Home > Interviews > interview with Soggy Cheerios - 生まれ直すロック
(ヤイリは)中学生のころから弾いているから僕のなかでヴィンテージになっているんですよ(笑)。40年くらい経っているから。はじめて買ったギターで中学時代に戻ってみようと気持ちもあったんだけど――(鈴木)
■音がすごくいいですよね。ここしばらくローファイな音楽がもてはやされていましたが、そういった音楽ともちがうローファイさがあっていいと思いました。
鈴木:季節もね、楽器がちょうど乾いている時期で。
直枝:いい時期だったね。ふたりでザ・バンドのセカンドみたいな、あのべードラの軋み、床鳴り感がほしいというのははじめからいっていたね。それが音楽だから。
鈴木:直枝くんはいつも革靴履いていて、ギブソン弾くときにものすごくタップするわけ。それがすごい入ってますよ。1曲目からタップの音が。
■弦のグリスの音とか、楽音以外の音がふんだんに入っていますよね。
鈴木:別に示し合わせたわけじゃなくて、直枝くんはギブソンのJ-50、いわゆる名器をもってきたんですけど、僕はヤイリの井上陽水モデルっていうウェットなヤツをもってきたんですよ。
■なぜヤイリだったんですか?
鈴木:中学生のころから弾いているから僕のなかでヴィンテージになっているんですよ(笑)。40年くらい経っているから。はじめて買ったギターで中学時代に戻ってみようと気持ちもあったんだけど――
直枝:コンセプチュアルだね(笑)。
鈴木:後づけだよ(笑)。直枝くんはアコギをエレキのように弾いたり、ベースをエレキのように弾くじゃない。
■直枝さんは乱暴ですからね。それが恰好いいんだけど。
直枝:俺、乱暴なの(笑)?
■ワイルドということです(笑)。
鈴木:僕は直枝くんはもっとエレキを弾くのかなと思ったんだけど、アンプつなげないといけないし、アコギだったらパッとできるでしょう。
■"君がいない"のイントロの最後の音の減衰の仕方が奇妙だったんですが、あれは何か操作しているんですか?
鈴木:あれはトゥールズ上でエディット・リサイジングしているから。そんなところまでよく聴いてますね。
直枝:俺がいないところでそういうことやっているのよ。それがショックなのよ。「この男!」みたいな(笑)。
鈴木:ちょっと早くしたりもしていますよ。もちろんキーはいっしょですが。直枝くんがいると何かいわれるから。
直枝:そりゃいうよ(笑)! 俺はもういいっぱなしだから。「なんできみひとりで決める」というと落ち込むんだよ(笑)。
鈴木:またこの話する? 僕は"知らない町"をつくっている途中で落ち込んだんですよ。
直枝:絶対こっちのほうがいいよっていうアレンジがあったんですよ。
鈴木:曲がどんどんペンタングルみたいになっていくんですよ。それは僕の最初のイメージとはちがった。それを理解するのに一週間ほどかかったんですけど、その間落ちちゃった。自分はなんて無力なんだと思った。
直枝:自意識強すぎ(笑)。
鈴木:そうかもしれないけど、直枝くんは歌だって上手いし、直枝くんは僕の歌も上手いって褒めてくれたけど――
直枝:ドノヴァンみたいな声だよね。
鈴木:でも自分では「いやー」と思うんだよ。で、すごいオケができちゃって、僕のなかにはないメタファーだからそれを受け入れるのに時間がかかったんですよ。そのとき「惣一朗くん、これはバンドなんだからさ」っていわれてハッとしたの。それで「友だちになってください」ってメールを、こういうふうにいっちゃうとギャグみたいだけど、そのときは真剣に書いたんですよ。
直枝:ほんとに。そういったメールが来たんだよ。
鈴木:バンドつくったつもりだったけど、途中でバンドになった、というかね。
直枝:俺は最初からそのつもりだったんだけど、だからいいたいこともいうし、それがお互いやっている意味があるということだから。
鈴木:でもいい方がキツイの。僕がヘラヘラしていると、「何ヘラヘラしてんだよ」って。50過ぎてそういわれると辛いですよ(笑)。あと譜面をろくすっぽ書いてなかったら、「何でちゃんと譜面書かないんだよ」っていうんだよ。たしかにその通りなんだけど、もうちょっといい方ってもんが、ひととしてあるじゃないですか、ねえ? 横尾さん! みたいなね(笑)。
■なんで横尾さんが引き合いに出されるんですか(笑)。
鈴木:そんなことで帰宅して落ち込んでいたりすると、朝4時くらいにメールが来るわけ。「惣一朗くん、ごめんなさい」って。「ごめんなさい」って、なんてこのひとまたスパンというんだ。その素直さ。これは本気で僕に接してくれるんだろうし、そんなふうにメールをくれるなら、やっていけるなって、そこではじめてバンドになったっていうか。
取材:松村正人(2013年7月19日)