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interview with Alex Barck (Jazzanova)

interview with Alex Barck (Jazzanova)

ソウル・ジャズ・ハウスへと

──アレックス・バーク、インタヴュー

小川充    通訳:F君   Nov 08,2013 UP

今回のアルバムは初期のジャザノヴァに近い、DJ的なプロデュース・ワークを重視した曲作りなんだ。いろいろリミックスを手掛けたりとか、最初のアルバムの頃のね。ジャザノヴァはライヴ・サウンドへ変化していくにつれて、よりクラシックなソング・ライティングに基づく明確な骨組みの音楽へと曲調も変化していった。


Alex Barck
Reunion

Sonar Kollektiv/Pヴァイン

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レユニオンから受けた着想という話でいうと、“Doubter”“Reset”“Spinning Around”といった曲からはバレアリックなムードが漂っているのですが、それはレユニオンでのレイドバックした生活から育まれたものと言えそうですか?

AB:バレアリックという言葉を出すなら、それはレユニオンでの生活以前から自分のなかに存在してきたと思う。言うなれば根源的なバレアリックの感触に、いつも大きなインスピレーションを得ているんだ。意図的にそれを嗜好しているわけではなく、純粋に内面から出てくるものなんだ。僕のDJを知っている人は、そういった音楽をかけるのが好きだと理解してくれるんじゃないかな。子供の頃の僕はポップ・ミュージックをよく聴いてたけど、改めて自分なりのバレアリックということを分析するなら、例えば当時好きだったシャーデーのような1980年代のポップ・ミュージックに繋がりがあるんじゃないだろうか。だから、それは直接的な影響というより潜在的なもので、ポップ・ミュージックに囲まれて育った僕の子供時代の環境から自然と湧き出し、音楽を作る時に表面に浮かんでくるんだ。バレアリックというものを僕は意識しているわけではなく、それは言うなればポップ・ミュージックなんだけど、ポップ・ミュージックもバレアリックに通じているんじゃないかな。曲作りにおいてもバレアリックなものを作ろうとしているわけじゃない。敢えて言うなら、コーラスがあって、ヴァースがあって、フックが魅力的という古典的な曲作りが好きなのかも知れないね。それはロック・ポップ的な音楽、例えば昔スミスなどを聴いていた時から僕の中に生まれたんじゃないだろうか。

バレアリックという言葉を出したのは、プロマー&バークでアル・ディ・メオラの「Pictures Of The Sea (Love Theme)」のカヴァーをしていて、そうした部分からも繋がるところを感じたので訊いたわけです。

AB:僕はドイツの海沿いの街で生まれたので、海がずっと心象風景になっているんだ。海を見ながら何時間も座っているのが好きだよ。いつもその風景に影響を受けているし、頭のなかにそのイメージがあるんだ。だから、アル・ディ・メオラの“Pictures Of The Sea”が僕の好きな曲というのは、わかりやすいだろ(笑)。
 でも、これはあまりにも美しい曲だけどクラブでかけられるタイプのナンバーじゃないから、いつかそのクラブ・ヴァージョンを作りたいと考えていたんだ。いいカヴァーができればとね。ジャザノヴァの最初のアルバムにも“Sub-Atlantic”という素晴らしいインタールードがあるけど、これも海の風景から来ている。そういった具合に海のサウンドとイメージが僕の頭のなかにいつもあるんだ。僕の家族はホリデイにフランスの海沿いの別荘に行くけど、できればそこにずっといたいくらいだよ(笑)。ベルリンには海がないからね、湖はたくさんあるけれど。

今回のアルバムで、ジャザノヴァやプロマー&バークの時と違いを意識した点はありますか?プロマー&バークとは繋がりはあるかもしれないが、最近のジャザノヴァのサウンドは違うと思うのですが。

AB:今回のアルバムは初期のジャザノヴァに近い、DJ的なプロデュース・ワークを重視した曲作りなんだ。いろいろリミックスを手掛けたりとか、最初のアルバムの頃のね。ジャザノヴァはライヴ・サウンドへ変化していくにつれて、よりクラシックなソング・ライティングに基づく明確な骨組みの音楽へと曲調も変化していった。ただ、僕はDJとしてキャリアをスタートしたから、DJ的な手法による音楽を求める部分もあり、それがプロマー&バークに繋がったのかもしれない。で、今回のアルバムにはそうしたDJ的な要素もあるし、一方で単体の曲として聴けるものでもある。楽曲ごとを重視しながらクラブでもかけられるという、ちょうど中間のものなんだ。

プロマー&バークのアルバム制作時に、クリスチャン・プロマーからエイブルトン・ライヴなどの機材などの使い方を教えてもらったそうですね。今回は独りで制作して、それらの使い方は上達しましたか?

AB:音楽的な面ではジャザノヴァのときにもチームからいろいろ学んできて、その次に実務作業や技術面でクリスチャンからより多くのことを学んできた。教えてもらうというより、いつも彼が作業する隣りに座って、それを見ながらいろいろ質問していたね。彼は本当に短時間で制作できるプロデューサーで、アイデアがあればパッと作ってしまう。プロマー&バークのアルバムは10日で作ってしまったんだ。彼からは多くのことを学んだよ。コンプレッションやシグナル・チェインニングといった複雑な技術についてもね。でも、まだ僕は完璧なプロデューサーではないので、このアルバムの制作中にも、ときどき彼に電話して質問しなければならなかったよ(笑)。

それでは、アルバムを作るごとにだんだんと上達していますね。

AB:そう、制作しながら学んでいるんだ。15年もの間エンジニアと一緒に働きながら、コンプレッサーがこんな調子なら、サウンドはこんな感じなる、という風に試行錯誤しながら学んできた。でも、そうした学習の成果に満足するかどうかは、結局のところはとても個人的な感覚によるんだ。今回のアルバムに関して、自分では80%の完成度だと思っている。僕にとってこのプロダクションはパーフェクトなものとならなくても、ある程度形が整っていればOKという感じなんだ。ヘッドフォンで作ったということを考えれば上出来かもしれない。もし、これと同じアイデアで同じアルバムを、誰かビッグなプロデューサーと組んで作れていたら、より良いものになったかもしれない。独りで全部を手掛けると、外からのインプットがないし、頭のなかがグチャグチャに混乱することもあるんだ。とくにミックス・ダウンのときが大変で、神経を消耗する作業だよ。今回も最終ミックス・ダウンでは1カ月の間寝られな日が続いて、ずっと気分が悪かったよ(笑)。1年でスパッと完成させたかったから、何とかやり遂げたけどね。

プロマー&バークでは自分でも歌っていましたが、今回はたくさんのヴォーカリストが参加しています。どうして自分で歌わなかったのですか?

AB:歌いたくなかったんだ(笑)。プロマー&バークのときは特別で、そもそも他のシンガーに歌ってもらうためのガイドラインとして僕が歌ったんだ。でも、それを聴いて「いや、こっちの方がいいよ」、「君が歌うなんてクールだよ」と言う人がいた。一方、いい意見だけじゃなくて、ある人たちは「ダメだ」と言った。クリスチャンと僕は、むしろそうした意見の違いがあった方が、結果的にアルバムとして良いものになるんじゃないかなと思って、それで自分の声を残したんだ。でも、今回はインスト・トラックの方で手一杯だったし、他のシンガーが歌う方が良いと考えたんだ。もちろん、彼らに僕の考えはいろいろ伝え、イメージとかは実際に歌って聞かせたりしたりもし、最終的に彼らがそれを形にした。まあ、僕はレッスンを受けたプロのシンガーじゃないし、たまに歌うこともあるけれど、今回はそれを選択しなかった。家で子供たちに歌うことは大丈夫だけど、才能のあるシンガーではないからね(笑)。

いろいろなタイプのシンガーがいますが、フェットサムの歌う“Why & How”やジョナサン・ベッカリーの“Doubter”を聴くと、こうしたシンガーの起用によってシンガー・ソングライター的な要素を代弁しているように感じます。

AB:準備段階で電話越しに歌って聞かせ、いろいろアイデアを交換していったんだけど、参加した全てのシンガーが素晴らしい仕事をしてくれたと思う。僕にとって完璧なコンビネーションだったね。ジョナサンは全ての曲をやりたいと思っていたみたいで、僕が3曲頼んだのに、5曲もやってきたんだ。僕はNGを出したけどね(笑)。でも、彼の声は大好きだよ。彼の別のプロジェクトのアーネストはハウス寄りの音楽だけど、今回はそのイメージから少し変わっている。偶然にも彼の次のプロジェクトはジョナサン・ベッカリー名義のアルバムで、これもまた異なるものだけれど、よりディープで奇妙な感じがするね。僕のアルバムでは、それらにはない新しいイメージを取り入れてくれて、とてもいいものになった。
 フェットサムは昔からの友人で、ジャザノヴァが運営するソナー・コレクティヴからソロ・アルバムをリリースしている。今回もとても面白いレコーディング・セッションだったよ。バック・トラックが終わった後も、彼はアカペラでずっと歌い続けていたので、それを録音して使ったんだ。彼は才能のある力強いシンガーだよ。ほかに、スティー・ダウンズも僕の古くからの友だちで、彼も今度ソナー・コレクティヴからアルバムを出すけれど、ジャザノヴァでプロデュースをしている。ビア・アヌビスはまだ21才のとてもクレイジーな女の子だけど、ベニー・シングスのプロデュースした素晴らしいデビュー・アルバムがもうすぐ出るよ。彼女の声は天使みたいなんだ。彼女がデモを送ってきて、それを聴いた瞬間にファンになって、僕のアルバムに参加してもらおうと決めた。いつか大きなアーティストになると思う。

“Doubter”はライやザ・ウィーケンドなどオルタナティヴなR&Bのアーティストに通じるナンバーで、ジェイムス・ブレイクの世界観に結びつくような曲だと思います。

AB:最初この曲はインストの予定だった。ドイツの古いジャズ・レコードからのドラム・ブレイクを使ったもので、とても奇妙な感じに仕上がったんだ。でも、ジョナサンがそれを聴いてヴォーカルをやりたいといったので、僕はOKした。彼は聖歌隊のような重層的なヴォーカルを入れた。当初、僕にとってこれはアルバムの途中に入るインタールード的な位置づけだったから、君が言うようなジェイムス・ブレイク的なフィーリングは、僕よりジョナサンが持ち込んだものだと思う。歌詞やヴォーカルが入ることによって、オルタナティヴなR&Bになったんだろうね。ジョナサンにありがとうといわなくちゃ(笑)。初めて聴いたとき、この曲に乗ったヴォーカルに吹っ飛んだんだ。

取材・文:小川充(2013年11月08日)

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Profile

小川充 小川充/Mitsuru Ogawa
輸入レコード・ショップのバイヤーを経た後、ジャズとクラブ・ミュージックを中心とした音楽ライターとして雑誌のコラムやインタヴュー記事、CDのライナーノート などを執筆。著書に『JAZZ NEXT STANDARD』、同シリーズの『スピリチュアル・ジャズ』『ハード・バップ&モード』『フュージョン/クロスオーヴァー』、『クラブ・ミュージック名盤400』(以上、リットー・ミュージック社刊)がある。『ESSENTIAL BLUE – Modern Luxury』(Blue Note)、『Shapes Japan: Sun』(Tru Thoughts / Beat)、『King of JP Jazz』(Wax Poetics / King)、『Jazz Next Beat / Transition』(Ultra Vybe)などコンピの監修、USENの『I-35 CLUB JAZZ』チャンネルの選曲も手掛ける。2015年5月には1980年代から現代にいたるまでのクラブ・ジャズの軌跡を追った総カタログ、『CLUB JAZZ definitive 1984 - 2015』をele-king booksから刊行。

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