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interview with Back To Chill

interview with Back To Chill

バック・トゥ・チル、レーベル始動

──ゴス・トラッド、ENA、100マド、インタヴュー

三田 格野田 努    写真:小原泰広   Jan 23,2015 UP

「ベースであってベースでない」

「EDMほど俺はバカ騒ぎしないぜ! でもダブステップは男塾すぎる。俺はもうちょっとハウスなんだよね」みたいなひとがベース・ミュージックって言っているのかなって。


Various
GOTH-TRAD Presents Back To Chill "MUGEN"

Back To Chill/Pヴァイン

Amazon iTunes

さっきゴス・トラッドが「UKのものばっかり聴いていると飽き飽きとしてくる」って言っていたけど、ゴス・トラッドが出てきたのはUKじゃないですか?

GT:はい。

それはUKのシーンに対するアンビヴァレンスな気持ちがあるからなんですか? それとも本当にいまのUKはダメということ?

GT:いや、そういうわけじゃないです。例えば、UKダブステップがあって、「次はブローステップだ!」っていうとこのアンサーみたいな感じでダンジョ ン・スタイルと言われるダブステップがバーンと出てきて。 またみんな似たようなダンジョンの曲を作っちゃって。 そういう状況が、俺からしたらどっちも同じみたいな。さっき言ったのはUKだからってわけでもなくて、ひとつのものに一瞬火がつくとみんな作っちゃうっていうね。そうなっちゃうとつまんないなと思うというか。

それだけ出せるのがすごい気がしちゃうけどね。

GT:そうなんですけどね。そういう意味で、「ドラムンベースがつまんなくなった」ってエナくんが言っていたけど、自分もジャングルからドラムンベースを聴いていて、初期は面白かったけどだんだん型にはまっていって、なんかつまんなくなったなと思っていたのもあるし。アブストラクト・ヒップホップもはじめは歌モノが出てきたりとか、インダストリアルっぽいものが出てきたりとか面白かったけど、だんだんみんなコピーするのが上手になってきちゃう。最終的にはアブストラクトなSEが鳴っていて、そこにロー・ビッドなビートが入ってくれば良いみたいな雰囲気になったじゃないですか? それで「あー、面白くないな」って思ったんですよね。

同じことをいま、ダブステップに感じているってことなの?

GT:そう感じている部分もあるんだけど、やっぱり信用できるアーティストは面白いものを作るんですよね! 去年のクロアチアでの〈アウトルック・フェスティヴァル〉で〈ディープ・メディ〉のステージとかでやっても、カーンとかコモドとかはすっげえ変な曲を作っていて、「良いアーティストは面白い曲作んなー!」って思うんですよ。

そうだよね。去年〈ディープ・メディ〉から出たKマンの“エレクトロ・マグネティック・デストロイヤー”とか買おうか本当に迷ったもん。

GT:そうですよね。だからシーンそのものがっていうよりも、アーティストによる話だと思うんですけど。

最初の質問の「なぜいま〈レーベル〉なのか?」という質問に関連するけど、シーンを俯瞰してみるとやっぱりダブステップも紆余曲折があって、そのなかで〈バック・トゥ・チル〉が目指した良い音楽がここにあるとは思う。だけど、そういう意味ではみんながいろいろやっているじゃない? 例えばピンチは〈コールド・レコーディングス〉をはじめてテクノをやってみたりとか、さっき言った90年代回帰してバック・トゥ・ベーシック的になってみたりとかね。そういうシーンのなかで、何を思ってレーベルをはじめたんですか?

GT:俺が思う本物のベース・ミュージックをやりたいんですよね。

その「本物」って?

GT:ベース・ミュージックとかEDMとか言葉が出てきてごちゃーとしちゃって、いまってそれをさらにシュレッダーにかけた状態じゃないですか。で、俺はテンポ感覚とかって関係なくなっちゃっていると思っていて。パーティとしてはジャンルを付けたいのかもしれないけれど、〈バック・トゥ・チル〉に関しては関係なくやりたいと思っているんですよね。本当に良いベース・ミュージックというか。
 例えば、俺はトラップはヒップホップだと思うから、ベース・ミュージックだとは言いたくないんですよね。ベースありきなのかもしれないけど、トラップはベースありきじゃなくていいというか。俺が思うかっこいいベース・ミュージックっていうのは、ベースがあってグルーヴがあって踊れるものというか。そこが重要だと思っているんですよね。

あんまり跳ねるの好きじゃないでしょ? トラップもそうだし。

GT:うーん。トラップって雰囲気の低音なんですよ。ベース・ミュージックというよりは低音が鳴っているだけというか。

100:ベースラインがないんだよね。

GT:そうそう! 俺はやっぱりレベル・ファミリアで秋本(武士)くんのダブのベースを聴いてきて、ダブを通過したひとの奥深さがやっぱり自分にフィードバックされているんです。UKの子たちのすげえ曲って、レゲエとかを通過しているというか。日本のプロデューサーが持ってくる曲を聴いて感じるのは、やっぱりそこのセンスがちょっと足りていないように聴こえるんです。雰囲気の低音は鳴っているし、上もちゃんとプログラムされてメロディもちゃんと乗っているんだけど底がないというか。そこってすごく重要だけど、一番わかりづらいんです。

日本で行われている〈アウトルック・フェスティヴァル〉で〈バック・トゥ・チル〉のクルーを見ていると、他の日本のアーティストのなかで、レゲエっぽさが全面に出ていないという意味で、浮いている印象があります。でも、そのレゲエっぽさがあまり感じられないから、僕は〈バック・トゥ・チル〉が好きだと感じる部分もあるんですよ。

GT:俺が秋本くんとレベル・ファミリアをやっていて考えていたのは、わかりやすいレゲエっぽいベースのところを一番聴いてほしいわけじゃないんですよ。例えば、いわゆるレゲエのベースラインのところじゃなくて、一番ドープなところはワンコードで「ドゥー、ドゥー、ドゥー、ドゥー」って潜って行くところだったり。実はそこが一番ヤバいダブのベースっていう認識ですね。テクノでいう盛り上がってからキックとベースだけに戻ってくるところが一番かっこよくて、「うぉー! きたー!」ってなるじゃないですか?

おー、なるほど。

GT:レイヴとかでも、「わー」ってなって、上モノが一切なくてキックとベースだけになったスッカスッカなところが一番グッとくるんですよ。

俺はS-Xの“ウー・リディム(“Woooo Riddim”,〈Butterz〉,2010)”みたいにリズム・トラックだけで成立する曲がすごく好きなんですよ。そういうところか聴くと、〈バック・トゥ・チル〉は上が多いと思う。雰囲気を作る曲というか。

100:ジャーマン・トランスだ(笑)。

だからもっとリズムだけで勝負できる曲があってもいいと思う。

GT:たしかに今回のコンピレーションはそうかもしれないですね。ただ、アルバムとして考えたときに、やっぱそういうアップ・ダウンが欲しかったんですよ。

全体的にイントロっぽい曲が多いなと思ったんですよ。1曲目のもつイントロとしての感じもわかるけど、8曲目でもどこから入ってもはじめられそうな気がするので、いまいったようなリズムだけで攻められる曲があったら嬉しいなという感じはあります。

GT:なるほど。でも自分はそういう意味でドラムとベースの良さが出ている曲をやりたいんですよ。

そこは日本人が一番理解していないところだと思うんだよね。

GT:やっぱり日本人って上モノのキラキラさとか、前に出ているドラムとかに反応しやすいんですよ。だから音数が多くなったりするから、余分なパーカッションを減らして、その隙間のグルーヴをベースで動かしたりしたほうがいいんじゃないと思うことが多いので。

Jポップを聴いていても本当にリズムが関係ないと思うしね。そこを聴いているひとがいないというか。俺は日本からあるリズムのジャンルが出たら絶対にすごいと思う。なんだかんだ言ってもいままではお手本があってやってきたでしょ? ダブステップやジュークもそうだけど、日本発のリズムってないじゃないですか? これはやってほしいよね。

E:この前話していたんですけど、ゴスさんも最近やっている85とか170のドラムンベースのテンポで、ダブステップとかけ離れた感じの曲をヨーロッパでDJとして現場でやっているひとがけっこう少ないんですよね。

GT:BPM85の遅い4つ打ちってある意味、ヒップホップのテンポなんだけど、ドラムンベースのグルーヴにもノれるし、隙間もあるからダブステップ的な良さもあるというか。だけどテンポ的には全然違うというか。それでミニマル・テクノみたいなアプローチもできつつっていうのがこの3人で流行っていて(笑)。

E:そういう曲を海外でかけているひとが少なくて、ゴスさんと「ヨーロッパで実際にかけてみてどう?」っていう話をしていたんですよ。反応はよくも悪くもイベント次第なんですけどね。ゴスさんと俺がヨーロッパで出るパーティって全然違うフィールドでのブッキングだからそこでの反応も違うけど、去年の10月のヨーロッパ・ツアーでは「どうやって踊るかわからないけど楽しかった!」っていう良い意見があったんですよ。

おっ! 日本発いくか?

GT:そういうことをパーティを毎月やっているわけだから、試しながらできるわけですよ。

なるほど。そのリズムが〈バック・トゥ・チル〉のテーマだということはベース・ミュージックのひとつの解釈として面白い話だと思います。

GT:それが日本発になるのかわからないけど、やらないとどうしようもないというか。そういう意味で現場があるのはありがたいです。それを作ってキープしていかなきゃいけないし、それを裏で話していくことはやっぱり大事だなと思います。若い子たちも「ゴスさん、最近変なテンポやってますよね? 僕も最近作ってみてて」っていうひとがけっこういるんですよね。狭いながらそういうコミュニティも作っていきたいから。

その小さいコミュニティがもっと大きくなってほしいとは思いますか?

GT:もちろんそうですね。まずは、実際に作品をリリースしなきゃいけないと思うから、今新しいアルバムも作っているんですよ。「こういうBPMで、こういう曲をやってみんなで楽しんでいます」って文章にして書きたくもないとうか(笑)。

そりゃそうでしょ(笑)。

E:でもいまみたいな感じになったときに、最初にこれをやろうって相談があったわけじゃなくて、基本的にみんな勝手にやってるだけなんですよね。この3人も音楽的に共通する部分があるようでないのかもしれないから、自由にやっていて面白いと思っている部分がリンクしただけというか。

GT:100マドくんとかはBPM100の曲をずっと作っていて、それを「85まで落としてみたら?」って薦めてできた曲が“グライミー”なんですよ。

100:そうそう。これはもともとBPMが100だったんですよ。

さっき秋本くんの話も出たけど、ジャマイカの音楽ってたとえ実験的でも大衆音楽じゃないですか? キング・タビーを誰が良いかって言ったというと、まずはそこで踊っているファンであって。

GT:それはすごくあると思うけど、それをわかり易くするために自分のやりたくないことやるかってなると別なんですよ。さっき言った遅いビートにイケイケのドラムンベースをミックスしたらわかってくれるんじゃないかとか(笑)、そこまではやりたくないんですよ。でも、何かしらのきっかけみたいなものは自分でセットを作っていますけどね。チルな部分とアガる部分をイメージしながらやっています。でも、日本の場合だと作品を出してからなのかなと。

〈バック・トゥ・チル〉は、高橋くんの世代にもちゃんと伝わっているの?

ひとつ言えることは、僕は〈バック・トゥ・チル〉は先鋭的なことをやっていて好きだけど、日本のベース・シーンと言われるもののなかで、他に良いと思えるものがあまりないというか。それはベース・ミュージックという言葉の使われ方にも表れていると思います。〈バック・トゥ・チル〉で使われているような意味とは別に、「ベースが鳴っていればOK」みたいな解釈でその言葉を捉えているひとも多いですからね。深い解釈も安易な解釈もあるから、僕は文章を書くときは「ベース・ミュージック」って鍵括弧付きで使うんですよ。

『ベース・ミュージック・ディスクガイド』というカタログ本も、ダブステップもマイアミ・ベースも同じ「ベース」という解釈だったよね。そういう認識なの?って思ったけど。

100:ベース・ミュージックって言葉が出てきたとき、ゴスは最初っから批判的だったよね。「ベースがない音楽ってなくない?」みたいな。

GT:いま適当に思い付いた名前だけど、〈ベース・アディクト〉みたいなパーティってたくさんあるじゃないですか(笑)? そういうパーティって4つ打ちのエレクトロとかもベース・ミュージックに入っちゃうんですよね。

100:いままでだって低音がない音楽がなかったわけじゃないもんね。

GT:そうそう。だから、「これをベース・ミュージックっていうと全部じゃん」ってね。

現在のタームでいえば、「ベース・ミュージック」って言葉はイギリスから広まったんだよね。ダブステップっていう言葉を使いたくなくなったときに、その言葉が出てきた感じがしたな。俺はダブステップよりもグライムが好きだったんですよ。そういうときに「ないまぜ」というか、ベースって言えば済むかなってなった気もしますね。

GT:それはあるかもしれないですけど、ひと括りになりすぎている感じもあって。

100:言葉として便利すぎるというか。ダブステップからディープで暗いところを切り離したいひとたちが言葉を広めた印象が当時はありました。ブローステップだったりトラップも同じ感じで、ダブステップのアンダーグラウンド感が自分たちには違うなってアーティストが使いたがっているんだろうなと思いますね。

逆にダブステップがEDMみたいなものになっちゃったから、アンダーグラウンドのひとたちが前向きにベース・ミュージックって言葉を使っているのかと思っていたな。

100:もちろんそういう前向きな意味がある一方、「EDMほど俺はバカ騒ぎしないぜ! でもダブステップは男塾すぎる。俺はもうちょっとハウスなんだよね」みたいなひとがベース・ミュージックって言っているのかなって。でも、そういう〈ナイト・スラッグス(Night Slugs)〉とか〈スワンプ81(Swamp81)〉みたいな格好いいレーベル以外のひとも、ベース・ミュージックって言葉をトレンディに使いやすくなっていて意味がわからい状況になっているんじゃないですかね。

GT:いまとなってはベース・ミュージックもなくなってきたんじゃない? UKの俺も周りのやつとかはサウンドシステム・ミュージックって呼んでますね。

100:それはベース・ミュージックと線引きしようとしてるんじゃないの(笑)?

GT:なるほどね。でも、実際に〈バック・トゥ・チル〉はサウンドシステムを入れてやっているからね。

まぁでも、秋本くんとゴス・トラッドが揃うと男塾っぽくなるよね(笑)。

GT:ハハハハ!

このコンピレーションにも女性はいないんでしょ? わりとドラムンベースでは踊るのが好きな女のひとが多いじゃない? そのなかから作るひとが出てこないんですかね。

GT:あんまりいないですね。

100:いてもやめちゃうケースが多いかな。

E:まぁでも作る側のひとはどのジャンルもそうじゃないですか?

海外は女性で作るひとが増えてきたよね。

日本でも何人かいますよね。

GT:最近はソフトウェアからアナログに戻っている感じがあるじゃないですか? パソコンでプラグインを使ってやる作業が苦手な女のひとって多い気がするんですよ。でもドラムマシンで打ち込んでいくのはできると思う。エレクトロ・パンクのピーチズはローランドのMC-505一台で作ったって言ってましたね。

E:キョーカさんはわりとアナログ派ですよね? 年明けのライヴもものすごく良くて。いままでのメランコリックな部分がなくなって、〈ラスターノートン(Raster-Noton)〉で一番暴力的な感じになったというか。

彼女はリズムが弱いかなと思っていたから、ドローンをやればいいと思ってた。

E:そっちじゃなくてまさに暴力的な感じにいきそうな気がしましたけどね。年明けのハッピーな雰囲気をぶち壊してましたよ。

ダイヤモンド・ヴァージョンの影響なんじゃない?

GT:いまはインダストリアルの音がすごくきている感じがあるから、ダブステップでもそっちっぽいやつがあるんですよ。いまのコモドもバキバキな音ですよね。ディープなダブステップなんだけど、鳴っている音はインダスっぽいっていうか。この前マーラがかけていたダブもフランス人って言っていたけど、昔の〈ワードサウンド〉みたいにダークなんだけど鳴っているキックとスネアがインダストリアルみたいで、さらに音がスカスカというか。

エンプティセットみたいなではなく?

GT:ああいうパキパキな感じの音じゃなくて、音に丸みはあるんだけど歪んでいるみたいな。

タックヘッド(『テクノ・ディフィニティヴ』P95)とか?

GT:雰囲気的にはそういう感じはしますね。マーク・スチュアートのようにハードコアなんだけれども、アナログ的な丸みがあるというか。

ダブが現代的にちゃんとアップデートされている感じなんだ?

GT:うん、そうれはありますね。

去年〈トライ・アングル〉からリリースされたSdライカ(Sd Laika)の『ザッツ・ハラキリ』は、ゴスさんがノイズをいまも続けていたらこうなっていたかもな、と思わせるような作品でした。いろんな音がサンプリングされたノイズ音にBPM140のビートが入ってきたりするんですよ。

GT:エイフェックス・ツインがこの何年かで面白いと感じたのはSdライカって言ってたね。

そうなんですよ。ガンツもそのアルバムを評価していました。Sdライカとゴスさんの曲を比較してみると、Sdライカにはビートが少しリズムとぶれたり、音がチープな感じになっていたりと「軽さ」みたいなものがあるんですよ。これはゴスさんの曲などではあまり見られないと思うんですが、こういう表現にも興味はありますか?

GT:うーん、「軽さ」ね……(笑)。

俺が最初にジャーマン・トランスっぽいと思ったのは、2013年に〈ディープ・メディ〉からでたゴス・トラッドの“ボーン・トゥ・ノウ(Born To Knoow)”ですよ。あの盛り上がるところにジャーマンっぽさを感じたんですよ。「軽さ」ではないかもしれないけどね。

「軽さ」のイメージでいうと、アントールドが〈ヘッスル・オーディオ〉から“アナコンダ”を出した感じに似ていますかね。

E:シリアスさが薄いというか、そこの微妙なバランスだよね。

ちなみになんで“ボーン・トゥ・ノウ”だったんですか? 気になるタイトルですよね。「何かを知るために生まれてきた」って何なんだろうって思って(笑)。

GT:もう雰囲気ですよ。まず最初に、他にはないタイトルをつけようと思っているから、「ボーン・トゥ・ノウ ダブステップ」で検索して出てきたらナシなんですよね(笑)。

あと、さっきのパチェコ(※ヴェネズエラ出身、スペイン在住のアーティスト)のコンピレーション・ミックスにエナさんと100マドさんが入っている理由も気になりました。

GT:このきっかけは100マドくんとパチェコが出したスプリット・アルバムを2009年に出して繋がっていくんだよね。

E:俺はその作品でリミックスとマスタリングをやってるんですよ。それで自分の曲がミックスで使われたのはパチェコとやりとりしていた縁ですね。

100:それで僕らの曲が入った感じです。もういまはこのパチェコもポクズもスペインにいて。

E:ヴェネズエラは治安が悪すぎてって言ってましたね。

チャンガトゥキ(※アルカも影響を受けているヴェネズエラのゲットー音楽)やクドゥロ(※アンゴラのダンス音楽)のコンピを買ってもこのひとたちは入っているから。ワールド系とダンス・ミュージックが混ざったところには必ずいるっていう(笑)。

100:もういまは名前も変えちゃって、昔のクリアーみたいなエレクトロをやっているんですよ。あそこまではビート感はないですけどね。

でも彼らの曲ってベースが薄いんだよね。

100:そうなんですよ。いまはより一層ベースがない感じです(笑)。

E:そのコンピに入っているカードプッシャー(Cardopusher)はいまは〈スワンプ〉っぽいエレクトロみたいな感じなんですよ。

GT:けっこうみんなどっかに行っちゃった感があるよね。なんか俺はさっき言ったような曲を去年はずっと作ってたけど、もう一度いわゆるダブステップというものを見直して年末くらいに1曲作っていました。それを送ったら反応が良くて、こんど〈ディープ・メディ〉からまた12インチを出すことになったんですよ。自分のなかで6〜7年はどっぷりで、時間もなかったからとりあえずBPM140のダブステップを作って、リリースに備えて、ツアーに出てという繰り返しで他を見る感覚もなかったんです。おととしくらいからまたいろいろ聴き出して面白くて別のテンポのものを作りはじめたというのがあって、また一周してダブステップが作りたくなったというか。ベースはそこにあるから、そこを進化させたかったというのもあるし。ダブトロとかはそれ一本で作っているし、海外の〈アウトルック〉とかに行くとやっぱり面白いものは生まれているって感じるんですよ。そこで曲を送って繋がったりっていうのをこれからも続けなきゃなと思いますね。

質問:高橋勇人=■/野田努=▲/三田格=●(2015年1月23日)

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