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interview with NRQ

interview with NRQ

音楽の真似ごと

──NRQリレー・インタヴュー 4 中尾勘二編

松村正人    Feb 17,2015 UP

音楽を生け捕りにするのは難しいですよ。名曲は歩いているときに思いつくんですけど、ほとんど忘れます。


NRQ - ワズ ヒア
Pヴァイン

RockJazz

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中尾さんはNRQでここしばらく曲は書いていませんね。

中尾:今度出るアナログ盤用に曲を書いたんです。まあ駄曲ですけどね。

アナログ盤だけに収録するんですか?

中尾:そうみたいです。

どうしてまた?

中尾:もっていくのが遅かったからじゃないですか? それと、みんなにくだらない曲だということもちゃんと説明しちゃったから、みんなあまり真剣にとりくめない。

私はファーストの“台湾のおじさん”はよい曲だと思いましたよ。

中尾:あれは偶然できたようなものですから。あの曲は相当古いんですよ。パソコンでいろいろつくっていた頃の曲で、オクラ入りになりかけていたんです。それが、みんなが曲をもってこいとあまりにもうるさかったので、しょうがなくもっていったんです。

いまはパソコンでつくらないんですか?

中尾:環境を整えようと必死でとりくんではいますが、なかなか難しいですね。ネットをやっていないでしょ? いまのソフトはネット認証、ネット登録なので現行のものはまず使えない。それでちょっと前のMiniMacを2台買ってしまいました。クラシック環境で使える1台とOSXになりたてのヤツ。

がんばって2台買うなら、その分でネットを引きましょうよ(笑)。

中尾:ネットに接続するとアップデートの渦に巻き込まれるだけです。それくらいなら、壊れなければなんとかなるっていうのでいきたいんですよ。それでうまくいかなかったら、OS7.56くらいに戻れば済むハナシです。

OS7代の可動品があるんですか?

中尾:実家にあるんですよ。モノクロで、ヒューレット・パッカードの可動品のプリンターもあるので、それでMIDIといっしょにできる環境はあるわけですから、いざとなればそれを立ち上げればいいだけです。これからはコンパクトにいきたい。ソフトも新しくしたいなと思っているんですが、それがなかなかうまくいかない。プリンターが問題というのもありましてね。何も考えずに近所のハードオフでキャノンのプリンターをドライバーと説明書付570円で買ったんです。そしたら、OSが10.4くらいの中途半端なヤツで、最新のOSでもクラシックの環境でも動かないんです。

過渡期だったんですね。

中尾: OSXのMiniMacではプリントできるんだけど、クラシック環境のMiniMacではソフトがインストールできない。だったらPDFアウトにすればいいとか、いろんな技を試しているところなんです。

総じて中尾さんの家の外とは互換性のないシステムですね。

中尾:それでも、つくった曲を譜面でプリントアウトしてひとに配れる体制は復活させなきゃいけないと思っています。ここ6、7年そういう環境から離れていますから、それはいつでもできるようにはしないといけないとは考えているんです。外界と繋がるにはそれしかない。なんでもいいからインチキな譜面をつくってばらまいて、適当にやってもらう。

楽曲を自動的に譜面化するソフトを使われているんですか?

中尾:むかしはオールインワンのソフトはあまりなくて、シーケンスはシーケンスだけ、譜面は譜面だけ独立していたんですが、そこで手弾きでデタラメなアウトラインの雰囲気だけをつくるんです。それを頭のなかで四捨五入し、みずからクォンタイズをかけながら省略しつつ譜面ソフトで打ち込んで、正しいかどうかわからないから、再生しながら聴いてたしかめる(笑)。

めんどうな話ですね。アナログに収録される新曲もそうやってつくったんですか?

中尾:それはもうできていました。鼻歌ですぐに思いついて、それを忘れなかった。だいたい駅で切符を買ったときに忘れちゃったりするんですけど。ワッハッハ。みなさんは譜面を書けたり、もしくはiPadでつくっちゃったりするんだけど、私はそれはムリなので、公衆電話で歌って自宅の留守電に録音する手段も何回か試みましたが家で聴いてみると何をいっているのか見当がつかない(笑)。音楽を生け捕りにするのは難しいですよ。名曲は歩いているときに思いつくんですけど、ほとんど忘れます。たまたま生け捕りに成功した例もあるんですけど、たいした曲じゃなかった。いま私がいる従業員2名の会社で健康診断を受けに行くのに三鷹駅から会場の役所の施設まで歩いていたときに思いついたんです。そのときのシチュエーションもふくめ憶えています。

私はNRQ色をあの3人にもっと出してもらいたいと思うし、かたちになっていないものもふくめ、その因子はいっぱいあると思うんですよね。

そのときは曲の全体像が出て来るんですか?

中尾:そうです。つまり何かに似ているんですよ、ローランド・カークのつくる曲が何かに似ているように(笑)。断片のはっきりしたセオリーに適わないコラージュのようなものです。

それでも、コラージュにおける断片の位置関係には中尾さんは独自なものがあると思いますが。

中尾:それは音楽がわかっていないからヘンになっちゃうんですね。私はぶつかる音がきらいじゃないし、コードに合わない音もOKだと思っている、それがみんなを悩ませるんです。関島くんに「ここぶつかっているよ?」といわれたこともありますが、むしろぶつかっているほうが好きだったりするからヘンになっちゃうんですね。

作曲された曲についてそういう指摘を受けることはあるんですか?

中尾:しょっちゅうです。あとは、鼻歌を12音に置き換えるというズレるというのもあります。平均律で(音を)拾って調整するとニュアンスがちがってくることはありますね。先日「マヘル(Maher Shalal Hash Baz)30周年」のライヴに呼ばれて、短い曲ばっかりやったんですけど、「譜面が読めないからこれはやんなくていいや」と思って、ずっと座っていようとしたら、(工藤)冬里くんが1曲ずつ説明してくれるんですよ。メロディを弾いてくれたり歌ってくれたりして。そのメロディを聴かせてくれたときに歌ってごらんっていわれてマネたら、冬里くんは「低いでしょ?」というわけです。冬里くんは譜面が頭に浮かぶひとですが、それでも自分で歌って鍵盤でメロディを拾うと実際の音程よりもちょっと低いらしい。

頭のなかの音と身体で鳴らす音のあいだにズレがあると。

中尾:向島ゆり子さんにも私はちょっと低めに取っているといわれたことがあります。あとで聴き直すと気持ち悪いからわかるんですけど、それで12音に割り振っていくと、落とし所がズレていってヘンなことになっちゃうことがあるんですよ。

それがわかっていれば、作曲時にクォンタイズすればいいのではないですか?

中尾:それはもう諦め、それにより自分でも思ってもいない譜面ができあがるんです。だからやる気がしない反面、演奏によっては意外と面白くなることもある。

譜面を牧野くんや吉田くん服部くんに渡して、試しながら微調整していく?

中尾:お任せです。気になるところがあったら指摘しますが、私自身多重録音をしているときのことを考えたら、そこまでやりませんからそうなったらなったでいいんです。他の団体で「その曲はそうじゃない」といったことは1、2度ありますが、NRQではまだありません。NRQを思い通りに動かせないという悩みが牧野くんにはあったりするんですが、もうこの曲をやめようと私からいったことはありません。向こうはそう思っているかもしれないけど(笑)。

でももう5、6年はつづけてこらたわけですからね。

中尾:まだ何かでるんじゃないかと思っていますけどね。

どういったことか、具体的にことばにできますか?

中尾:私はとにかく、あのひとたちの色を出したい。自分のことをやるなら、多重録音という基本が私にはあるからいいんです。そういう意味ではあんまり曲をもっていきたくないんです。むしろNRQ色をあの3人にもっと出してもらいたいと思うし、かたちになっていないものもふくめ、その因子はいっぱいあると思うんですよね。ヘタにヘンな私の曲をやって、それが面白いとなったらそれはちがうと思うんですよ。「中尾がやっている面白いバンド」にはしたくないんですよ。彼らはネタが枯れたとかいったりすることありましたけど、まだまだだと思うんですよ。それをもっと出してほしいから私の曲をあまりもっていきたくない。もっていくなら、NRQを想定して新たにつくらなきゃならない。

それは今後の課題ですか?

中尾:そうですね。MiniMacがどうのこうのって体たらくですから全然進んでいません(笑)。生きているうちにはできないかもしれませんが。

取材:松村正人 (2015年2月17日)

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