Home > Interviews > interview with Gold Panda - あなたが住んでいる場所の半分
都市のポジティヴなところを描きたかったっていうのがある。都市って、良くないところ、悪いところもあるでしょう。だけど、その反対に良いところもあるから。僕は都市で育ったから、都市からいっぱい影響を受けているんだ。
Gold Panda Half of Where You Live よしもとアール・アンド・シー |
■よくフォー・テットなんかと比較されるじゃない。それって自分ではどう?
パンダ:似ているところはあると思う。
■彼も、ものすごくクラブではないけど、ハンパにクラブっぽいというか。
パンダ:音楽性はまったく別モノだと思っているよ。
■彼のバックボーンには、もっとジャズがあるもんね。
パンダ:それに僕は、自分なりの道を見つけてきているような気がするので。たしかに僕は、以前はフォー・テットにものすごく興味があった。最近では、彼は神様みたいになってしまったけどね。まあそれはそれでクールなことだと思うけど。
■ベルリンのレーベルで〈Pan〉って知ってる?
パンダ:イエー。
■似てない?
パンダ:ミー? ああ、アイドンノー。
■〈Pan〉もエクスペリメンタルだけど、ポップだし。
パンダ:オッケー。
■で、ダンス・ミュージックだけどクラブじゃないじゃない。
パンダ:イエー、ライ。アイシー。言われてみるとわかる。自分じゃそういう風に、外から見ないからね。そして、たしかに僕は〈Pan〉のいくつかの作品は好きだよ。ザッツグッレーベル。
■彼女のお母さんに自分の音楽をなんて紹介する?
パンダ:エレクトロニック・ミュージックをやっています。コンピュータで音楽を作ってます。
■それはどんな種類ですか?
パンダ:アイセイ、ダンス、イエー。
■ハハハハ。
パンダ:実際は違っているけど、年を取った人には説明しにくいので。だから、ダンスって言うことにしている。自分ではそうは思っていないんだけど。
■今回のアルバムを象徴する曲を選ぶとしたら、何になりますかね? "ジャンク・シティII"や"アン・イングリッシュ・ハウス"でしょうか?
パンダ:"ジャンク・シティII"だね。
■その理由は?
パンダ:前のアルバムとはぜんぜん違う。新しいものって感じがする。他にも、"マイ・ファーザー・イン・ホンコン 1961"や"アン・イングリッシュ・ハウス"や"江の島"や"ザ・モースト・リヴァブル・シティ"も気に入っている。自分が作りたかった曲を作れたという意味で、満足している曲だよ。いまは、『ラッキー・シャイナー』を作り終えたときよりもハッピーだよ。自分が気に入っている分、ファンの人がどう思うかはちょっと心配だけど。
■何故?
パンダ:自分でも気に入っているから、それがどこまで受け入れてもらえるか心配なんだよ。だけど、今回のアルバムは人にどう思われようが、かまわない。僕が好きだから。『ラッキー・シャイナー』の評判が良かったから、それとは違った音楽になってしまったし、ちょっとビビっているんだよね。
■『ハーフ・オブ・ホェア・ユー・リヴ』には、とても魅力的なメロディがあるし、リズムだって良いし、大丈夫でしょう。
パンダ:ホント?
■ホント。
パンダ:おー、サンクス!
■『ラッキー・シャイナー』の派手さはないかもしれないけど、『ハーフ・オブ・ホェア・ユー・リヴ』は繰り返し聴くことになるアルバムだよ。
パンダ:『ラッキー・シャイナー』との比較で言うと、新作のほうが、さらにアルバムっぽいと思う。ストーリー性もあるし、すべての曲に共通感覚がある。繋がりがあって、アルバムらしいアルバムだと思うね。
■都市をコンセプトにしようと思ったのはどうしてですか?
パンダ:ずっとツアーだらけで、都市をめぐるってこと以外のことしかしていなかったんで。
■ツアーだらけって、どのぐらいツアーしていたの?
パンダ:1年、毎週末ライヴだった。エレクトロニック・ミュージックがバンドと違うのは、クラブナイトでもライヴができてしまうことだよね。ステージがなくてもブッキングされてるから、毎週末ライヴだった。『ラッキー・シャイナー』以前は、やりたくない仕事をやりながら音楽をやっていたんだけど、『ラッキー・シャイナー』以後は、ホントにそれだけになってしまった......仕事として音楽をやっているからね、いまは。
■毎週末ライヴやっていると発狂したくなる?
パンダ:イエー(笑)。だからこそ、新しい作品を作る必要があったんだ。
■しかし、『ラッキー・シャイナー』1枚で世界を回ったっていうのもすごいよね。
パンダ:イエー。喜ぶべきことなんだろうね。
■DJをやればいいじゃない?
パンダ:DJもやったほうが良いとも思う。他の人の音楽をかけることで成り立つわけだからね。でも......、やらないね、たぶん(笑)。ゴールド・パンダ名義でライヴをやればお金をもらえるけど、DJではいちからのスタートになってしまうから、お金ももらえないんじゃないかな......。ドイツだとDJするのに50ユーロ払わなければならないのって知ってる?
■なにそれ?
パンダ:新しいロウ。
■あー、それ聞いた。それはクラブが払うんじゃないの?
パンダ:だったんだけど、いまの新しい法律では、DJが払うんだ。しかもハードドライヴもチェックされて、そのなかに何曲入っているかまでチェックされて。
■ひでーな。
パンダ:もしかしたら100万曲入っているかもしれないでしょ。そこまで調べるんだよ。現実離れしている。反対派の人も多いよ。
■"江ノ島"という曲が入ったのは?
パンダ:最近、リョウ君(注:仲良しの日本人)と一緒に行ったんだよね。
■リョウ君の実家には泊まった?
パンダ:昨日、一泊した(笑)。
■リョウ君のお母さんに「ただいまー」って(笑)。
パンダ:タダイマー(笑)。
■ハハハハ。
パンダ:江ノ島は前から好きだったけど、最近行ったときがホントに楽しかった。写真もいっぱい撮った。
■ツアーで都市ばかりまわっていたから都市がコンセプトになったという話だけど、さらに突っ込むと、最終的にアルバムは都市の何を描いているの?
パンダ:都市のポジティヴなところを描きたかったっていうのがある。都市って、良くないところ、悪いところもあるでしょう。だけど、その反対に良いところもあるから。僕は都市で育ったから、都市からいっぱい影響を受けているんだ。
■エセックス・ボーイだからね。
パンダ:そうそう(笑)。"アン・イングリッシュ・ハウス"っていう曲は、UKのことを歌っているんじゃないんだよね。これは、ベルリンにある僕の家のことなんだ。僕はドイツに住んでいるんだけど、家のなかはイギリスなんだ。つねに紅茶を飲んでいるしね。
■"ジャンク・シティ"はどこの街?
パンダ:その曲だけが架空の都市だね。昔の、90年代の、僕が空想するトーキョーだよ。快楽的で、ちょっと頽廃した都市だ。ハハハハ。
■そうだよね、90年代の渋谷なんか、マジックマシュルームがセンター街の入口で売られていたくらいフリーキーだったからね。
パンダ:あー、イエー。
■クレイジーだったね(笑)。
パンダ:僕はその時代のトーキョーを見れなかったから、空想したんだ。
■アートワークが面白いよね。結晶みたいなデザインでしょ。
パンダ:幾何学的だけど、実は都市のデザインなんだ。さらにヴァイナルはもっと凝ったアートワークだよ。コンクリートの灰色で、いろいろな都市の場面が見えるようになっているんだよ。
■『ハーフ・オブ・ホェア・ユー・リヴ(あなたが生きている場所の半分)』というタイトルの意味は?
パンダ:長く温めていたタイトルなんだ。さっきも言ったように、都市の全体ではなく、都市の良いところに焦点を当てているアルバムだし。街の真実を見極めようってアルバムじゃないんだ。
■何で?
パンダ:僕は、街の良いところしか見ずに、そして街を去って空港に行く、来る日も来る日も(笑)。
■いちばん良い思いをした街は?
パンダ:イチバンイイオモイ......シアトル!
■意外な。
パンダ:あと、ポートランド。
■へー。
パンダ:レコード店が25軒くらいあるんだよ。
■それは良いね。貧乏なミュージシャンばっか住んでいるんでしょ?
パンダ:イエー、イッツファニー。僕は、自分をものすごくイギリス人だと思っているから、アメリカなんか大嫌いで、行ったら絶対に嫌な思いをするんだろうなと思っていたんだ。で、実際に行ったら、大好きになった。サイコウデシタ(笑)。
取材:野田 努(2013年5月15日)
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