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interview with Bing & Ruth

interview with Bing & Ruth

〈4AD〉が贈る、部屋になじむモダン・クラシカル

──ビング・アンド・ルース、インタヴュー

小林拓音    通訳:青木絵美 Photo by Tonje Thilesen   Jul 17,2020 UP

新作は、テキサスの砂漠と農園のすぐそばのスタジオでレコーディングされたのですよね。ほとんどひとがいなそうですが、そのスタジオを選んだ理由は?

DM:このスタジオを選んだ理由はいくつかあって、ひとつ目はとても実用的な理由で、予算内でスタジオが使えて、食事の施設もあって、スタジオに24時間アクセス可能だったという点。それはとてもたいせつな点だった。予算内で好きなときにスタジオが使えて、ぼくたちが宿泊できる施設があり、食事もできて、そういう心配をする必要がなく音楽に集中することができた。そして、実際にスタジオに行ったときに思ったのは、ぼくがいままで訪れたなかでもっとも魅惑的な場所のひとつだったということ。このアルバムがこういうサウンドになったのはこのスタジオの影響だ。ぼくたちの作業に多くのインスピレイションを与えてくれる場所だった。ぼくたちはスタジオに1週間滞在していたけれど、また機会があったらぜひそこでレコーディングしたいと思う。

曲名に意味は込められているのでしょうか? “I Had No Dream” や “Blood Harmony” などは深読みしたくなる題です。

DM:意味は込められているよ。それが狙いだからね。でもぼくはできるだけ物事の意味合いを、受けとる側の解釈に任せられるだけの余裕を与えたいと思っている。ぼくがタイトルを決めるときは、そのフレーズの響きが好きだったり、そのフレーズから連想するものが好きだったり、じぶんのマインドがそのフレーズから曲に繋がっていく過程が好きだったりという理由から決めている。“I Had No Dream” という曲はべつに、「夢がなかった」という意味ではなくて(笑)、聴き手が曲に入るための手助けをしているフレーズに過ぎない。曲に入る手助けはしているけれど、どこに入れという指示まではしていない。それが良いタイトルだとぼくは思っている。良いタイトルは、リスナーを引き込むけれど、そのときにリスナーがどの状態から入ってくるのかは問わない。リスナーを決まった扉に連れていくのではなく、その扉は各リスナーにあって、扉の入り方もリスナーの自由だ。

このアルバムはゴスペルのアルバムなんだ。ぼくにとってこのアルバムは神の存在を感じるということだった。ぼくは教会にも行かないし、聖書も読まないから、べつに信仰が厚いわけではないんだ。そういう意味での神ではなくて、各自にとっての神という意味でその存在を感じたということ。

アルバムのタイトルは『Species(種)』ですが、全体のテーマがあるとすれば、それはどのようなものなのでしょう?

DM:はじめに言っておきたいのは、アルバムがどういう意味だとか、どういうものであるべき、という話はあまりしたくないんだ。なぜなら、結局のところ、それはリスナーそれぞれによってちがうから。歌詞があるアルバムで特定のことについて歌っているのであれば、「これはぼくが大好きだった靴をなくしたときの話だ」などと答えられるかもしれないけれど(笑)、インストゥルメンタルの音楽ではそうはいかない。でも個人的な意見から言うと、このアルバムはゴスペルのアルバムなんだ。ぼくにとってこのアルバムは神の存在を感じるということだった。ぼくは教会にも行かないし、聖書も読まないから、べつに信仰が厚いわけではないんだ。そういう意味での神ではなくて、各自にとっての神という意味でその存在を感じたということ。それは個人的で深い体験だった。ぼくはそれまで何年もその存在に気づかないで生きてきたから。このアルバムによって、ぼくは神の存在に近づけたし、アルバムを制作する過程はぼくにとって非常にパワフルな過程だった。だからぼくにとってこれはゴズペルのアルバムなんだ。でもほかのひとにとっては、ディナーをつくっているときにかけるきれいな音楽かもしれない。それはなんでもいいんだ。そのひとの解釈がなんであれ、それはすばらしい。

NYには坂本龍一がいます。以前、彼がレストランのために編んだプレイリストにあなたの曲が選ばれていましたが、彼と会ったことはありますか?

DM:会ったことはないけど、ぜひ会ってみたいと思う。

ここ数年のアーティストで、共感できる音楽家は誰ですか?

DM:最初に思い浮かんだのは、スタージル・シンプソンだね。日本で有名かどうかは知らないけれど、彼はとてもすばらしいミュージシャンだよ。彼がリリースした作品も好きだけれど、ぼくがとくに好きなのは彼の観点や視点、それから歌詞の書き方やインタヴューの答え方なんだ。とても強い存在感のあるひとで、親和性を感じる。彼のほうがぼくよりも有名だし、状況はちがうけれど、彼が話すのを聞くと、彼のことを知っているような気になるんだ(笑)。音楽業界という世界に身を置きながらも、なんとか本来のじぶんというものを保とうとしている。彼のそういうところはぼくにとって大きなインスピレイションとなってきた。音楽的には彼の音楽とぼくの音楽はまったくちがうものだけれど、哲学や理念にかんしてはとても共感できるひとだと思う。それからフィオナ・アップルの新しいアルバムにもいますごくはまっている。最近出たアルバムでよく聴いているよ。あとは数週間前だったかな──もう時間の感覚がわからなくなってしまった──に出たラン・ザ・ジュエルズのアルバムもよく聴いている。新しい音楽もけっこう聴いているよ。

世界じゅうが新型コロナウイルスによりたいへんなことになりました。しばらくライヴはできず、音楽は家で聴くことが主流になりそうですが、本作は家で聴くのにも適した作品だと思います。どういったシチュエーションで聴いてほしいですか? あるいは、本作のどんな部分に注目して聴いてほしいですか?

DM:なるべく1秒くらいは注目しないで聴いてみるのが良いと思う(笑)。さっきも話したけれど、それはリスナーが好きな方法で聴いてくれたら良いと思う。ぼくが個人的に好きな聴き方は、リラックスした状態でヘッドフォンで大音量でかけるという聴き方や、公園を散歩しているときにヘッドフォンで聴いたり、低音量でリピートで家のなかでかけるという聴き方など。リスナーが引き込まれる瞬間があるなら、それが良い聴き方なんだと思う。このアルバムにはいろんな聴き方があるけれど、最終的にそれを決めるのはリスナー各自だ。

ライヴが可能になるのが1年後か2年後かはまだわからない状況ですが、パンデミックが収束し、外でプレイできるようになったとき、まずどのようなライヴをしてみたいですか?

DM:日本でライヴをしたいね(笑)。ぼくは日本に行ったことがないんだけど、日本でライヴをやった友人たちの多くが日本の観客のすばらしさや日本人のホスピタリティの高さをいつもぼくに伝えてくれる。だから日本にすごく行ってみたいんだ。日本に行ってライヴをやったり、取材の質問に答えたりして、ぼくの音楽を広めてくれるひとたちの手助けをしたい。どんな環境でライヴをやりたいかというと、大音量であることはたしかだ。今後、どのような形でライヴをするのが可能になっていくかはわからないけれど、ぼくのライヴは暗くて大音量のなか、強烈な体験にしたいと思っている。そしてそのあいだや、その上やその下にあるすべての要素、いろいろなものが含まれているライヴにしたいと思っているけど、まだ先のことは誰にもわからない。もう誰もなにもわからない! ぼくはもう二度とライヴができないかもしれない。いまはとても困惑した状況だからね。

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〈オンライン〉が増え、コロナ禍がその追い風となった今。人や物、電波などから距離を置いた〈オフ〉の環境で音を楽しむという価値を改めて考えるBeatinkの企画〈オフノオト〉がスタート。
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質問・文:小林拓音(2020年7月17日)

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