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Home >  Interviews > interview with Hiatus Kaiyote (Paul Bender) - 〈ブレインフィーダー〉からリリースされるメルボルン発ネオソウル・バンド

interview with Hiatus Kaiyote (Paul Bender)

interview with Hiatus Kaiyote (Paul Bender)

〈ブレインフィーダー〉からリリースされるメルボルン発ネオソウル・バンド

──ハイエイタス・カイヨーテ、インタヴュー

質問・文:Midori Aoyama    通訳:原口美穂 Photo by Tré Koch   Jun 24,2021 UP

失恋したり、病気になったり、誰かが亡くなったり、大変な状況に置かれているときは、音楽の意味が増すと思う。いまはコロナやその他様々な複雑なことが世界では起こっている。だから、アートのなかには美しさを増している作品もあるんじゃないかな。

アルバムで “Stone Or Lavender” がいちばん好きなんですが、このストリングスもアルトゥール・ヴェロカイが弾いたものですか?

PB:そう。そのトラックのためにブラジルに行ったわけではなかったけど、ブラジルでのレコーディングで運良く時間があまったから、彼に弾いてもらったんだ。

ブラジルでの制作活動はいかがでしたか? 地元メルボルンのスタジオとはまた違ったテンションになると思いますが、制作の雰囲気など具体的なエピソードがあれば教えてください。

PB:素晴らしい経験だった。あのセッションは、いままでの活動のなかでも最高のセッションのひとつだね。もともとの目的は “Get Sun” のホルンとストリングスのレコーディングだったし、実際にブラジルに行かなくてもどうにかなったんだろうけど、経験のために実際あの場にいられて本当に良かったし、すごくエモーショナルになった。実際にやってみるまで何が起こるか想像もつかなかったけど、いざはじまると、彼の演奏が本当に素晴らしかったんだ。皆ものすごく興奮して、勢いで延長してその日の残りの時間もスタジオを借りることにした。その時間でレコーディングしたのが “Stone Or Lavender” と “Red Room”。あの2曲はあの場で本当にサッとできあがった。最初のレコーディングでそれくらい興奮したし、活力を得たからね。

通訳:何か具体的なエピソードはあったりしますか?

PB:ホルンとストリングスが完成したとき、僕は感動してコントロール・ルームで泣いてしまったんだ(笑)。あの瞬間は本当に素晴らしかった。どんな瞬間とも置き換えられない特別な経験だったからな。

〈Brainfeeder〉との契約もサプライズでした。レーベルとの出会いのキッカケはなんでしょうか?

PB:〈Brainfeeder〉のメンバーとは、数年かけてだんだんいろんな人と出会っていった。Timeboy こと John King は僕たちのライヴのステージ・デザインを手がけてくれているから近い存在だし、サンダーキャットとはたくさんのショウやフェスティヴァルで共演する機会があって親しくなった。フライング・ロータスも同じ。テイラー・マクファーリンはずっと昔に僕たちの音楽を広めてくれたし、ミゲル・アトウッド・ファーガソンは前回のレコードでストリングスを担当してくれた。そんな感じで、僕らは〈Brainfeeder〉とすでにけっこう繋がっていたんだ。だから、僕たちにとっては自然の流れだったし、まあそうなるだろうねって感じだった。バンドにすごく合うレーベルだと自分たちも感じているし、彼らの一員になれてすごく嬉しいね。

通訳:〈Brainfeeder〉とサインしたことで変化したことや、プラスになったことはありますか?

PB:〈Brainfeeder〉のクルーは、皆すごく前向きで自分たちがやりたいことを応援してくれる。最高のレーベルだと思う。インスパイアもされるし、こっちの方から自分たちの活動にぜひ関わってほしいと思える存在。彼らは真のクリエイティヴ・コミュニティだと思う。彼らと一緒に仕事ができるなんて夢みたいだよ。

6年間もかけて1枚のアルバムを作る作業は途方もない作業のように思えます。制作の過程で「途中でアルバムを作るのを辞めよう」と挫折するような瞬間はありましたか? 約10年近くに及ぶハイエイタス・カイヨーテの活動のなかで、バンドが継続していける秘訣のようなものがあれば教えてください。

PB:どうだろう。波はもちろんあったけど、僕ら4人が一緒に曲を作るというのは、自分たちが楽しめる瞬間だし、何かユニークなものが生まれる時間でもある。僕らはいまや家族のような存在だし、すでに様々なことを一緒に乗り越えてきている。だから挫折するということは特になかったし、意識しなくても自然と続けたいと思えるんだ。僕たちはそれぞれ全く違う人格だから、ときには複雑な場合もある。でも、だからこそスペシャルなものができあがるんだと思う。自分にできることは、自分の役目以外は人に任せて自分は自分の仕事をきちんとこなすこと。長く活動していれば波があるのは当たり前だし、それに流されず自分が提供できるクリエイティヴィティを提供し続けていけばいいんだと思う。流れのなかで自分はとにかく創作を続け、それを皆が合わせたいときに一緒に合わせればいいんだと思うね。バンドの音楽活動は、大変だけどそのぶん大きなやりがいも感じる。必要なのは忍耐とパッションを持ち続けることさ。

コロナの影響を受けて、フェスティヴァルやイヴェントの形や、音楽の聴き方や存在自体が変化していますね。皆さん自身は今回の期間を経て行動や音楽に対する価値観が変わりましたか?

PB:人生のなかで、より大変な状況に自分が置かれているときは、自分にとっての音楽の意味が増すと思う。例えば、失恋したり、病気になったり、誰かが亡くなったりしたときは、これまで以上に意味と繋がり、美しさを感じるようになると思うんだ。いまは、コロナやその他様々な複雑なことが世界では起こっている。だから、アートのなかには美しさを増している作品もあるんじゃないかな。

ネイ・パームを除いた3人でのトリオ Swooping Duck や、最近インスタグラムで見かけた Space Boiz (!?)などいろんなプロジェクトも進行してますね。Patreon でも積極的に活動してますが、今回のアルバム以降の活動の予定を教えてください。

PB:まだわからないんだよな。8月にシドニーのフェスに出演することは決まってる。国内のショウはいくつかありそう。いまはショウのための準備をしている感じだね。あとは、タイニー・デスクの出演も決まっていて、それはもうすぐ収録なんだ。個人的には、リリースの予定はまだないけど、自分のソロ・アルバムのミックスを終えたところ。今年のどこかでリリースできたらいいんだけど。僕が初めて歌っている作品なんだ。本当に悲しいハートブレイクのレコード。すごく良い作品に仕上がったと僕は思ってる。誇りに思えるし、とりあえず世に送り出してみたい。それは僕にとっての大きな予定だな。

日本ではまだ Patreon が浸透していないのですが、ハイエイタス・カイヨーテとして利用してみていかがでしたか? 良いプラットフォームであればぜひ日本のアーティストにもオススメして欲しいです。

PB:良いと思う。メンバー全員が気に入ってるし、素晴らしいプラットフォームだと思うよ。舞台裏でも他のプロジェクトでも何でも、自分が載せたいものを載せられるんだ。そのページのファンクラブの会員みたいなものになるために、ファンの皆が月額で会費を払う感じだね。それに入ると、他の人には見られない特別な作品を見ることができる。そんな仕組み。僕とサイモンがたくさんのシンセにプラグを差し込んでクレイジーなジャムをしているビデオだったり、僕がチェロで即興をやったり、舞台裏の様子だったり、本当になんでもあり。面白いと思うよ。チェックしてみて。

昨年、今年と立て続けにオーストラリアのアーティストやバンドが活躍しています。もしご存じであれば地元メルボルンでぜひ注目して欲しいアーティストはいますか?

PB:レニアス(Laneous)をチェックしてみて。特に『MOSNTERA DELICIOSA』っていうアルバム。僕がプロデュースしてるアルバムで、作品のなかで演奏もしてる。すっごく良いアルバムなんだ。作業していていちばん楽しかったレコードのひとつ。バンドキャンプやスポティファイで聴けるから、ぜひ聴いてみて。

日本にももう何度も来日されてますね。19年はフジロックにも出演されましたが来日時に特に記憶に残る思い出はありますか?

PB:買い物した。けっこう面白いものを買ったんだ。ギラギラのシルクのガウンとか、クラゲの柄のショーツとか、フラミンゴ柄のシャツとか(笑)。めちゃくちゃ派手な服ばかり(笑)。日本で買い物するのって本当に楽しいんだよね。あと、言うまでもないけど食事も最高。日本に行くときは毎回良い時間をすごしてる。ただ歩き回って、レコード屋や服屋で買い物をして、ハイボールを飲みまくる(笑)。

聴く人それぞれに解釈はあると思いますが、ハイエイタス・カイヨーテが『Mood Valiant』を通してオーディエンスやリスナーへ伝えたいメッセージはありますか?

PB:アルバムを聴いて、素晴らしい時間を過ごしてくれたら嬉しい。アルバムの音楽が必要な感情を引き出して、皆がそれに浸り充実感を感じてほしい。何か必要なものがあるとしたら、それを僕らのアルバムのなかで見つけてもらえたら最高だね。

通訳:今日はありがとうございました!

PB:こちらこそ。またね。

質問・文:Midori Aoyama(2021年6月24日)

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Profile

MIDORI AOYAMAMIDORI AOYAMA
東京生まれのDJ、プロデューサー。12年に自身がフロントマンを務めるパーティー「Eureka!」が始動。Detroit Swindle、Atjazz、Lay-Far、Mad Mats、Ge-Ology、Session Victimなど気鋭のアーティストの来日を手がけ東京のハウス・ミュージック・シーンにおいて確かな評価を得る。Fuji RockやElectric Daisy Carnival (EDC)などの大型フェスティヴァルでの出演経験もあり、活躍は日本だけに留まらず、ロンドン、ストックホルム、ソウルそしてパリなどの都市やアムステルダムのClaire、スペインはマジョルカのGarito Cafeなどのハウスシーンの名門クラブ、香港で開催されるShi Fu Miz Festivalでもプレイ。15年には〈Eureka!〉もレーベルとしてスタート。現在は新しいインターネット・ラジオ局TSUBAKI FMをローンチし、彼の携わる全ての音楽活動にさらなる発信と深みをもたらしている。
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