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interview with Matthewdavid

interview with Matthewdavid

僕たちの愛の世界

──マシューデイヴィッド、インタヴュー

倉本 諒    Jul 03,2014 UP

物語、つまり『イン・マイ・ワールド』のストーリーで織られたタペストリーは、情熱と探求による献身の時間を経て、語られるべき時を迎えたのさ。


Matthewdavid
In My World

Brainfeeder / Beat Records

ElectronicAmbientExperimental

Tower HMV Amazon iTunes

けっこうな時間をこのアルバム制作に割いてたよね? いくつかの曲は1~2年前にできあがっていたじゃん。でもこのアルバムでの聴こえ方ってかなり違うし、マスタリングとミックス・ダウンのときにさ、以前作った曲もショワ~って変容した感じ? 家庭を持ったマシューが見えた新たな物語の世界へさ。

MD:バラさないでくれよ……(笑)。ご存知のとおりこのアルバムを作りあげるのに何年もかかったよ。たぶん2~3……いや、何年かかったか正確に言うのも難しいな。2曲めの“コズミック・コーラー”は何年も前に作ったビートものだったし。
 僕の人生、つまり新たな家族を得るまでの変遷が、長年あたためてきたアイデアに、あらためて僕を頭から飛び込ませてくれて、そのチカラづよさに気づかせてくれたんだ。まだ完成するまえの話だよ。たくさんの古いアイディアが成熟、変容して、全体像を結ぶ曲となっていった。物語、つまり『イン・マイ・ワールド』のストーリーで織られたタペストリーは、情熱と探求による献身の時間を経て、語られるべき時を迎えたのさ。愛、思いやり、感情移入といったもっとも深い情熱が誠実な創造力を走らせてくれるんだ。

さっきも言ったけどジャケが最高。写真が相当キテる。とくにライティングと表情が。このポートレート撮影にあたってコンセプトはあったの?

MD:いや~、ニコラス・マレーが撮影したフリーダ・カーロのポートレイトを参考にしたんだよね(http://indigodergisi.com/wp-content/uploads/2014/01/frida-kahlo-by-nickolas-muray.png)。ディーヴァの友人の素晴らしい写真家であるローガン・ホワイトのおかげさ。リヴィングにデカいライティングを用意してもらってさ、僕らでベンチやら植物やらハリボテやらセッティングして……僕らが実験を開始してから一時間かそこいら経った頃かな、よっしゃ、全裸でベイビー抱いて撮ろうぜ! ってなって。

いや、普通ならないって……

MD:ちがうライティングや表情も試してみてさ、異なった趣きを演出するように、僕らの幸せを内省的でアーティスティックな雰囲気に再現してみたんだ。僕のベイビーは人生と愛を、人類の成長と進歩を象徴しているんだ。

マシューはディーヴァ(Diva)といっしょにあのけっこうマジな瞑想をしてるの? いくつかのトラックはディーヴァの曲のコンセプトに近いものを感じるよ。てか、3曲めなんかモロに“パーペチュアル・ムーン・ムーズ(Perpetual Moon Moods)”でディーヴァのアルバム・タイトルとカブってるし。ネオ・ペイガニズムとかアニミズムみたいなものには惹かれる?

MD:そうだね、コンセプチュアルな面では扱っているテーマ/リリックの言葉選びの点では近いものがあるよ。僕が自分の音楽のなかで話そうとしている事柄はいろいろあるんだけど、その内のいくつかは君が言うような「ネオ・ペイガニズム」や「オカルト」、「秘術」と呼ばれる類いのものだ。LAでのエナジー交流のコミュニティがあって、僕も彼女もその中でいっしょに瞑想してるよ。秘技である古代の治癒術を学んだり、不安や恐怖をどのように消すのかをコミュニティの中での創造行為を通じて学び、段階的な行動とともに共有していくんだよ。

僕が自分の音楽のなかで話そうとしている事柄はいろいろあるんだけど、その内のいくつかは君が言うような「ネオ・ペイガニズム」や「オカルト」、「秘術」と呼ばれる類いのものだ。

近年のマシューの作風であるソウルやR&Bのチョップ&スクリュー、オリエンタルなメロディ、未来的ダブ・エフェクトも非常に洗練された新たな形でこのアルバムの曲に表れているよね。なにより今回はマジで唱いまくってるしラップしまくってる。それがなによりこのアルバムを愛に満ちたものにしているしね。月並みなことを言って申し訳ないんだけど、〈ブレインフィーダー〉からの前作『アウトマインド』からの変化は明らかなんだ。話が重複しちゃうけど、結婚や娘の誕生などマシューの人生には最近大きなことがいっぱいあったわけで、状況や環境の変化は君のアートにも絶対影響するじゃん?
 “アウトマインド”を制作してたときからふりかえってみて、いったい何がもっともマシューの音楽に影響を与え、どんな方向に変化したと思う? マシューを再びラップすること、唱うことに突き動かしたのはなんだろう?

MD:これは僕にとってとても重要なことなんだけど、愛の明白なテーマを投影するためには、よりよいプロダクション・クオリティでの歌とラップのヴォーカルが不可欠なのさ。若い頃の僕がヒップホップの洗礼を受けたことは、僕が真に自由な自己解放に向かっていくはじまりだったんだ。高校の頃にビートを作りはじめてビートにラップをのせた。初期のフルーティーループスと初期のACID PROで作ってたね。自分自身の存在意義や怒れる10代のフラストレーションなんかを込めて、ほとんどパンク的反抗精神なんだけど、あくまでそれをヒップホップを通して発散していたのさ。当時の僕のラップはすべて自分自身に関する事柄だった。ティーネイジャーとしての足掻き、教師や政府、ときには両親への足掻きもね。

愛の明白なテーマを投影するためには、よりよいプロダクション・クオリティでの歌とラップのヴォーカルが不可欠なのさ。

 いま、僕がこれらの人々に見せつけてやりたい唯一の事柄は感謝と尊敬の念なんだ。すべての人類へのメッセージさ。みんなが愛を持ちつづけるかぎり僕には未来への希望と楽観があるんだ。人間は意識を高めればお互いに助け合い、共感し合うことができるんだ。意識の飛翔(Mind Flight)+意識の拡張(Mind Expansion)= 宇宙の移行(Space Migration)なんだ。「みんなが愛を持ち続ける限り」……僕はこのテーマをこの新たな身体表現として語りかけたいんだ。インスト・アルバム(『アウトマインド』)のようにテーマをコッソリと埋め込むかわりにね。勇敢になるときがきたのさ、世界がひとつになるための最大の可能性といえるこの普遍的なテーマを表現するときがきたんだ。僕らは娘を「ラヴ」と名づけたんだ。彼女やこの地球に存在するすべての人間が宇宙の光を内包しているようにね。

たしかに君がこのアルバムで壮大な愛と平和の「意識の拡張」を試みてるのはよくわかるんだ。でも僕がこれを聴いて感じたのは、君が今回掲げる普遍的なテーマの強度とでも言おうか。単なるヒッピー気取りのハリボテじゃない強度、それはマシューがいままでの人生で体験してきた憤り、葛藤、失望といったリアリティがあるからこそ成立しているように聴こえるよ。

MD:その通りだよ。光と闇は一体だ。そして僕らは自分たちからその多くを学ぶことができる。夜のもっとも深い闇を通り抜けるようにね。その秘密は闇の中で沸き返ったり固まったりしているんだよ。僕らは眩い光と漆黒の闇の間でおこなわれる、認めざるをえない交換を理解することで宇宙の秘密、魂の秘密を見つけるんだ。この考え方が僕の音楽を強固なものにし、マジで僕のヴィジョンを強いものにしているんだ……そこだよ。僕らはいま同じ波長で話をしているんだ。
 僕がマジに焦点をあてたいことがあるんだ。僕の友だちやコミュニティもつねにそれを談義してきた。僕らの国には深刻な戦いがあるんだ。たぶん他の国々でもそうだけど、これは闇との戦いなんだ。僕らの国は、僕らが生きていくことから追いたてるドラッグ、計画、道具、組織を作り出した。恐怖を僕らの心にしみ込ませることで、僕らが絶対に闇に立ち向かえないように、完全に闇を恐れてしまうようにね。これは不健康だから変わる必要があるんだ。僕らがもっと目を向けて認めなくてはならないのは、人間社会と意識の解放において教育と試練をもって闇を抜けていくことなんだよ。

取材:倉本諒(2014年7月03日)

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倉本 諒/Ryo Kuramoto倉本 諒/Ryo Kuramoto
crooked tapes代表、イラストレーター兼スクリーン・プリンター。

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