ele-king Powerd by DOMMUNE

Home >  Interviews > special talk : tofubeats × Yoshinori Sunahara - 音楽を止めないで!

special talk : tofubeats × Yoshinori Sunahara

special talk : tofubeats × Yoshinori Sunahara

音楽を止めないで!

──トーフビーツ×砂原良徳

野田 努    写真:小原泰広   Feb 18,2015 UP

俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。──砂原良徳
データもクレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。──トーフビーツ

インターネットはいろんなものを破壊しちゃったから。


tofubeats
First Album Remixes

WARNER MUSIC JAPAN INC.

J-PopTechnoHouseEDMExperimental

Amazon iTunes

砂原:そういうことができていたのって僕らくらいまでだよね。僕より下の世代とかだと、ACOとかスーパーカーのナカコーとかさ、あのへんの世代って多いじゃん? あの世代になってくると、それで生活できていたひとと、そうじゃないひとが分かれてきている感じがするんだよね。そのくらいからそうなってきていて、現代では、ほとんど難しいっていうことだよね。

そういう意味ではトーフビーツは、シーンというか現在に対して問いかけをしている存在でもあるんだよね。

T:あと、あんまり言いたくはないんですけど、「こうこうこうだから買ってくれ」って言うって感じですけどね。

砂原:難しいよね。昔だったら普通にCDっていう形しか方法がなかったから、お金を出していたんだけど。

T:いまは形がどうこうっていうよりも、あんまりみんな聴いてもないって気もしますし。

砂原:シーンとか音楽の内容とかよりも、システムの話になっちゃうけど、昔だったらCDやレコードの棚とかプレイヤーを買ってさ、そういうことをやらなきゃいけなかったじゃない? 音楽を聴くためのシステムとして、棚からプレイヤーから全部あったってことなんだけど、いまそれをきちんと代用できるものがないんだよね。

T:たしかに。

砂原:たとえば、iTuneで買っても歌詞カードはどこで見るんだよっていう。

T:クレジットも見れないし。

砂原:そうそう。そういうところがパーフェクトにできるシステムが存在していないわけ。お金を稼ぐことだけがその唯一の道じゃないと思うけど、世界中の音楽ビジネスを守っていきたいってひとがいたら、ある程度は合意して統合したシステムを作らないといけないと、守れないような気がしているんだよね。
 だから、「いまハイレゾって言っとけば、とりあえずは稼げるか」みたいな雑なビジネスをしようとしているひとはいっぱいいるでしょう?

ハハハハ。

砂原:そうじゃないひともいるけども、せっかくハイレゾにするんだったら、もうちょっと音楽が周りのことも巻き込んでカルチャーを作ってきたことを認識して、いままでできてきたことを当たり前のようにできるようにしなきゃいけないんじゃない? なんでそうしないのかなって思うんだけど。

T:それはホントにマジですよね。

砂原:音だけ良くなったらいいと思う?

T:僕、ハイレゾはあんまり信仰していないです。

砂原:まぁ、音が良いのはいいんだけどね。

T:先日、小室哲哉さんと対談させて頂いたんですけど、作っていたときの音質で聴ければ大丈夫だよっていう。

砂原:それはそうなんだけど、歌詞カードもクレジットもないし。ヴィジュアル的に音楽を聴くためのきっかけみたいなものを与えてくれないとうかね。

T:ハイレゾの機械はデカいし、液晶画面は小さいから、iPhoneよりもテンションが下がるんじゃねえかって思いますよね。

砂原:それでなんでiPodクラシックがバカ売れしてくるかっていうと、入れる曲そのものがなかったりとか、電話とプレイヤーが一緒になっていると、電話がかかってくると音楽を止めなきゃいけないからっていうのもあるんじゃないかな。「音楽を止めないで」って言っているのにさ(笑)。

T:そうそう。それはありますね。

砂原:あるでしょう? だから音楽プレイヤーは独立する必要性があると僕は思うんだよね。

友人にハイレゾでまた音楽に夢中になっている男がいて、それなりに魅力はあるんじゃないの。

砂原:ハイレゾ自体はそうなんだけど、なんでそこで止まるんだってね。

T:結局はヘッドフォンを売るためとか、そういうところに着地しているような気がしてて。

砂原:カルチャーを守ろうとか育てるっていう気があまりなくて、「とりあえずお金になるものはなんだ?」ってところしか考えていない感じがしちゃう。音が良いことだけで満足できるひともいるとは思うんだけどね。

T:自分のインタヴューでも言うんですけど、「最近は音楽そのものがカッコいいと思われていないんじゃないか?」説というものがあって。最近、マネージャーと〈トリロジー・テープス〉の話しをしていて、あれを聴いてカッコいいって話せるひとが国内に数百人くらいしかいない。「これをどうすればいいんだ!」っていう話になっても、「どうすることもできないよね」ってなるんです。そもそも「CDを出しました、買ってください」ってところを、昔に比べたら聴いているひとの10分の1くらいしか音楽をカッコいいと思っていないんじゃないかなって。

砂原:テレビを見ているとさ、これから音楽が流行りますってなってCDプレイヤーが出てきて、芸人が「えっ! いまどき!?」って言うシーンを何回も見てるよ。だから一般的な考えだと、CD買ったり、CDプレイヤーを持っていることって「いまどきそんなことあんの?」みたいなことなんだよ。

T:電車で隣のひととかを見ていても、携帯でYouTubeを開いて曲を聴いてる、みたいな。

それはホントに多いよね。ほとんどスマホでYouTubeで音楽聴いているよね。

T:それが悪いこととは言えないんですけど。でも昔みたいに、ウォークマンでカセットのミックスを聴いてる俺ってもうないわけで。それはどうにかならないのかってよく思うんですけどね。

砂原:YouTubeが潰れるだけで、状況は随分と変わると思うけどね。

T:YouTubeが潰れても状況は変わらないんじゃないですか?

砂原:いや、変わってくると思うね。YouTubeに情報が一極集中で蓄えられているのが僕は問題だとおもうんだよね。だから、それが分散していけば違ってくるんじゃないかな。投稿系はここで、聴く用の音楽はここ、みたいにね。でも、YouTubeがどういうものかよくわからないからね。日本のものでもないし。

トーフビーツの場合は、そこでネガティヴなことも言っているけど……

T:恩恵も超受けている世代でもあるんですよね。

砂原:もしYouTubeに違法アップロードがなくなったとしても、プロモーション的なことはそこでやるわけじゃん? そういう合法のものもあるわけで、それはこっちが認証するかしないかの話だから、それはそれでいいと思う。でも買ったCDを違法に拡散する権利を俺は獲得したと思っているひとがいるけども。

T:そのおかげで、僕たちが中高時代の音楽を聴けた側面も無視はできないというか。

砂原:それを言ったら、レコード時代からカセットのコピーとかはあったし。レンタル・レコード屋で堂々とカセットが売られていたりとか。そういうことは昔からある程度あったからね。みんながそうなったっていうのが問題なんだよね。

T:結局、それが普通になっちゃって、たまに大学生に会うんですけど、CDを買ったことがないっていうレベルのひともいるんですよ。CDドライヴがついていないパソコンもありますからね。

砂原:俺がいま高校生だったらCDとか絶対に買わないと思うよ。

T:でも、データも(高校生にとっては)クレジットカードがないから買えないしっていう話なんですよね。そうなるともう八方塞がりで。

砂原:なるほどね。カードがなきゃ買えないか。

T:母校の高校生に話を聞いたら、みんなPCでDJをはじめているんですよ。オートでピッチを合わせてくれるやるです。「曲はどうしてるの?」って聞くと「サウンドクラウドで落としてます」みたいな。どうしよう?ですよね(笑)。何もかける言葉がない、みたいな。

トーフビーツはインターネットの恩恵を授かりながら、アナログ盤も必ず出すじゃない? ホント引き裂かれているっていうか。

T:それはアナログを自分が買うからなんですけどね。

トーフのアナログ盤って売れているんだよね。CDもちゃんと売ってるでしょう。

T:でも、絶対的な量でいうと、1万って大学のひと学年より少ないわけですから。

まぁ、いまの時代を考えると、それだけでもね。

T:普通に考えて、1万売れたら僕らも「おー!」ってテンションが上がるんですけど、俺の母校のひとたち全員にCDが売れたらオリコンでデイリー1位だって思う虚無感というか。幕張メッセでフェスをやってて、ここにいるひとたち全員がCDを買ったらオリコンで絶対に1位って思う、あの感じが……。

砂原:いや、そう考えると1万なんて規模はすごく小さいよ。業界はそれに馴れちゃって、「1万、うぉー! やったー!」って感じかもしれないけど、冷静にみたら全然そうじゃないからね。

T:フェスもいいんですけど、「CDは買わなくて4千円のTシャツを買って帰るって、なんなんだそれ!?」って。

砂原:ハハハハ。

T:この状況はほんとにどうしよう?って思います。自分がそう思ってても、そうじゃないひとが大半だとしたら、俺にはこれはどうすることもできんと。でも「どうにかなるんやったら、一応ここにおったらおもろいかな」みたいな。この状況がどうなるか見てみたいなと。

砂原:昔は音楽を楽しもうと思ったら受け手に回ろうと思うことが多かったんだけど……

T:いまはみんなやり出すんですよね。

砂原:そう。やるってこと自体が音楽を楽しむ形に変わってきている。だから、電子楽器とかはそれなりに売れていると思うんだよね。

T:だから高校生のDJがめっちゃ増えているんですよ。

砂原:パソコンに何かをくっつける形で何かとりあえずはできるじゃない? そう考えると、受け手になるよりも送り手になって楽しもうってひとが多くて。たとえば、20人、30人のサークルみたいなものが星のように日本中にあってさ、定期的にイベントをやったりして。そこから爆発的に広がっていくことは稀だと思うけど、そういうものが点在していて音楽自体の勢いは、そういうところに担保されていると僕は思うんだよね。

T:楽器メーカーの調子がいいみたいな話ですよね?

砂原:だから消費していくという形だけじゃくて、消費しながらも送り手に回るっていうそういう状況に変わってきている感じがするかなって。

T:でも、純粋に音楽ファンとしてインストラクターと生徒だけみたいになるのって気持ち悪いなって気もするんですよね。

砂原:それはわかるね。

T:いま、DJスクールってむちゃくちゃあるんですよね。道玄坂にも大きいのができて。

砂原:学校を批判するわけじゃないけど、DJスクールって何を教えてくれるの?

T:知らないですよ、そんなの(笑)。言い方が悪いですけど、DJなんて30分あれば仕組みなんて全部わかるんですから。あとはそれをどうするかって話じゃないですか? ギターとかと全然違いますよ。

砂原:それこそ寺とかに3日くらい入って、最初の30分だけDJのインストラクションをしてあとは座禅でも組んで叩かれたりした方が、よっぽどいいDJができそうだよね(笑)。

T:座学みたいな話ですからね。

砂原:でさぁ、いろんなひとがいるんだけれども、たまにそういう若い子と接して「何かやってみなよ!」って言っても何をやっていいのかわからない。でも、何をどうやるかっていうことはみんなわかっている。この状況は異常だなって僕は思うんだよね。

T:最近よく言うんですけど、DTMをやっているひとは多いと。ただ、面白くないひともいると。

砂原:面白くないひとのほうが多いよ。好みは増えたよね。

T:でも、その溝は何なんだって話をみんなでしてたんです。たとえば素人とひとが、プロの描いた丸と素人が描いた丸を見分けられんのか、みたいな話で。僕らもDTMで作っている。それで若い子も作っていると。その間の違いを売上っていう意味でもそこまでちゃんと説明できていないし。

砂原:それはでも、説明できるものであったらつまらないと思うね。

T:でもそれで結局、「打ち込みってあんまりうまくないひとが多いんだ」ってイメージがついていって、「打ち込みとかダサくね?」みたいになったら大丈夫かよって思います。いまって音楽のほとんどが打ち込みですからね。いまのアイドルとかもそうですけど、よくわからないアイドルがいっぱい出てきて、良いアイドルもいるけど、「アイドルってつまんなくね?」ってあるけど、打ち込みがそうならないのかっていう。

砂原:わかる。たまにYouTubeとかに自分で作りましたってやつが上がってて、ヒドいのがあるときはあるよね。

T:あとはそれっぽいだけとか。上手いけど毒がないというか。

砂原:要するに手法だけを知っていてコアがないというか。

T:自分でお金を使って音楽を聴いていない、つまりギャンブルをして対価を得ていないから、そりゃそうだろって気もするんですよね。痛い目をみないと覚えないじゃないですか? だからネットで流行っぽいものを聴いて、それを作る方法を自分で調べて、それっぽいモノを作って俺に送ってくれたりするんですけけど「うーん」って思うんです。だけど、サークルでそうやってみんなで楽しいってなったら……。

砂原:わかるわかる。だから、それのことも言ってるんだよね。

T:だから自分が音楽をやるんだったら、説明をちゃんとしなきゃダメだ、みたいな。だからアナログを切ることもしないといけないわけです。それでも、わかってくれるひとはちょっとだろうって気持ちはあるというか。

砂原:若い子の方がそういう危機感はあるのかもね。

T:同世代に対しては余計ありますね。「コイツら、何も考えてないんだな」というか。

砂原:ちょっと、ソニーの会社にきてその話をみんなにこれからしてあげようよ。

ハハハハ。

T:そういうことを言ってたら、ソニーから3年くらい前にパーンってされて(笑)。「iTuneやりましょうよ!」、パーンッみたいな。

砂原:それでやってんじゃん、みたいなね。

T:あとあとね。あのときはスゲえ笑いましたよ。だからそのときはアグリゲーターと個人で契約して、僕はiTunesでシングルを出しました。そういう感じでやってましたね。

砂原:そういえば、ミュージック・アンリミテッドがなくなったんだよね? スポティファイに変わるんだっけ。あれは合併なの? 名前は消えるんだよね? それって吸収されたってことじゃないの(笑)?

T:まぁ、スポティファイの方がブランドは強いですよね。

砂原:データとして、いままでアナログやCDでできていたことがある程度は仮想現実として確立すれば、音楽産業にお金が入ってきて自分たちのやりたいことができると僕は思うんだよね。世界中のいろんな事情が関係あるからさ、どっちにいくかはわからないけど。最近、アナログが爆発的に売れてって言うひとがいるけど、あれは勘違いだから。

T:「爆発的」ではないですよね。

砂原:それこそスカイマークの株とかでもいいんだけどさ(笑)。

T:ハハハハ!

砂原:株を持ちまくったらちょっと上がるから。どんなもので落ちるときは大体落ちて、またちょっと上がるって感じだよね。だから、そのちょっと上がっているところを指して「去年の20倍」っていうのは、去年がすごく落ちていただけじゃんっていう。

でも、実際に工場にプレスを頼むと予約がいっぱいなんだよ。

T:まぁ、それは工場が減ったというのもありますからね。

UKとUSは事情が全然違っていて、ヨーロッパはどっちかっていうと昔のリイシュー版をアナログ180グラムで出すっていうのがメインなんだけど、USはトーフビーツじゃないけど、ネットの洗礼を世界でいち早く浴びている国なんだよね。最初にタワーレコードがなくなって、作品では稼げないかもという瀬戸際でやっている国だから、インディ・シーンにとってのアナログ盤、カセットテープは、ちょっと切実な問題かもね。

T:USとかってインディはフィジカルでちょろっと100、100くらいで出して、あとはデータで売ってツアーで回るって感じですよね。

砂原:「100、100」っていうのは100枚ずつ出すってこと?

T:そうですね。カセット100本、7インチ100枚とか作って。

砂原:100枚じゃねぇ……。

ちょっと話題になっている人でも、まあ、500枚限定から、いっても1000枚とかね。とにかく、音楽を取り巻くシーンは、こうやって変化しているわけですよ。

砂原:でも起こっていることは大体わかっているというか。気にはしていることだけどね。もし自分にたくさんのお金と決定権があったら、統一規格を作りたいなと。そうしたほうが、一番音楽って変わるんじゃないかなって僕は思うんだよね。

取材:野田努(2015年2月18日)

12345

INTERVIEWS