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interview with Manners

interview with Manners

いるべき場所がない

──マナーズ(見汐麻衣、石原洋)、インタヴュー

野田 努    Oct 17,2014 UP

ずっとやりたかったですし、埋火をやっているときからも一貫したテーマでした。「場所」というか、「街」というか。今回はそこに「都市」というものも含まれてます。──見汐麻衣


マナーズ
Facies

Pヴァイン

Jazz RockPopPsychedelic Rock

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チャラさとはどういう意味なんですか? 媚びているっていうことですか?

石原:うーん、そうじゃないですね。例えば、確実に背景として何か異質なもののあるポップさと、どこかで聴いたいい曲を何曲か組み合わせて出来上がり、というのとは違うじゃないですか?

プロセスが結果には表れるものであると。

石原:曲が流れているぶんにはわからないかもしれないけど、聴く人によってはわかるんです。誰に聴かせたいかという問題は難しいですよ。表面的に似たようなサウンドでもある特殊な視点から見るとたちどころに峻別されていくものがあるじゃないですか? そこで簡単に峻別されて捨てられていくものは作りたくなかった。その神経質さは自分の属性だと思っているからしょうがない。

しかし、ゆら帝やオウガにないものがマナーズにはあるわけですよね?

石原:ゆら帝などに比べれば、良くも悪くも思想的な重さがない。重さというか、観念的な部分って言ってもいい。今回は女性っていうのもあるし。かつて朝生(愛)さんもやっていますけどそれと比べても、昔の言葉でいうヘヴィーさみたいなものはないので。そういう意味でアレンジはしやすいという気はしました。

いつかやってみたかったことでもあるんですよね?

石原:まぁ、実際はいろんなことをやってみたい気持ちはあります(笑)。

見汐さんと石原さんは世代が違います。いま石原さんがおっしゃったことで見汐さんが補足したいことはありますか?

見汐:私の世代は名盤といわれるものが並列に聴ける時代になっていたので、音楽の話をする時に石原さんによく言われたのは「リリースされた順番にあらためて聴いてみたら?」という話をされました。ランダムに聴くから発見できることもあるんですが、順立てて聴いていくと時代背景やその時代のムードもそうですし、この人がこのアルバムに参加した過程とか何枚目でこのプロデューサーに依頼してる、その意味とか、そのサウンドが生まれてきた必然性みたいなものが解ってくるというか。

石原さんの言う「チャラくない」ものの解釈として、70年代的なメンタリティがありますよね。ロックが、ものすごく雑食的に、いろんなものに化けていくような感じとう言いますか。プログレもクラウトロックもパンク・ロックもそうだし。

石原:80年代初頭のニューウェイヴにはそういうものを捨てた時期があるじゃないですか? いわゆるパンクからオルタナへの急激な流れのなかでロックのメンタリティがピークに達して、その反動でニューウェイヴが軽く意味のないものを目指した時期が短いながらもあった。

ディーヴォとか?

石原:ディーヴォはコンセプチュアルなことをやっていたんだけれど、もっと意味のないものもあったでしょ? それがよしとされている時期もあったんですよ。それは70年代の重みに対する反動ですよね。思想とか。

ある意味70年代のなかで否定されなければいけないものもあったんだろうなと思います。

石原:僕は当時その80年代頭の無意味さ、空っぽさみたいなものにも惹かれたんですよ。ポリティカルなものや思想的なロックとは実は無縁だったんです。ジャーマン・ロックにしてもフリー・ジャズにしてもサウンドの面白さという観点から入っていきました。歌詞に反応するようなことはそんなになかった。文学と音楽は別物と捉えてたので。だから、80年代の空虚さがすごく肌に合ったんです。84、5年を境にロックは無くなったのでやることが無くなったんですけど(笑)。
 そういう音があっても不自然ではなかったと思っているんですよ。去年やったにせんねんもんだいのリミックスも面白いのができたなと自分でも思ったんですけど、あれも作り終わってから、なんでこの音が80年代の初めになかったんだろうと思いましたね。

それはどういうことですか?

石原:80年代の初頭はサウンドも混沌としていてまだ細分化されてなかった。テクノ・ポップとかポストパンクやノイズ、ジャズっぽいのとか。そういう未分化な空気がニューウェイヴの時代にはあったわけですよね。そのなかににせんねんやマナーズみたいな作品があっても違和感はない。手法としてもすでにあったわけだし。当時の雑食性を現在において考えてみれば、プログレッシヴ・ロックというよりもむしろそっちのほうに近い。

ジェイムス・チャンスみたいなものではないですよね?

石原:違いますね。もっと表層的なモードみたいなものです。ポップ・グループみたいにラディカルなものでもないです。例えばウィークエンドみたいなものもあったわけじゃないですか? そういう形としてなら80年代にあっても不思議じゃなかったかもしれない。でも基本、古くさいロックを作りたくはないんですよね。つねに新譜を聴いているわけではないけど、肌で感じる時代性ってわかるじゃないですか。

そこでルーツに戻ってしまう人もいます。

石原:ルーツには戻りたくない(笑)。

ルーツに戻りたくない理由とはなんですか?

石原:自分になかに確固とした、思想面をも含むルーツがないんだと思います。やっぱりスートンズだとかジョン・レノンだとかがいる人は幸せだと思います。僕らの世代、グラム・ロックとかプログレって、そういうものが終ったあとですからね。

レピンク・フロイドやキング・クリムゾンもですか?

石原:フロイドやクリムゾンも70年代の人にとってはルーツなんだと思います。僕の場合は聴いてきたものが多岐に渡りすぎていたので。70年代にプログレを聴いていた人はいまだにみんなプログレですよ。ハード・ロックを聴いていた人はいまだにハード・ロックです。アメリカン・ロックもそう。でも僕はブリティッシュ・ロックもアメリカン・ロックも、シュガー・ベイブも、ちょっとおかしいチョイスの仕方で聴いていました。アモン・デュールとシュガー・ベイブは普通は一緒には聴かれないですよね(笑)。

ははは(笑)。レコメン系とかはどうですか?

石原:それはちょっと後なんですよ。高校、大学のときですかね。思想的な匂いが強かったので、レコメン系のクリス・カトラー、ヘンリー・カウやアートベアーズはそんなに好きじゃなかったんですよ。もっとダメなものが好きでしたね。

それはどうしてですか?

石原:そういう属性だから、としか言いようがないですね。何回も考えたことはあるんですけど、やはり明確な答えはでない。

作品には、元ゆらゆら帝国の亀川千代さんをはじめ、石橋英子さんのバンドでも一緒に演奏されている坂口光央さん、あだち麗三郎さんなど、腕利きの人たちが参加されていますね。 

見汐:メンツは自分が一緒にやりたいひとでなおかつ、プレイヤーとして本当に好きな人に声をかけてお願いしました。あだち君や坂口君はマナーズを始める以前に別のバンドなどで一緒にやっていたりもするんですが、録音に参加して頂くメンバーについてはすごく考えました。やってくれるかもわからなかったので、お願いするときはとても緊張していたんですけど、みなさん快く引き受けてくれました。

作曲は見汐さんが全部担当されているんですか?

見汐:4曲目以外はそうですね。最初にデモを作って、石原さんに投げて、話し合いながら作っていく作業でした。

今回はミニ・アルバムというか。4曲入りですもんね。

石原:本当はアルバムを作ろうと思ったんですけど、単純に曲が足りなかったんですよ(笑)。

この間ライヴをやられていたじゃないですか(笑)。

見汐:あれは録音後に作りました(笑)。

さっきから、シティ・ポップスという言葉を使っているのは、読者に誤解を生むかなと恐いと言えば恐いのですが、実際、「街」は、見汐さんの歌のなかで主題になっていますよね?

見汐:なっていますね。曲が先にあって作詞をするときに、いままで作っていた方法では書けないなと思いまして。どうしようかといろいろ考えて、テーマをひとつ決めるというのはいつもだいたいそうなんですが、そのテーマをどう広げていくか、言葉を書き出す前に頭のなかでごにゃごにゃと想像して、具体的に頭に浮かんでくる画像を待つという時間に比重を置いて、それがはっきり映像になった時点でそれを言葉にしていくというふうにして書きました。自分はいろいろな場所を点々としていて、8年前から東京に住んでいるんですけど、同じ場所に留まって暮らしている自分が考えていることが、年々自分から離脱していく感覚があるんですけど、そうう感覚を抽象的になりすぎないように具体的になりすぎないように含んで書けたらいいなと思っていました。まだまだできてないですけど……。

「街」という主題はずっとやりたかったんですか?

見汐:ずっとやりたかったですし、埋火をやっているときからも一貫したテーマでした。「場所」というか、「街」というか。今回はそこに「都市」というものも含まれてます。

石原さんもサウンドと歌詞の関連性を考えられてアレンジしたんですか?

石原:歌詞が先にあったわけではないので、とりあえず都会的な感覚のものを作りたかった。それで「シティ」なわけだけど「ポップ」かどうかはわからない。

いい意味でポップだと思いますよ。

石原:さっき言った洗練されたものというか、アーバンな感じっていうのは、自分のなかでは一貫してコンセプチュアルなものとして今回はありました。だから、歌詞と呼応してそうなったわけではなく、サウンドがそういうふうになったのは必然というか。

取材:野田努(2014年10月17日)

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