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interview with Kindan no Tasuketsu

interview with Kindan no Tasuketsu

怪奇骨董“偽物”音楽箱

――禁断の多数決、インタヴュー

橋元優歩    Nov 26,2013 UP

音楽雑誌の記憶
なぜか3.11以降……
偽物談、地名談。
ガブリエル世代のポップの裏表
禁断の組織論!
日本脱出

ガブリエル世代のポップの裏表

僕は爆笑問題の太田光が好きなんですけど、彼はアートでも何でも、世間一般に広がらなければ意味がないっていうようなことを言うんです。

あ、ジョー・ミークが好きな篠崎さん。……前作は存在自体が問題提起、みたいなところがあったようにも思うんですが、今回はもうちょっとポップスとしてのアルバムの厚みみたいなものも目指されている、もうちょっとリスナーに寄せた作品なのかなと思いました。

ほうのき:あ、そこはひとつ話があるんですよ。もともとこれは2枚組のものだったんですね。

え、そうなんですか? めちゃくちゃ曲数があったということはうかがっていますが。

ほうのき:今回出せなかったもう1枚の方は、メンバー内では通称「ピッチフォーク盤」と呼ばれているもので。

ええっ。そんなはっきりとした性格のあるものだったんですね。

ほうのき:ピッチフォーク盤じゃないほうがこれ(『アラビアの禁断の多数決』)なんです。通称ピッチフォーク盤は、コアなやつばかり集めていて。ジェイムス・ブレイク風からダーティ・プロジェクターズ風、アダルト・コンテンポラリー、ファンカデリックっぽいものまで、いろいろ入っています。かなり分けて作りましたね。

なるほど、ではこのアルバムはある意味では上澄み液というか、難解めなものを落としたかたちだと。

ほうのき:そうですね、振り分けたんです。ポップなのを集めちゃったんですね。

なるほどなあ。Tofubeatsさんとか、若いアーティストの方にわりと感じるんですけど、「ポップスっていうものをちゃんと考えよう」っていうところがありませんか?  そんな問いは放っておいて、天然で好きなものを作っていいはずなんですが、なにか「いかに僕らはポップを作るか」というようなことを詰めようとする。ほとんど倫理として内面化されているようにも思えます。そういう感覚への共感はありますか?

ほうのき:僕は爆笑問題の太田光が好きなんですけど、彼はアートでも何でも、世間一般に広がらなければ意味がないっていうようなことを言うんです。チャップリンが好きだそうなんですね。その意味では岡本太郎ですらまだ弱いって。だからポップっていうことをもっともっと超えたかった、それが今回のアルバムで、「ピッチフォーク盤」のほうはその反対をやりました。だから本当はふたつともいっぺんに出したかったんです。そうしたらスケジュールの関係で最初に作りはじめたポップな方だけ出た……。

なるほどなあ。もっと若い人たちには、ポップスというか、ポップス産業への懐疑みたいなものがわれわれ以上に強いんだろうなって感じるんです。それに比べれば、ほうのきさんの感覚はもうちょっと柔らかいのかなとは思います。逆襲を仕掛けてやるっていうようなモチヴェーションはないですよね?  そこまで意識的でなくポップスが好きだったりするのかなと。わたしは“くるくるスピン大会”とか好きですよ。“トゥナイト・トゥナイト”とか。そのへんアルバムの顔ではないのかもしれないですけど、素直にポップス好きが出ている部分なんじゃないですか?

ほうのき:そうですね。“くるくるスピン大会”は、20歳くらいのときに作ったものなんですよ。はました(まさし)が作ったオケに唄を乗せたものです。適当に多重録音していた頃の作品で、久々に聴いたら「けっこういいんじゃない?」って感じになって。バグルスっぽいかな。“トゥナイト・トゥナイト”もはましたから来た曲です。僕はマニアックなものが好きなんですけど、はましたはわりかし普通の音楽が好きで、だけど彼がある意味いちばん変かもしれないですね。

ははは!

ほうのき:僕ら保育園からいっしょなので。彼はフェニックスとか、ちょっと洒落たAORとかが好きなんです。それで、彼が送ってきた音に僕がいろいろ加えてやりとりしているとすごい変なものができる。バランスがちょっとおかしいんですよね。

へえー、はましたさん。

ほうのき:僕はあの頃、(ザ・)シャッグスみたいな音ばっかり録ってましたね。

ははは。“くるくるスピン大会”がシャッグスに直には結びつかないですけどね!

ほうのき:僕ひとりでやると全部シャッグスになります(笑)。

“踊れや踊れ”とかは、アラン・パーソンズとか10ccとか、ちょっとリッチに味付けされているような印象ですが、祭りのお囃子ってこんなところと相性がいいのかって、ちょっと新鮮でした。……ピーター・ガブリエルがお好きなんでしたっけ?  そこにつながっていくのかあ、って。

ほうのき:そうなんですよ。そこへの自負はありますね。ピーター・ガブ――あ、ピーター・バラカンさんが怒るので、ピーター・ゲイブリエルって言いますね。

あ、わたしもまよいます。じゃ、ゲイブリエルに統一しましょう(笑)。

ほうのき:はい(笑)。ピーター・ゲイブリエル、デヴィッド・バーンが好きなので、そのへんを目指したいというのはあるんです。でも、最近けっこう名前を聞くんですよね。セロの人がトーキングヘッズのオマージュみたいな曲を演ってたり、The 1975とかもピーター・ゲイブリエルがいちばん好きって言ってたように思うんですが、「あれ?  僕だけじゃないのか?」って(笑)。案外そういう若い人がけっこういるんですね。

バンド全体としても重要な部分なのでしょうか? 篠崎さんとかも?

篠崎:重要ですね。それを音にして、偶然性みたいなものも詰め込んでできたのが今回のアルバムです。

ほうのき:最終的に(尾苗)愛さん、ローラーガール、ブラジルの声が入って雰囲気が一気に変わるので、アルバムはおもしろいですね。化学反応というか。そこで一気に禁断の多数決になるんだなっていうところがあります。

いや、それはよくわかります。実際に替えがきかないというか、他の方だと禁断の多数決にならないですよね。でも、すごく平面的に「萌えヴォイス」ってタグづけされてしまうことはありませんか? 今作はもうすでにそんな段階を超えてますかね?

ほうのき:去年まで多かったのは、相対性理論との比較ですかね。

なるほど、それはありましたね。禁断は、要は洋楽じゃないですか。それがちゃんと日本の土壌のなかに、日本固有の表現でもって着地しているところが素晴らしいなと思います。いろんなポイントがありますけど、尾苗さんたちのヴォーカルが果たしているものも、その重要なひとつじゃないかって感じますね。

ほうのき:「よくわかんないけどいい」って言われるのはうれしいです。

篠崎:はっきり「いい」「悪い」っていう反応がないよね。そのへんは曖昧とした感じです。

ほうのき:批判があんまりないのが、ちょっと不安ですね。自分はどちらかというと、否定とかがなきゃだめなのかなって思う方なんですけど、いまのところすごく悪く言われることがあんまりない気がして。

言葉で簡単に言いにくいバンドかもしれません。

ほうのき:そうなのかもしれませんけど、大丈夫かなあって心配になったりはします。

そういう部分で、バンドの方向とかについての話し合いとかをしたりするんですか?

篠崎:いやー、全然ないですね。何かひとつのコンセプトがあって、そこを目指そうというようなこともないですし。

禁断の組織論!

メンバー募集をしていまして。チェ・ホンマンみたいな大きい人、それからダニー・デヴィートみたいな小さいおじさんと、サルバドール・ダリみたいなヒゲで長身の伯爵みたいなゲイのおじさん。そういう集団に近づきたい感じがありますね。

さて、話は変わりまして、禁断の組織論といいますか、みなさんというのがどういう集まりなのかということをお訊きしたいんですけれども。「ノマド」という言葉をわりと使っておられますよね。

ほうのき:はい(笑)。

組織と呼ぶにはもしかすると柔軟すぎるつながりなのかもしれませんが、どうなんでしょう、コアにあるのは富山という地元の縁?

ほうのき:そうですね……。自然に、ですかね。

東京で音楽活動やろう、ってみんなで一念発起して出てきたんですか?

ほうのき:いや、そういうことではなくて、こっちで出会ったりしています。はましたは保育園からですね。篠崎は大人になってからです。ほんとに自然に集まっていて。愛さんは●●の店員さんですね。

尾苗:ああ、はい。そうなんです。

ええっ!

ほうのき:普通に店員さんで、僕が客だったんです。

尾苗:でも、わたしも富山の出身ですよ。

えっ、それは富山のお店で出会ったってことですか?

尾苗:東京です。

めちゃくちゃ偶然、富山だったんですね。

尾苗:たまたまその日だけ、「自分を売り出せ」っていうことで、名札に出身地を書いていたんですよ。そしたら「富山県なんですか?」って声をかけられて。

ほうのき:そうなんです。かわいいなあーと思って。それで、ググって(笑)。

ははは!

ほうのき:ストーカーですよね。でも、そしたら偶然にも共通の友だちがいたんです。

尾苗:わたしはわたしでバンドにいたりもしたので、その声を聴いてもらって……っていう感じですね。

すごいですね。篠崎さんも偶然東京で出会った組ですか?

ほうのき:篠崎は、メンバーの弟とバンドをやっていたりしたつながりですね。

それもまた富山だったと。どちらですか?

篠崎:高岡です。

へえー。そういう、地名が結ぶ縁というものがあるのかもしれないですけど、この10年って、バンドっていうものの説得力がなくなってきた10年でもあったと思うんですね。これ、いろんなバンドの人に訊いている質問なんですけど。

ほうのき:ああー、なるほど。それはわかります。

インディ・ロック系のアーティストが、どんどんソロとかデュオ、もしくは……

ほうのき:アニマル・コレクティヴとかですよね。メンバーも必ずしも揃ってなくていい。

そうそう、そんな世界で、なんでわざわざ5人とか6人とかで関係を結んでいるのか。ひとりやふたりのほうがいろんな部分で面倒くさくないですよね。デュオやソロに存在感が生まれたのもそういうムードの高まりだったのかなと思うんですが、みなさんはどんな感じなんです?

ほうのき:『あまちゃん』にちょっと似てますかね。

出た。

ほうのき:『あまちゃん』は好きで、あと僕は『ツイン・ピークス』も好きなんです。登場人物が全員好きですね。出ている人たちも全員擬似家族っぽい感じがしませんか。あのふたつの作品のいいところは、登場人物全員を愛せるところというか。ひとりもいやなキャラがいなくって。ツイン・ピークスみたいな集団を作りたいっていう感じが昔からあります。

ああ、『ツイン・ピークス』なんですか。誰か死にますね。

ほうのき:死んでも生き返ってくるんですよ、篠崎さんは。

(一同笑)

あはは!

ほうのき:だから、「バンドやりたい」からはじまってないんですよ。劇団というか……。必ずしも劇団が好きなわけではないんですけどね。

なるほど。

ほうのき:いま、メンバー募集をしていまして。チェ・ホンマンみたいな大きい人、それからダニー・デヴィートみたいな小さいおじさんと、サルバドール・ダリみたいなヒゲで長身の伯爵みたいなゲイのおじさん。そういう集団に近づきたい感じがありますね。サーカス団というか。

なるほど、なるほど。映画に出てくる、ちょっと古めかしい旅の興行団みたいな。おふたりもいっしょですか? バンドという意識ではない?

篠崎:そうですね。

仲良しグループでもない?

篠崎:仲良しではないと思いますね(笑)。

ほうのき:ほんとよくわからないんですよ。

特殊ですね。でもそんなかたちでけっこう楽しく、長くいっしょにいられるんだったらおもしろいことですよね。

ほうのき:音楽好きなのは共通していると思うんですけど、6人が集まって音楽の話をすることはほとんどないですよね。

映画観たりする感じですか?

篠崎:いや、そんな仲良くないです(笑)。

ほうのき:昔はよく篠崎とふたりで飲んだりしましたけど、政治の話とかですね。

オブ・モントリオールとかは色が違いますけど、あれもちょっとしたサーカス集団みたいな感じがありますよね。

ほうのき:トーキング・ヘッズの『ストップ・メイキング・センス』っていう映画がありますけど、あれを観ていると、黒人のコーラスの女性サポートが居たり、黒人のギタリストとかキーボードもサポートだったりしますよね。僕のコアにはそういう、さまざまな人といっしょにやりたいという感じがあるんです。だから、必ずしも6人だけでライヴをしたいとかっていうこともないんです。

ひとりひとりが主役になるスピン・オフもありつつ、集まると禁断の多数決になる。

ほうのき:そうですね。

でも、ひとりやふたりだと「多数決」っていう名前ともちょっと違ってきますよね。多数決って、暴力的なものでもあるわけじゃないですか。それが嫌という人が1人いれば、1人には犠牲を強いるわけですから。民主的なんですけど、民主的ってこと自体が必ずしもひとりひとりに優しくないというか。禁断の多数決っていう名前には、そういうことへの問題提起があるなーというか、時代性があるなというか。わたしは初めて聞いたときビリビリっとしました。そういう意味でつけたんじゃないとしても。

ほうのき:僕にはその感覚はけっこうあります。

篠崎:僕はとても多数決に弱いんです。

ははっ! マイノリティなんですね。

篠崎:いつも負けるので、「本当に俺は間違っているのか?」っていうことをずーっと幼少の頃から感じてきたんですよね。そういう気持ちや会話の流れから(禁断の多数決というバンド名が)生まれた部分はあるのかもしれないですね。鍋のときとかに(笑)。

あはは!

ほうのき:しょっちゅう飲んでたんです。政治を語る友だちでした(笑)。あの頃なんであんなに政治の話が好きだったんだろう?

篠崎:転換期というか、ちょうど自民党が崩れていく時期だったりしたからね。

民主党政権が成立してからむしろ興味が引いていったみたいな。

ほうのき:そうかもしれないですね。

篠崎:こんなもんかという。

そして、フェイクな国の旅をはじめた(笑)?

ほうのき:ははは、そうかも! まとまった!

まとめるのも暴力ですけどね!  でも、とっ散らかっているようで芯があるバンドだというのはとてもよくわかりますよ。

ほうのき:醸し出しているつもりはないんですけどね。

しかし、多数決で必ず少数派になっちゃう人っていうのはおもしろいですね。禁断の場合、それが恨み節になってないじゃないですか。

篠崎:恨み節ですか。

そう、マイノリティが逆襲してやるぞって感じにはならないですよね。

篠崎:それはないですね。いじけるだけみたいな(笑)。

ほうのき:ルサンチマンがない。

篠崎:溜め込んだりしないですね。

それで必要以上に皮肉屋になったりとか。それも立派な表現のモチヴェーションなんですけどね。

ほうのき:わかります、わかります。

篠崎:僕らは決してマイノリティのほうが正しいっていうふうに思っているわけではないんですよね。

ほうのき:一見バンド名とは違っちゃうんですけど。

よくわかります。そこが禁断のねじれたところというか、素直なところというか。

日本脱出

ワールドカップとか、日本を応援しますね。めっちゃ応援して、負けると悔しいんですけど、これがナショナリズムかっていうとそういうものだとは思えない。

ほうのき:ある有名な音楽家の発言なんですけど、日本はもう脱出するしかないって。うまく説明できないけど、逃げるってポジティヴなことかもしれないとも思ったりもするんです。

へえー、そうなんですね! いま「逃げる発言」には勇気がいりますけどね。

ほうのき:逃げてるだけといえば、そうなんですけど、逃げてるわけでもないというか……。

わかります。日本に内在すること――tofubeatsさんのインタヴューがとてもよかったんですけど、彼には日本とかJポップ市場の内側からルールや仕組みを変えていってやろうというモチヴェーションを感じるんです。それに対して禁断はどこか外側にいるかもしれませんね。外在的というか。

ほうのき:ワールドカップとか、日本を応援しますね。めっちゃ応援して、負けると悔しいんですけど、これがナショナリズムかっていうとそういうものだとは思えない。もちろん土地とかに感謝の気持ちはあるんですけど。だからその音楽家の日本脱出っていうのは、何かとても重たい言葉だと感じるんです。うまく言えないですけど。

篠崎:曲に国の名前がよく出てくるっていうこととつながりがあると思いますけどね。日本というものにこだわっているわけではないということは、歌詞を見てもわかるはずだと思うので……。バックパッカーになりたいわけだしね。

曲には「おわら」からチンドン屋までフィーチャーしてますよね。それをひとつのトライバリズムだととらえれば、一時期のブルックリンにも似ているというか。日本の中だけど、日本の中の異次元、別の場所に向かう感じ。

ほうのき:ああー。あと、ベイルート好きなんです。ベイルートを日本でやるとしたらチンドン屋かなと思って。日本の文化を大切にしたいっていうのは常に念頭にあります。

郷土や歴史や神々みたいなものへの愛はあるわけですよね。じゃあ、今度は禁断の多数決のオカルト思想について訊いてみましょうか!

ほうのき:オカルト(笑)。ええ!?

篠崎:……宇宙とかなら(笑)。

ほうのき:でも、呪術とか、あるといえばあります。僕、ロッジを持ちたいんですよ。で、ホワイト・ロッジとかブルー・ロッジとかブラック・ロッジとか名前をつけて、そこで呪術をやりたいですね。

尾苗:ははは。

ほうのき:ロッジで、何か焚いて……

篠崎:何かキタ! みたいな(笑)。

ほうのき:「よしよし、曲にしよう」(笑)。

篠崎:「これこそが曲だ」(笑)。

まさに『キャンプファイア・ソング』じゃないですか。それがクラブとかじゃなくて、パーソナルな感じで営まれているというのもおもしろいですよ。さて、最近はどんなふうに音楽を聴いていますか?

篠崎:iTunesとかが便利なので、シャッフルして流しちゃってたりはするんですが、ちょっと久々にレコード聴こうと思ってかけていると音が全然ちがいますね。太いです。MP3の音に慣れすぎてて、忘れていました。なので最近はレコードをまた探すようになりました。

ほうのき:変なのばっかり買ってるね。レジェンダリー・スターダスト・カウボーイだっけ?とか。

どのへんで買ってるんですか?

篠崎:大きいところは(ディスク・)ユニオンとかしかないじゃないですか。あとはリサイクル・ショップにダンボールで置いてあるようなやつとか。そこでソノシートとかを買ってみたり、『(がんばれ!!)ロボコン』のお話レコードとか。ロボコンの考えているときの音がすごくいいというか……「ロボコン、いまから考えるねー」みたいなときにポコポコポコーって鳴っている音がかっこよかったりするんですよね。

ほうのき:あ、篠崎さんはアニコレでいうジオロジスト担当なんですよ。変な音は基本的に篠崎さん。

なるほど!  ネットでも変なものはいっぱい集められそうですが、何かフィジカルを探すこととのあいだに差があったりしますか?

篠崎:ありますね、やっぱり。過程があるかどうか、ということですかね。ゴミの山のなかから一枚見つけるときの喜び。

ネットも、まあ、ゴミの山から探す作業ではあるわけですが。

篠崎:思い入れは違ってくるかな、と思います。わざわざ電車に乗って、何もないかもしれないけど行く。そうすると聴き方も違ってくるような気がしますし。……ちょっとかっこつけて言ってしまったかもしれないですけど。

ほうのき:僕も、たとえばヴェイパーウェイヴとミューザックの違いについて考えてみたいですね。そこにいまの質問の答えになるものがあるような気もします。

取材:橋元優歩(2013年11月26日)

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