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IO - ele-king

 東京・世田谷を拠点とするクルー、KANDYTOWN の中心的存在である IO による、〈Def Jam Recordings〉に移籍後初となるアルバム『Player's Ballad.』。これまで〈P-VINE〉から2枚のソロ・アルバム『Soul Long』、『Mood Blue』をリリースし、KANDYTOWN としてもアルバム『KANDYTOWN』でメジャー・デビューを果たすなど、ソロ、グループともにたくさんの作品を重ねてきた IO だが、これまでの彼の楽曲と言えば、90年代、2000年代的なサンプリング・マナーも交えながら、ソウルフルなフィーリングをいまのサウンドとして昇華させ、ラップに関しても実にアーバンでスタイリッシュなスタイルというイメージが非常に強かった。本作はソロでのメジャー・デビュー作ということもあり、これまでの集大成的な作品を予想していたのだが、アルバム・タイトルにある「Ballad」という言葉が示しているように、BPM 控えめに、しっとりとしたムーディーなイメージが全面に出た構成となっている。トラックの曲調に関しても、ミニマルなビートに透明感あるシンセが効果的に響くスタイルが軸になっており、IO のアーバンでスタイリッシュなラップが見事にハマる。そんなスタイルを象徴する“Shawty.”や、もう少しアッパー寄りな“Player's Section.”など聴きどころは多数あるが、このアルバムの大きな目玉と言えるのが、5lack がプロデュースおよびフィーチャリングで参加した“Missed.”だろう。男の色気も漂わせながら、IO と 5lack のふたりが哀愁漂うラヴ・ソングをラップと歌で作り上げ、見事なコンビネーションを披露している。その一方で、過去作での持ち味であったノスタルジックな感覚も健在で、ブギーっぽいテイストも込められている“Pursus.”や MUD をフィーチャした KANDYTOWN 色全開な“Mellow and The Smoke Blue.”など、要所要所に盛り込まれているのも実に心憎い。

 さらに本作の収録曲3曲(“Solid.”、“Bill.”、“Shawty.”)を WONK、King Gnu のメンバーらが演奏して再レコーディングしたという音源『Player's Section. (Band Edition)』がデジタル配信されているのだが、生楽器のサウンドによってソウルフルかつジャジーなテイストがプラスされ、『Player's Ballad.』の世界観にさらに異なるベクトルが加えられている。『Player's Ballad.』のようなムーディーな面を強調したアルバムも、まさに IO にしかできないような作品であるのだが、『Player's Section. (Band Edition)』もまた IO の新たな魅力を大きく引き出した作品と言える。〈Def Jam Recordings〉というステージで、今後、彼がどのような景色を見せてくれるのか、実に楽しみだ。

interview with KANDYTOWN - ele-king


KANDYTOWN
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 太平洋の両岸で社会的な動乱が続く2010年代なかば、日米はトラップの時代にあると言っていい。一方で現在の東京の地下では本当にさまざまな音が鳴っている。パーティ・オリエンテッドなトラップから本格的なギャングスタ・ラップ、けして懐古主義になることのない職人肌のブーン・バップ…。そんな中でも、KANDYTOWNのメジャー・デビュー・アルバム『KANDYTOWN』は、日本のヒップホップ生誕の地、東京のインナーシティに受け継がれる音楽文化のクールネスを結晶化したマスターピースと呼ぶに相応しい。もともと幼なじみでもある世田谷区喜多見を拠点とする総勢16名のこのクルーは、中心人物だったYUSHIを昨年2月に不慮の事故によって失いつつも、けしてその歩みを止めることはなかった。12月22日にはリキッド・ルームでのフリー・クリスマス・ライヴの開催も告知されている。

 ハイプに盛り上がる周囲の喧噪をよそに、KANDYTOWNはあくまで寡黙でマイペースだ。彼らはテレビ番組をきっかけにしたラップ・ブームとも、いまやメイン・ストリームを担いつつあるトラップとも、一定の距離感をキープしている。5年前に震災の暗闇を経験し、いまは4年後のオリンピックにむけてバブリーにざわめく2016年の東京のストリート。マシン・ビートによるトラップの赤裸々なリアリティ・ラップが注目を集める中、KANDYTOWNは1990年代以来の日本のヒップホップの蓄積を正統に継承するサンプリング・サウンドにのせて、強烈なロマンティシズムを描いている。2000年代以降の日本語ラップのリアリズムがつねに時代を切り取ろうと腐心してきたとすれば、彼らに感じるのは、むしろシネマティックな想像力で時代を塗り替えようとする野心だ。考えようによっては、彼らはとても反時代的な存在でもある。

 現在のラップ・ブームの火付け役となった〈フリースタイル・ダンジョン〉は、日本語ラップの「ダディ」であるZEEBRAをオーガナイザーに据え、いとうせいこうという先駆者をキャスティングすることで、黎明期から現在にいたるまでの日本のヒップホップの歴史をうまくパッケージしている。しかし、この10年の冬の時代にアンダーグラウンドなハスリング・ラップの台頭を経験し、震災後にはトラップの本格流入を経由した現在の日本のシーンは、より複雑で多層的だ。断片化と呼んでもいいかもしれない。今回のインタヴューでは、コレクティヴ名義での初オフィシャル・アルバムの制作プロセス、そしてほかでもない2016年にこのアルバムがリリースされた意味を探った。参加したのは、IO、YOUNG JUJU、KIKUMARU、GOTTZ、Ryohu、Neetz、そしてA&RとしてクレジットされたOKAMOTO’Sのオカモトレイジだ。

──アルバム『KANDYTOWN』について

本当にいままでどおりライヴが終わったあとに誰かの家に行って曲を書くみたいな、遊びの延長線上で作ったのがこれですね。(Neetz)
最初で最後かもしれないのでお聴き頂ければと思います。(Ryohu)

まずはアルバムのリリースおめでとうございます。今年2月のYUSHIさんの一周忌にリリースされたIOさんのアルバムを皮切りに、それぞれのソロ・ワークも順調に出していって…ついにKANDYTOWNとしてオフィシャルなデビュー盤ということで。メジャーでのレコーディングにあたって、なにかこれまでとの違いはありましたか?

Neetz:いや、そんなことはまったくなかったですね。

じゃあレコーディングの日程は順調に進んだ感じですか?

Neetz:わりとスムーズにいったとは思います。

Illicit Tsuboiさんのところで合宿的なことをしたと耳にしたのですが。

IO:合宿というほどでもないと思います。

JUJU:でも2、3日連続でスタジオを空けておいてもらって、行けるメンバーがその間に行って、途中で家帰ったりするヤツもいればまた来るヤツもいるみたいな、そういう状態だったと思います。

インディでリリースした『KOLD TAPE』や『BLAKK MOTEL』、『KRUISE』は基本的にNeetzさんの991スタジオですよね?

Neetz:そうですね。基本は991スタジオでやっていました。

Illicit Tsuboiさんといえば名だたるプロデューサーですが、作業環境が変わったことでの新鮮味はありましたか? 具体的にどういったところが変わりましたか?

GOTTZ:やっぱり全然違いましたね。やっぱり機材が違いますし、Neetzのはベッドルームを開けてやっているスタジオなので宅録という感じなんですけど。全然違ったよね?

KIKUMARU:もう最初初めて声を出したときの録り音が違いましたね。

Ryohu:Tsuboiさんが一人ひとりRECしているときにもうそれぞれのバランスを調整して、EQとかコンプとか全部一人ひとり弄ったりしていて細かいところから違いましたね。

新たなステージでどんなアルバムになるのかなと思っていたのですが、とくに構成がよく練られていると思いました。まずは派手なパーティ・チューンでスタートして、心地よい横ノリの曲で引っ張って、インタールードでブレイク・ダウンした後はメロウに、そして最後はまたドラマティックに盛り上げていく。こうした構成は最初から頭にあったんですか?

Neetz:最初はなくて、とりあえず曲をめっちゃ録っておこうというところから始まって、最終的にできたものを曲順に並べてああなったという感じですかね。でも最初はできた曲を録りまくろうという話で、カッコいい曲を録ろうという意識でしたね。

自分で作った作品は完成後に聴くほうですか? 今回のアルバムを客観的に聴いてみて思うところがあれば。

Neetz:普段はあんまり聴かないですね。

GOTTZ:いまはまだ聴いている最中、という感じですね。
Neetz:作るときからあまり意識はしていないので、いまできたものがこれなんだなという感じですね。

飄々としてますね。

Neetz:これからもそのスタンスは変わらないですね。だから意外とこのアルバムに熱意をこめてというわけでもなく、『BLAKK MOTEL』もそうだったし『Kruise』もそうだったし、本当にいままでどおりライヴが終わったあとに誰かの家に行って曲を書くみたいな、遊びの延長線上で作ったのがこれですね。

事実上のリード・トラックの “R.T.N.”にはYUSHIさんの名前がクレジットされてます。IOさんのファースト・アルバムの一曲目の“Check My Leadge”でもYUSHIさんのラップがフィーチャーされてたし…すごく象徴的に感じました。

JUJU:あの曲はYUSHIがメインで作って、MIKIが軽く足したくらいだと思うんですけど。二人が留学中に作っていた曲ですね。

レイジ:でもほぼほぼYUSHIって感じがするよね。

JUJU:うん、音的にYUSHIだしね。4年前くらいにはあった曲で、多分覚えていないと思うけど当時IOくんとかが録っていましたね。でも当時からバンクロールでやろうとしていて楽しみだねと話していたんだけど、みんなそのビートのこと忘れていて、アルバムを作り始めようというときにMIKIが「このビートあるよ」と聴かせて、ワーッという感じになりましたね。

ほかに序盤で印象的なのは、“Twentyfive”はI.N.Iの有名な曲と同じネタで、ただハットの打ち方が今っぽいですね。

Neetz:そうですね。ピート・ロックが使っているやつ。けっこう使われていたので、叩き方を新しくして新しい感じの音にしようかなと思ってああなりましたね。

JUJU:あれはNeetzがフックを作るのに困っていましたね。

Neetz:そうですね。フックがけっこういい感じで決まったというのが大きいし、みんなもラップをカッコよくカマしてくれましたね。

Neetzさんはいつもどんな風にビート・メイクしてますか? キャンディのトラックは、ビートというよりは上ネタのメロウネスが強く印象に残るイメージなんですが。

Neetz:そうですね。まずは上ネタからですね。まず上ネタを探して、ループしたりチョップしたりして、だいたいそのあとにドラムを付け足してという感じですね。このアルバムではとくに、元の素材を活かす曲が多かったかもしれないですね。

それは意識して?

Neetz:けっこう意識的かも。

影響を受けたトラック・メイカーはいますか? このまえレイジくんから、一時期はみんなプリモのビートでしかラップしなかったといういい話を聞いて(笑)。

Neetz:うーん、俺はジャスト・ブレイズとかドクター・ドレーとかけっこう王道なところですね。

どこかでDJ ダヒがフェイヴァリットだと目にしたのですが。

Neetz:DJ ダヒはそのときにちょうどハマっていたので(笑)。基本はさっき言ったような王道のヤツです。

日米のいわゆる90’Sサウンドは聴いたりしますか? ニューヨークならプロエラとかビースト・コースト周辺だったり、日本だとたとえばIOさんのアルバムが出たとき、どこかのショップの限定の特典で“DIG 2 ME”のISSUGIさんリミックスがあったと思うのですが。

Neetz:プロ・エラは聴いているけど僕らはそんなに影響を受けたりしてないですね。ISSUGIさんのリミックスは聴いたことないな。

上の世代の人たちとは、俺らはあまり交流はないですね。IOくんはブート・ストリートのときからJASHWONさんたちにはお世話になっていて。(JUJU)
IOがブートで働いていたというのが意外だよね。いいよね。(レイジ)

言ってしまえば、キャンディはブーン・バップ的な90’sヒップホップの新世代として位置づけられていると思うのですが、いわゆる上の世代の人たちと繋がっているわけではない?

IO:Fla$shBackSのKID FRESINOだったり、FebbとjjjはJUJUのアルバムで一緒にやっていたりしますね。

ほぼ同世代のFla$shBackSのほうとはつながりがありますね。

JUJU:上の世代の人たちとは、俺らはあまり交流はないですね。IOくんはブート・ストリートのときからJASHWONさんたちにはお世話になっていて。

レイジ:IOがブートで働いていたというのが意外だよね。いいよね。

一同:(笑)

JUJU:めっちゃいい。

高校を辞めて働いてたんでしたっけ?

IO:はい。

JUJU:グロウ・アラウンドで働いているヤツもいて、そういう宇田川の繋がりがあるんですけどそこくらいだよね。

じゃあラップについてお伺いします。キャンディといえばワードチョイスが独特だと言われていますが、今回この曲の作詞は苦労したということや、これはこういうトピックに挑戦してみたということはありますか?

JUJU:一切ないですね。

一同:(笑)

JUJU:メジャーに行ってどうだったということは多分みんなないし、トピックをどうしようとかもKANDYTOWNにはほとんどないし、この人に向けて歌おうとかそういうことも言わないから……あんまりないよね?

Ryohu:でも幻のバースとかありますよ。

カットされたりもするということで。ひとつのビートでラップをするメンバーはどうやって決めてますか?

JUJU:挙手制と推薦制がありますね。バランス制もある。

そのバランスを判断するのは誰?

JUJU:みんなですね。

GOTTZ:でも基本的にラップに関してはビート・メイカー・チームじゃないですか。

なるほど。今回のアルバムはビートはNeetzさんにくわえてMIKIさんとRyohuさんがクレジットされてますね。

Ryohu:はい。

GOTTZ:あとはミネソタとか。わりとそっち側で話し合っていたんじゃないですかね。

Ryohuさんは今回トラック・メイカーとして二曲担当していますが、Ryohuさんといえばやはりシンガーとしての役回りもあります。メンバーのなかにこれだけうまく歌える人がいるのは特色のひとつだと思うのですが。

Ryohu:うーん、欲をいえば、俺は本当は女性シンガーが欲しいですね(笑)。

Ryohuさんの歌声はフェミニンなやわらかさがあって、これだけバランスよく歌がハマっているのはそのおかげかなと考えてました。

Ryohu:でもJUJUもいいフックを作るし、「ペーパー・チェイス、福沢諭吉」のラインなんて考えつかないし(笑)。IOもフック作ったりできるし、僕はそんなに意識してはいないしあんまり考えていないですけどね。できないことはできないし、できるヤツにやってもらってというのはなんとなくあります。

みんなソロ活動を活発に行なってますが、KANDYTOWNとして集まったときに自然に出てくるムードみたいなものはありますか?

Ryohu:KANDYTOWNとおのおののソロはまたちょっと違うはずで、それこそJUJU新しいアルバムも違うし。

JUJU:俺のは全然違いますね。多分ショッキングな感じだと思います。

Ryohu:はは!(笑)

MASSHOLEさんプロデュースの先行シングル“THE WAY”からしてダークでドスのきいた感じで。

JUJU:ああいう系もあるし、ちょっとトラップっぽいのもあるしいろいろあるっす。このあいだ改めてキャンディのほうを聴いて、全然違うと思ってびっくりしましたね。集まるとみんなにとってああいうビートのチョイスが程良いというか、Neetzのビートはみんな出すぎず下がりすぎずという感じが保てますね。

Neetzさんは他のラッパーに曲を提供する機会は増えてきました?

Neetz:いまのところほとんどないですね。本当キャンディ内だけなんで、これからやっていこうという感じですかね。ただ黙々と作っているというか。

この1年くらいでいろんなイベントに出演することも増えて、全然スタイルの違うアーティストと一緒になることもあると思います。そのことの影響はありますか?

JUJU:同い年で頑張っているヤツもいるし、ポジティヴに制作を頑張ろうという影響は受けますけど、あんまり具体的な影響はないよね。

Neetz:あんまり影響されないですね。どちらかというと例えばRyohuが4月にアルバムを出して、WWWとかでかいところでライヴをやったりして、そういうところに刺激を受けますね。

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──2016年のシーンについて

むこうにいるキッズは、常にヤバいものが更新されていくわけじゃないですか。だからあいつらの世代のスターはリル・ウェインやT.I.だし、ビギーや2パックを追う前に小学生くらいから自分の世代のスターが目の前にいるから、別に追う必要がないというか。(GOTTZ)


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いま日米問わずトラップの時代みたいなところがあるじゃないですか。アメリカだとそれに対してケンドリック・ラマーやアンダーソン・パークといった90年代回帰の流れもある。このまえ、アトランタのリル・ヨッティというトラップのラッパーが、2パックとビギーなんて5曲も知らねえよ、みたいな発言をして、それがちょっとした議論になって…。

Ryohu:ヨッティが「そんなの知らなくてもいいじゃん」って言ったヤツですよね。

JUJU:それにアンダーソン・パークが噛みついたんですよね。

GOTTZ:「知らないことをいばるな」って(笑)。

一同:(笑)

GOTTZ:日本に住んでいても俺らは日本語のラップをそんなに聴かないから。ようはむこう(アメリカ)のものを掘っているじゃないですか。でもむこうにいるキッズは、常にヤバいものが更新されていくわけじゃないですか。だからあいつらの世代のスターはリル・ウェインやT.I.だし、ビギーや2パックを追う前に小学生くらいから自分の世代のスターが目の前にいるから、別に追う必要がないというか。そのナウだけを聴いていたらそうなるんじゃないですか。

じゃあどちらかというとヨッティ派?(笑)

GOTTZ:いや、俺はもちろんアンダーソン・パークの言っていることもわかりますよ(笑)。

JUJU:kiLLaとか日本の若い子もきっとそうなんですよ。一緒に遊んで2パックの曲とかをかけてても知らなかったりするし、いまの若い子は本当にそうなんだと思う。別になんとも思わないけど、知ってたほうがいいとは思うし「カッコいいのになんで?」と思うだけ(笑)。

GOTTZ:ヨッティのあれは、元々チーフ・キーフが言った言葉に対してなんじゃないですか? あれはチーフ・キーフが最初に「俺はビギーも2パックもほとんど知らねえよ」と言ってたんですよ、たしか。

まあことさらトラップとヒップホップを対立的にとらえる必要もないとは思うんですが、オーセンティックなヒップホップが過去のブラック・ミュージックから続く歴史性を背負っている部分が強いのに対して、たとえばヨッティなんかは韓国のBIG BANGの大ファンだったり、ネット時代というか、グローバル時代ならではのポスト・モダン的な側面がより強く出てる印象があります。日本だとBCDMGは宇田川を拠点として、トラップもやればブーン・バップもやる、ようは断片化したシーンをきちんと俯瞰する王道的な仕事を意識的にやってる。KANDYTOWNは世田谷ローカルの仲間たちで好き勝手にやってきた部分もあるけれど、言ってみれば昔ながらの東京のインナーシティのヒップホップのクールネスをオーセンティックに継承しているところもあって。

IO:俺とJUJUとDONYがBCDMGに所属してプレイヤーとしてやっていて、ああいうところにキャンディがあるというよりは、どちらかというとキャンディは帰ってくる場所というか。

やっぱり地元から愛されているヤツは間違いないと思うから、そういうところを見て俺もやろうと思ったし……(JUJU)

日本の同時代のトラップ・アーティストを聴いてフィールすることはありますか?

JUJU:そんなに聴いてるわけじゃないですけど、俺は会ったら喋るし普通に仲いいです。曲を作ろうという話はしますし、YDIZZYとかkiLLa組は「曲聴いてください」といって送ってくるからそういうときは聴きますね。(KANDYTOWNの)みんなが聴くというのは聞いたことないし見たこともないですね。みんなが自発的に誰か他のアーティストの曲をかけてるのはないです。

Neetz:俺は日本語ラップだとKANDYTOWNしか聴いてないです。

一同:(笑)

JUJU:そういう感じなんで、そこに関してはみんなリル・ヨッティって感じですね。

GOTTZ:あ、でもRYUGO ISHIDAの“YRB”(ヤング・リッチ・ボーイ)はけっこう聴いてたけどね。中毒性がある感じ(笑)。

JUJU:まあ別にトラップをそんなに意識して聴かないですね。

IO:ポジティヴなことを言うといろんな色があって、聴く人にとってもいろんな選択肢があるなかで俺らにフィールしたら聴いてくれればいいと思う。ただいまヒップホップ・ブームと言われているじゃないですか? それがブームで終わらないで根づいていければカルチャーになるし、先の世代がラッパーになったらリッチになれるという本当にアメリカみたいな文化になればいいと思うっすね。

BCDMGのコンピレーションではSWEET WILLIAM さん、唾奇さんとジョインした”SAME AS”が印象に残ってます。オデッセイの“ウィークエンド・ラヴァー”のネタで唾奇さんが「時給700と800」ってぶっちゃける感じのラップを最初にかまして、フックで「fameじゃ満ちないpainとliving」とJUJUさんが応えてて…IOさんが時どき使う「チープ・シャンペン」ってワードじゃないけど、単にきらびやかなだけじゃないKANDYTOWNの魅力が引き出されてる感じがしました。

JUJU:唾奇とかはすごくいいと思うというか、いまの時代だとお金があるように見せがちだと思うんですよ。でもああいう感じで来るじゃないですか。沖縄にライヴをしに行ったときに沖縄の人たちの唾奇に対するプロップスがハンパなくて、みんな歌ってたし「おい! 唾奇ぃ!」みたいな感じになっていて、それがすごくいいなと思ったんですよ。やっぱり地元から愛されているヤツは間違いないと思うから、そういうところを見て俺もやろうと思ったし、なによりIOくんが「唾奇とやるからやろうぜ」と言ってきてくれて、IOくんが言ってるならと思って、一緒にやったんですよ。

IO:唾奇は単純にカッコいいんです。俺のスタイルとは違うけど、俺にないものを持ってるし、やろうと思ってもできないスタイルでやっていて、そこにカッコいいと思う部分がある。だからシンプルに一緒に曲をやってみたいと思いました。

じゃああのコラボレーションはIOさんから持ち込んだ感じですか?

IO:ですね。

レイジ:あとそうだ。シーンとのつながりで言うと、あまり明かされていないんですけど、意外とSIMI LABと仲いいんですよね。いまはもう影響を受けたりしていないと思うし一緒にやっていないけど、俺から聞きたいんだけど、昔一緒につるんでたときは、オムスとかQNから影響受けたりしたの?

JUJU:俺はラップを始めたときにYUSHIとQNくんが一番近くにいてくれたからね。

レイジ:QNが最初にヤング・ジュジュをプロデュースしようとしてたのも、もう5、6年前だよね。

JUJU:そのときは本当に恵まれていたというか、周りの人がスゲえと言っている2人がいつも遊びに連れて行ってくれて、リリック書けとか一言も言われたことないけど、あの人たちは「やる」となったら15分でビートを作って、10分でリリックを書いて、5分で録って、(そのペースで)1日5曲録るみたいな人たちだったからそれに付いてやっていて、音楽への姿勢はあの2人から影響を受けましたね。フラフラしてるんだけど、レコ屋に入ってビートを選んだら家に帰って作り出すまでがすごく早いというか。「バン!」となったらしっかりやるという感じだったり、当時はすごく影響を受けたと思いますね。

レイジ:ちゃんと盤になった音源で、一番最初に世に出たYOUNG JUJUのラップって“Ghost”だっけ?

JUJU:うーん、IOくんたちともやってた曲があったと思うけど、ちゃんと流通されたのはそうかもしれない。

レイジ:QNのサード・アルバムに入っている曲だよね。そこの繋がりはみんな知らないだろうけどけっこう古いもんね。

Ryohu:意外とね。でも感覚的にはKANDYTOWNと同じというか。

レイジ:そうとう近いし、ずっと一緒にやってたもんね。中山フェスタとか一緒に出てたし。

JUJU:YUSHIの家に泊まるときも、オムスくんがいてIOくんがいてRyohuくんがいてみたいに意味わかんない感じだったもんね。

レイジ:オムスとQNが遊ぶのもYUSHIの家だったしなあ。

黎明期のその時期、相模原と喜多見のコネクションがあったということですか?

JUJU:SIMI LABのマイスペースかなにかに「ウィード・カット」(YUSHIの別名義。ドカット)って入ってたのを俺が見つけて、「YUSHI、SIMI LAB入ってんだ。名前入ってたよ」と言ったら、「絶対入ってねえ。いまから電話する」と言って電話して「俺入ってねえから!」とずっと言っていたことがあったりしましたね。

レイジ:SIMI LABの結成前からつるんでるんだよね?

Ryohu:いまの感じになる前からだね。

JUJU:QNくんがずっとYUSHIをSIMI LABに入れたがっていて「名前だけでもいいから入ってくれ」と言っているのを俺は見てたけど、YUSHIは「俺はBANKROLLだから無理」みたいなことをずっと言ってましたね。

それはYUSHIさんはBANKROLLでバンといきたいから、ということで?

レイジ:いや、BANKROLLはもうKANDYTOWN内でバーンと行ってたっす(笑)。

JUJU:俺はBANKROLLを見て好きになっていってラップやったり、周りの同い年のヤツや年下のヤツがBANKROLLを好きになっていった雰囲気がKANDYTOWNの流れとすごく似ている気がしているから、みんな(KANDYTOWNを)好きになるんじゃねえかなとほんのり感じてますね。あのとき俺がヒップホップを好きになっていった感じとこの流れの感覚が近いというか、いまこうやってBAKROLLと曲を出したりしているのがなにかあるといいなと俺は信じてますね。

聞いていると、なにかヒップホップよりも先に出会いや絆がある感じですね。

Ryohu:そうですね。だから表現がヒップホップだったというだけで、というかそれしかできないということもあるんだけど(笑)。いまさらギターとか弾けないし。

ニューヨークでもクイーンズとブロンクス、ハーレムとかでそれぞれ色があるじゃないですか。東京もそんな感じになってきたと思います。

JUJU:日本はそれがまだすこしできていない部分があるというか、認め合うことがないというか、出てきた人をどうしても蹴落としちゃうような風潮があるんじゃないかなと感じますね。でもやっぱり下から人は出てくるものだし、それは認めなきゃいけないし、それに勝る色を持ってなければいけないし、人のことをとやかく言うよりも自分の色をしっかり持って、いろんな色があるのがヒップホップなんだということを世間の人がわかってくれれば、もっと面白くなると思いますね。

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──ラップ・ブームについて

結局自分たちがカッコいいと思うことをやっているので、別にどう解釈されてもいいんですね。リリックにも出てくるんですけど「ホント気にしない」って感じですね。(KIKUMARU)

いまヒップホップ・シーンを考えると〈フリースタイル・ダンジョン〉という番組の影響はかなり大きいと思うのですが、この前KIKUMARUさんとBSCさんとディアンさんで出演されていましたよね。あれはどういう経緯で?

KIKUMARU:話が来て、3人での出演にルールが変わったと言われたんで、それでやるんだったらあの3人でやるよ、という感じでした。

Ryohu:それこそKIKUMARUはBボーイ・パークで優勝してるんで、キャンディでは一番バトルをしっかりやって成績も残ってるし、ちゃんと実力もあるかなという。

Neetz:シーンに名前が出たのはKIKUMARUが一番早かったですね。

KIKUMARU:5年前くらいですね。

IO:(小声で)それ知らないですね。

一同:(笑)

いまのバトル・ブームについてなにかあれば。

Neetz:俺はポジティヴだと思うんですけどね。それがヒップホップかと言われればわかんないですけど、そこが入り口になって自分の好きなところに行き当たってくれればいいと思うし、実際みんなフリースタイルしててすごいなと思うし。自分がクールだと思っていることがそこにあるかと言ったらないですけど、あれはあれで俺はすごいなと思う。

JUJU:ある種のスポーツですよね。

IO:俺にはできないことだと思う。それが日本のテレビに映ってて、いままでになかったことだし、色んな捉え方はあると思うけどポジティヴなことだと思う。ブームで終わらずに、根づいていって、ラッパーで成功すれば、リッチになれるというのが当たり前の文化になればいいなと思います。

レイジくんはどうですか?

レイジ:バトルっすか? あれはラップであってヒップホップではないかなというか、べつにあそこの勝ち負けには興味ないんじゃない。ヒップホップというよりかは、あれはとにかくラップという歌唱法が流行っている感じがする。

スタイルとしてのヒップホップと歌唱法としてのラップを分けて、だけどいまはそういうヒップホップという言葉の重みが嫌で、意識的にラップって言葉を使う人たちもいますね。

JUJU:うーん、でも、みんなやることやろうって感じですね。

レイジ:俺が見ているとKANDYTOWNというもの自体がシーンみたいな感じなんですよね。ここのメンバー同士で影響を受けあってるし、メンバー同士で盛り上がって成長していってるシーンという感じだから、メンバーが増えたり減ったりすることはないだろうけど、他のひとになに言われても全部「ああ、まあいいんじゃないですか」って感じだと思う。

たとえばひと昔まえのアーティストがメジャー・シーンに切り込んでいくときには、良くも悪くもヒップホップとか日本語ラップのシーンをレプリゼントしているような感覚があったと思います。だけどシーン自体がこれだけ多様化しているいま、どれだけそういう感覚があるのか。KANDYTOWNはどうですか?

JUJU:全然ないっすよね。

Neetz:喜多見って感じするよね。

レイジ:KANDYTOWNをレペゼンしているという感じですよね。

KIKUMARU:他人を見てなにか思うところがあっても、いざビートがかかっているところでリリックを書くとなったら、そういうのはみんな関係してないと思いますね。良くも悪くも周りじゃないっていうか。ブームがどうとかもとくに考えてないですね。

レイジ:でもこの人たちはずっとこの人たちだけで生活しているから(笑)、周りの影響は生まれないっすよ。誰々がどうでとかもほとんどなくて、違う世界の人たちだと思うんですよね。

JUJU:うまく説明できないけど、俺らはカッコつけるところが独特というか。でもほかの日本語ラップのヤツに会えば「みんないいヤツじゃん」と思うし、「お互い頑張ろう」ってポジティヴな気持ちになるだけっすね。

今回のアルバムだと”GET LIGHT”のヴィデオはリーボックのCMもかねたタイアップになってます。最近はラッパーがCMに出る機会も増えてるけれど、あれはそういうブームには関係ない感じというか。

レイジ:あれはマジでヒップホップですよね。

JUJU:でも俺らはあれがそんなに超カッコいいとか、特別だとかは思ってない(笑)。そのへんからちょっと違ってると思いますね。

そのズレが面白いというか、自分たちは全然シーンを背負っているつもりはないのだけれど、結果的にバトル・ブームとは関係のないところで王道的なスタイルを引き継いで、メジャーなフィールドで勝負してるっていう。そのズレについてはどう思いますか?


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レイジ:メジャー・デビューっていっても、ただ単にメジャーのレーベルから1枚リリースしたというだけだと思うんですよ。

JUJU:アルバム作ってても、メジャーだからどうこうってのは一切ないですね。言っちゃいけないこととかダメだとか言われたことないし、全然なかったよね?

レイジ:気を使ってリリックを変えるとか全然なかった。

JUJU:みんないつも一緒にいるから緊張とかわかんないし、仕事が多くなったとかはあるかもしれないけど変わったことはそんなにないよね。

ある意味でコミュニティ・ミュージック?

JUJU:そうだと思うけどなあ。RyohuくんやIOくんの新曲のほうが100倍気になるし、俺らは元々世に出さない人たちだから。

レイジ:そうね(笑)。世の中では誰も知らないけど、KANDYTOWN内ではマジでアンセムみたいなヒップホップ・クラシックがいっぱいあるんですよ。この惑星の人たちって感じですよね(笑)。ここは外国ですよ(笑)。

JUJU:「Neetzがこういうビート作ったってよ」というほうが「ヤベえ!」と思うし。

Ryohu:NeetzからのGmailが一番アガるよね。

レイジ:それ最高だね。

Ryohu:あんなにワクワクしてメールを開けることはないかもしれない。

一同:(笑)

レイジ:俺はそこが東京っぽい感じがしますけどね。東京のローカル。東京っていろんなところからいろんな人が来てずっとソワソワしているイメージだけど、そんな東京でもローカルはある。だっていわゆる田舎でも、イケてる人ってその地元に根づいてるじゃないですか。結局東京が都会で地方が田舎ということじゃなくて、場所がどこだろうがイケてるやつはイケてるし、自分のローカルをちゃんと持って、そのなかで周りを気にせずやれているヤツはいる。だからKANDYTOWNが周りのシーンを気にしないというのも別にカッコつけているわけじゃなくて、近場に気になる人がいてそっちにしか興味がないから、NeetzからのGmailがブチあがるとか、そういうのはこの世界があるからなんだ、という。だから江戸っ子ってうのかな。本当の意味で東京の雰囲気でやれている感じがしましたね。

世田谷の喜多見からKANDYTOWNが出てきて、それはそこにYUSHIさんという人間が1人いたからということがあるじゃないですか。街って、たんに物理的な場所というんじゃなくて、人と人のつながりがつくってる。

レイジ:そうかもしれないっすね。

通常版のジャケットがYUSHIさんの描いた絵になってます。メジャーで勝負するアルバムの中心に、とてもパーソナルな歴史を置いているということが、そのローカル感の象徴かなと思います。

KIKUMARU:そのジャケはめっちゃ派手だと思いますけどね。そういうジャケってなくないですか(笑)?

JUJU:YUSHIの絵にするアイデアは元からあったと思います。

IO:MIKIと話していてジャケットを絵にしようということになって、YUSHIの家に行ったときに絵を見ていて、ほかにもいっぱいあるんですけど、とりあえずこの絵のインパクトが強くて。アルバムが出来たら、結局それになってました。

IO:たしかレコーディングが終わったくらいかな。

Ryohu:レコーディングが終わってすぐくらいですね。ミックスしている合間に同時進行でアートワークも決めました。

レイジ:通常版はペラペラの紙一枚で、メジャーから出てるのにストリート・アルバム感がハンパないっすよね(笑)。

今回は豪華版、通常版ともに歌詞カードが入ってません。これはポリシーというか、明確な意志があるんですか?

JUJU:そこはポリシーですね。

レイジ:なんて言ってるんだろうなというワクワクがあるもんね。

Ryohu:聴いてもらえばいいかなと。

Neetz:別に読んでもらえなくてもね。

YUSHIさんの存在を意識して聴いてみると“GOOD DIE YOUNG”や“THE MAN WHO KEW TOO MUCH”などドキッとするようなタイトルもある。でも別にシャウトアウトしているわけでもないし、このバランスも自然にこうなったんですか?

Ryohu:自然にですね。こういう曲を書こうということも決めていないので、1人が書いてきて「じゃあ俺も(書く)」という感じでしたね。あとはトラックが上がってきてこの曲はこういう風に書こうというのも、例えばNeetzが作ってきたトラックに“Dejavu”と書いてあったら、なんでそう名づけたかはわからないですけどみんな“Dejavu”について書こうみたいな感じでしたね。いままでそういう風に作ってきたのでいままで通りですね。

YUSHIさんを連想させるといえば、Ryohuさんのソロでいえば“Forever”という曲もありますね。

Ryohu:あれは一応YUSHIについてだけではないですけど、(YUSHIの)命日の日に書いたんですよね。直接的に言うのは嫌だったんで含めながら書きましたけど、(YUSHIが)中心にはいましたね。KANDYTOWNのそれぞれのメンバーにとっても、YUSHIはデカい存在だということですね。絶対出したくないでしょうけど、メンバー全員がそれぞれ思うYUSHIを書く曲があったら面白そうですよね。

豪華版のほうの写真はレイジくんが撮影したもので…最初のほうの扉に「PLAY LIKE 80’S」という言葉があって。リリックにもよく出てくる印象的で謎めいたワードですが、誰の言葉ですか?

Neetz:これはIOくんじゃない?

IO:これは俺がたまに言ってたやつですね。

その心は?

IO: PLAY LIKE 80’S。

レイジ:バブリーなギラギラ感だね。

IO:わかんないけど、なんか調子いい。

みんな90年代生まれですよね?

IO:はい。本当は「Like 80’sのように弾くシティ」と言っていて……。

Ryohu:それもおのおの感じ取ってもらってほしいですね。

KIKUMARU:結局自分たちがカッコいいと思うことをやっているので、別にどう解釈されてもいいんですね。リリックにも出てくるんですけど「ホント気にしない」って感じですね。

90年代生まれだったら物心ついたときは00年代だったと思うんですが、ようはあまり明るい時代じゃないというか、10年代の始まりは震災もあったし、いまは若者の貧困がどうこうとか言われちゃう時代じゃないですか。だけど、そんな中でも自分たちの楽しみ方というか、遊び方を持って、最高にカッコつけて、きらびやかに歌舞いてみせる。その感じが東京ネイティヴのクールネスの2016年の最新形なのかなと思います。ああ、俺の意見言っちゃった(笑)。なにかあればどうぞ(笑)。

Neetz:ありがとうございます(笑)

Ryohu:でもまたいまからアルバムを作ることになったら、同じものは出来上がらないだろうなと思います。

みんなスタイルが変わっていく?

IO:それはわかんないっす。そのときカッコいいと思ったものをやるし、もしかしたらいきなりトラップを始めるかもしれないし(笑)

Neetz:俺は(アルバムが)もっと続いている感覚があるんですよね。

70分でもまだ足りなかったということですか?

Neetz:いや、気持ち的にはもっとこのアルバムは続くと思っていて、今回のはそのなかの一部というか、最初の部分がファースト・アルバムになっている感覚ですね。これがKANDYTOWNのすべてというわけではないですね。

Ryohu:みんなソロでは違う感じで出すんじゃないの?

KIKUMARU:良くも悪くも変わりはすると思います。

Ryohu:きっといい方向に変化するんじゃないですか。

KIKUMARU:でもみんなまだあんまりソロを出してないから変化がわかんないっすよ。

IO:俺はキャンディでやっているときもソロでやっているときも、あまり意識は変わらないんですよ。

今後はソロ作に集中する感じですか? たとえばセカンドについて考えたりはしますか?

IO:キャンディのセカンドがどうなるかはタイミングですね。

JUJU:キャンディのセカンドは10年後くらいでいいんじゃな~い。

IO:とりあえずDONYやMUDもみんなソロ出しますね。

レイジ:MUDのソロも作るの?

JUJU:これから。

IO:俺らみたいなのを「ちゃんと出せよ」と言って動かしてくれる人がいないとちゃんとした形では出さないと思うけど、いつも通りみんなで遊んでいるときに曲を作るとは思いますね。あとはなにを出すにしろ、音の色は変わるかもしれないですけどKANDYTOWNのままだと思う。コンセプトを決めてこういうアルバムを作ろうということはないと思いますね。

最後に一言ずつもらってもよろしいですか?

Ryohu:最初で最後かもしれないのでお聴き頂ければと思います。

Neetz:本当にドープなアルバムができたと思うので(笑)、チェックしてほしいです。

IO:よかったら聴いてください。

KIKUMARU:いま作ったものが俺たちのいまなんで次出せるかわかんないですけど、おのおののソロやミックスCDがこれから出ると思うので、KANDYTOWN全体をチェックしてもらえたらと思います。

Ryohu:はい、頂きました~。

一同:(笑)

GOTTZ:アルバムのテーマは「KANDYTOWNのファースト・アルバム」です。

JUJU:ヤバい、俺まで早かった。よかったら聴いてください、っすね(笑)。

レイジ:ええ!? それだけ?

Ryohu:これが公開される頃には自分のアルバムも出るんじゃないの?

JUJU:11月23日にも俺のソロ・アルバムが出るから、そっちも聴いてください。このメンバーで作れて本当によかったなと思うんで、いまの若いキッズたちはこれからそういうのを目指して頑張ってほしいし、ラップを続ければいいことがあるよというのがアルバムのテーマじゃないですけど、俺はいまラップ続けていてよかったと思いますね。

GOTTZ:「間違いないヤツらと仲間になれ」ってDONY JOINTが言っていたけどまさにそれですね。

レイジ:俺は携われてよかったですよ。

今回レイジくんが音楽的にもディレクションに関わるのかと思ったのですが、そうではなく、あくまでまとめ役だったそうで。

レイジ:まとめ役というか、簡単に説明するとKANDYTOWN側のスポークスマンという感じなんですよ。レーベルと細かいことをやりとりしていただけなんで。

制作で一番印象深かったのは遅刻がとにかく多かったこと聞きましたが(笑)。

レイジ:遅刻はつきものですけど、こないだのワンマン見てて、ラップがカッコよければなんでもいいやと思いましたね(笑)

一同:(笑)

レイジ:どんどん遅刻していいよ! と思いました。遅刻しないでラップがカッコよくなくなるくらいだったら、遅刻しまくってラップカッコいいほうがいいですよ。

なるほど。ありがとうございました。

キャンディタウン:ありがとうございました!

IO - ele-king

イメージがリアルを追いつめる “CHECK MY LEDGE”

 2015年の東京のアンダーグラウンドを騒がせたビッグ・ハイプのひとつは、間違いなくKANDYTOWNだった。世田谷区南西部のベッドタウンを拠点とするこのクルーは、ランダムにドロップするヴィデオやミックステープ、さらにはストリート限定のフィジカルCDを通じて、東京の山の手エリア特有の、アーバンで洗練された空気を緻密に演出してみせた。トラックメイク、ラップとともに、映像制作やモデルまでこなす総勢15人。北区王子や川崎南部など、東京の郊外エリアからハードコアなバックグラウンドのトラップ・ミュージックが隆盛する中、「KANDYTOWN」という架空の街のコンセプトと、メロウなサンプリング・アートによって構築される90’Sサウンドは異彩を放っていた。じゅうにぶんに盛り上がったハイプと、おそらくは水面下でくすぶるジェラス混じりの反感。デビューの舞台としては申しぶんない好奇心が渦巻く中、KANDYTOWNの中心人物であるIOのファースト・ソロ・アルバム『SOUL LONG』はリリースされた。

 結論から言おう。IOは見事にハイプの内実を埋めた。彼はこの30年来の日本のヒップホップの伝統の正統な後継者だ。そして同時に『SOUL LONG』は、ジャンルの壁を超え、CEROやSUCHMOSなど、ヒップホップ以降のソウルやファンク、ジャズの咀嚼を通じてシティ・ポップスを現代的に更新/拡張しようとする、新世代のインディ・バンドたちの隣に置かれるべきレコードでもある。つまり、日本の若い世代による、アメリカ音楽のコンテンポラリーでフレッシュな再解釈。そこには、これまでの日本のヒップホップのエッセンスの継承だけでなく、それ以前から東京の文化エリートが綿々とつむぎ続けてきた、外国音楽の真摯な翻訳の伝統が息づいている。豪華プロデューサーたちの集結をうけて、巷では「日本版Illmatic」との言葉も飛び交っているみたいだけれど、『SOUL LONG』は20年前の黄金期ニューヨーク・ラップの焼き直しなんかじゃない。これは、噴出するリアルに対抗しようとする、想像力を武器にしたスタイルの美学だ。

                   *

 ルー・コートニーの“SINCE I LAID EYES ON YOU”の流麗なコーラスをバックに亡き親友の肉声をサンプルする”CHECK MY LEDGE”から期待を裏切らない。腰を落ち着けたIOのラップはどこまでもスムース。いわゆるトラップ以降の、フロウの独創性とフレーズの面白さで勝負する最近の流行とはまるで真逆だ。フロウを壊さぬようになめらかなライミングをキープし、ヴァースの終わりには狙いすましたパンチラインをキックしてみせる。それ以降も、なかばクリシェ的なセルフ・ボースティングやワン・ナイト・スタンド的な色恋沙汰、警察の職務質問をかわすきわどいシーンまで、あくまで一線を越えないクールさだ。

 世代を超えた精鋭プロデューサーたちによるトラックもそれぞれの個性を際立たせながら統一感を失わない。新世代の筆頭、ビート・アルバム『OMBS』で世界水準のビート・メイカーであることを証明したSIMI LABのOMSBによる“HERE I AM”、そしてDOWN NORTH CAMPの若きキーマン、KID FRESINOがビート・メイクとリミックスでの客演をこなす“TAP FOUR”が、とにかく素晴らしい。NEETZが笠井紀美子の楽曲をサンプルして90年代生まれのIOが歌う“PLAY LIKE 80’S”も、いまの東京のバブリーで、どこか殺伐とした空気をうまく切り取っている。KANDYTOWNの面々をゲストに迎えた“119MEASURES”ではスリリングに、BCDMGのJASHWONによる“CITY NEVER SLEEP”では叙情的に、それぞれ対照的にストリングスを使いわけるバランスも新鮮だ。
 クライマックスの終盤、ライムスターのMummy-Dによる完全に90’Sマナーの“PLUSH SAFE HE THINK”ではジャン・ミシェル・バスキアをさらりと引用し、生歌の日本語フックに挑戦した疾走感溢れる追悼タイトル・トラック、“SOUL LONG”はKING OF DIGGIN’、御大MUROプロデュース。いまや太平洋を越えた現象である、90年代の黄金期ニューヨーク・ヒップホップ再評価の流れに呼応して、どれもトラップ的なアプローチとは一線を画す、メロウな90’Sサウンドだ。とくにMummy-DとMUROのベテランならではのプロデュース・ワークは、フレッシュでありながらオーセンティック、というアルバム全体の印象を決定づけている。リリックには故DEV LARGEの名もさらりと飛び出すけれど、彼が存命中ならきっとこの豪華布陣に名を連ねていたに違いない、なんてことも思わずにはいられない。

 日米の90’Sリヴァイバラーの中でのIOの個性は、間違いなくそのメロウネスにある。それはけしてサンプリングを基調としたサウンドのムードだけのことではない。スムースなラップというのはたいてい歌に接近するものだけれど、IOはあくまでクラシカルなラップによって、ソウルフルなフィーリングを表現する。たとえば、ビースト・コーストの震源であるニューヨークのPRO ERAとその中心人物JOEY BADA$$には、サウンドにもリリックにもハードコアなヒップホップ・マナーが顕著にみてとれるし、そもそも長らく90’Sヒップホップの文法に呪縛されてきた日本のシーンで、真の意味での90’Sリバイバルを決定づけたFla$hBackSの洗練されたサウンドにさえ、そのフロウやビート・マナーには言語化以前の鋭い反抗のアティチュードが感じられる。それに対してIOは、あくまで優雅でドライなスタンスを崩さない。葛藤や苛立ちの棘、強い叙情を完璧なまでにコントロールして、ひたすらソフィスティケートされたドラマを演出してみせる。

 ラップというのはえてしてリアルを追求するものだけれど、ここにあるのは逆に、イメージを駆使してリアルを塗り替えようとする想像力だ。KANDYTOWNのミックスやヴィデオにはアメリカのソウルだけでなく、山下達郎の“甘く危険な香り”など、日本産のシティ・ポップスが印象的に登場する。そのことを踏まえれば、口にしてはいけないことを口にしない、この禁欲的な美学は、かなり確信犯的に選びとられている。東京郊外でリアリティ・ラップが盛り上がり、地上波ではフリースタイル・バトルの泥くさい熱気が溢れる中、サウンドの感触と言葉選びによって演出されるこのクールネスは、そのスムースな見た目とは裏腹に、とても野心的なものだ。郊外のトラップ・ミュージックがVICE JAPANのショート・ドキュメンタリーをきっかけに注目を浴びたのとあえて対比させるなら、IOとKANDYTOWNのバックボーンには明確に、映画的な感性がある。

 シティ・ポップス的な想像力を媒介とした、ヒップホップ以降のソウルやジャズ、ファンクのメロウネスの再構築。その音楽的な方向性は、足取りはまったく真逆だけれど、現在の日本のインディ・ロックともリンクする。それは、たとえばCEROがディアンジェロやロバート・グラスパーを経由して最新作『OBSCURE RIDE』で完成させたサウンドや、KANDYTOWNの一員である呂布も客演するSUCHMOSのデビュー盤『THE BAY』とも、切れ目なくつながっている。事実、CEROの“SUMMER SOUL”の12インチのリミックスを担当したのはOMSBだし、STILLICHIMIYAの田我流とカイザーソゼ、5lackの生バンドとのセッションなど、最近のアンダーグラウンド・シーンはバンドサウンドとの実験的融合に舵を切りつつある。
 ただ、こうした交錯現象は、いわゆるクロスオーヴァーとは少しおもむきが違う。本作には昨年急逝したKANDYTOWNの創設者、YUSHIが残したラップやビートがいくつか使われているけれど、彼はかつて、現在のOKAMOTO’Sの前身バンドのフロントマンをつとめていた。つまり、異なった音楽的バックグラウンドを持つ者たちが異種交流し、ハイブリッド的になにか生み出しているというよりは、もともと共通の音楽的素養を持つ者たちが、アウトプットとしてそれぞれ異なる表現方法を選ぶことで、自然にジャンルの壁を超えた交錯が生まれているとみるべきだ。これはディアンジェロやグラスパーの登場を背景とする、90年代以降のヒップホップを軸にしたソウルやジャズの更新なしにはありえなかったことだ。

 少し大げさな話になってしまうけれど、文句なしに去年のベスト・アルバムだったケンドリック・ラマーの『TO PIMP A BUTTERFLY』は、ヒップホップの人脈と若手のジャズ・プレイヤーの人脈が実際の血縁関係も含むクランとしてつながり、その制作を支えていた。サウンド面でのリーダーだったテレス・マーティンにいたってはア・トライブ・コールド・クエストとの出会いがきっかけでジャズの魅力に没頭していったというから、ようはヒップホップ以降の世代にとって、マシンのビートと生楽器による演奏というのはとくに大仰に線が引かれるものじゃない。J・ディラ以降の身体的なズレを反映させたマシン・ビートはすでにクリス・デイヴなど、ディアンジェロやグラスパーのサウンドを支えるドラム・プレイヤーによって、再帰的なプレイ・スタイルに昇華されてさえいるのだ。もちろん『SOUL LONG』そのものは、オーソドックスなヒップホップの方法論で制作されているけれど、そのスタイルがメロウネスを結節点にシティ・ポップスとの共振の萌芽をみせていることは、今後のシーンの動向を占ううえでも非常に重要だ。

 このアルバムのリリースされた2月14日は、KANDYTOWNとっては肉親同然の幼馴染みだった、故YUSHIの一周忌にあたる。作品に昇華するにはいまだ生々しいだろうその傷も、YUSHIの遺した謎の言葉を「ソー・ロング(さよなら)」と読ませるタイトル、詩的なリリックやアートワークを通じて、あくまでも寡黙に、コンセプチュアルに表現される。KANDYTOWN名義のミックステープ『KOLD TAPE』では、サックスをフィーチャーしたバンドサウンド、大橋純子の“キャシーの噂”といった昭和歌謡、JAY-Zやディアンジェロなどの90’Sクラシックをひょうひょうとビートジャックする、自由奔放な実験が繰り広げられていた。『SOUL LONG』のストイックなサウンドとワード・チョイスはおそらく、確固たるスタイルの美学に従って構築されている。

 KANDYTOWNのベースにシティ・ポップス的な洗練の美学がある、というのは、けして表面的な直感だけにとどまらない。1980年代に誕生したシティ・ポップスという日本独自のジャンルを牽引した大瀧詠一や山下達郎といったミュージシャンは、アメリカから遠く離れた島国で、本来は借りものであるソウルやドゥーワップ、ロックンロールなどの海外音楽のエッセンスを抽出し、綿密な計算にもとづいて、なかばフィクショナルに都市的な洗練を演出しようとしていた。それは同時に、直前の学生運動の熱狂、そしてその運動に同期したフォーク・ミュージックの情念や直接的なポリティカル・メッセージから意識的/無意識的に距離をとり、自分たちの新たなリアリティを創造する試みでもあった。

 海外音楽をヒントにした新たなリアリティの創出、というその伝統の遺伝子は、90年代来の日本のヒップホップのルーツにも、もちろん強く刻印されている。そもそもヒップホップのサウンドは、ジャズやソウル、ファンクの偉大な遺産を切り刻み、自分勝手なフレッシュさで再構築するという不遜な哲学にもとづいているけれど、参照先の音楽的遺産がもとより輸入文化である日本では、その情熱はいよいよレコードというフェティッシュなモノへのネクロフィリック(屍体性愛的)なものにならざるをえない。掘りおこした黒いヴァイナルに封印された異国の音楽の屍骸をむさぼり、その音の魔力を血肉化して、自分たちの新たなリアリティの発明を試みる若者たち。そのとても豊かで、どこか屈折した光景は、日本のヒップホップにとっての、愛すべき原風景でもある。

 おそらく、リアリティ・ラップの台頭をうけて最近よく口にされる、裕福なフィクションの時代が終わり、より切実なリアルの時代が始まった、という一見わかりやすいストーリーそのものが、ひとつの罠なのだ。なぜならヒップホップの母胎となった1970年代のニューヨークのゲットーは、警察も立ち入れない、ギャングによる熾烈な内戦状態にあった。いくら経済格差が拡大しているとはいえ、数字上の治安状態としてそこまでの荒廃を経験してはいないはずの日本から、生々しいラップ・ミュージックが生まれる理由は、なし崩しに下降線をたどる自分たちの社会の現実に、ゲットーという虚構=フィクションの補助線を引くことによって、初めて理解される。いかなる切実なリアリティも、リアルにフィクションを足すことなしには存在できない。客観的に現実を切り取ろうとするドキュメンタリーさえ、作り手の主観なしにはけして成立しないように、ここには、リアルとフィクションをめぐる、根源的な秘密がある。

 そして、ヒップホップにおいてそのリアルとフィクションの配合の秘密は、誰もが知るひとつの言葉で表現される。つまり、スタイル、と。いみじくも「スタイル・ウォーズ」という言葉に端的に表れている通り、ヒップホップにとってスタイルとは、けして表層的な飾りではない。明確な意志で選びとられたスタイルこそが、リアルに拮抗するリアリティを創りだし、やがてリアルそのものを変えていく。東京の地下のクラブで、物静かなベッドタウンで醸成された異国由来の夢は、いまその狭い空間から溢れ出し、震災後の東京の真っ暗な路上を覆おうとしている。このロマンティックなドラマは、リアルから逃避するのではなく、リアルをなぞるのでもなく、リアルに牙をむいているのだ。

 KANDYTWONのホームである世田谷区喜多見は閑静な住宅街だ。そこから大規模な再開発によってバブリーな賑わいをみせる二子玉川を抜けて、さらに多摩川を下流にそって橋を渡ると、東京近郊のリアリティ・ラップの雄、BAD HOPを擁する川崎市がある。デ・ラ・ソウルやパブリック・エネミーら、ロングアイランド郊外のサバービア・ヒップホップに対し、インナーシティのプロジェクトから突きつけられたのが、Nasのハードコア・ラップだった。KANDYTOWNが提示するのは、むしろ東京の山の手エリアの音楽的な歴史の蓄積の豊さだ。そこには、ニューヨークと東京の地政学的なズレを背景とした転倒がある。音楽の力学は、都市の力学の反映でもあるのだ。音とイメージはからみあい、ほどけ、予想もしない仕方で連鎖する。

 そして2015年のもうひとつのビッグ・ハイプは、また別な架空の街をつくりあげたYENTOWNのクルーだった。トラップをドラッギーかつフレッシュなスタイルに昇華した彼らの本格的な活動も、今年は期待されている。それにシーンは違うけれど、SUCHMOSのフロントマンであるYONCEのインタヴューなんて、茅ヶ崎のフッドへの愛着やあけっぴろげな上昇志向、社会に中指を立ててみせる挑発的な態度などなど、完璧にヒップホップ的なストリート・マナーで笑ってしまうほどだ。2016年の東京は大きく動くだろう。自由な想像力が、Googleの無味乾燥なマップを上書きし、街を塗り替えていく。異なるスタイルと異なるリアリティがせめぎあう、その衝突のなかで、10年代のリアルは生まれようとしている。時代を語るヒマがあったら想像力を語れ、この音の強靭な美学はそう告げている。

interview with IO - ele-king

タグ付きのティンバーで街中をムーヴィン
――IO“Soul Long”

 千歳船橋の駅前でIOと合流する。真っ白のタイトなパンツを穿き、丈が短めの黒いブルゾンのようなアウターを着ている。すらりと伸びる長い足が強調されてみえる。握手を交わして二言三言会話する。あっさりしているが、よそよそしくはない。無愛想でもなく、ヘラヘラもしていない。威圧的でもなく、必要以上に低姿勢でもない。ダンディだが、笑うと10代の少年のようなあどけなさもある。クールだ。ひとつ前の取材でIOの対談相手だったというOMSBに別れを告げ、KANDYTOWNのラッパー、GOTTZの運転する車に乗り込み、閑静な住宅街を抜けファミレスへと向かう。このあたりはIOとKANDYTOWNのホームだ。


IO
Soul Long

Pヴァイン

Hip-Hop

Tower HMV Amazon iTunes

 ラッパー、IOのファースト・アルバム『SOUL LONG』は2016年の東京のヒップホップを占う一枚と言える。彼が所属するKANDYTOWNはこの1、2年で東京のシーンの話題をさらうクルーとなった。2009年頃に世田谷を主なフッドとする数十人の仲間たちによってKANDYTOWNの原型はできあがる。クルーの名前が付いたのは一昨年ぐらいだという。そして、2014年にフリーミックステープ『KOLD TAPE』、2015年にフィジカル・アルバム『BLAKK MOTEL』と『Kruise'』を発表する。KANDYTOWNのアーバンとストリートの間を行くような洒落たサウンドとファッションに多くのヘッズが魅了された。メンバーの中にはすでにソロ・アルバムをリリースしているラッパーもいる。が、『SOUL LONG』は彼らが脚光を浴びて以降に初めてクルー内のラッパーが出すソロ・アルバムだ。

『SOUL LONG』のサウンドはソウルフルでレイドバックしている。ときにファンキーだ。意味よりも感覚を重視するIOのラップには情熱がほとばしっている。言葉に強烈な主張はないが、彼と彼の仲間たちの日常とアーバン・ライフが刻まれている。ジョーイ・バッドアスやプロ・エラに通じるものもある。さらに、ベテランから中堅、若手まで国内のヒップホップのサウンド・メイキングをけん引するプロデューサーたち――MASS-HOLE、Neetz、KID FRESINO、DJ WATARAI、OMSB、Gradis Nice、Mr. Drunk、MURO、JASHWON――の渾身のトラックが聴ける。昨年不慮の事故で亡くなったIOの親友で、KANDYTOWNの中心人物・YUSHIのビートもある。ミックスとマスタリングはI-DeAだ。

 いま、男も女もヘッズの多くがIOとKANDYTOWNのライフスタイルやファッション、身振りや表情や態度、ラップ・ミュージックに新しい時代のクールのあり方を感じはじめている。そんなIOは1月で25歳になったという。KANDYTOWNの仲間、アルバムの制作――MUROやMUMMY-Dとのやり取り、作詞法、K-TOWN、そしてIOの考えるクールの美学についておおいに語ってくれた。

■IO / イオ
幼少期より同じ街で育ってきたメンバーで構成されているKANDYTOWN LIFEの中心メンバーであり、JASHWON、BOMBRUSH!、LostFace、G.O.Kらを擁するクリエイター集団、BCDMGのメンバーでもある。ラッパー以外にもアート・ディレクター、ヴィジュアル・クリエイターなど表現者として多彩な顔を持つ。2014年末にUNITED ARROWS企画のサイファー「NiCE UA 37.5: “Break Beats is Traditional”」にMUROのDJのもと、ANARCHY、KOHHらとともにKANDYTOWNのメンバーであるYOUNG JUJU、DONY JOINTと揃って参加したことでストリートのみならずファッション界隈からも注目を集め、KID FRESINOの最新作『Conq.u.er』にも客演するなど、待望される中で2016年2月、デビュー・アルバム『Soul Long』をリリースする。

ずっと曲は作っていたんですけど、出すことをあんまり意識してこなかったんです。

アルバムの制作はいつから始めたんですか?

IO:アルバムを出すって決まったのが夏の終わりぐらいだったと思います。それからトラックを集めて、自分がリリックを書いてレック(録音)しはじめたのが11月中旬ぐらいからだと思います。だから、自分が実際に制作してた期間は2ヶ月ないぐらいだったと思いますね。KANDYTOWNの動きやCARHARTT WIPとのミックステープ(IO, DONY JOINT, YOUNG JUJU『Nothing New EP』)を作ったりもしていたので、ソロの制作が少し遅れてしまいました。

IO,DONY JOINT,YOUNG JUJU feat. KANDYTOWN“All bout me”

IO,DONY JOINT,YOUNG JUJU“We & 4Ever U”

KANDYTOWNは2014年にフリーミックステープ『KOLD TAPE』、2015年にフィジカル・アルバム『BLAKK MOTEL』と『Kruise'』を出しましたね。KANDYTOWNは2009年ぐらいにはクルーとしての形ができあがって、名前が付いたのが一昨年ぐらいですよね。なぜ、ここ1、2年で急に活動が活発になったんですか?

IO:ずっと曲は作っていたんですけど、出すことをあんまり意識してこなかったんです。クルー全体で50曲ぐらい……いや、もっとありましたね。それを一度まとめてフリーで出してみようとなった。それが『KOLD TAPE』だった。出してみると思ったより反響があって自分たちが動けば状況も変わることがわかったんです。それからみんな意識して作品を作って出すようになったのはあります。作品への反響や変化が起きる事にビックリはしましたね。オレらはずっと何十人しかいない小箱でやっていたのにいきなり何百人もの前でやるようになったりして、ステージもどんどん大きくなっていったから変化は感じました。それはKANDYTOWNのみんなが感じていると思います。

IO“K14 (Noise Ver)”

KANDYTOWN “KOLD CHAIN (Kruise' Edition)”

KANDYTOWNはどういう場所でライヴをしてきたんですか?

IO:30人入ればパンパンに見えるようなところばかりです。行ってもラッパーとか出る側の人間しかいないようなところ、そこでさっきまでLIVEしてたやつらが今度はフロアで俺らのLIVEを睨んで見てるみたいな。そういう感じがほとんどでした。町田だとVOXとかFLAVA、あと、下北沢のthreeや渋谷のNo Styleは多かった。そういうところでやってましたね。

BANKROLL“LOST MY MIND (BANKFRIDAY -Last week-) Presents by KANDYTOWN”

オレは外は全員敵っていう雰囲気でしたね(笑)。だから、あんまり外のヤツと話す気はないし、関わるつもりもなかった。

これまで活動してきて現場で顔を合わせたり、フィールしたり、仲良くなったりする同世代はいましたか?

IO:俺はほとんどないです。

けっこう孤立してたんですか?

IO:シーンでやってる人たちと現場で会ってちゃんと話したりすることは全然なかった。オレはメンバーの中でもとくになかった方だと思います。SANTAとかメンバーによってはいろんな人と仲良くしてたりはあったと思いますけど。

あと菊丸くんはMCバトルに出たりソロ・アルバムも出したりしてますし、RYOHU(呂布)くんも独自にいろんな活動をしてきていましたよね。

IO:菊丸は人当たりもいいですしね。オレは外は全員敵っていう雰囲気でしたね(笑)。だから、あんまり外のヤツと話す気はないし、関わるつもりもなかった。オムス(OMSB)くんとかとかSIMI LABとかは昔からLIVEとかで会ってましたけど、そんなに仲良く遊んだりとかはしてなかったですし、オレはずっと地元で仲間と遊んでいた感じですね。

じゃあ、『KOLD TAPE』のリリースをきっかけに状況や環境がガラッと変化した感覚なんじゃないですか?

IO:そうですね。あとはソロで言えばBCDMGに入って、その反響もありますね。

IO“DIG 2 ME”Produced by JASHWON(BCDMG)

アルバムのトラックメイカーの豪華さはやはり最初に目を引きますよね。人選はどのようにしていったんですか?

IO:まず、カッコイイ人のカッコイイビートでとやれればいいなっていうのがありました。あと、あまり外の人とやったこともなかったですし、自分が昔から聴いていたMUROさんやMUMMY-Dさん(Mr.Drunk)とか、そういう人たちとできたらうれしいなというのもありましたね。そういう部分はアルバムのプロデューサーのNOBUさんやPヴァインの升本さん(A&R)にやってもらった感じです。だから、プロデューサーに関してははわりとお任せしました。オレはとにかくその中からフィールしたビートを選ばせてもらって決めていきました。

とにかくカッコイイビートでやりたかったっすね。

エグゼクティヴ・プロデューサーがJASHWONさんで、コ・プロデューサーがNOBU(a.k.a. BOMBRUSH)さん、クリエイティヴ・ディレクターがKANDYTOWNのNeetzさんですよね。それぞれどういう役割分担でアルバムを制作していったんですか?

IO:JASHWONさんに大まかな流れを作ってもらって、NOBUさんとアイディアをより明確にしていった感じですね。Neetzはレコーディングをすべて担当してくれて、たとえば、2つレックしたらどちらのフロウを選ぶかとか、そういう細かいところまで関わってくれた。そういう感じですね。

プロデューサー陣やトラックメイカーとのやり取りの中でアルバムの根幹に関わるような印象に残っている言葉やキーワードはありますか?

IO:とくにないですかね。いままで通り、あるトラックに思いついた言葉を1小節1小節歌っていくというのは変わらなかった。

たとえば、MUROさんやMUMMY-Dさんとはどういうやり取りがありました?

IO: MUROさんのスタジオにお邪魔してレコードを選ばせてもらいましたね。

へぇぇぇ。

IO:MUROさんとNOBUさんとレコードを聴きながら、この曲カッコいいですね。みたいな話をして、あとはMUROさんがやってくれました。

MUROさんの仕事場に行ったわけですよね。貴重な体験だと思うんですけど、どうでしたか?

IO:シーンを作ってきた方だし、あまり経験できないことだと思うのでうれしかったですね。

MUMMY-Dさんには「どんな曲がいいかな?」と訊かれたので、好きな曲を18曲ぐらいCD-Rに焼いて渡したんですよね。ナズからジェット・ライフまで、自分の好きなニュアンスの曲をCD-Rにして。

MUMMY-Dさんとのやり取りはどうでした。「Plush Safe He Think」では「耳ヲ貨スベキ」ってワードで最後のヴァースを落としてるじゃないですか。

IO:はい。

RHYMESTERも聴いてきたんだろうなと。

IO:そうですね。リスペクトですね。MUMMY-Dさんには「どんな曲がいいかな?」と訊かれたので、好きな曲を18曲ぐらいCD-Rに焼いて渡したんですよね。ナズからジェット・ライフまで、自分の好きなニュアンスの曲をCD-Rにして。

粘っこいベースとどっしりしたビートが絡む90Sマナーの曲じゃないですか。仕上がったトラックを聴いてどうでした?

IO:いい意味で驚きがありましたね。もっとフレッシュで明るめのトラックかなってなんとなくイメージしてたんだけど。来たものはいつもオレが好んで選びそうなトーンのトラックだった。オレの曲とかも聴いてもらっているのかと思うぐらいで。メロウで哀愁のあるトラックで俺の好きな色でした。

他のビートメイカーとも同じようにやり取りがあったんですか?

IO:いや、あとは基本的にトラックを送ってもらって、その中から自分の好きな曲を選ばせてもらいました。(KID)FRESINOには、去年ニューヨークに行ってPV撮ったときにFRESINOの家で何曲か聴かせてもらって、いくつかもらうトラックを決めていましたね。

KID FRESINO 「Special Radio ft IO」

GOTTZ:1曲め(「Check My Ledge」/MASS-HOLEのビート)が決まったのはけっこう最後の方ですよね。

IO:いちばん最後だったと思います。MASS-HOLEさんのトラック、カッコイイよくて、ストックを送ってもらって、8曲ぐらいはやりたいのがありましたね。

スタジオにKANDYのみんなが溜まっていたので、「いいワードくれよ」みたいな感じで言葉をもらったりしていましたね。

ファースト・アルバムは誰にとっても名刺代わりになるじゃないですか。そういう意味での気負いやプレッシャーはなかったですか?

IO:そこはあまり気にしなかったですけど、KANDYTOWNのIOとはちがうIOが出せたらいいなと思いました。

制作で悩んだり苦労したりはしなかったですか?

IO:多少はありましたね。時間が無くてとにかくそれがキツかった。まあ自分が悪いんですけど。

宿題をギリギリまで残すタイプ?

IO:完全にそうですね。

それはリリックを書きあぐねたとか?

IO:ぜんぜんありました。スタジオにKANDYのみんなが溜まっていたので、「いいワードくれよ」みたいな感じで言葉をもらったりしていましたね。ひとつワードをもらったら、「次はどうくる?」とか誘導してみんなで作り上げたヴァースもありますね。たとえば、DONYが何かのワードを出したら、GOTTZがそこに付け足すワードを出して、さらにRYOHUが加える。そうやって1小節を作って、「OK! じゃあ次に行こう!」って。ラップの勉強にもなりましたね。ここで言葉を切るのがカッコイイとか、ここで間を置いた方がいいよねとか、みんなでラップの勉強しているみたいな感じになっておもしろかったですね。

GOTTZ:「ここは(韻を)踏まない方がかっこいいんじゃないの?」と誰かが言ったりして。

IO:そうそう。モヒートで韻を踏みたいからそのためにみんなで考えたりした。

GOTTZ:IOくんに振られて考えていたのに、「いや、アル・パチーノだろ」と答えを出したりすることもあった。

IO:あった、あった(笑)。ワードを出してもらってるのにぜんぜんちがうって言って、結局ひとりで解決させることもあった。

時間のあるときは羽田空港の屋上に行ったりしますね。車で行く間にビートを聴いて、屋上に着いたらバーッと8小節とか1ヴァースとか書く。

それはおもしろい話ですね。具体的にどのヴァースをみんなで作りました?

IO:“City Never Sleep”の2ヴァースめですね。そのヴァースを最初は“Check My Ledge”で使っていたんですよ。でも、このヴァースは“City Never Sleep”の方に使った方がいいと思って変えたりした。

スタジオでリリックを書いてそのままレックしていた?

IO:ほぼそのやり方でした。何曲かは家である程度書いてからスタジオに行きましたね。あと、オレは車で走ってるときにけっこう書くんです。書くというか、ボイスメモで録音するんです。ビートを聴いて、そこに浮かんだ言葉をハメていく。時間のあるときは羽田空港の屋上に行ったりしますね。車で行く間にビートを聴いて、屋上に着いたらバーッと8小節とか1ヴァースとか書く。それから空港内にある国際便のカフェでホットミルクを買って、帰りにボイスメモで録りながら帰る。そういうことをやってましたね。

ファーストだからこれだけは言っておきたい!ということはありました?

IO:あまり無いかもしれないです。「オレってイケてるでしょ」「オレらってクールでしょ」、基本的にはそれがベースだと思います。それは昔から変わんない。とにかく、オレらは「この街でクールにプレイしてるんだぜ」っていうのをひたすら言って見せているって感じだと思います。

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(クールって言葉の定義は)シンプルなことだと思います。仲間を大事にするとか、女の子を大事にするとか、親を大事にするとか。

クールって言葉をよく使うじゃないですか。IOくんが定義するクール、またはクールな男ってどういうものですか?

IO:はははは。それは、すごく難しい(質問)じゃないですか(笑)。でも、ほんとにシンプルなことからだと思います。仲間や女の子を大事にするとか、親を大事にするとか。だから、テンションが低くて冷静であんまりはっちゃけないのがクールっていうわけではないです。

GOTTZ :Neetzのスタジオに「KoolBoy―10のルール―」みたいな紙が貼ってあるんすけど、9個までしかないんですよ。「ピザはピッツアと呼べ」とか書いてある(笑)。

はははは。

IO:いや、ほんとは11個あるんです。オレが4、5年前にバーッと書いたんです。紙が2枚あったんですけど、2枚めがどこかにいっちゃったから壁には9個で終わっているんです。「1日1回熱いシャワーをキメる」「誰の事も見下すな」とか書いた「KoolBoy―10のルール―」なんですけど、じつは11個めがある。それは「ルールにしばられるな」と。クールじゃないですか?

自分でルールを並べて、最後に「ルールにしばられるな」と。

IO:はい。でも当たり前のことだと思いますね。おばあちゃんには優しくするとか、ゴシップに振り回されないとか。オレの中には11個以上ありますね。


じつは11個めがある「KoolBoy ― 10のルール ―」

やっぱりクールの定義が明確にありますね。

IO:ですね。

クールにつながる話なんですけど、ラッパーや先輩、俳優とか歌手でもいいですし、カッコイイと思うってどういう人ですか?

IO:挙げたらキリないですけど、いまパッと出てくるのは『モ'・ベター・ブルース』(監督・スパイク・リー/1990年公開)のデンゼル・ワシントンですね。

僕もあの映画だいぶ昔に観ました。ジャズ・トランぺッターの話ですよね。

IO:言葉で説明するのは難しいですけど、あのデンゼルのストイックさがすごいカッコイイと思う。何時から何時まで楽器を練習すると決めて、音楽に対してちゃんと向き合う姿勢とかが渋いと思う。自分にそういうストイックさがないからかもしれないけど、そういう習慣のある男はカッコイイと感じますね。他にもジョー山中とかアル・パチーノとか自分の父親とか、NOBUさんやJashwonさんもGottzもクールだと思います。

KANDYTOWN“IT'z REVL (IO, RYOHU, Mr.K, MUD)”

フッドは街っていう感じで、タウンはもっとディープでオレらとか俺たちがいま立っている場所とか状況っていう意味かもしれないですね。

IOくんのファッションや立ち振る舞い、ラップにも街の匂いをすごく感じるんですね。ラップの中でも、シティ、タウン、フッドという単語が出てくるじゃないですか。その3つはどのように使い分けていますか?

IO:その言葉を言ったときのオレに訊いてみないとわからないですね。


IO
Soul Long

Pヴァイン

Hip-Hop

Tower HMV Amazon iTunes

たとえば、“City Never Sleep”という曲名は“Town Never Sleep”では意味が変わってくる?

IO:タウンは寝ますね。

タウンは寝るんだ。

IO:ガン寝です。

シティは?

IO:寝ないです(笑)。

アハハ。

IO:シティは大まかに言うと東京だったり世の中という意味が大きいと思うんです。タウンはオレらが居るとことか今みたいな事かもしれない。フッドよりタウンの方がオレ的には狭いかもしれないすね。

一般的にはフッドは近所でタウンは街だからフッドの方が狭いですよね。でもそこは感覚的には逆なんですね。

IO:逆かもしれないですね(笑)。フッドは街っていう感じで、タウンはもっとディープでオレらとか俺たちがいま立っている場所とか状況っていう意味かもしれないですね。

KANDYTOWNの“K”は喜多見の“K”ですよね。

IO:そうですね。

IO“City Never Sleep” (pro. by JASHWON for BCDMG) - Official Video -

(K TOWNとは)オレたちを作ってくれた街。べつに何かがあるってわけじゃないんですよ。ただ、オレたちが育ってともに時間を過ごして、いまもいる街ですね。

K TOWNをまったくの部外者に説明すると、どういう街ですか?

IO:オレたちを作ってくれた街。べつに何かがあるってわけじゃないんですよ。高いビルが建ってたりとか、いいブティックがあるとか、そういうわけでもない。ただ、オレたちが育ってともに時間を過ごして、いまもいる街ですね。

KANDYTOWNのメンバーはこの周辺の団地や一軒家でそれぞれ育っている感じなんですね。

IO:そうですね。オレらには団地で生まれたヤツもいるし、ハイクラスなシティ・ボーイもいる。全員がゲトーなわけでもないし、全員がハイソサエティでもない。だからといってお互いにヘイトもなく、みんながリスペクトし合ってる。そういう生まれた環境は抜きでオレらはずっと遊んできたんです。団地で遊ぶこともあるし、誰かの家で遊ぶときもある。バランスはいいと思いますね。

そういういろんなバックグラウンドの仲間が自然に仲よくしているんですね。

IO:そうですね。誰かを僻んだりもしない。団地で生まれたって事に引け目を感じたり、変な形でそこに固執してるやつはいないと思う。ラッパーとしてしっかりレペゼンするときはして、高みを目指す。みんなが目指すところはだいたい同じ方向だと思うし。逆にいい生まれでもそれに感謝して以上を目指せば素晴らしいことだと思う。それがHIPHOP的にハンデになるとも思わない。ほんとにシンプルにこの街にいっしょにいるっていう感じですね。

最近はどんな遊び方をしているんですか。飲み屋に行ったりとか?

IO: あまり居酒屋とかは行かないんで。だいたいは恵比寿のソウル・バーですね。〈SOUL SISTERS〉っていうよくしてもらっているソウル・バーがあって、そこにけっこう溜まっています。そこからクラブに行ったりもするときもありますね。途中で来るヤツもいるし、途中で帰るヤツもいる。で、残ったヤツでフッドに戻って来てレコーディングして曲を作る。そういう感じです。

そういう流れの中で曲が大量に溜まっていったんですね。実際、それぞれの作品の曲数も多いですよね。

IO:そうですね。街で遊んで、地元に帰って、曲を作る。それだけなんで苦でもないし、遊んでいたら自然とそのぐらいの曲が溜まっていたんです。でも、はじいた曲もあるから実際にはもっとありますよ。純粋にラッパーだけで10人は超えているんで曲数は多いですね。

街で遊んで、地元に帰って、曲を作る。それだけなんで苦でもないし、遊んでいたら自然とそのぐらいの曲が溜まっていたんです。

KANDYTOWNのメンバーはラッパーやビートメイカーやデザイナーだけじゃないわけですよね。

IO:そうですね。そういうヤツらも数え出したらもうわけがわからなくなりますね。ラップしていないヤツもたまにステージに上がっているし、「今日来てるんだね」って感じですね。

「遊びに来てるならステージに上がりなよ」という感じ?

IO:いや、言わなくても上がってる(笑)。

ははは。IOくんにとってKANDYTOWNの仲間とは何ですか?

IO:友だちですかね(笑)。

それは言い替えてるだけでしょ(笑)。

IO:KANDYTOWNは多くがラッパーでライバルでもあるけど、今回オレがソロを出すとなったときにみんながいろいろなサポートをしてくれた。穴があったら誰かが埋めたり、お互い支え合ったりしてアルバムができて、すごく仲間のありがたみを感じたんです。でも、ほんとは支え合うとかはあまり言いたくないんですけど……

そういうこと言うのがちょっと恥ずかしい?

IO:そうですね。でも、今後誰かが何かをするときには、オレも自分がしてもらったように全力でサポートできればいいなとは思いますね。だから友だちです。

さっきのリリックの制作過程の話を聞いていても共同作業の側面も相当大きそうですもんね。

IO:ほんとにそう思いますね。メンバーのみんながこのアルバムが好みかはわからないけど、みんなを代表して作ってやっと1枚できたという気持ちはありますね。

そういう責任感みたいなものはあった?

IO:ほんとにもうありんこぐらいの。

ふふふ。

IO:KANDYTOWNやBCDMG、P-VINE、プロデューサーやトラックメイカー、いろんな人が関わってサポートしてくれたから、そういう人たちの期待を裏切りたくないという気持ちはありました。でもそれがプレッシャーにはなっていないですね。

KANDYTOWN“Skweeze Me”

『SOUL LONG』は去年亡くなられた親友のYUSHIさんのノートに書いてあった言葉からきているんですよね。

IO:響きがよかったですね。フィールして、ほんとうにそれだけですね。YUSHIのリリック帳を読むと、おそらく“SO LONG”という意味だと思うんですけど、オレもまだわからないし一生わからないかもしれない。いろんな想像をさせてくれる言葉だから、聴いた人、見た人がそれぞれ感じて解釈をしてくれればいいかなと思います。

YUSHIさんが亡くなったとき、それまでの人生で初めて考えたことはありましたか?

IO:うーん、まだあんまりわかんないです。そのことをまだ冷静に理解できていない。もうそろそろ1年経つんですけど。

発売日(2月14日)が命日ですよね。

IO:そうですね。亡くなったときにどう思ったとかはあんまりこう……会いたいなとか淋しいなとか、そういうのは思うんすけど……。

整理がまだついてない?

IO:一生つかないかもしれないです。6歳からいっしょだったんで、起きてることがよくわかんない。まだあんま理解できてないです。

YUSHI“42st.”

BANKROLL“KING”

フェイクな音楽はやりたくない。自分がやりたくない音楽をやることほどキツイものはないと思うんですよ。

インナースリーヴの最後のページにYUSHIさんの顔のタトゥーが入った肩がうつっているじゃないですか。あれはIOくんの肩ですか?

IO:そうですね。YUSHIがNYが大好きだったのでYUSHIのお姉ちゃんとNYに行って、YUSHIの骨を撒いてきました。そのときにハーレムで入れてきました。

アルバムへの反響はこれからだと思うんですけど、今後ラッパーとしてどうしていきたいですか?

IO:このアルバムはもう自分の中での評価は下っているんで、次のステージに活かして音楽をやれる時期にやれるだけやって自分のラップをして、仲間と楽しくクールにやる。もうそれだけですね。

ギラギラした野心みたいなものはそこまでない?

IO:もちろんリッチになりたいとは思います。でも、フェイクな音楽はやりたくない。自分がやりたくない音楽をやることほどキツイものはないと思うんですよ。だから自分が納得できるのがいちばん重要なことです。その上でみんなが認めてくれてお金もついてきたらいちばんいいと思う。ラッパーやラップをナメているわけではなくて、ラッパーだけが自分の可能性だとは思っていないんです。いまのオレがいちばん好きなのが音楽だからラップしているんです。そういうことなんです。だから自分の好きな音楽をやってそのあとに結果がついてくる。それが成功だと思いますね。先のことはわからないですね。

■IO リリース・ライヴ情報

2016.3.25 (金)
BCDMG Presents IO 『Soul Long』 Release Live
@ 代官山UNIT & SALOON
OPEN/START 23:00
Release Live: IO (KANDYTOWN)
Live: KANDYTOWN
more information coming soon...

 音楽がファッションを発信できずしてどうしよう。ラッパーとして、アート・ディレクターとして、はたヴィジュアル・クリエイターとして、多彩な活躍をみせるこの若きアーティストは、ヒップホップ・クルー、KANDYTOWN(キャンディタウン)の中心人物として注目を浴びる存在だ。MURO、ANARCHY、KOHHらとともに、メンバーYOUNG JUJU、DONY JOINTと揃ってUNITED ARROWS企画のサイファー「NiCE UA 37.5:“Break Beats is Traditional”」に参加したことを筆頭に、ファッション・ストリート誌を賑わせ、クリエイター集団BCDMGへの加入、KID FRESINOの新作『Conq.u.er』収録の“Special Radio”への参加など、世間の彼への熱は高まるばかり。その当人、IO(イオ)の待望のソロ・デビュー・アルバムのリリースが決定したとの報。弊誌でも注目していきたい。


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