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interview with Blonde Redhead

interview with Blonde Redhead

記憶喪失みたいに新鮮

──ブロンド・レッドヘッド(カズ・マキノ)、インタヴュー

橋元優歩    Aug 27,2014 UP

でもあたしはなんか、このバンドの世界はあたしの世界っていうか……。あたしが自分の世界から抜けられないで、ずっとその中にいると、また彼らがそこに帰ってくるっていう感じです。


Blonde Redhead
Barragán

Asawa Kuru / ホステス

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不思議なんですよ。アメデオさんのギター・ノイズも、シモーネさんのあのドラミングも、ブロンド・レッドヘッドの音楽を引っ張る上で絶対に欠かせないものじゃないですか。でもブロンド・レッドヘッド感を統べているのは何なのかという。それはマキノさんじゃないですか?

マキノ:うーん。……そうかもしれない。

ヴォーカルが入るときに命が吹き込まれる感じはありますか?

マキノ:うん、ヴォーカルっていうかメロディかな。自分でもよくわからないんですけど。

アメデオさん、シモーネさんは双子ですけど、3人でひとつながりみたいに見えます。話し合いやセッションのせめぎ合いでバンドのダイナミズムが生まれたりするんじゃなくて、ひとつのものから音が生まれてくるというか。

マキノ:そう。でも毎日いっしょにやっていて思うのは、彼らは本当に男の子だなって。集まっていっしょに何時間か演奏したら、そのあとは疲れたから帰るとか、サッカーしにいくとか、すぐに切り替えられるんです。でもあたしはなんか、このバンドの世界はあたしの世界っていうか、こう……それから抜けられる感じじゃないんです。抜けたいとも思ってなくて、四六時中そのことしか考えていないし、それに関係することしかしないのに、彼らはそういうんじゃないんですよね。あたしが自分の世界から抜けられないで、ずっとその中にいると、また彼らがそこに帰ってくるっていう感じです。
 たとえばレコーディングが終わると、今度はあたしがジャケットを考えたりする時間がきて、それも音楽と同じくらい時間がかかったりするんですけど、ふたりはぜんぜん関与しなくて、たまに「どうなってるの?」「どんな感じ?」ってきいてきたりしますね。それで、「それはいいね」「これはこうしたほうがよくない?」ってフィードバックしてくれる。あたしはその世界から出られなくなることがときどき嫌になっちゃったりもするんですけど、たぶん彼らとはそういうちがいがあるんじゃないかなあ……。

性別のちがいというところもあるかもしれないですね。母体、というような言葉が浮かびます。海みたいな、胎内みたいなところ……

マキノ:どっぷり、っていうか、本当に自分で抜けられない世界なんです。彼らはプラクティカルっていうか、そういう意味では普通の世界と行き来できていて、いいなあって思ったりすることもあります。

むかしからその(〈4AD〉期的な)傾向はあったと思うんですけど、それを隠してつくっていたのが〈タッチ・アンド・ゴー〉のころのやつかな……。

わたしが個人的に好んで聴いていたのは〈タッチ・アンド・ゴー〉からの3枚なんですけども、あのソリッドで殺伐とした空気感、ノーウェイヴィでハードコアっぽさもあって、そういったところがすごく〈タッチ・アンド・ゴー〉というレーベル自体の色をも体現していましたよね。その後の〈4AD〉期はより耽美的なシューゲイズ感を増していて、魅力的なサイケデリックを展開されています。きれいに線引きできないかもしれませんが、こうした転換は意識されたものですか?

マキノ:そうですね……、むかしからその(〈4AD〉期的な)傾向はあったと思うんですけど、それを隠してつくっていたのが〈タッチ・アンド・ゴー〉のころのやつかな……。表面を除くと、みんな同じ要素かもしれないです。

ああー。

マキノ:どっちの要素もアットホームというか、親しいものかなと思います。ライヴをやっていても、その間を行ったりきたりしていますね。

なるほど。ではそのだんだん剥き出しになっていった〈4AD〉的なサイケデリック感、耽美的な要素というのは、今作ではいちばんピークに達しているように思えます。

マキノ:聴きました!?

はい! そういう意味では極点じゃないですか?

マキノ:そうですね、すごく、究極な……。

『ペニー・スパークル』(2010年)の“ヒア・サムタイムズ”みたいな、ギター・ノイズが入ってこないシンセ・ポップの系統があるじゃないですか。そういうものの究極というか。

マキノ:そうですね、今回のアルバムにはギターはたくさん入っているんですけど、なんていうのかな、それはけっこう悪い癖というか。悪くもないんですけど、わたしたちは、放っておくとスペースが残らないほど音をレイヤードしてしまう傾向があるので、それをなるべくしないように、たくさん空間が残るように、って思ってやってますね。

なるほど、そのぐしゃっとした感じは魅力でもあるわけですけどね。

マキノ:うん、でも自分たちのなかで空間をつくるような傾向があまりないので、そのぶん努力してやってます。

“ノー・モア・ハニー”なんかもすっごくかっこいいんですけど、なるほど、たしかにスペースができていて、そのぶんむしろ空気が濃密に感じられるようになったのかもしれないです──あったはずのノイズが吸収されていて。

マキノ:うん。

あるいはそんな方針が生まれたのは経験とか年齢の積み重ねだったりするんでしょうか? それともたんにいまの好みなんですかね。

マキノ:どっちもあるかな……。でも、新鮮は新鮮で、いまの時代の傾向を見ると、あまりそのようなことをしている人たちはいないのかもしれないですね。

たとえば“バラガン”のように、マニュエル・ゲッチングとかにもつながっていくようなタイプのアンビエント・トラックもあるじゃないですか。それなんかも同じような考え方から生まれているんでしょうか。

マキノ:うーん、ほとんど何も聴かずに作ったようなアルバムなんですけどね。

なるほど、元からあったものだと言われれば、そうなのかもという気持ちになります。それが、ノイズの皮をむいたら出てきただけという。

取材:橋元優歩(2014年8月27日)

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