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interview with Jon Hopkins

interview with Jon Hopkins

瞑想、宇宙、ビッグ・バン

──ジョン・ホプキンス、インタヴュー

質問:野田努+小林拓音    通訳:原口美穂 photo: Steve Gullick   May 30,2018 UP

「singularity」という言葉は、僕にとっては一体感(連帯感)と飾り気のないことを意味する。そして、少しだけ宇宙創世のビッグ・バンも連想される。すべてが何かに向かって成長していくようなイメージかな。

各曲のタイトルは詩人であるリック・ホランドとの共作となっています。前作でも彼の力を借りたそうですが、今回曲名を決める際に、あらかじめテーマのようなものはあったのでしょうか?

JH:テーマがあったというよりは、僕とリックの会話から生まれたアイディアを使って曲のタイトルを決めていったんだ。もちろん、彼が書いていた美しい詩からインスピレイションを受けたものもあるけれど、メインのインスピレイションはふたりの会話だった。テーマはあまり考えない。しばらくアイディアとして出てきた言葉を使って言葉を操ってみて、曲にフィットするタイトルを考えることがほとんどだね。たとえば“Emerald Rush”は、曲を書いているときにキラキラした緑色のカラーがイメージできていて、それを表現できる言葉は何かを考えていた。だから思いついた言葉を組み合わせていろいろ候補を考えて、あの言葉にたどり着いたんだ。

“Emerald Rush”はヒットしていますね。幻想的というか、サイケデリックとも言える響きを有していますが、この曲の狙いはなんでしょうか?

JH:それは自分でもわからないんだ(笑)。自分の直感に従って曲を書いていってでき上がったトラックだからね。とにかく、魅力的で美しい作品を作りたかった。攻撃と美しさのミクスチャーというか。目をつぶって、自分自身でも説明ができない自分の意識に導かれるがままに音を作っていった感じ。そしてあるとき、仕上げようと思って音をまとめた。だから、すごく長いプロセスだったんだ。これは、逆にシンプルにすることが大変だった曲だね。仕上げるために、思いついていたアイディアをけっこう却下しなければいけなかった。前回のアルバムとはまったく違うサウンドを作りたかったから、それが必要だったんだ。


その“Emerald Rush”にはドラムのプログラミングでクラークが参加していますが、彼はどのような経緯で参加することになったのですか?

JH:彼は仲の良い友人のひとりで、自分が知るなかでもベスト・プロデューサーのひとりだから、彼にオファーすることにしたんだ。彼は、あのトラックにさらなるパワーをもたらしてくれたと思う。

続く“Neon Pattern Drum”ではティム・イグザイルが Reaktor のパッチを作っています。彼は前作にも参加していましたが、彼とはどのように出会ったのですか?

JH:彼とは同じ事務所なんだ。その関係でベルリンで出会って、一緒にショウをやって、友だちになった。それからずっと友人なんだよ。

本作のアートワークの夜明けの写真は何を表しているのでしょう?

JH:あのアートワークは存在しない場所なんだけど、あのランドスケープがすごく気に入ったんだ。自分が持っているアルバムのイメージと一致したから、あのアートワークを使わせてもらうことにした。行きたくても絶対に行けない場所、というアイディアに魅力を感じたんだよね。なにせ、存在しない場所だから(笑)。

アルバム・タイトルを『Singularity』にしたのはなぜですか? 「singularity」は人工知能などテクノロジーの分野で使われる言葉であると同時に、哲学でも使われる言葉です。あなたはこの言葉から何を思い浮かべますか?

JH:アルバム・タイトルはシングルからとっているんだけど、じつは、そのタイトルのアイディアは長いことずっと頭のなかで眠っていたものなんだ。12年くらいかな。それ以上かもしれない。2005年だったと思うから、もうなんでそのアイディアを思いついたのかまでは覚えていないけど(笑)。でもとにかくそのアイディアがずっと好きで、でもそのタイトルの曲を作る準備ができていなかった。だから寝かせておいて、いつか曲を作るときにそのタイトルを使おうと思っていたんだ。「singularity」という言葉は、僕にとっては一体感(連帯感)と飾り気のないことを意味する。そして、少しだけ宇宙創世のビッグ・バンも連想される。すべてが何かに向かって成長していくようなイメージかな。“Singularity”という曲も、ひとつの音符からどんどん広がってひとつの曲が完成している。それがしっくりきたんだ。


今回のアルバムを聴いて瞑想に興味を持ってくれる人がいれば、そして瞑想を学ぶきっかけになってくれれば、彼らは自分以外の人間との接し方を学ぶだろうし、自分のなかの幸福が増していくと思う。

その“Singularity”にはギターであなたの古くからの友人であるレオ・アブラハムが参加しています。8~9年ほど前にあなたは彼とブライアン・イーノの3人でアルバム『Small Craft On A Milk Sea』や映画『The Lovely Bones』のサウンドトラックを作ったり、ナタリー・インブルーリアをプロデュースしたりしていました。そのため、個人的にはその3人でひとつのチームのような印象を抱いているのですが、ご自身ではどう思っていますか?

JH:どうだろう(笑)。最近はあまりその3人では作業していないから、僕にはあまりそのような感覚はないかな(笑)。2009年と2010年はけっこうコラボしたけど、最近はブライアンとは会えてもいないからね。レオは毎回アルバムに参加してくれるけど、彼はほんとうに天才なんだ。僕にとってはいちばんのギタリスト。彼は、いつも僕だけでは作り出せない彼のテクスチャーを作品にもたらしてくれる。感謝しているよ。

2年前のイーノのアルバム『The Ship』に収録されたヴェルヴェット・アンダーグラウンド“I'm Set Free”のカヴァーもそのチームによるものでした。録音自体は同じ頃だと思うのですが、あの曲を録音することになったはなぜだったのでしょう?

JH:それ、忘れてたよ(笑)。たしかにあのトラックで自分がプレイしたのは覚えているけど、流れは覚えていないな(笑)。たぶんブライアンがやりたがって、5分くらいジャムをしたのかも(笑)。自分がそのカヴァーに参加したことさえ忘れていたよ(笑)。

あなたはかつてコールドプレイをプロデュースしてもいます。あなたにとってナタリー・インブルーリアやコールドプレイのようなポップ・ミュージックはどのようなものなのでしょう? テクノやアンビエントなどのエレクトロニック・ミュージックと通ずる部分はありますか?

JH:コールドプレイに関しては、ブライアンが彼らを僕に紹介してきたんだ。それで意気投合して、彼らにもっとイクスペリメンタルなサウンドを提供した。クリス(・マーティン)のソングライティングにはいつも感心していたし、彼のスキルは素晴らしいと思っていたからね。エレクトロニック・ミュージシャンやイクスペリメンタル・ミュージックのミュージシャンは、スタジアム級の曲を作ることがいかに難しいかを理解している。だから、僕は彼をリスペクトしているんだ。すべてのジャンルに通ずる部分はあると思う。今回のニュー・アルバムでも、ポップの要素があることは聴き取れると思うよ。僕自身が、ディペッシュ・モードペット・ショップ・ボーイズ、伝統的な構成の曲を楽しんで聴いてきたから、それは影響として自分の音楽にも出てくるんだ。ヴォーカル・メロディは僕には書けないけどね。ブライアンは、そのジャンルの架け橋だと思う。テクノやアンビエントとポップ・ミュージックに限らず、質のいい音楽はすべて共有するものがあるんじゃないかな。やっぱり、良いサウンドと人を惹きつける、そしてひとつにするという点で音楽は繋がっていると思うね。

あなたはもともと王立音楽大学で学んでいましたが、クラシック音楽の道に進まなかったのはなぜでしょう?

JH:興味がなかったからさ(笑)。何百年も前に書かれたものをふたたび作ることにおもしろみを感じないんだ(笑)。学べたことは良かったとは思っているけど、影響を受けているとも感じないな。

あなたが自分の音楽をとおしてもっとも到達したいもの、もっとも表現したいものはなんですか?

JH:音楽で何ができるかをより意識していくことかな。「人びとをひとつにする」ということが、音楽にはできると思うんだ。あと、今回のアルバムを聴いて瞑想に興味を持ってくれる人がいれば、そして瞑想を学ぶきっかけになってくれれば、彼らは自分以外の人間との接し方を学ぶだろうし、自分のなかの幸福が増していくと思う。そして彼らに会ったまた他の人びとが、彼らからインスパイアされてそれを学んでくれたら嬉しい。音楽はそのきっかけになれると思うし、良いフィーリングを広げることに繋がると思うんだ。それが目標だね。

通訳:ありがとうございました。

JH:ありがとう。また日本に行けるのを楽しみにしているよ。

質問:野田努+小林拓音(2018年5月30日)

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Profile

小林拓音/Takune Kobayashi
1984年生まれ、東京在住。執筆と編集。寄稿した本に『IDM definitive 1958 – 2018』など。編集した本に『別冊ele-king 初音ミク10周年』など。

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