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Home >  Interviews > interview with CVN - 更新されるインディーズの形態/異端者たちの広場

interview with CVN 写真、向かって左から荒井優作、CVN、Cemetery、takao。

interview with CVN

更新されるインディーズの形態/異端者たちの広場

──CVN、インタヴュー

取材:野田努    Mar 30,2018 UP

基本はベスト盤みたいな感じです。ベスト盤っていいなって。自分で通称グレイテスト・ヒッツって言ってます。ヒットしてないけど。

なるほどね。CVNのもうそうだけど、佐久間君が主催しているサイト、〈Grey Matter Archives〉もすごく面白いなと思いました。ネット上にこういうヴァーチュアルな広場を作っていろんな人たちと交流しながら音源を発表するっていうことは、CVNのある意味流動的な作品性ともリンクしていると思ったんですよね。それこそジェシー・ルインズ時代は〈コズ・ミー・ペイン〉というアナログ盤にこだわったレーベルが身近にあって、定期的なクラブ・イヴェントもやっていたわけで。

CVN:CVNはけっこう海外からリリースしているんですが、そのおかげで海外のミュージシャンとの繋がりが増えて。リリースするレーベルもいろいろなところからリリースしているんで、それぞれのレーベルの周りのアーティストとか、国とか、シーンとの繋がりができたんですよね。インターネット越しなので直接会ったことはないんですけど。顔は見せていないけど顔見知り的な人が増えて。

そういうことは、ジェシー・ルインズ時代にはなかったこと?

CVN:ジェシー・ルインズでも〈キャプチャード・トラックス〉周辺は多少はありましたが、CVNほど広がりはあまりなかったです。

エレクトロニック・ミュージックは、やっぱインディ・ロックの世界よりも、ひとつの文化形態としては、開かれている感じがあると思いますか?

CVN:速度が違うかもしれません。横の繋がりがスムーズに感じます。

ちなみに、どこのレーベルから出したときに、とくにそういうことが起きましたか?

CVN:〈Orange Milk〉と、イギリスの〈Where To Now?〉で出したときには、まずそこから出しているレーベルメイトからけっこうリアクションがありました。

〈Orange Milk〉って、食品まつりとかフルトノ君とか、DJWWWWとか、日本人アーティストを出しているけど、日本人に積極的なレーベルなの?

CVN:そうだと思います。オーナーがKeith Rankin(Giant Claw)とSeth Grahamというそれぞれミュージシャンなんですが、Sethは以前に日本に住んでいたんですよ。僕は彼とメールするとき英語ですが、実際会ったことある食品さんからは日本語が話せると聞いてます。なので日本の文化に疎くないというか。

しかし、それらのレーベルから出すことで、違う広がりが持てたと。それは佐久間君の長い活動のなかで、可能性を感じた部分?

CVN:すぐ行動に移して良かったなと思ったし、自信も持てたかなと思います。

そこはデジタルの良さであり、フットワークの軽さみたいなものがあるのかもしれないね。

CVN:〈Grey Matter Archives〉をはじめた理由のひとつに、海外との繋がりを生かしたいという気持ちとは別で、引っ越したということがけっこう大きいんです。東京から離れて、自分がいた周辺にあまり物理的に関われない状況下で、家がなくなった感覚だったんで、家が欲しいなと思いまして。どこに住んでいてもできることかもしれないけど、自分にしか作れない家。

〈Grey Matter Archives〉はいつからはじめたの?

CVN:去年の7月です。

送られてきたものをアップロードしているの?

CVN:基本は僕が声をかけてお願いしています。最初は繋がりのある人たちから声をかけていって、いまは面識はないけど僕が好きなアーティストに声をかけたりしてやってもらっているという感じです。

こういうのはやっぱ、ネットならではというか、日本人からいろいろな国の人がいて面白いよね。

CVN:はじめるときにこういうのをやりたいなと参考にしている〈Blowing Up The Workshop〉(http://blowinguptheworkshop.com/)という、ミックスシリーズのサイトがあって。サイトの作りも少し似ているので是非見てください。アーティストの名前が羅列してあって、開くとトラックリストがあり、ストリーミングができるんです。以前僕はこのサイトからミックスを提供しているアーティストの発見もできたし、トラックリストを見て、この曲ヤバいなっていう発見もあったし。けっこう感動した記憶があって、こういうキュレーション感がもっと増えたら面白いなと思ったことを思い出して、これやろうと。

ひとりの人のミックステープをアップロードすると、そこからさらにどんどん広がっていくという。

CVN:名前がアーカイヴされているということが重要で。すごく発見がある。過去のを聴くと見落としてた曲とかあって。

でもオリジナルをあげている人もいるでしょ?

CVN:そうなんですよ。オリジナルとか、Beat Detectivesはそのためにセッションしてくれたりとか。E L O Nは未発表曲を繋げたやつとか。

すぐ行動に移して良かったなと思ったし、自信も持てたかなと思います。


CVN
X in the Car

ホステス

ElectronicExperimentalTrap

Amazon

では、今回リリースする『エックス・イン・ザ・カー』について訊きますね。これはいままで出した作品を編集したものなんだよね? 今回アルバムのために録音したわけじゃなくて、これまでの作品のなかのベスト盤的な位置付け?

CVN:そうですね。プラス新曲が何曲か入っています。基本はベスト盤みたいな感じです。ベスト盤っていいなって。自分で通称グレイテスト・ヒッツって言ってます。ヒットしてないけど。

(笑)聴いていちばん驚いたのは、最初にも言ったけど、ヒップホップの影響を感じたところなんだけど、それはやっぱりあるでしょう?

CVN:いや、かなりありますね。でもいつもギリギリ中間の混ざってる曲が好きで、そういうの自分的に楽しくて。

きっかけは何かあったんですか?

CVN:きっかけなんでしょうね。たとえば、Ghostemane、Wavy Jone$、Bill $aberとかっていうラッパーがいるんですけど。アートワークとかMVのヴィジュアルとか完全にブラック・メタル入ってるんです。僕ブラック・メタル好きなんですけど、ジャンル的にめっちゃ相性いいんだなと思って。日本だとCold Roseさんとか。

えー、マジですか? それはホント意外だな(笑)。CVNのセカンド・シングルは、初めて日本語タイトルになっているじゃないですか。「現実にもどりなさい」って。

CVN:これはサブタイトルのつもりだったんですよ。Discogsとか、レーベルのサイトなど見ると、『現実に戻りなさい』の方が本タイトルで、「Return to Reality」の方がサブタイトルになっているんですけど、本当は逆のつもりでした。〈Dream Disk〉のレーベルオーナーが勝手に差し替えた。まあ、結果的にはいいかもってリリースされた後、思ったんですけど(笑)。

初期のジェシー・ルインズや〈コズ・ミー・ペイン〉の曲はそのドリーミーさに特徴があったから、その線で考えると意味があるタイトルかなと。

CVN:あの頃の現実の反対は夢でしたね。仮想世界も現実世界も並列な感覚なんですけど、なんというかこれは自分に言っているんですけどね。

アルバムが、刃物の音からはじまるでしょ? あれはナイフとか包丁を研いでいる音のサンプリング?

CVN:切れ味鋭い系の音ですね。

あれ、恐いよ(笑)。

CVN:音として面白いなというか。それだけなんですけどね。サンプリングでも、ヴォイス・サンプルみたいなものは昔からよく使っていましたけど、リズムの音を……例えばSF映画で鳴ってる音、刃物のような音が、スネアとかハイハットの代わりになったら面白いじゃないですか。

で、スクリューされた声も入るわけですけど、佐久間君の意図としてはある種のホラー感を表現しているのかな?

CVN:曲によってですけど、ホラーは好きですし、恐怖感もあるけど同時にすごく切ない気持ちにもなりうる。いまだから言えるじゃないですけど、〈キャプチャード・トラックス〉から出した、ジェシー・ルインズ最初のEP、『ドリーム・アナライジス』は、レコードは45回転なんですが、33回転でも聴けるっていう。

それは意識して作ったの?

CVN:意識して作ったというよりか、勝手にそうなったんですけど、LSTNGTって友人から教えてもらいました。よりロマンチックに聴こえるところとかもあって。もともと視覚的な音楽なんですけど、より映像が見えてきます。

CVNが表現しているダークなサウンドっていうのは、時代の暗さとリンクしているっていうよりは、佐久間君の趣味の問題? そこは時代とは切り離されている?

CVN:切り離されていると思いますし、自分ではダークだとは思っていないです。

今回自分の作品の成果をアルバムにまとめようと思ったのはなんで?

CVN:ベスト盤が出したかった……。というより日本でもいくつかのレコード・ショップが輸入して取り扱ってくれたりして本当に感謝なんですが、けっこう短期間でアルバムなりEPなりをいくつも出したので、ひとつひとつの作品をじっくり振り返える機会があってもいいかなと思ったのと、そのリリースの機会を与えてくれたレーベルに感謝の意も込めて。あと周りの仲間にも。今回Cemeteryが主宰してる〈CNDMM〉からリリースした7インチの曲はあえて収録してなくて、その2曲はCVN的にもけっこう特別なので、7インチを買って聴いてほしいっていうのも付け加えておきたいです。感謝感謝ってJ-Popみたいですが。あとそれにこうやって出したことによって、野田さんとも久しぶりに話せましたし(笑)。

4月のライヴには行こうと思ってますけど。ちなみにDYGLみたいな若いインディ・ロック・バンドには興味ある?

CVN:DYGLのみんなは何年も前から友人で、新しいシングルの「Bad Kicks」もかっこいいなと思って聴いています。そういえば、ヨッケがDYGLのジャケや諸々デザインを担当しているんですよ。

4月のリリース・パーティに出演する人たちはみんな〈Grey Matter Archives〉で作品を発表している人たち?

CVN:発表している人たちと今後発表する人も入ってます。〈PAN〉のFlora Yin-Wongがたまたま来日している期間で彼女にもDJしてもらいます。彼女も〈Grey Matter Archives〉でミックスを発表してもらっていて。

〈PAN〉はテクノ・レーベルだけど、テクノの方向には行かないの?

CVN:いくかもしれないし、いかないかもしれないし、もういってるかもしれない(笑)。

はははは、今日はありがとうございました。

取材:野田努(2018年3月30日)

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