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interview with Carl Craig

interview with Carl Craig

僕は軍の補佐官だった

──カール・クレイグ、インタヴュー

質問・文:小林拓音    通訳:青木絵美   Apr 29,2017 UP

オーケストラの演奏時には、僕は、歯車の歯のひとつでしかないということ。僕が作曲家だということは一切関係なかった。軍の司令官は指揮者であり、僕は軍の補佐官だった。僕も司令官である必要はない。自分をそのような状況に置いたことで、とても謙虚な気持ちになった。

〈プラネットE〉からは最近ニコ・マークス(Niko Marks)のアルバムがリリースされていますね。いま他に注目しているアーティスト、〈プラネットE〉から出したいと考えているアーティストはいますか?

カール・クレイグ(Carl Craig、以下CC):最近は〈プラネットE〉から音楽を徐々にリリースしている。今回、初めてニコ・マークスのアルバムをリリースしたが、ニコの音楽はそれ以前もリリースしたことがある。〈プラネットE〉からは2枚目となるテレンス・パーカー(Terrence Parker)のアルバムも、もうすぐリリースされる。いろいろなアーティストから、良いデモがたくさん届いているから、その他にも、新しい音楽をリリースしたいと考えている。東京のアーティスト、ヒロシ・ワタナベ(Hiroshi Watanabe)もそのひとりだ。彼は素晴らしい音楽を作っている。〈プラネットE〉からリリースされる音楽は、僕のヴィジョンに合ったもので、リスナーにとって力強い音楽的主張があるものでなくてはならない。今年、レーベルは26周年を迎える。レーベルのレガシーをさらに広めていってくれるような作品を発表していきたい。僕が個人的にリリースする音楽は、そういう点に注意していままでやってきた。長年、同じような音楽をリリースするのではなく、可能性の領域を広げながら、リスナーが僕に期待しているような作品や、テクノに期待している音楽を発表していきたいとつねに意識している。

あなたはかつてナオミ・ダニエル(Naomi Daniel)を世に送り出しましたが、近年、彼女の息子であるジェイ・ダニエル(Jay Daniel)が精力的に活動しています。彼や、カイル・ホール(Kyle Hall)といった若い世代の活躍についてはどうお考えですか?

CC:デトロイト出身のアーティストもそうだが、僕は、興味深い活動をしている人たちは、サポートしたいとつねに思っている。10年前、僕とルチアーノ(Luciano)が一緒に活動を始めたとき、僕は彼を支持する第一人者だった。ルチアーノの才能を見出していたから。カイルやジェイも同じで、僕はインタヴューでは毎回彼らについて話すようにしている。彼らは今後の世代だし、素晴らしい音楽活動をしている。〈プラネットE〉を創立した1991年にとどまったまま、当時が最高であり、新しい音楽には良いものが何もない、などとは言っていられない。それは音楽というものにとって、まったく道理をなさない考えだ。音楽は成長する。若い世代による音楽の解釈や音楽スタイルの解釈は、つねに称賛されるべきだ。僕と同じような考えを持っていたのがマーカス・ベルグレイヴ(Marcus Belgrave)で、僕は彼をつねに意識してきた。マーカス・ベルグレイヴは、つねに若い世代のアーティストを世に送り出そうとしていた。若い世代を強く支持していた。彼がいたからこそ、次の世代のアーティストたちが才能を認められ、称賛された。マーカス・ベルグレイヴが指導していたのがアンプ・フィドラー(Amp Fiddler)で、アンプ・フィドラーはジェイ・ディラ(J Dilla)を指導していた。繋がりが見えてきただろう? このように、僕も、ジェイ・ダニエルや若い世代の奴らを指導できるような環境を整えるのは非常に重要なことだと思っている。僕と若い世代との間に20年以上の歳の差があったとしても、才能が感じられるのであれば、僕はその才能を支持したい。

今回のアルバムはオーケストラとのコラボレイションです。2008年にパリでおこなったレ・シエクル(Les Siècles)とのコンサートが本作の発端となっているそうですが、指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロト(François-Xavier Roth)や、彼が創始したオーケストラのレ・シエクルとは、どのような経緯で一緒にやることになったのでしょうか? 他の指揮者やオーケストラとやるという選択肢もあったのでしょうか?

CC:『Versus』プロジェクトのパートナーになってくれたのは、〈アンフィネ〉を運営する、アレックス・カザックで、フランソワと僕を繋げてくれたのは彼だ。最初、彼は、僕にフランチェスコ(・トリスターノ、Francesco Tristano)を紹介してくれた。そしてフランソワをプロジェクトに招待した。フランチェスコが音楽のアレンジを担当した。このプロジェクトはアレックスのヴィジョンによって始動したといっても過言ではない。フランソワはフランス人だし、僕はそれ以前にフランソワとは面識がなかった。僕の持っている、アメリカでのコネクションを超越したコネクションが必要だった。それを実現してくれたのがアレックスだった。

今回『Versus』で試みたのは、自分なりのサウンドトラックを作り上げるということだった。『Versus』はテクノ・アルバムではない。僕の作品をオーケストラ音楽にしたアルバムだ。

この新作にはさまざまな人が関与していますが、かれらとの作業やコミュニケーションはどのような体験でしたか? 苦労したことや新たに発見したことがあれば教えてください。

CC:今回は僕にとって新しい発見の連続だった。今回のような状況での作品制作はいままでおこなったことがなかったから。自分の曲が、再解釈・再編成され、オーケストラによって演奏された。過去にオーケストラの演奏を聴いたときも、オーケストラ音楽がどのような仕組みで演奏をし、オーケストラの一員になるということがどういうことなのか、あまり理解していなかった。2008年後半から2009年にかけて『Versus』の演奏をしたときに学んだのは、オーケストラの演奏時には、僕は、歯車の歯のひとつでしかないということ。僕が作曲家だということは一切関係なかった。軍の司令官は指揮者であり、僕は軍の補佐官だった。僕も司令官である必要はない。自分をそのような状況に置いたことで、とても謙虚な気持ちになった。学びのある経験だった。自分をそのような状況に置いたのは、プロジェクトの最終的な目標が、僕にとってのさらなる一歩となるとわかっていたから。インナーゾーン・オーケストラ(Innerzone Orchestra)をやったときや、ジャズのレジェンドたちと一緒にデトロイト・エクスペリメント(The Detroit Experiment)をやったとき、また〈トライブ〉とプロジェクトをやったときとも同じで、新しい一歩を踏み出すというのが目標だった。今回は、このプロジェクトを通して、オーケストラのなかでの自分の価値や位置付けを理解しようとした。今回のプロジェクトではたくさんの悟りを得ることができた。本当に素晴らしい経験だった。

〈アンフィネ〉はパリのレーベルです。指揮者のフランソワ=グザヴィエ・ロトもフランス人です。他方、フランチェスコ・トリスターノはルクセンブルク出身で、モーリッツ・フォン・オズワルド(Moritz von Oswald)はドイツ人です。そしてあなたはデトロイト出身です。あらかじめ意図したことではないと思うのですが、結果的にこのアルバムがそのような国際性を持つに至ったことについてどう思いますか?

CC:最高だよ! 僕がギグをやるとき、たとえば今夜はドバイに行ってプレイするが、そこにいるのはアラブ人だけではない。イギリス人、フランス人、アメリカ人など外国人居住者も集ってくる。アルバムは、僕のギグや、長年、僕と僕の音楽を支えてくれた人たちを反映している。また、この世界をも反映している。世界は、一種類の人間から成り立っているのではない。世界は、多文化で他民族だ。アルバムがそれを表している。

ジェフ・ミルズ(Jeff Mills)がオーケストラと作った新作『Planets』はお聴きになりましたか?

CC:まだ、聴いていない。もうリリースされているのか?

通訳:はい。日本では2月にリリースされました。

彼も10年ほど前からオーケストラに関心を持ち始め、コラボレイションを続け、今回あなたとほぼ同じタイミングでその成果を発表することになりましたが、そういう同時代性についてはどう思いますか? あなたの今回のアイデアとの類似性や親近感などはありますか?

CC:オーケストラに関して言えば、ジェフは僕より先に、壮大なプロジェクトを成し遂げている。ジェフは僕たちのために道を切り拓いてきた。オーケストラに対するジェフの概念や、オーケストラとのジェフの作品は、僕のそれとは少し違う。ジェフはオーケストラと音楽を作るときも、自分の音楽を作っていて、作曲家は自分である、ということを大切にしている。『Versus』プロジェクトを完成させるにあたり、僕が最終目標としていたのは、作品がバンドのように、まとまりのあるものになるということだった。「カール・クレイグ+オーケストラ」ではなく、ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)やバーケイズ(The Bar-Kays)のアルバムを聴くのと同じ感じで『Versus』を聴いてもらいたかった。ジェフと僕の思想は似ているかもしれないが、違いもある。ジェフは、僕とは違うタイプのアーティストだ。ジェフはデトロイトで大活躍するDJとしてキャリアを進めてきた。彼はつねにソロのアーティストとして活動してきた。一方、僕は、バンドの一員としてキャリアをスタートさせた。デリック・メイ(Derrick May)とリズム・イズ・リズム(Rhythim Is Rhythim)というバンドをやり、その後にソロ・アーティストになった。だから、僕の道のりはジェフのそれとは少し違う。もちろん、ジェフがオーケストラ音楽に傾倒し始めたとき、それは僕にとって大きなインスピレイションになったが、ジェフが80年代にDJとして活躍していた頃から、ジェフには大きなインスピレイションを受けていた。彼は驚異的なDJだった。

フランチェスコ・トリスターノが昨年リリースしたアルバム『Surface Tension』には、デリック・メイが参加していました。そして最近はジェフ・ミルズがオーケストラとの共作を発表しました。いま、デトロイトの巨匠たちが一斉にクラシック音楽に関心を向けています。もちろんみなさんは、ジャズや〈モータウン〉の音楽や、あるいはSF映画などを通して、若い頃からずっとオーケストラ・サウンドには触れてきていたとは思うのですが、なぜ2010年代後半というこの時代に、ほぼ同じタイミングで、3人の関心がそこへ向かっているのでしょう?

CC:先ほども言ったが、ジェフがオーケストラに興味を持ち始めたのは、僕より少し前だ。僕がオーケストラに興味を持ち、『Versus』プロジェクトを始めたのはジェフの1年、2年後だ。(ジェフの)『Blue Potential』はたしか2006年にリリースされ、『Versus』(のプロジェクト)は2008年に発表した。デリックが作品を最終的に発表したのは2015年だったと思う。だからその間にはかなりの時間が流れている。だが、1989年、1990年頃、僕がデリックのグループの一員だったときから、僕たちはサウンドトラックをやりたいという話をいつもしていた。僕たちの周りの人たちがサウンドトラックをやる話をするずっと前から、僕たちはサウンドトラックをやろうという話をしていた。ヴァンゲリス(Vangelis)のような音楽を作りたいと話していた。僕はクラシック音楽という呼び方が好きではない。変なものを連想する奴らがいるからな。交響曲音楽かオーケストラ音楽という呼び方をしている。その方が僕の活動にしっくりくるからだ。僕がやっているのはクラシック音楽ではない。今回僕が作ったのは交響曲アルバムだ。
 とにかく、僕たちはサウンドトラックを作るという、素晴らしいアイデアを昔から持っていた。最近のサウンドトラックは、エレクトロニック音楽と交響曲を巧みに合わせて作られている。今回『Versus』で試みたのは、自分なりのサウンドトラックを作り上げるということだった。『Versus』はテクノ・アルバムではない。僕の作品をオーケストラ音楽にしたアルバムだ。最近のサウンドトラック・アーティストたちの作品は素晴らしいと思う。彼らにも強い影響を受けてきた。だから、今回のアルバムができたのは、自然な流れによるものだった。まさに、僕とデリックが1989年、1990年頃に話していたことが、今回のリリースで実現したということだ。アルバムのストリングスの部分は2009年~2010年にレコーディングされたから、素材が7~8年もの間、温められていたということになる。ジェフの音楽がリリースされたのも、そのくらいの時期だ。同じような時期に、僕たちは似たような音楽活動をしていたということだ。

質問・文:小林拓音(2017年4月29日)

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小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ。ele-king編集部。寄稿した本に『IDM definitive 1958 – 2018』など。編集した本に『わたしたちを救う経済学』『ゲーム音楽ディスクガイド』『文明の恐怖に直面したら読む本』『別冊ele-king 初音ミク10周年』など。

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