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Interviews

interview with YOLZ IN THE SKY

interview with YOLZ IN THE SKY

誰が聴くねん?

──ヨルズ・イン・ザ・スカイ、インタヴュー

取材:野田努   Dec 16,2015 UP

YOLZ IN THE SKY
HOTEL

Bayon Production/felicity

IDMJunkPost-Punk

Amazon

 ヨルズ・イン・ザ・スカイ……この、一度聴いたら忘れらないバンド名から、人はどんな音を想像するのだろうか。なんとなく広々したイメージを掻き立てるかもしれない。あるいは、“ヨル”、“ソラ”という言葉から、なんとなくロマンティックなものを重ねるかもしれない。しかし、残念。ヨルズ・イン・ザ・スカイは密室的で、アンチ・ロマン的。
 ヨルズ・イン・ザ・スカイ・ウィズ・クレイジー・ダイヤモンドは、柴田健太郎(G)と萩原孝信(Vo)を中心に大阪で結成されている。最初のアルバムは2007年で、その頃は騒々しいギターとハイトーンのヴォーカルのハードなロックをやっている。それが長い歳月をかけながら変化を遂げて、最新作『ホテル』では、アシッド・ハウス・ロックとでも呼ぶべき、微妙にシュールな世界を繰り広げている。
 ベースとドラムが居なくなり、トラックは柴田がひとりで作ることになった。すると……ストラヴィンスキーを愛するこの青年のどこかの回路が1987年のシカゴのDJピエールに通じてしまったのだろう。それはロックの予定調和もハウスの快楽主義も拒否した、世にも奇妙な音楽となっていま存在する。
 地図を描いてみよう。いま、日本には、アンチ・ロック的雑食性としてのポストパンク……とも呼べそうな徒が散在している。広義では、オウガ・ユー・アスホールもゴートもにせんねんもんだいもその部類に入るだろう。メインストリーム(なんてないという意見もある。が、まあ、ここでは敢えて)への対抗勢力になり得ていないのは、良くも悪くも彼らがバラバラにそれぞれやっているし、残念ながらリスナーも重なっていないからだ。もったいない。徒党を組めばいいのにとまでは言わないが、ぼくたちは注視してみよう。いま、1979年のUKのような局面が日本に生まれつつあることは事実であり、それは、売れようが売れまいが、とにかく、自分たちの鳴らしたい音を貫き通している連中がいるということでもある。
 ヨルズ・イン・ザ・スカイはそうしたポストパンクな時代のなかのひとつのバンドではあるが、彼らのジャンクな感覚は、実に独特な空間を創出している。昔、バットホール・サーファーズがザ・ジャックオフィサーズ名義でサイケデリックなエレクトロニクスに挑戦したものだが、もちろんそれとも違う……いったい彼らは……何者……なのか……ああ、たしかに悪ふざけもできない世のなかなんて、冗談じゃないよね。マイノリティとは、屈辱でも蔑称でもない。楽しみ方だ。柴田健太郎に話を訊いた。

【バンドのバイオ】
2003年結成。Less Than TVから1stアルバムをリリース後、Fuji Rock、SXSWなどに出没。2009年にはfelicityより2ndアルバム『IONIZATION』を2012年には3rdアルバム『DESINTEGRATION』をリリース。その後もライヴ活動を中心に、多種の音楽性を吸収しながら進化を続ける。たった2人よって作り出される音世界は自由自在、無機質なビート、ロック、テクノ、ミニマル、現代音楽、クラシックなどをブラックホールのように吸収に作り出される自由に踊るための音楽。
http://yolzinthesky.net/

Q:ますますヨルズ・イン・ザ・スカイのアイデンティティがわからなくなってきました。

A:ぼく自身もわからないんですよ。

印象的なバンド名なので、名前は知っていたんです。ぼくみたいに名前は知っているけど聴いたことがないって人は多いと思いますよ。

柴田健太郎(以下、柴田):バンド名を決めるときに、ずっと続けるつもりはまったくなかったんです。とりあえずバンドをやろうという感じでした。だいぶ前なのでこの名前をつけた理由は忘れましたけど、やりはじめたのは大学の3回生のときやから、13、4年前ですかね。

今日は、ヨルズ・イン・ザ・スカイがどういうバンドなのかをしっかり紹介したいと思っているので、よろしくお願いします。まずは、柴田さんが音楽をはじめる、あるいは音楽を続けているモチベーションはどこにあるんですか?

柴田:音楽にしか興味がなかった。他のことをやっていても、結局は音楽に繋がっているような生活スタイルだったというか。音楽をやりたい、というよりも、音楽をやっていました。

このいかにも大阪にいそうな雑食性というか……。

柴田:それは言われたことないな。大阪っぽくないと言われます。そう言われるのは初めてといってもいいくらい、珍しい。

大阪って、独創的なものを生む土壌があるじゃないですか。いろんなものが混ざって、名付けようのないものになってしまった、みたいな。やっぱり東京にはスタイルがありますからね。

柴田:そういう意味では大阪かもしれないですね。やっぱりひとと被ったらいかんみたいな文化がありますからね。ちっちゃいときからそうですね。ひとのマネをしてたらダサい、みたいな。

しかし、いったいどんな人たちが聴いているんでしょうね。基本、ライヴハウスで活動されていたんですよね?

柴田:基本はそうです。

どんなお客さんを相手にしていたんですか?

柴田:あんまり見てないからわからないですね。

音楽をやるときに、自分たちのパッションが掻き立てられるのはどんなところですか?

柴田:自分のなかで新しいものができて、それが積み重なっていくところですかね。

どんな音楽を聴いていたんですか。

柴田:一貫して好きなのが、ストラヴィンスキーの『春の祭典』です。クラシックや現代音楽をよく聴きます。バレー音楽が好きで観に行ったりしてましたよ。

しかし、実際は、どちらかというとジャンクな音楽をやっていますよね。

柴田:どちらかといえばジャンクな音楽はあんまり好きじゃないんですけどね。いうたら、関西でできた音楽もそんなに好きじゃないんですよ。

じゃあ関西人と言われるのは心外ですか?

柴田:そんなことないですよ。まず、あんまり関西人っていわれないですからね。

曲の発想はどんなところから?

柴田:現代音楽の作曲方法で使われる、図形や数列から作曲するやり方に興味があるんですよね。そのすべてがよいとは思わないし、ぼくはけっして詳しいわけじゃないんですけど。

感覚で作るよりも、理屈で作っているんですか?

柴田:いまはそっちの方が多いですね。昔は感覚だけだったんですよ。でもやっていくうちに、決められたうえでやっていく方へシフト・チェンジしていっていますけどね。

ますますヨルズ・イン・ザ・スカイのアイデンティティがわからなくなってきました。

柴田:ぼく自身もわからないんですよ。

現代音楽からの影響は新作のなかに反映されているんですか?

柴田:新作にはまったく反映されていないです。新作は、どちらかといえば感覚的な面も少なからずあって。いや正確に言うと、感覚で良いと思った素材を緻密に作り上げ構築していくというか。その昔、パソコンのデータが消えてしまったときに、それを復元させるソフトを使ったんですよ。そうしたら音楽データがぶつ切りになっていたり、変に復元されていたんですよね。それを思い出して、データを一度消して、また復元させて、意図的にデータをバラバラにしたんです。それでこれは使えるなと思って今回のアルバムで音源として使ったりしました。ギターの音とかでも勝手にバラバラになっているのは、僕もどういう仕組みでそうなっているかはわからないんですけどね。全体ではないんですが、そういう素材を組み立てていったりしました。勝手に離散フーリエして音を分解したみたいな感じになってるのが面白いと思いました。

それをたまたま今回のアルバムでおこなったと。

柴田:そうですね。いま現在は理詰めでやっているんですが、このアルバムに関してはその一歩手前です。

ファースト・アルバムは何年なんですか?

柴田:えーと。ファーストはLESS THAN TVから2007年にリリースされてます。 セカンドが2009年で当時はハードコアやクラウトロックも感じさせるバンドでした。

たしかにヴォーカルにはハードコアの名残があるのかな。

柴田:最初はヴォーカルがいなかったんです。あるとき曲を聴かせたら「俺、コレ歌える」と。ぼくは普通に歌うかと思ったんですよ。それに、普段のあいつはまさかなことをするようなヤツでもないんですよ。そしてたら、まさかの裏声で歌うという。それを聴いて「あ、これはいっしょにやろう」となりました(笑)。

3枚目のアルバムではデザインに『メタル・ボックス』を模していますが、パンクについてはどうなんでしょう?

柴田:初期のパンクも聴いていましたし、好きでした。でもポストパンクの方が雰囲気は好きだったというのもあって、そういう影響が音楽には入っているんですよ。

柴田さんからすると、ポストパンクの魅力って何ですか?

柴田:空気感。熱いんだけれども同時になんか冷たい感じもするんです。それが音の処理とかに出ているんだと思うんですけれども、殺伐とした無機質なイメージがぼくのなかでは強いというか。テクノとはまた違いますよね。テクノも無機質ですが、ポストパンクの場合はひとが関わっているにもかかわらず無機質なのがいいというか。

聴いていてPILがよかったんですか?

柴田:他にどんなのがいましたっけ(笑)?

ディス・ヒートとか、スロッピング・グリッスルとか、たくさんいますよ。

柴田:あー、そのふたつはけっこう近いですね。

当時は、ポストパンクないしはニューウェイヴという、ひとつのムーヴメントとしての括りがあったんです。そのなかにスリッツもポップ・グループもニュー・オーダーも全部入っていたわけです。そのポストパンクの船にたくさんのアーティストが乗っていた時代だった。でも2000年代には大きな船はなくて、みんな小さなボートに乗っている。このひとはインディ・ロック、このひとはポストロック、このひとはディスコとかね。こういう状況で、ポストパンク的なアプローチをするっていうのは空しくないですか? 

柴田:ポストパンクは6、7年前に聴いていたけれど、いま意識しているわけではないですからね。あんまりジャンルを意識しないんですよ。

ジャンルにこだわることによって、未知なるリスナーとの出会いがあると思うんです。例えばテクノにこだわっていれば、どんなに無名な人間でもテクノ好きのところへたどり着ける。あるいは、ポストパンクやニューウェイヴという大きな船があって、ぼくはその船が好きだったからスリッツもスロッピング・グリッスルも聴けた。でもいまそういう聴き方はない。だからヨルズ・イン・ザ・スカイを見ると、「いやぁ、よくやってるなぁ」って思うんです。

柴田:たしかにライヴもやりにくいですからね。

自分たちでムーヴメントを作ってやろうという気持ちにはならないの?

柴田:そういう気持ちにはならないですね。ホンマにひとりよがりというか。周りのことはあんまり考えていない。ひとといっしょに何かをやってよくなりたいとかも思わないですね。そこで誘われて興味をもって何かをやりたくなることはあるんですけれども、自分自身ではただ単に曲を作ったり、こんなライヴができたらいいなとか、そういう発想しかない。

そういう意味では時代に挑戦しているのかな?

柴田:全然意識はないんですけどね。

アップル・ミュージックはだって「あなたの好きなジャンルは?」って最初に質問してくるじゃん。ヨルズ・イン・ザ・スカイは、テクノでもないし、パンクでもない。いまの音楽市場のニーズ分けに当てはまらないことをやっているわけじゃないですか。

柴田:いま言われて、「あっ、そうやな」と思いました。

取材:野田努(2015年12月16日)

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