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Special Talk : OGRE YOU ASSHOLE × Mark McGuire

Special Talk : OGRE YOU ASSHOLE × Mark McGuire

GW特別鼎談:オウガ・ユー・アスホール×マーク・マッガイア

野田 努高橋勇人    通訳:高橋勇人  photos : 小原泰広(集合写真 : 清水隆史)   May 01,2015 UP

 3月29日の晩、代官山ユニットは超満員。オウガ・ユー・アスホールマーク・マグワイヤは初めて対バンした。この鼎談は、ライヴの翌日に収録したもの。
 ミュージシャン同士、それも国が違う者同士が話し合いあうと、面白い発見がある。たとえば、マーク・マッガイアの、オウガの音楽に「ソウル」、つまり、ブラック・ミュージックからの影響を感じたという感想は、いままで日本の音楽メディアで見られなかった。「ノイ!だ」と言うと思っていたのだが、マーク・マグワイヤは「シュギー・オーティスだ」と言った。
 それでは、前口上はこのぐらいにして、どうぞ楽しみを。ちなみに、彼らから最高のプレゼントもある。ライヴのアンコールでの、オウガの「ロープ」にマーク・マグワイヤがギターで参加した当日の動画だ。正直、この演奏を聴いたとき、ele-kingからまた12インチで出したいと思ったほどだったが、彼らは無料で公開しようと言った。なので、いま、みなさんは、この鼎談の最後に、そのブリリアントな演奏を聴くことができます。

オウガ・ユー・アスホール(出戸学、清水隆史、馬渕啓)×マーク・マグワイヤ
司会:野田努=■
通訳:高橋勇人=△


マーク:まだ知ったばかりのバンドだったけれど、一緒にやっても絶対にうまくいくなという確信もりました。一緒にやった曲の音階も好みでしたね。メジャーがきてマイナーがきて……、何という音階かはわからないんですけどね。

出戸:僕たちもわからないです(笑)。

まずは、なぜ今回オウガ・ユー・アスホールの方からマークさんと一緒にやりたいと思ったのかという話しを聞きましょうか。

出戸学(以下、出戸):ホットスタッフの松永くんという僕たちの都内でのライヴの制作をやってくれているひとと、代官山ユニットとの共同で今回の〈””DELAY 2015””〉をやったんです。対バンのツーマンで〈””DELAY””〉という企画をやっていこうと思っていて、それで誰がいいか相談したんですよ。みんなで会議をしていろんな候補が出たときに、「マーク・マグワイヤがいいんじゃないか?」「何とか日本に呼べるかも」ということになったんです。

マーク・マグワイヤ(Mark Mcguire以下、MM):実現してくれて本当に嬉しいです。

清水隆史(以下、清水):音もすごいディレイだし。

MM:ハハハハ。いつもですよね(笑)。

出戸:実際にやってみてどうでしたか?

MM:音も空間もいい会場でしたし、素晴らしいバンドとプレイできて光栄でした。実ははじまるまで少し緊張していたんですよ。ひともたくさん入っていましたからね。アンコールで一緒にオウガ・ユー・アスホールのみなさんとステージに立ったときは、自分の音が大きくなり過ぎないよう、バランスに常に気を使いました。自分ひとりでステージにたつときは、音が全部ミックスされてモニターから聴こえるから音の調性が容易にできます。でも、バンドとなるとその聴こえ方も全然違いますよね。

一緒に“ロープ”をやることはいつ決まったの?

出戸:前日くらいですね。

清水:前々日くらいから一緒にやる?って話がきて、ずっと迷っていたんだよね。

馬渕啓(以下、馬渕):どの曲でやるかということも話してましたね。

俺はたぶん共演するんじゃないかと思っていたけどね。 “ロープ”しかないだろうって。

マークさんはいつ曲を最初に聴いたんですか?

MM:どの今日をやるかはほんの数日前に聞ききました。そのとき僕は大阪のホテルにいて、ギターを弾きながらアイディアを練りました。

マークさんはライヴをやる前にオウガの音楽を聴いたことがあったんですか?

MM:新しいアルバムはまだ聴いていなかったんです。でも最近出た曲を聴かせてもらいましたよ。とても滑らかでサイケデリックなサウンドがとても好きです。まだ知ったばかりのバンドだったけれど、一緒にやっても絶対にうまくいくなという確信もりました。一緒にやった曲の音階も好みでしたね。メジャーがきてマイナーがきて……、何という音階かはわからないんですけどね。

出戸:僕たちもわからないです(笑)。

オウガは自分たちの大きなインスピレーションのひとつにクラウトロックがあって、そこがマークさんと共通するところなのかなと思います。

MM:そうなんですね。たしかに僕にとってもクラウトロックが重要な要素です。とても形式的で衝動的な部分もあり、それなりに技術も必要ですよね。

清水:クラウトロックはずっと聴いていたんですか?

MM:最初にクラウトロックを発見したときはとにかくたくさん聴きました。19歳のときだったと思います。当時に比べたらいまはそこまで聴いてはいませんが、自分自身の重要な核になっています。
きのうオウガのみなさんと話していたんですが、最近はシュギー・オーティスのようなソウルやファンクからもインスピレーションを感じます。

清水:きのうの夜にソウルの話をしたんですよね。

出戸:僕らも黒いのにハマってますからね。

MM:僕がはじめてオウガ・ユー・アスホールを聞いたときにブラックミュージックの要素を感じたんですよ。もちろん、それはひとつの要素に過ぎず、いろんな影響が交ざり合っていて、それらがクリエイティヴなサウンドを織り成しているんだと思います。一緒に“ロープ”を演奏したときには曲や歌から、様々な影響が生み出すダイナミズムを感じましたね。
 きのうも僕がシュギー・オーティスを感じた曲を演奏していたんですが名前が思い出せない……。ギターが印象的でテンポは遅い曲なんですけどね。

清水:なんだろうな“ムダが無いって素晴らしい””かな。

出戸:最近、僕も清水さんからシュギー・オーティスを教えてもらって聴いているんです。

清水:定番というか、再発見系ですよね。

90年代にデヴィッド・バーン発掘したんだよね。オウガはマークさんと一緒にやってみてどうでした?

清水:演奏がすごく丁寧ですよね。

出戸:ギターがすごく上手いと思いました。アンプを使わないでラインで音を出していることにもびっくりしました。そのギターの音色がやっぱり独特なんです。僕らもレコーディングでラインはかなり使いましたけど。

馬渕:ライヴだとやっぱりラインの音は異質感があって面白かったです。

出戸:ラインだけでギターを弾いているひとのライヴって初めてみたかも。

MM:実験的な音楽を演奏するようになってからはずっとラインで弾いていますね。自分はトーンに拘るタイプだったんですが、ラインのトーンに慣れてしまったのでアンプに戻ることはありませんでしたね。それでできたのがいまのスタイルです。

出戸:なるほど(笑)。とても綺麗な音でしたね。

僕もあなたのギターの音が好きです。とくにロングトーンがシンセサイザーみたいに聴こえるんですよね。

MM:ギターと他の音をミックスして出したりもしています。でも基本的にはギターだけでギターだとは思えないような音を作っていますね。よく僕のアルバムを聴いたひとが「あの部分はシンセを使っているんだよね?」って聴いてくるんですが、だいたいはギターだけで作った音なんですよ(笑)。

出戸:映像も自分で作っているんですか?

MM:そうですよ。自分で作った映像と見つけてきた映像を組み合わせて編集しています。映像と音楽を一緒に作るのは映画を作るみたいな感覚です。その異なるふたつの要素がうまく組合わせるのが楽しいんですよ。

出戸:じゃあ映像もバラバラではなくて同期させてセットで流しているんですか?

MM:はい。なので映像の長さに合わせて自分の曲の長さも調性することもあります。きのうもギターを弾きながら後ろをちょくちょく振り返って映像を確認していたんですが、そのためです(笑)。

では映像をコントロールしているひとがいたわけではないんですね?

MM:いません(笑)。映像が決まったときに再生されるようプログラミングをしているので、ちゃんと映像がはじまるのか気を使いますね。

最後の映像がすごかったよね(注:水爆実験や第二次世界大戦の映像、政府を批判するスピーチなどが引用されていた)。オウガは観てたの?

出戸:最後、見てました。

清水:激しい終り方でしたね。

MM:あの映像と曲を作っているとき、歴史的な出来事の裏で政治や宗教がどのように動いていたのかに関心がありました。たくさんのひとびとが様々な形でひとつの瞬間に関わっていたわけですからね。そして、そのなかで多くの考えや憶測が生まれました。あの映像のなかでは9.11は裏で大きな工作があったんじゃないかというスピーチも引用しています。
 ひとびとに学ばれる歴史は戦勝国などの大きな権力をもった者が作り出したものです。僕はアメリカ人でアメリカの教育を受けてきました。だからこそ、アメリカが他の国々にどんな影響を及ぼしたのかとても興味があるんです。2013年に広島の原爆ドームに行って深く感銘を受けました。過去を振り返ることによって明らかに間違いだと思うこともたくさんあり、そういうものを自分で学んでいきたいんです。(日本語で)コノオンガクヲヘイワノタメニ。

一同:おー!

司会:野田努(2015年5月01日)

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Profile

髙橋勇人(たかはし はやと)髙橋勇人(たかはし はやと)
1990年、静岡県浜松市生まれ。ロンドン在住。音楽ライター。電子音楽や思想について『ele-king』や『現代思想』などに寄稿。

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