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interview with KANDYTOWN

interview with KANDYTOWN

俺らのライフが止まることはないし、そのつもりで街を歩く

──キャンディタウン、インタヴュー

取材・文:大前至    Oct 30,2019 UP


改めて16人いるって凄えなって。文化祭みたいっていうと軽く聞こえちゃいますけど。十代から夜な夜な集まって、ビート聞かせてもらって、ラップ書いてみたいな。いままで自分たちがやってきたことを久々に、改めてみんなでやるっていうのは楽しいことだなって。(Ryohu)


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“Last Week”のほうはどのような流れで?

Neetz:“Last Week”もビートを聴かせた時点で、みんなの中で「ヤバい!」ってなかったから、それでメンツを決めようってなって。IOくん、Gottz、MUD で。初めは4人くらい入れても良いかな?って思ったけど、もうちょいシンプルにしようと思って、その3人に決めて。さっき話も出たように、Gottz の逆オファーもあったんで。

“HND”はいままでのみんなが思い描く KANDYTOWN のスタイルでしたけど、一方で“Last Week”はもっとトラップっぽいビートで、新たな KANDYTOWN っていう感じがしましたね。

Neetz:“HND”はザ・KANDYTOWN な色をまた出せれば良いなっていうのがあって。またそれとは別に“Last Week”は、新しい感じの色、アップデートされたものを作りたかったっていうのはありますね。

Gottz:これだけの振り幅の曲を1曲目と3曲目に入れてくるアーティストってなかなかいないと思うんですよ。しかも、2曲目は“Slide”じゃん。

Neetz:たしかに。

Gottz:結構、玉手箱みたいな。

確かに頭の3曲の振り幅はなかなか凄いですね。

Gottz:でも、最後までアルバムを聴くと、「なるほどね」って、ちゃんと着地する。

“Slide”みたいに、ダンストラックみたいなのを KANDYTOWN で作りたいっていうのは前からあったんですか?

Neetz:そうですね。元々、4つ打ちっぽいのが結構好きだったから。4つ打ちっぽい、けどヒップホップみたいなのを目指しました。

Gottz:けど、“Neon Step”(Gottz のファースト・アルバム『SOUTHPARK』収録曲で Neetz プロデュース)まで行くと、このアルバムには入れられないからね。やっぱり、ああいうビートはやりすぎ感あるじゃん。

Neetz:あれはもっと4つ打ちで、オシャレ。

Gottz:ヨーロッパみたいなイメージだね(笑)。

今回のアルバムで唯一、3人がラップで揃って参加しているのが“Imperial”っていう曲ですけど。この曲はイントロのギターが印象的で、アルバム後半の結構重要なポジションにいる曲にも感じますが、この曲はどうやってできたのでしょうか?

Ryohu:元々はイントロのギターの部分で1曲作っていて。けど、音の鳴り的にスタジアム級みたいな曲になりそうで、やり過ぎだなと思ったんでそれはヤメて。でも、もったいないから取っておいたものをイントロに使って、もうちょっとトーンと下げて、冷たいイメージでビートを作ってみて。これは俺の中ではすごくヒップホップな曲だと思っていて。ラップのスキルが見えるっていうか。もちろんブーンバップ系でもラップのスキルは見せられるんですけど、ああいうノリのビートで格好良くラップを乗っけられるのが、俺が思うラッパー像としてひとつあって。それで、いろんな奴に頼んでみようと思って、DIAN と BSC と Neetz に頼んでみたら、途中で DIAN が「無理っす」みたいになって。Gottz がレコーディングの前半に自分の録りを終ってたんで、「Gottz、お願い!」って、急遽、召喚して。「Gottz ならイケるっしょ?」って。そしたら、ああいう男臭い感じに仕上がって。

Neetz:(Ryohuが)フックを先に乗せてたよね?

Ryohu:そうだね。先にフックはできていて。

Neetz:コンセプトとサビは先にできていたから。ヴァースは作りやすかったですね。

Ryohu:Neetz のあのヴァースはすごい気に入っています。Gottz もすぐに書いてくれて。結構、急にお願いしたのに、ああやって対応できるのは凄いなって。

“Imperial”ってボースティングの曲ですけど、最後の BSC のヴァースで「誰でも自分たちと同じことができる」みたいなメッセージになっているのが良いなって思いました。

Ryohu:BSC はソロでも KANDYTOWN の曲の中でも、リリックとか内容が深い傾向があって。全員がボースティングしたら、結局、そういう曲になっちゃうけど、あえて BSC をラスト・ヴァースに置いておいて、最後にBSCがハッとさせられるワードを言ってくれたらって。本人には伝えてはいないんですけど、それをわざと意図的にやったら、本当にああいうラップになって。みんなの言ってることをまとめたというか、ちゃんと最後に分からせてくれたっていうか。BSC にやらせておけば、間違いなく締まると思ってたんで、思った通りになりましたね。

家族以外では誰よりも、いちばん長く人生をここまで一緒に過ごしていると思うんですよ。俺らはこのCD1枚に収まりきらないほどのライフがあるし。それはこれからも止まることはないし。自分たちもそのつもりで街を歩くし。(Ryohu)

今回もアルバムのトラックのほとんど(15曲中11曲)を Neetz 君が手がけていますが、“Imperial”も含めて、Ryohu 君とはどういう役割分担をしているんでしょうか?

Ryohu:Neetzが作ったトラックの中で足りない部分を聞いて、「こういうのをやりたい」って自分が思ったのを作るっていう感じです。だから、完全に自分発信っていうトラックはあんまりなくて。けど、個人的に808(TR-808)の音みたいなのは入れようと思っていて。“In Need”とかは、最初のデモの段階ではわりとR&Bっぽかったんですけど、ちょっとトラップっぽくして。「こういうのも面白いでしょ?」って。

Neetz:アルバムの後半に Ryohu の曲が多くなっていて。そこでやっぱり、俺のトラックに足りない色が出てきていて。そういうバランスになってると思いますね。

Ryohu:前作(『KANDYTOWN』)と同じで、絵みたいに「ここにもうひとつ、この色を足したら良くない?」みたいな感覚ですね。だから、俺は Neetz の後ろにいて、全体を見ている感じです。

Ryohu 君がトラックを手がけた曲だと、こちらも個人的には“Cruisin'”が好きですね。

Ryohu:一度、KANDYTOWN のDJチーム、MASATO と Minnesotah をウチのスタジオに呼んで、「KANDYTOWN に良い曲ないかな?」みたいな話を軽くしたときに、いくつか出てきた曲のひとつがミッドナイト・スターの“Curious”っていう曲で。あれを聞いて「KANDYTOWN ってこんな感じだよね?」みたいに個人的に思っていて。あのビート感というか。そのオマージュとして作ったのが“Cruisin'”ですね。さっきも言ったように、Zepp でのライヴに向けたイメージの曲が多かったので、良くも悪くも振り切れている曲にしたいなと思って。一応、「Cruisin'」ってタイトルだけども、ゆっくりと車に乗るっていうよりも、もっとドライバーに特化したというか。がっつりと運転しているようなイメージで。KANDYTOWN だと、ゆっくり聞ける感じのイメージなんだろうけど、あえて違う方向に振り切ってみました。

この曲のリリックに「闇かき消すYUSHIのフロー」っていう部分がありますけど、YUSHI さんの存在はいまでも KANDYTOWN の中であったり、作品として今回のアルバムにも残っている感じはしますか?

Ryohu:そうですね。90年代にエリック・B&ラキムが“What's On Your Mind”っていう曲で“Curious”を使っていて。そのビートで YUSHI がラップしている音源が残ってるんですけど。今回、“Cruisin'”にそれを入れるっていう話もあったんですけど、曲の内容が今回のテーマと違っていたので入れるのはやめたんですが。でも、それだけじゃなくて、YUSHI の名前はいろんな話の中で出てくるし。そういうこともあって、リリックの中に入ってきたっていうのはあるかもしれないです。

最後の“Until The End Of Time”も YUSHI さんに捧げてた曲ではありますか?

Gottz:IO 君は YUSHI 君について歌っていますね。

Neetz:YUSHI 君に関しては、ヴァースをやっている人たちが、それについて言っているかもしれないし、また別のことを言ってるかもしれないし。それはヴァースをやっている人、それぞれの気持ちだと思うんですよね。“Until The End Of Time”は、とにかくいまのこの感じは、延々に止まらず、残るもんだぞっていう意味で作ったから。

今回のアルバムの制作の約半年は、結構、密な感じだったと思いますが、再びみんなでアルバムを作る作業っていうのを久しぶりにやってどうでしたか?

Neetz:やっぱり帰ってきた感じはあるよね?

Ryohu:懐かしいなって思いましたね。「LOCAL SERVICE」の段階でもそういう感じは結構ありましたけど。やっぱり、いざアルバムを作り始めると、ファーストのときの感じってこんなんだったっけ?みたいなことは思いましたね。あと、おのおのソロでやっているから同じことを感じると思うんですけど、「俺、ワン・ヴァースしか蹴ってないのにもう1曲できてる!?」みたいなのはありますね。人数がいるっていうだけでも進みの速さというか。ひとりだと考え過ぎちゃうこともあると思うんで。そういう意味では、ファーストを思い出しながら、改めて16人いるって凄えなって。そういう、みんなでやっている凄さだったりを感じつつ、久々にみんなでひとつの作品に向かえるのは、文化祭みたいっていうと軽く聞こえちゃいますけど。十代から夜な夜な集まって、ビート聞かせてもらって、ラップ書いてみたいな。いままで自分たちがやってきたことを久々に、改めてみんなでやるっていうのは楽しいことだなって思いましたね。

Gottz:俺はソロのほうでライヴとかツアーとかやってて、制作も続けてるんで。今回、KANDYTOWN には帰ってきたんですけど、あんまりやることは変わってないというか。むしろ、みんながいるから楽しいっていうのが帰ってきた感なのかな?っていう。いつもは基本ひとりなんで、やっぱり楽しいですね。

KANDYTOWN は落ち着ける場所なんですかね? それとも、刺激を受ける場所?

Neetz:どっちでもあるよね。

Gottz:スタジオとかライヴとかだと刺激を受けるかもしれないですけど。「あいつカマしてるな」みたいに。けど、それ以外だと、やっぱり普段は落ち着くっすね。

前作からの3年を経て、KANDYTOWN の絶対に変わらない部分って何だと思いますか?

Ryohu:……結構難しい質問ですね。

Gottz:まあ、やりたくないことはやらないっていうのですかね。

Neetz:音楽をやらなくても、仲間であって……ってことじゃない?

Gottz:(その答えは)30点くらいだね。

Neetz:(笑)

Ryohu:音楽しかりですけど、KANDYTOWN っていう仕事仲間であり、友達でありっていう。まだ短いですけど、少なからず家族以外では誰よりも、いちばん長く人生をここまで一緒に過ごしていると思うんですよ。そういう仲間と、誰かに何か言われなくとも、自分たちでやろうぜってなって。いろんなことが巻き起こりながら、十代からここまで来て。その結果、いま、こうやって音楽で表現してるっていうだけでも、俺は十分凄いことだなって思っていて。このアルバムがどう評価されるかは分からないですけど、俺らはこのCD1枚に収まりきらないほどのライフがあるし。それはこれからも止まることはないし。自分たちもそのつもりで街を歩くし。ソロでも、仲間たちに馬鹿にされないように作品を作らないといけないと思うし。けど、(KANDYTOWN に)帰ってきたら、こうやってリラックスして。みんなで作ろうってなったら、また新しいアルバムでも作るかもしれないし。それが全部に繋がっていくというか。それがいちばん、KANDYTOWN らしいというか。それに全てが尽きるのかなっていう感じはしますね。

取材・文:大前至(2019年10月30日)

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Profile

大前至/Kiwamu Omae大前至/Kiwamu Omae
音楽ライター。今はなきヒップホップ専門誌『blast』を中心に執筆。2003年から2015年までの約12年間、LAに滞在し、数多くの現場を目撃している。

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