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interview with Kingdom

interview with Kingdom

ベースからポストR&Bまで

──キングダム、インタヴュー

斎藤辰也    翻訳:Sem Kai
写真:Yuya Remmy Furusato  協力:PROM  
Jan 15,2014 UP

ケレラはとてもスマートだから、僕らがヴォーカルをどう受け止めているのかをすぐに理解した。だから僕らの持っていたコンセプトと、サンプリングやリミックス文化でのヴォーカルの使われ方も考慮に入れながら、彼女はピッチングやハーモニー、そしてメロディーを作った。だからそういう点ではこの音楽はポスト・リミックスR&Bなんだ。

本誌では今年のキーワードとして「インダストリアル」をあげています。インダストリアル・ムーヴメントについて何か言うことはありますか? (ジャム・シティのインタヴュー記事のページを見せる)

キングダム:ああ、クール! インダストリアルにはすごく影響されているよ。そしてこのムーヴメントにおいては、やはりジャム・シティが非常に重要なポジションにいる。彼のアルバムがその後の僕ら全員の作品に影響を与えているといっても過言ではないと思う。僕らは外部からの影響も受けているけれど、内部からの影響力の話となると、やはりジャム・シティが僕らのサウンドを大きく変えるきっかけだった。僕とングズングズとアシュランドも昔から似たようなコンセプトでノイズを使ってはいたんだけど。以前からソウルフルなヴォーカルを多用していたから、金属的で恐ろしい音っていうのはそれに対して素晴らしいコントラストだった。

ヴェイパーウェイヴやシーパンクについてはご存知ですか?

キングダム:ヴェイパーウェイヴか。呼称は知ってるんだけど、どういうものかは知らないんだ。
 シーパンクはそんなに好きではないな。すごくインスタントで、目新しさばかりが目立つように感じられる。ヴィジュアル面での美学が非常にはっきりと提示されていることはわかるよ。だけど、それ以外でどう定義できるものなんだろう? そこにはっきりとした音は果たしてある? 見た目以外で姿勢やコンセプトのようなものが提示されているかな?
 タンブラーのリブログという発生方法自体、そこに何か普遍的な基盤があるのかどうか疑問に思えるんだ。実際にそんなに良く知っている訳でもないんだけど。事実、僕が知っていることと言えばその見た目だけなんだ。遺跡やヤシの木とかが多用されているよね。でも本当にそれしか知らない。

タンブラー文化に関しては、プリンス・ウィリアムやサブトランカとも意見が一致していますね。では、あなたのグラフィック・アートについて教えてください。

キングダム:〈フェイド・トゥ・マインド〉のロゴはボク・ボクがデザインしたんだ。僕にはロゴの才能は無いからさ。だからグラフィックや文字要素のデザインは彼に任せてある。僕はそれ以外のフォト・コラージュなんかを僕は手がけているよ。壊れたり、燃えたり、事物がトランスフォームしている瞬間に動きを感じるんだ。〈フェイド・トゥ・マインド〉って名前自体、ものごとの状態ではなく起きている過程を意味する言葉を用いているでしょう? 状態ではなく変化していく過程にフォーカスしているんだ。たとえば、ここにコップがあることではなく、このコップが溶けていく過程なんかの方が面白いと思っている。
 それと同時に、コラージュを作る際にいつもゴールとして意識している事は、安っぽいものやゴミみたいなものを使って何かスピリチュアルなものを構成することかな……。だってグーグルの検索で集められる画像ってすごくローテクなものが多いじゃない? 画質の悪い.jpgだったりさ。それらの素材で作ったコラージュが、メディアを通しても伝わってくるような純粋性だったりスピリチュアルな雰囲気を持てるようなものだと面白いよね。
 カヴァーアートを作る最中には大体作品を聴いている事が多いね。カヴァーアートをいつも最後に作るよ。

〈フェイド・トゥ・マインド〉のアートワークに使われるモチーフなどを見ていると物質主義への批判的な姿勢を感じるのですが、そのような意識はありますか?

キングダム:ファティマ・アル・カディリのあのカバーアート(『デザート・ストライク・EP』)に関しては、彼女の育ってきた背景にあるクエートのことや物質主義への批判的な視点はあるかもしれない。あのアートワークはほとんどが彼女のコンセプトで、サブトランカのマイルス・マルティネスがそれを形にしたから。でも僕はそういう視点を常に意識している訳ではないかな。そういう見方があるっていうのもすごく分かるけどね。

本誌のインタヴューでプリンス・ウィリアムが、エズラはメディテーション(瞑想)をしてるというようなことを言っていたのですが、本当ですか?

キングダム:瞑想の趣味は無いけどな(笑)。でも瞑想的なことはするよ。ひとりでハイキングに行ったりね。それに僕は新しいプロジェクトの話やリミックスの依頼が来たときには、行動に移す前にじっくり時間を費やして考えるタイプの人間なんだ。彼は僕のそういう部分のことを話していたのかもしれない。

日本のアーティストやミュージシャンで影響を受けた人は居ますか?

キングダム:日本の音楽だったら坂本龍一はずっと聴いてるよ。影響を受けたかどうかはわらないけれど、彼は日本のアーティストというカテゴリーには収まりきらないくらい、もう普遍的な存在だよね。音楽以外で言うと日本のファッション・カルチャーには影響を受けている。実は高校の卒業プロジェクトのテーマに日本のファッションデザイナーを選んだことがあるんだ。当時は高校を卒業したらファッションの道を目指そうと思っていた。結局大学ではファインアートを学ぶことになったんだけれども、ファッションは僕のバックグラウンドに常にあったんだ。〈コム・デ・ギャルソン〉や〈イッセイ・ミヤケ〉に関して論じたことを覚えているよ。〈ファイナル・ホーム〉(http://www.finalhome.com)にも90年代後期の頃から熱中していたよ。だからヴィジュアル面ではこれらの影響は大きく受けている。

それら日本のファッションブランドのどういった面に魅了されていたのですか?

キングダム:〈コム・デ・ギャルソン〉と〈イッセイ・ミヤケ〉はアヴァンギャルドで脱構築的な部分に、〈ファイナル・ホーム〉にはテクニカルな機能性と斬新なデザイン性が同居しているところに興味を惹かれていたね。〈ファイナル・ホーム〉は特にコンセプチュアルなアートのプロジェクトでありながら、終末的なサバイバルの状況においての機能性を追求していた面がすごく面白かった。

Tシャツやキャップも積極的にリリースしていますし、〈フェイド・トゥ・マインド〉にとってファッション/アパレルは重要なのでしょうか?

キングダム:音楽からのファッションへの影響の方がその逆より大きいように感じるな。ファッション・デザイナーをやってる友人が何人もいるけど、彼らのほとんどが音楽から多大なインスピレーションを得ている。ファッションからの影響を音楽に表すっていうのは難しいし、それが良いアイデアなのかどうかもわからない。
 でもね、僕は〈フッド・バイ・エア〉(Hood By Air)の初めの5~6シーズンのランウェイ用の音楽を担当したんだけど、そのときだけはそれが例外だった。っていうのもデザイナーのシェイン(Shayne Oliver)からコンセプトについてメールがくるんだけど、この曲のリミックスを2ヴァージョン欲しい、だとか、ミリタリーがヴォーギングしてるような音をくれ、だとかいう内容なんだ。コレクションで発表する服はその段階ではまだ出来上がっていないから、彼のヴィジョンについて具体的に言葉のみで説明されたからこそ、それにそって音楽を仕上げることができた(註:「ドリーマ・EP」〈ナイトスラッグス〉に“フット・バイ・エアー・テーマ”が収録されている)。
 日本のひとたちが僕らのキャップをかぶってくれてるのを見たときは本当に驚きだったよ。東京のファッションに合わせているのを見るととても嬉しい。ただ音楽を知らずに着てる人もいるよね。だから、キャップに書いてある文字をグーグル検索してそこで僕らの音楽やアートワークをもっと知ってもらえるといい。取扱店もCDやレコードとかと一緒にパッケージで売ったり、何らかの形でレーベル全体のコンセプトも含めて買い手に伝えてもらえたら、すごく嬉しいよ。

夢でもいいので、コラボレーションしてみたい人を挙げてください。

キングダム:一緒に仕事したいシンガーなら山ほど居るよ。シアラにブランディー、ジェネイ・アイコ(=Jhene Aiko。EPにはケンドリック・ラマーも参加)……もちろんアリーヤとできたら最高だったね。プロデューサーではドレイクのビートをつくっているノア40(Noah 40 Shebib)かな。ファッションブランドでいうと、カセット・プレイヤ(Cassette Playa)やビーン・トリル(Been Trill)とTシャツを作る予定もあるよ。

〈フェイド・トゥ・マインド〉の次なる展望(ヴィジョン)を教えてください。

キングダム:もっとヴォーカリストを増やしたいな。そしてもっとケレラの仕事もしたい。それからより頻繁に作品をリリース出来るようにもしていきたいね。最近になってようやく出来てきた事だけれど、その前は半年に1枚のペースだったから。まだいろいろ学んでいる最中なんだ。それに僕らはカヴァーアートまで含めて相当な完璧主義でここまでやってきた。プリンス・ウィリアムは常にみんなの意欲をかき立ててくれたり、細かい部分で仕事してくれるムードメイカー的な存在だけど、レーベルとしてのミキシングやフォトショップでのプロダクションなんかの作業は今は僕一人でやっている。ステップ・バイ・ステップだからまだすごく時間がかかるんだ。
 同時にアパレルのグッズも増やしたいね。デザインは貯まってきているんだけど、もっとキャップとTシャツのリリースをしたい。
 それと、〈フェイド・トゥ・マインド〉のフェスティヴァルをすることについても話をしているよ。アートの展示やシンガーとラッパーとDJ達を、テクノロジーを使ったハイテクな演出で披露したいと思ってる。奇妙な構造のステージで、ワイヤレスマイクを使って入れ替わりたちかわりで出てくるシンガーたちに、アシュランドがエフェクトをかけまくってるようなイメージだね。

では最後に、2013年にリリースされたダフトパンクとディスクロージャーのアルバムでは、どちらが好きですか?

キングダム:どちらも全部は聴いていないんだ。ラジオでシングルは聴いたよ。どちらか選べと言われたらディスクロージャーだけど、どちらもそこまで好みではないかな。でも新しい類いのエレクトロニック・ミュージックがメインストリームで成功しているという事実にはとても感謝している。なぜなら、それは〈フェイド・トゥ・マインド〉だってそうなれるっていうサインでもあるからね。

取材:斎藤辰也&前田毅(2014年1月15日)

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Profile

斎藤辰也/Tatsuya Saito斎藤辰也/Tatsuya Saito
破られたベルリンの壁の粉屑に乗って東京に着陸し、生誕。小4でラルク・アン・シエルに熱狂し、5年生でビートルズに出会い、感動のあまり西新宿のブート街に繰り出す。中2でエミネムに共鳴し、ラップにのめり込む。現在は〈ホット・チップくん〉としてホット・チップをストーキングする毎日。ロック的に由緒正しき明治学院大学のサークル〈現代音楽研究会〉出身。ラップ・グループ〈パブリック娘。〉のMCとKYとドラム担当。

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