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interview with Jun Miyake

interview with Jun Miyake

記憶喪失劇場第二幕

──三宅純、インタヴュー

松村正人    Aug 29,2014 UP

──三宅さんが現在の三宅さんになった、つまり納得できた最初の作品はどこからですか?

『永遠之掌(とこしえのてのひら)』(88年)から『星ノ玉ノ緒』(93年)に移るこの2作かな。

録音にもトレンドがありますから、たとえば80年代のゲート・リヴァーヴが強くかかった作品などは、いま聴いたらちょっと大仰かもしれませんが、それでも三宅さんの作品は初期から一貫して残っていくものだという気が私はします。

三宅:それを目指していますけれども。やっぱり、ゲート・リヴァーヴもそうだけど、当時の最先端だったシンセの音とか、やっぱ恥ずかしいよね(笑)。自分のアルバムではそんなに使っていないと思うけど、CMでは使っているんですよね。

先日森美術館のアンディ・ウォーホール展へ行ったんですけど、最後のほうでウォーホルのテレビCMが流れていたんですよ。そういえば、この曲は三宅さんだったなと思い出しました。あれは最初のアルバムですよね?

三宅:そうですね。

〈TDK〉から出された──

三宅:よく知ってますね(笑)。

いや、私、もってますよ(笑)。

三宅:ほんとに!? いくつなの(笑)?

四〇代です(笑)。ウォーホルもインパクトありましたが、曲も気になったんですね。CMで使ったのは“I Knew I Was”ですよね。あのアルバムは再発されないんですか?

三宅:〈TDK〉の2枚は、自分にとって、あっ、あれは一種のピンチだね(笑)。僕はそれまでは「どジャズ」をやっていて、当時はフュージョン真っ盛りで、会社の意向もあったんです。それを全部飲んじゃうとほんとうにフュージョンになってしまうので、せめてブラコン止まりにしよう思っていたんですね。自分なりにベストを尽くしたんですが、2枚録ったあとで「レコード会社のいうことを聞きすぎると、自分の作品としてあとで反省することが多いな」と思って、こういう極北の音楽をやりはじめた気がします。

三宅さんが現在の三宅さんになった、つまり納得できた最初の作品はどこからですか?

三宅:『永遠之掌(とこしえのてのひら)』(88年)から『星ノ玉ノ緒』(93年)に移るこの2作かな。『永遠之掌』は80年代的に生の割合と機械の割合がイーヴンくらいになっていて、いま聴くとここは生にすればいいのにというのはいくらでもありますけれど、コンセプトとしては自分のやりたかったものではあった。ハル・ウィルナーとやった『星ノ玉ノ緒』はいま聴いても大丈夫かなと思いますね。

『星ノ玉ノ緒』は初期の代表作だと思います。スブリームさんとはこのころからのおつきあいですものね。スブリームさんとのアルバム『リュディック』を再発することにしたというのは、どういう理由からでしょう?

三宅:ライセンス期間が前のところときれたから(笑)。

もっとメロウなことをおっしゃっていただいた方がいい気がしますが(笑)。

三宅:そうだね。そういうトークができればいいんだけど(笑)。僕だけの意志ではないので。でもこれは彼女にとってこれは大きなアルバムだと思うので、マーケットからなくなってしまうのはいけないと思うんですね。

お見舞いに行ったら、「ジュン、この保険金でアルバムをつくろう!」と(笑)。すごい人だなと思いました。

三宅さんがフランスへ行かれて、東京を拠点とするスブリームさんがクロスフェードするようなかたちで制作されたアルバムですからね。

三宅:このアルバムをつくる前、彼女は大きな交通事故に遭ったんです。事故のかなり前から、アルバムをやってほしいとはいっていたんですけど、レコードディールがなかったので「機が熟したら」ととりあえずいっていたんですが、お見舞いに行ったら、「ジュン、この保険金でアルバムをつくろう!」と(笑)。すごい人だなと思いました。そういう思いが詰まっているのでこの作品をマーケットから消してはいけないとも思ったんですね。

『リュディック』の“Chinchilla”を聴いていたときに、私は娘がいるんですが、彼女が「このひと誰?」と聞いてきたので『ぜんまいざむらい』のひとだよ、と答えたときに、すごく納得していたおぼえがあります。

三宅:あぁ、少しイントロが似てるかもね。さらに補足するなら“Chinchilla”はレクサスのCMでした。節操なくてすみません(笑)。

いえ、三宅さんの音楽を耳にする機会が多く、強く記憶に残るものだからだと思うんですね。なので『Lost Memory Theatre』もどんどんアクトを重ねていっていただければと思います。

三宅:『act-3』でいったんきって、次に行きたい気持ちもありますけれど(笑)。『act-3』に関してはまだまっさらな状態なんですね。

そういえば、『act-1』の“A Dream Is A Wish Your Heart Makes”、『act-2』の“Que Sera Sera”ともに映画にまつわるカヴァー曲が入っています。どちらもアルバムの中間部に位置していますが、アルバムの構成に共通点をもたせる意味でそうされたんですか?

三宅:あっ、ほんとうに?

意図的ではないんですか?

三宅:曲順はこういう世界をつくるのにいちばん悩むとこで。ピンチは曲順でやってくるのかもしれない(笑)。アルバムというのは曲順でまるっきり変わってしまいます。同じ曲を収録していても曲順が変わるだけで流れもちがうし聴こえ方もちがう。「1曲目はこれだな」と決めたところから(曲順を考える作業が)はじまるんですけれど、真ん中にもってこようという意図はなかったですね。ここまでこうきたらこれかなと。

作品としてシンメトリックな構造を通底させたのかと思っていました。『act-1』は“Assimetrica”からはじまりますし。

三宅:そういうことをいえばかっこよかった(笑)。

(笑)最初にも申しあげましたが、『Act-2』は次を予兆させる作品だったので、いちファンとしてもぜひケジメをつけていただきたいと思っています。

三宅:ありがとうございます。たくさん聴いていただいてうれしいです。

取材:松村正人(2014年8月29日)

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