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interview with COM.A

interview with COM.A

パンク・ミーツ・IDM!

──コーマ、インタヴュー

小林拓音    Jul 10,2020 UP

じぶんで気づいてほしい。たとえば、フェスとかに子どもを連れていく親がいるじゃない。俺はあれにはけっこう反対で。そういう遊びは子ども自身に見つけてもらいたいんだよね。

直接的には、ファースト・アルバム(『Dream And Hope』)を揶揄しているわけですよね?

コーマ:もちろん、じぶん自身でファースト・アルバムをおちょくっているというのもある。「音ショボいなー」とか。でも愛はある。ファースト・アルバムって、ミュージシャンにとって特別なものだから。童貞感すごいなっていう(笑)。じつはタイトルは最初は、『dream of prostitute』にしようと思っていたの。「夢オチ」みたいにしようと考えて。でもその後『Fuck Dream~』のアイディアが浮かんで、そっちのほうがしっくりきて。「夢も希望もない」状態って、ある意味ではスタート地点に立つイメージもある。13年ぶりのアルバムなんて、またファースト・アルバムを出すようなもんだから、初心に戻った気持ちは強いね。

それはやっぱり、成長しているということではないでしょうか。

コーマ:成長かあ。あんまりじぶんでは成長している意識はないけどね。もちろん子どもができたからむりやりポジティヴになった部分もあるけど、それまでのじぶんを構成していたネガティヴな性質も変わらない。楽観と悲観が、気持ち悪い感じで一緒になって今回のこのタイトルができたんじゃないかなと思う。今回のタイトルは、見る人によってネガティヴにもポジティヴにも捉えられる。ファーストの『Dream And Hope』自体が皮肉だったけど、それをさらに皮肉ってるので、よりツイストされた次元を表現できたと思っている。

リリースのタイミングが見事にパンデミックと重なって、時代とリンクしちゃった感じもありますね。

コーマ:俺としてはニヤッと笑ってもらいたいと思ってこのタイトルをつけたんだけど、たまたま時代に合致しちゃったという。しかも、それが良いメッセージとしても悪いメッセージとしても、両方でとれるから。俺としては、これをストレートに受け取るひととは仲良くなれないな、という感じ。「夢も希望もねえ」ってどういうことだよ、って言われても、そもそも俺はファーストのときからそういう気持ちだったし。

なによりまずサウンド的に、すごく「成長」とか「成熟」を感じたんですよ。

コーマ:打ち込み自体もう25年くらいやっているから、じぶんのことは職人だと思っていて。「アーティスト様」みたいな感じではなく。単純に音職人。そういう意味では技術的には向上していると思う。一方で、若いときはちょっと無理してふざけてたかなとも思う。当時もアブストラクトな音楽はあって、みんなそういうシブい感じの音楽ばかりやっていて、こっちはスラップスティックな感じでいけばカウンターになるんじゃないかって思っていたんだよね。たとえばヴォイスのカットアップとか、こっちはふざけた感じのサンプリングでやってたのが良かったと思う。俺も兄貴も、かっこつけてると思われるのがいやだったから。早川義夫じゃないけど、等身大というか、「人間ってこういうもんじゃね?」っていう、あの素の感じをもっと出したかったというか。

なるほど。たとえば “Rife” はいわゆる泣き系の感じですが、最後はすごく変なことになって余韻を与えないし、“You know who you are” は落ち着いたピアノのなかに、やはり変な要素がいっぱい入ってくる。そこはもしかしたら、ストレートにやることの照れなのかなとも思ったんですが。

コーマ:とくに泣かせようという意識はなくて。今回のアルバムはまったく野心もなく、売れたいとかそういうのもまったくなくて、完全にあきらめの境地でつくっている。
俺は一回、2009年ころに挫折してるんだよ。『Coming Of Age』を2007年に出して、そのあとだね。ライヴをやっても客が0人とか、そういうことが続いて。めちゃくちゃ酒飲んで、破れかぶれになっていた。ライヴでぶっ倒れてわき腹を骨折したり、PAモニターにぶつかって前歯3本失ったり。なんかもう死にたかったんだよね。あるいは逆に全員死ね、というか。こういう精神状態がつづくともうダメだなという感じで。逆にひとに優しくされたら泣き出したり(笑)。まぁいろいろありすぎて、じぶんの音楽はどうでもいいやという気持ちになっていた。
それと、3年前に入院したことがあって。全身麻酔で気絶している状態で2週間くらい入院していた。そのとき、「死ぬってこういう感じなんだな」と思った。あれも衝撃的だった。もう子どももいたし、これから人生どうやって生きていけばいいんだろうって悩んで。そこで結局、音楽をつくるしかない、ほんとうにやりたいことをやるしかないって思った。でも制作系の仕事は忙しくて、子育てもあるから、1日フリーになる時間なんてほとんどない。じぶんの時間がとれるのが月に1日あるかどうかで、だから1曲つくるのに3ヶ月くらいかかる。そうすると年に3~4曲くらいが限度で。だから今回のアルバムは2015年ころから3、4年かけてつくってるんだけど、そういう意味では成熟はしていると思う。子育てしてるから、人生観は変わるよね。若いときにあった変な野心とか気負い、ウケ狙い、技術自慢みたいなことはしなくなったので、とてもリラックスしてつくってた。

子どもができてよかったことは?

コーマ:子どもはタイムマシーンだね。俺自身がタイムマシーンに乗って、ガキに戻った感じ。たとえば子どもが4歳だったら、俺も4歳の気持ちになれて、一緒に楽しめる。それこそエイフェックス・ツインの世界というか、ガキに戻れる感じはすごいし、心地いい。

ひとつひとつのことに新鮮に驚ける?

コーマ:そう。いまはもう子どももそこそこ大きくなって、大人びてきちゃっているけど。でもたとえば、子どもに対してウソもつかなきゃいけないわけじゃない? 親としては「モノを盗むな」と教えるけど、こっちはサンプリングとかするわけで(笑)。トラックメイカーの仕事って、そういうディレンマがあると思う。俺はあえて子どもに保守的というか、ひととして当たり前のことを教えているんだけど、いつかそれに反抗してもらいたいんだよね。非常識を知るには常識を知らないといけない。だからいまは常識を叩きこんでいる段階というか。心のなかでは非常識の楽しみも背徳感もよく知っているわけだけど(笑)、そういうのは親が教えるものじゃない。じぶんで気づいてほしい。たとえば、フェスとかに子どもを連れていく親がいるじゃない。俺はあれにはけっこう反対で。そういう遊びは子ども自身に見つけてもらいたいんだよね。あと、日本の同調圧力、とくに小学校の同調圧力ってすさまじいし、いまや親もそういう世代になっている。SNSもあるし、そういう同調圧力には巻き込まれてほしくないなとは思った。今回のアルバムの曲は、そういうディレンマのなかで生まれてる。

“Rife” の叙情性なんかは、以前のコーマさんからは出てこないものだろうと思ったんですよ。

コーマ:墨田区に引っ越してから、労働者や職人の多い酒場に行くようになって。それで東東京の酒場というか、飲み文化が渋谷や新宿とはぜんぜんちがうことに衝撃を受けて。一度、すごく印象的な出来事があってさ。朝方4時くらいになって、ずっと一緒に飲んでた肉屋のおじさんに「俺の名前覚えてる?」って訊かれて、答えられなかった。俺はその場にすごく馴染んでるつもりだったんだけど、馴染んでるつもりなだけで、結局無礼なんだよね。じぶんの至らなさを思い知ったというか、調子に乗っていたじぶんの人生を反省したというか。それが7、8年前くらい。今回のアルバムにとりかかるまえだね。そういう場所でいろんなことを学んだ。それは大きな成長だったかもしれない。

ホラーやスプラッター映画は好きでよく見るけど、どんなモンスターや幽霊よりも恐ろしくて、かつ魅力的なのは狂った人間、とくにカルトだと思うので、どうしてもそれがじぶんの音楽のテーマになる。

曲名に意味は込めていますか? いくつかは深読みしたくなるような曲名ですね。

コーマ:ちょっとはあるけど、基本は後づけだね。曲名つけるのはいちばんめんどくさい作業で。数字だけでもいいくらい(笑)。“Rife” は「流行して、広まって、いっぱいで、充満して、おびただしくて」って意味だけど、ネットによってありとあらゆる情報が世界じゅうに広がって、人類を疲弊させているというのがテーマだった。つくったのは2年前だけど、たまたま今回コロナと連動するようなタイトルになった。

“Liar's hand” は?

コーマ:諸星大二郎の「生命の木」というマンガがあるんだけど、ずっとその作品のテーマ音楽を作りたいと思っていて。“Liar's hand” をつくっているときはずっとその作品が頭のなかにあった。それと、世代的にオウム真理教が直撃だったから、新興宗教の欺瞞も入っている。それは他方で意味不明なことをやっているっていう魅力も感じるんだけど……『Coming Of Age』のころにキリスト教原理主義に興味を持ったことがあって。『ジーザス・キャンプ』っていうドキュメンタリー映画があって、みんな聖書を信じ込んで狂っていて、本気で世の中を聖書どおりに破滅させることを夢見ている人たちがいるんだなということを知って恐ろしくなった。ホラーやスプラッター映画は好きでよく見るけど、どんなモンスターや幽霊よりも恐ろしくて、かつ魅力的なのは狂った人間、とくにカルトだと思うので、どうしてもそれがじぶんの音楽のテーマになる。陰謀論にもつながるけど、それだけ狂った世界に生きているんだなっていうのがじつは『Coming Of Age』のテーマだった。“Liar's hand” はその延長線上にあるというか、そういうニセの救済みたいなものをテーマにした曲。抽象的だけどね。明確なメッセージではない。

“False Repentance” も「ニセの後悔」という意味で気になるタイトルです。それぞれちがう感情を表現しているような上モノとビートが同時に進行していくところは、おなじひとりの人間のなかにある、相反するなにかをあらわしているように聞こえました。

コーマ:これは、政治家や権力者、教祖がニセの懺悔をしているようなイメージだね。

なるほど。メロディの扱い方がすごく変わりましたよね。メロディアスさやキャッチーさ自体はむかしからありましたけど、その種類が変わったというか、旋律の動き方がちがうなと。以前はユーモラスで、あえてやっている感じがありましたけど、もっとハーモニーが意識されるようになったというか。

コーマ:たぶん若いころもやろうと思えばできたとは思うんだけど、いまはそういうことを素直にやれるようになって、しかも心地よく感じるようになったのかな。

とくに “Vanished Sprout” に成熟を感じましたね。

コーマ:これは完全に90年代のアンビエント・テクノ、とくにサン・エレクトリックを意識した曲。もっとダークだけどね。これまた陰謀論になっちゃうんだけど(笑)、ボヘミアン・グローブっていう、 歴代の大統領やエリートたちの集まる秘密クラブみたいなのがあって、アメリカの西海岸の森のなかで儀式をやってて。最後に生け贄を燃やすという。そこに司祭が出てきて、燃やしている最中にスピーチをする。そのなかに「Vanished」ということばが出てくるんだよ。それが、アルバム・タイトルにしてもいいなと思うくらいじぶんのなかですごくハマって。ネガティヴなことばだけど、曲はぜんぜんネガティヴじゃないし、そのギャップを表現したいというか。最初はそのスピーチをサンプリングしていたんだけど、あまりに直接的で説明的な気がしたからそれはやめた。あとで狙われたりするのは避けたいし(笑)。

ちなみに、三田さんのライナーノーツは、100点満点でいうと何点ですか?

コーマ:ハハハ。点数か……点数は難しいな。√10000とかかな(笑)。

√10000って、100点ですよね(笑)。

コーマ:ははは。でもあれはちょっと涙出たよ。ほんとうによく見てきてくれたんだなって。ROM=PARI のころから数えるともう20年以上だよね。歴史からちゃんと書いてくれて。やぶれかぶれになっていたころ、じぶんの音楽なんてもうどうでもいいやってなってたときに、三田さんと三茶のツタヤで会ったんだよ。はっきり覚えてるな。でも、ダブステップを通ってないからノスタルジーを感じる、っていうところは間違いかな。そこだけ引いて99点(笑)。ダブステップは当然通ってるし、ひと通りその時代のものは聴いてたので。CM音楽でもブロステップみたいなのはたくさんやったし。いまさらダブステップはやりたくないなっていう。そういうのが入っていてもなんか恥ずかしいでしょ(笑)。まあでもこのアルバムはなんてジャンルかわからないな。じぶんでは定義できない。アンビエントとかIDMって言われたらそうかもしれないけど。

2010年代は、リアルタイムのものだと、どういう音楽をよく聴いていました?

コーマ:2009年ころはスクリレックス周辺をよく聴いていたかな。エクシジョンがやってる〈Rottun〉っていうレーベルがあって、音は重いんだけど、マインドはすごく軽くて、技術的にもすごいなと思った。シンセの使い方とかは注目して聴いていたな。それがEDM前夜くらい。10年代だとデス・グリップスダイ・アントワードとか。あとはディプロ、フライローの活躍かな。トゥナイトの “Higher Ground” も衝撃だったね。最近だとポーター・ロビンソン、ソフィー、スキー・マスク、ゴーストメイン、AxDxT とか好きかな。ポーター・ロビンソンの持っている、じぶんが絶対に追いつけないあの青春感というか甘酸っぱさは、俺の気持ち悪さというか、男子校感というか、童貞感では打ち勝てないと、ひしひしと感じる(笑)。

〈Maltine〉や〈TREKKIE TRAX〉っぽさも少し感じました。

コーマ:〈TREKKIE TRAX〉の matra magic がすごく好きだったな。

今回は、アートワークもがらりと路線が変わりましたよね。

コーマ:真壁(昂士)さんはすごい。びっくりした。

真壁さんのデザインは何点ですか?

コーマ:1億点でしょう(笑)。からだに切り刻みたいくらい(笑)。真壁さんはインディ感をすごくよくわかっていて、オーダーしたときはいろいろ言っちゃったけど、あえてシンプルにまとめてくれた。

ぼくはオウテカのアートワークを思い浮かべたんですが、テーマはあったんですか?

コーマ: 最初にデザインが上がってきたときに感じたのはフェイス・ノー・モアだった。オファーしたときは、カルトをテーマにしてほしいとお願いしていた。ホドロフスキーの『サンタ・サングレ』のイメージとか。中近東と日本をくっつけたような感じにしてほしいと。

宗教はあまり感じませんでしたよ。

コーマ:もちろん。ニセモノの宗教だからね。薄っぺらい宗教感というか。ユダヤの六芒星があるでしょ、たしかそれが仏教とも関係があったと思うんだけど、そのイメージを「COM.A」というアーティスト名でやってくれていて、すごくバランスもいい。最初に真壁さんのアートワークを見せてもらったときに、エセ宗教観、UKやヨーロッパのパンク~ニューウェイヴ、ノイズの感じが伝わってきた。

やっぱり、そういう陰謀論的なものや宗教的なものにインスパイアされるのは、幼いころアメリカで暮らしていたというのが大きい?

コーマ:うーん、もう日本に住んでから30年経っているけど、アイデンティティが定まらない感はある。どこに行っても外から見てしまう感じというか、部外者という感じというか。もちろん日本は大好きだし、良いところも悪いところも見てるけど、でもアメリカの良いところも悪いところも知っている。イギリスは、生まれたってだけだけど。アイデンティティがいまいち定まらない人生を歩んでいるなとは思う。

つねに異邦人ということですね。

コーマ:だから、ヒップホップのレペゼン文化とかを見るといいなぁと思いますね。

取材・文:小林拓音(2020年7月10日)

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