Home > Interviews > interview with Co La - サックスよりもドライヤーなんだ
坂本九の歌に関しては、じつはそれが日本の歌だとまったく知らなくて、4 P.M(For Positive Music)のやつをいちばんよく聴いていたんだ。
■同時代で好きだったり気になっているアーティストはいますか?
パピッチ:ニッキー・ミナージュ。
■"スキヤキ・トゥ・ダイ・フォー(Sukiyaki To Die For)"には坂本九の"スキヤキ(上を向いて歩こう)"を思わせるフレーズが登場しますが、"スキヤキ"から感じられる日本人像と実際いま目の当たりにする日本人とのあいだに相違を感じますか?
パピッチ:坂本九の歌に関しては、歴史も世界的な人気もあって、いくつものカヴァーやヴァージョンが存在しているよね。そういったことに興味があるよ。じつはそれが日本の歌だとまったく知らなくて、4 P.M(For Positive Music)のやつをいちばんよく聴いていたんだ。基本的にはR&Bヴァージョンなんだけど、バーバーショップ(Barbershop)のハーモニーもあるし。2年くらい前のある日、家でケニー・ボール(Kenny Ball)のヴァージョンを聴いていてね。ビッグ・バンドのインストなんだけど。そしたらいっしょにいたダスティン・ウォン(Dustin Wong)が曲の歴史を教えてくれたんだ。彼はもちろんオリジナルをよく知っていた。その時点では重要なサンプルだったし、自身がクリエイトしようとする複雑な物語を作るという点で、的確な参考資料のように感じていた。
■ボルチモアであなたが働いていたというギャラリーや、現在のボルチモアのアート・音楽シーンについて教えてください。
パピッチ:ボルチモアには知的で前衛的な、いいオーディエンスがいる。ここでのパーティーはシュールだと感じるよ。ボルチモアにはいわゆる音楽の「マーケット」はなく、経済的にも乏しい。そのおかげもあって、音楽を前進させるような空気があるんだ。そしてルールがまったくない。
■フランク・ザッパやデヴィッド・バーンを輩出した土地でもありますが、そもそも実験的なムードや気質があるのでしょうか?
パピッチ:人によってはボルチモアをそう捉えているけど、実際はわからないな。もうここに住んで10年、年が経つにつれて好きになっていくね。ここにいる人はおもしろいよ。建築もユニークだし。貧乏な都市だけどそういった空気感が好きであれば最高の場所だと思う。
■少し前ですと、ボルチモアというと〈スメル(smell)〉周辺の動きが気になりましたし、エイヴ・ヴィゴダ(Abe Vigoda)、ミカ・ミコ(Mika Miko)、ダン・ディーコン(Dan Deacon)、ジャパンサー(Japanther)などエクスペリメンタルでアーティなギター・バンドに存在感があったと思います。エクスタティック・サンシャイン(Ecstatic Sunshine)もそうした素晴らしいユニットのひとつだと思っていますが、ムーヴメントとしては一旦終息した感じなのでしょうか? それとも後続も出てきていますか?
パピッチ:その時代は3~4年前に終息したよ。破壊ではなく拡散した終わり方だったと思う。自分たちが出していた音楽はそのときその場所で鳴らされるものでしかなかったから。ウェアハウスなスタイルのパーティーで、PAもないしステージもない。規模は小さいけどダイレクトに反響のある音楽だった。そういったバンドにはもうあまり興味がないから、いまどうなっているかはなんとも言えないな。
取材:橋元優歩(2013年7月31日)