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Interviews

interview with Gengoroh Tagame

interview with Gengoroh Tagame

『弟の夫』地上波放送記念:田亀源五郎特別ロング・インタヴュー

取材・文:木津毅    撮影:小原泰広   May 02,2018 UP

ゲイを自覚していて、でも公表はできていなくて、自己保身の術は身につけているけれども、ときにそれが破綻してしまう……というのは、ティーンに限らず日本のアダルトのゲイにも多く見られるものだと私は思うんですね。

そういった話とも少し関係するかもしれないですが、最近、LGBTブームに対するネガティヴな側面にフォーカスしたり、コミュニティ内での複雑な対立を取り上げたりするものが注目されるなど、いろいろと物議を醸していますよね。田亀先生もそういった流れを受けて、「自身の抱えるホモフォビアにどう向き合い対処していくかという話と、社会がホモフォビアを補強/増幅してしまうのをどう防ぐかという話を、まぜこぜにしないほうが良いと思う」とツイートされていましたが、この辺りについてもう少し説明していただけますか?

田亀:はい。個人のホモフォビアをどうするのかについては、それは自分のなかで解消するしかないわけですよ。周りの環境としては、それを解消するための情報は提供できるけれども、克服できるかできないかというのは当事者の問題でしかない。だからこれはちょっと申し訳ないですけれども、ひとりひとり頑張ってくださいとしか言いようがない。
ただ、そのホモフォビアがどこから来てその人のなかに植えつけられたのかというのは、当然社会からなんですよ。「おぎゃあ」と生まれたときからホモフォビアである人なんかいないわけですから。それは育っていく過程のなかで社会に植えつけられていく。そうすると我々にできるのは、社会がホモフォビアを植えつけてしまうことをどうやって防ぐか、ということ。これなら対処ができるんですよ。で、ポリティカル・コレクトネスが有効なのは、そういうことだと私は思うんですね。ホモフォビアを露にすることに対して「それは良くないことである」と言うことによって、ホモフォビアを持っていて当然という風にはならなくなるわけです。自分にはホモフォビアがあって、それを知られたらポリティカル・コレクトネスに晒されてしまって差別者にされてしまうことが怖い人というのは、それはその人がホモフォビアを乗り越えられなければ「お気の毒です」としか言いようがないんですけれども。でも、ではなぜホモフォビアに対してポリティカル・コレクトネスが作用してくるかというと、次の世代や若い世代がそれ(ホモフォビア)を再生産してしまうことを防ぐためなんですよ。

ああ、それはとてもクリアなご意見ですね。個人のホモフォビアに関しても、基本的には乗り越えたほうがいいと思われますか?

田亀:それはそうです。フォビアなんてものはないに越したことはないです。ましてや当事者だったらなおさらですよね。

そうですね。僕がこうした議論で少し思ったのは、「理解することと差別しないということは違う」と指摘するときに、「理解しなくてもいい」ということを強調するあまりフォビアを放置することになりかねないのがちょっと怖いということなんですよね。

田亀:でもそこは、「わからない」ということがホモフォビアではないから。ホモフォビアというのは嫌悪感を抱くということだから。わからなくても「気持ち悪い」と言わなければいいんです。

「気持ち悪い」と思ってしまうことを肯定しないようにする、という。

田亀:そうです。いままでの世のなかというのは、「気持ち悪い」と思うことがみんな当たり前、という世界で。それが長く続いた結果ホモフォビアが続いているわけだけど、それはやめましょうよ、という話なので。それは「理解できる/できない」という話とちょっと違いますよね。
たとえば私はゲイです。男の人が女の人のマンコに興奮するというのは理解できないし、クンニとか想像すると「ウエッ」となりますから。でもそれはヘテロフォビアというのではなくて(笑)。でも、私が「クンニするのが気持ち悪い」とか言っちゃうとそれはひょっとしたらヘテロフォビアになるかもしれないわけですよ。そんなことを言う必要ないじゃないですか。でも、「女性の身体に興奮しません」と言うことはフォビアとか差別にはならないから、そこら辺の線引きなんじゃないかなという気がしますね。

なるほど。もうひとつあらためてお聞きしたいのが、LGBTという言葉が流通していくなかで、セクシュアル・マイノリティとか性的少数者とかいうときの「セクシュアル」「性的」という部分がぼかされてしまう、ということです。

田亀:「性」というニュアンスに対して固い場では語りづらいというのはあるんだな、と思いますね。ちょっと最近興味深いなと思ったのが、性的少数者という言葉に「性」が入るからLGBTになってしまうという話と、性的犯罪や性的暴行とかを「いたずら」なんかに言い換えるという話が――まったく違う話ではあるんですけれど、根底にあるのは同じなんじゃないかな、ということなんですね。性を大っぴらに語りづらいというところですね。やんわりと、直接的じゃない表現にするというところでは、同じなのではないかと思いますね。で、それは一種の要らない配慮みたいなものだと思うんですよ。

性の議論をどこまで出すのか、というのはLGBTイシューでつねに問題になることで、なかなか解決しないテーマではあるんですけれども。

田亀:あと厄介のは、「じゃあ議論しましょう」となると、今度は勘違いから「正しい性のあり方」みたいなものを持ってくる人たちもいるわけですよ。そうではない、というところを共通認識とするのはなかなか難しいかなとは思います。誤解する人は多いだろうなと。

なるほど。

田亀:だから、「真面目な性について語る」のではなくて、「性について真面目に語る」という、この違いをはっきりさせておかないと面倒くさいことになると思いますね。

そうですね、それは重要なことだと思います。いつもの話になってしまうんですけれど、そういうデリケートだったり複雑だったりする問題には、僕としてはカルチャーに期待したいなというところがあって。何が正しいか/正しくないかみたいなところで割り切れない問題を扱うのが文化だったり表現だったりするのではないかな、と。
たとえばですが、オーランドのゲイ・クラブでの銃乱射事件のときに#twomenkissingという男性同士のキス写真が流行りましたよね。男性ふたりのキスが事件の火種になったという報道がきっかけで――まあ、これについては犯人がおそらくゲイだったということがのちに明らかになったので、そう簡単に済む話ではないのですが、それでもホモフォビアに対してある種の揺さぶりをかけるものになっている。そうしたポップな社会運動みたいなものが、日本でももう少しあってもいいんじゃないかなと思います。

田亀:ですね。でも、これはソサエティによって意味合いが変わってきますよね。たとえば日本でキスというと欧米のキスよりもずっとセックスに近づいてしまうので、#twomenkissingのプロテストを日本でやることが有効かというと私はそうは思わないですね。男女でも公衆の面前ではキスすべからずみたいな社会なので、そこでキスのプロテストをするのは意味合いが変わってきてしまう。でも、オランダでゲイ・カップルが暴行されたヘイト・クライムに対して、異議を唱えるために政治家なんかが男同士で手を繋いで歩いたことがありましたけど、こちらだったら日本でもオッケーかなと思いますね。

なるほど。日本でもそういった前向きな動きがあればいいなとは思うのですが、一部では最近LGBTブームのバックラッシュが来ているのではないかと言われていますね。その辺りについてはどう思われますか。

田亀:うーん、まあ、そういうことを言う人もチラホラいますよね。でもそれと同時に、ネガティヴな話題が出たことに関して、昔だったら当事者の、しかもリブ団体だけが異議を唱えていたのが、最近ではゲイ/ヘテロ関係なくリベラルな人たちによる反論が出てきているので、私はどちらかと言えば健全かなと思います。

そうですね。これについては、もう少し長期的な視点で考える必要がありそうかなという気がしますね。

田亀:でもまあ、いままでなかったものが出てくると目立ちますから、LGBTブームが目立ったようにバックラッシュも目立ったように感じられるのかもしれない。ただ、それはある意味議論が始まったということでもあるので。

まあそれこそ、こういう議論ってとくに欧米では盛んに行われてきたものでもありますし、日本もそういう段階に入りつつあるのかなという気もします。

田亀:うん、だからバックラッシュが見られるようになったからといって、何かをやめようという方向にはならないと思うし、やめるべきではないと思いますね。

そうですね。

田亀:私が一番バカバカしいと思うのは、「ほら見ろ」、「ほらバックラッシュが始まった」みたいな言論ですね。そういうことを言う人間が一番バカバカしいと思っています。そんなこと、社会にとって何の役にも立たない、自分には先見の明があったんだみたいな自己顕示欲以外は何もない言論だから(笑)。

取材・文:木津毅(2018年5月02日)

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Profile

木津 毅木津 毅/Tsuyoshi Kizu
音楽・映画ライター。1984年、大阪生まれ。2011年よりele-kingに参加し、紙版ele-kingや『definitive』シリーズにも執筆。

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