも、ラヴ・ソングっぽく聴こえる曲がけっこうあるんだな。自分が書いた曲に関してはラヴ・ソングと思って書いた曲はほとんどないんですけどね。

結果そうなったんだね。

下岡:うん、ないと思う。

取材:野田 努(2013年3月15日)

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