Photodisco SKYLOVE Pヴァイン |
子どもの頃、ずっと空を見上げていたあの時間はどこへ行ったのだろう? フォトディスコの3年ぶりのセカンド・アルバムとなるその名も『SKYLOVE』は、その時間をじつに自然なやり方で取り戻す。メロウで清潔で、そして無邪気にドリーミーなフォトディスコらしいメロディが豊かに色づいている本作は、はっきりと「空」をコンセプトとして掲げることで、彼が描こうとしているものが何かを簡潔に示している。ここでフォトディスコが映し出す空は、都市生活者がふと見上げるビルの谷間の空であり、幼い頃虹がかかっているのを発見してはしゃいで指さした記憶のなかの空であり、あるいはどこまでも広がる想像上の宇宙としての空でもある。
日本におけるチルウェイヴとしてベッドルーム・ポップ愛好者から人気を集めたフォトディスコだが、海外のチルウェイヴがサウンド的に分散していったこの3年という期間を経て、より純粋な意味でエレクトロニカに近づいたように聞こえる。
“Rainfall”における雨の音のフィールド・レコーディング、あるいは“Endless Love”の透明感のある音使いにはかつてフォークトロニカと呼ばれた感性が息づいているし、アコースティック・ギターの柔らかなリフレインと多重録音によるコーラスの重なりが光を乱反射させる“虹”は、彼のなかの眩い叙情性が溢れだすかのようである。ビビオやフォー・テットといったエレクトロニカ勢、あるいはノサッジ・シングやバスといったLAビート・シーン周辺のトラック・メイカーの現在とも緩やかにリンクしつつ、しかし日本的な色づけも忘れてはいない。“夕暮れ”ではポップスに対する野望を滲ませ、あるいは以下のインタヴューで本人も発言しているようにビートでの挑戦も見受けられる本作ではあるが、描き出す風景やムードはこれまで彼が育ててきたものをより純化させているように感じられる。
移り行く季節や時間に不意に自分自身が溶け込んでいく瞬間や、過ぎ去った記憶が不意に蘇るような感覚。その甘美さこそが、フォトディスコのポップ・ミュージックとしての強度である。寝ていても醒めていてもいい、夢見心地でいることは、音楽がもたらす豊穣な時間であることを『SKYLOVE』は証明している。
■Photodisco / フォトディスコ
ギターを軸に、シンセ、環境音などをDAW上でミックスする東京在住の音楽家。作曲、演奏、録音、映像などすべて一人で制作している。2009年に本名義での楽曲制作をはじめ、2010年に自主盤としてそれまでのコンピレーションを、翌2011年には〈Pヴァイン〉よりファースト・フル『言葉の泡』をリリース。シネマティックな音像、ベッドルーム・マナーな楽曲群は“和製チルウェイヴ”として注目を集めた。その後〈アンチコン〉のビートメイカー、Bathsの来日公演に出演するほか、オムニバス作品などへも参加、さまざまなメディアで自身の楽曲が使用されるようになる。本年10月にはセカンド・アルバム『SKYLOVE』が発表された。
ガンダムとかって、宇宙のことも「そら」って言うじゃないですか。そういうのを描きたいなって思ったんですよ。
■ファースト・アルバム『言葉の泡』からほぼ丸3年なんですけど、最近だと3年ってけっこう――。
PHOTODISCO(以下、PD):長いですよね(笑)。
■ネット時代の体感では(笑)。この3年間ってどんな時間でしたか?
PD:自主で出したりもしたんですよ。
■そうですよね、カセットで。
PD:はい、アナログ媒体に興味があったのでカセット出そうかなと。あとは……曲をけっこう作ってたんですけど。
■曲はずっと作ってたんですか?
PD:作曲はずっとやってましたね。曲は溜まってたんですけど、ただ、これだっていうのがあまりできなかったので。今年に入ってやっと形ができてきたんですよね。
■それはコンセプトが見えてきたという?
PD:いや、コンセプトの前ですね。曲が沸々と上がってきまして、じゃあアルバム出そうかっていうことで、じゃあコンセプトを考えようっていうことで。ただコンセプトを考えはじめたときから曲作りのスピードが速くなりました。僕は与えられたほうがけっこう作れる人間なんだなあって。
■それまでによく聴いていた音楽ってありました?
PD:そうですね、いちばん聴いてたのは……トロ・イ・モワとかウォッシュト・アウトとかもそうですし。チルウェイヴ勢とか、デイデラスとかフライング・ロータスとかのLAビート周辺だったりとか。ティーブスであるとか。
■じゃあチルウェイヴ・その後っていうのは丹念に追ってらしたんですね。
PD:はい、リスナーとして追ってましたね。
■どういうふうに見てました? ポスト・チルウェイヴというか、チルウェイヴ第一世代のその後の展開というか。
PD:みんなバンド・サウンドに行きましたけど……彼らって結局バンドに憧れてたキッズたちなんだなって。バンドしても解散したりするし、意志の疎通がうまくいかないとかで曲が生まれないとか(笑)、音楽活動として思い通りに動かないじゃないですか。だけど根っこはロック・リスナーだと思うんですよね。それで成功してからバンド形態になってやってるんじゃないかなと。
■たしかに。彼らの場合はライヴをやらないといけないっていうのもありますしね。そんななかで、フォトディスコとしてもバンド・サウンドに惹かれたりすることはそんなにはなかったんですか?
PD:やっぱり惹かれますよね。
■ああ、そうなんですか。
PD:惹かれますけど、やっぱり自分の脳内でできた音楽が世に出るってことが僕にとっていちばん大切なことなので。やっぱりひとりでやったほうがいいかなと。
■前作のときに「チルウェイヴを勉強した」ってお話されてたんですけど、やっぱりチルウェイヴがおもしろかったんですね。
PD:おもしろかったですね。
■でも実際、どうでした? フォトディスコって和製チルウェイヴって紹介がすごくされましたけど、違和感とか抵抗感とかはなかったんですか?
PD:それがまったくないんですよね。実際にはすごく大きな流れだったのに、なぜかちょっと否定的に言われましたよね。僕はそう呼んでいただけるんならそれはそれでいいって感じです。
エモのひとたちってある時期、だんだんフォークトロニカ風になるんですよね。
■なるほど。今回、新作を聴かせていただいて、僕はチルウェイヴよりもエレクトロニカであるとか、10年ぐらい前フォークトロニカって呼ばれたものをすごく思い出したんですよね。そもそもフォトディスコのなかで、エレクトロニカみたいなものって好きなテイストとしてあるんですか?
PD:ありますね。昔エモって言われたひとたち――ゲット・アップ・キッズとか。で、エモのひとたちってある時期、だんだんフォークトロニカ風になるんですよね。ポストロックも結びつくし。そういうのも聴いてたんで、影響を受けてるところもあるのかなって。
■ああ、なるほど。僕が84年生まれでウォッシュト・アウトと同い年なんですけど、ちょうどエレクトロニカあたりが記憶としてあるんですよね。その時代を思い出すというか。フォー・テットなんかもお好きですか?
PD:好きですね。
■なんとなく、ウォッシュト・アウトがセカンド・アルバムでフォー・テットを勉強したって話とどことなくリンクするところがあるのではないかと思って。
PD:へー、そうなんですか。それおもしろいですね。
■今回のアルバムで、いわゆるチルウェイヴと呼ばれる音と離れようと意識したっていうのはありますか?
PD:ありますね、やっぱり。僕はチルウェイヴっていうのは精神論だと思うので、それはずっとありつづけることだと思うんですけど。ただ音色的にチルウェイヴ的なものっていうのが広がり過ぎたかなって思ったので、そこはカブらないようにしようっていう意識で。
■その音色的なもの、あるいはサウンド的な方向性ってどう位置づけてらっしゃったんですか?
PD:前回はビートがけっこう単調だったんで、今回はビートをいじろうかなと。そこをすごく意識しましたね。
■じゃあ、けっこういろいろ試してみてっていう。
PD:そうですね。その前にノイズとかっぽいものをひとりでむっちゃ作ってたんですよ。でも、自分が気持ちいいだけで(笑)。ひとに聴かせると「ノイズは深く追求しているひとがめちゃくちゃいるからそこに無理に入らないほうがいいよ」って感じで言われまして。
■そういう意味では、自分が気持ちいいってところはポイントではなくなってるんですか?
PD:いや、それは大前提としてあります。10曲とも自分にとっての「ザ・ベスト!」みたいな感じです(笑)。
■いちばん最初に出来た曲ってどれなんですか?
PD:1曲めの“Skylab”ですね。これは頭にもってきたかったので。
■そうなんですか。まさにこの曲について訊こうと思ってたんですけど、このロウビットな音色っていうのは、ベッドルーム・ポップなんだということをあらためて表明するように聞こえたんですがいかがでしょう。
PD:いやあ、ほんとに機材環境がやばいというか(笑)、安い環境なので。いま自分ができることを前提に作ってるんです。
■録音の環境は変わってない?
PD:変わってないですね、ぜんぜん。
ほんとに機材環境がやばいというか(笑)、安い環境なので。いま自分ができることを前提に作ってるんです。
■この曲のタイトルは後につけたんですか?
PD:これは後ですね。コンセプトが「SKYLOVE」なので、そのコンセプトとよく似た曲タイトルを作ろうと思ったので。
■なるほど。じゃあそのコンセプトについてなんですけど、どのようにできたものなんですか?
PD:今回は空がテーマなんですけど。僕ずっとアニメも好きなんですけど、ガンダムとかって、宇宙のことも「そら」って言うじゃないですか。そういうのを描きたいなって思ったんですよ。空ってすごくロマンティックじゃないですか。宇宙もそうですし、空を見上げるのもそうですし。あと僕、海のなかも空だって思うんですよ。そういったアルバムを作りたいなと思ってタイトルをつけましたね。
■その空っていうのは風景としての空なのか、記憶のなかの空なのか、ジャケットにあるようにSF的な空なのか――。
PD:それはもうすべてですね。僕の記憶のなかにある空とか、絵やイラストで見る空とか、ありますよね。それをすべていっしょにしたアルバムですね。
■空がもともとお好きだったんですか?
PD:そうですね。写真を撮るのがもともと好きなんですけど、ひとを撮らずにずっと空ばっかり撮ってるんですよね。雲とか(笑)。今回トレーラーを作ったんですけど、あれも僕が空を撮って作ったんですよ。
■その、空がお好きな理由って自己分析できますか?
PD:うーん……逃げたいんじゃないですか(笑)。逃避的な精神があるかもしれないですね。
■なるほど。僕の場合は、空がコンセプトだとお聞きして、空見なくなったなーと思ったんですよね。子どもの頃はよく見てたのに。っていうことを踏まえると、空ってすごくフォトディスコっぽいコンセプトだなと思ったのと、あと風景や自然に興味が向かうっていうのも非常にエレクトロニカ的だなと思いましたね。
フォトディスコの音楽って、これまでも風景からインスピレーションを受けたものが多かったですよね。このアルバムでも風景からインスピレーションを受けたと思われるタイトルの曲――“Rainfall”、“虹”、“夕暮れ”がありますけど、すべてヴォーカル・トラックになってますよね。今回ヴォーカルを入れようと思った理由はなんでしょう?
PD:それは……ヴォーカル曲があったほうが食いつきがいいんじゃないかなと(笑)。
■とくに“夕暮れ”なんかはJポップ的なものに対する欲望も感じるというか。
PD:そうですね、もうJポップですよね。
■そこに参照点はあったんですか?
PD:それは僕のバックグラウンドでしょうね。オルタナティヴ・ロックとか、日本のインディ・ロックに憧れてた時代を描写するような曲なんじゃないでしょうかねえ。
■それはご自身の思春期的なものなんですか?
PD:そうですね。
なんでですかね、子どものときって空見ますよね。学校から帰るとき暇なのかわからないですけど。
■“夕暮れ”はかなりヴォーカルを生で聴かせてますけど、“Rainfall”はヴォーカルにエフェクトかけてますよね。これはどうしてなんですか?
PD:ほんとは歌ってたんですけど、キーがもうちょっと高いほうがいいなと思ったんですよね。で、僕のヴォーカルじゃ合わないなと。それで声をめちゃくちゃ高くしたらああなって、これでアリだなと思って。
■これはフィールド・レコーディングもあって、前作の手法を踏襲しつつっていう曲ですね。あと“虹”はヴォーカルを多重録音してますね。
PD:これは音質がすごく粗くて、ミックスのひとにもちょっと笑われたぐらいで(笑)。
■これはどうやってできた曲なんですか?
PD:このなかでアコギがメインで作った曲ってなかったんですよね。で、1曲ぐらいアコギがメインの曲が欲しいなと思って作った曲ですね。
■この「虹」っていうのは、本当に風景としてある虹なのか、あるいは概念としての虹なんでしょうか。
PD:これも記憶ですね。虹ってそんなに見ないじゃないですか。たまにツイッターとかで誰かが写したものとか、そういうものでしか見れなくて。だけど幼い頃、小学校の帰りなんかでよく見ませんでした?
■たしかに。
PD:なんでですかね、子どものときって空見ますよね。学校から帰るとき暇なのかわからないですけど。そういう描写を思い浮かべて。自分で水を撒いて作ろうとしたんですけど、それは無理でした(笑)。
■(笑)虹もお好きなんですね。
PD:虹も好きですね。
■記憶のなかの虹だとしたら、ちょっとノスタルジックな意味合いもある?
PD:そうですね。そんなにいい思い出があるわけではないとは思うんですけど。
■あそこで繰り返している言葉っていうのは――。
PD:「虹」って思い浮かんだ瞬間に言葉が出てきました。
[[SplitPage]]たとえば怒りみたいなものをテーマにして作っちゃうと結局、自分では聴けないんですよね。自分がいちばんのリスナーなので、聴いてるとそのときの自分の怒りが蘇っちゃうんですよ。
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■あと“夕暮れ”を聴いてて思ったんですけど、やっぱりフォトディスコのなかでスーパーカーって大きいんですね。
PD:僕のなかでは大きいですね。
■中村弘二さんのニャントラなんかも?
PD:そうですね、聴いてましたけど、でもバンドに思い入れがありますね。
■へえー。僕も同世代なんですごく記憶にあるんですけど、スーパーカーが『Futurama』から『HIGHVISION』でエレクトロニック化したときってどうでした?
PD:僕は受け入れましたね。スーパーカーってアルバムごとにサウンドが変わるじゃないですか。ああいうのがいいなって思いますね。やりたいことをやってるんだろうなって。
■フォトディスコって、その時期のスーパーカー的なエレクトロニカ感っていうのもあるように思えるんですけど、そこはあんまり意識されてなかったですか?
PD:ぜんぜん意識はしてなかったんですけど、僕のなかで根強くあるのかもしれないですね。
■じゃあ逆に、リアルタイムで共感するトラック・メイカーっていますか?
PD:僕ティーブスはすごくいいなと思いますね。サンプラーだけで曲作ってるらしいんですけど、そのSP404SXってサンプラー僕も持ってるやつで。よくあれだけで曲作れるなあって。僕一回試したんですけど、作れないんですよね。そこはすごく尊敬します。とてもシンプルなスタイルなんですね。「ボールは友だち」みたいな感じでサンプラーと遊んでいて……。ビートの打ち込み方もすごくカッコいいし。
■なるほど。あと先ほどLAビート周辺っておっしゃってましたけど、僕は彼らとも近い感性を感じるんですよ。ライヴで共演されたバスだったり、ノサッジ・シングだったり。フォトディスコが彼らと共通するのって、メロウな感覚なのかなと思うんですけど、どうしてそういうものが出てくるんだと思いますか? たとえば怒りや嘆きみたいな、激しい感情じゃなく。
PD:そうですね……たとえば怒りみたいなものをテーマにして作っちゃうと結局、自分では聴けないんですよね。自分がいちばんのリスナーなので、聴いてるとそのときの自分の怒りが蘇っちゃうんですよ。そんなの僕としては蘇らせたくないんですよ。自分が作る曲は日々感動したものをパッケージングしたいなと、そう思って作ってるんですよね。やっぱり僕が聴いていて気持ちいいものがいいなと(笑)。そういう感覚はありますね。
■そういうところも含めての、今回のタイトルに「LOVE」が入っているのかなという気もしますが、けっこう思いきりましたよね。
PD:思い切りましたね(笑)。
■これはどうして出てきた言葉なんですか?
PD:いや、「SKYLOVE」って言葉が出てきたときは恥ずかしいとも何とも思ってなくて、単純に「空が好きだな」って感じで。造語っぽい感じで2単語が続いてるんですけど、あとはアポロのスカイラブ計画とちょっとかけてるっていうのもありますね。
■ああ、そこで宇宙的な意味もちょっとあるんですね。そういうちょっとSF的な世界観って反映された曲ってありますか?
PD:1曲めの“Skylab”の中盤あたりのぐちゃぐちゃっとしたアンビエントなんかはちょっとあるかもしれないですね。あと“Space Debris”って曲は隕石とかがぶつかり合うようなイメージで作った曲です。ちょっとジャズっぽい要素があって。ほんとはすごくメロディアスな曲だったんですけど、ちょっとダサいなと思って(笑)。で、自分の曲を4トラックのMTRに突っ込んで、ちょっとホワイト・ノイズを乗せて、またPCに乗せて、それを切り刻んでサンプリングしたらなぜかジャズっぽくなって(笑)。
これ作ってるとき、めちゃくちゃエイフェックス・ツインを聴いてたんですよ。
■へえー、すごく実験した曲なんですね。とくに終盤が冒険したトラックが多いですよね。
PD:そうですね、後半あたりから自分のこれまでのカラーにないものになってきてます。次のアルバムに繋げたいという意思表示が入ってます。
■ラストのタイトル・トラックである“Skylove”なんかはドラムンベース的なリズムで。
PD:ああ、これはエイフェックス・ツインをかなり意識したので(笑)。
■おお!(笑) タイムリーな。
PD:これ作ってるとき、めちゃくちゃエイフェックス・ツインを聴いてたんですよ。
■それは新譜の話が出る前ですから、偶然ですよね。
PD:これ作ってるとき、たまたますごく聴いてて。
■エイフェックス・ツインはもともとお好きなんですか?
PD:好きですね。
■どういうところが好きですか?
PD:エイフェックス・ツインはそうですね……生き方とか。
■あ、いきなりそっちなんですね(笑)。
PD:いや、もちろん音もですけど。ガチのテクノっていうより、このひともロック的な感性もあるんじゃないかなあっていうところが僕は好きですね。
■この曲ができたのはかなり終盤ですか?
PD:最後ですね。これは絶対いい曲を作ってやろうという意気込みで作りました。
■“Tokyo Blue”っていうのはまさに東京の空ってことですか?
PD:そうですね、臨海方面というか、お台場方面を意識して作ったんですけど(笑)。
■SF的な空であったり、リアルな空が混在してるのがおもしろいですよね。
PD:そうですね、リアルな空もありますね。
■じゃあ、タイトルについてももうちょっとお訊きしたいんですけど、「LOVE」っていう言葉をタイトルに入れるのは、ちょっとためらわなかったですか?
PD:ああー……ダサく響くっていう?(笑)
■いやいや、ダサいっていうより、誤解を生みやすい言葉だとも思うんですよね。狭い意味だと、それこそJポップ的な恋愛の意味にも捉えられかねない。
PD:まあでも、僕のなかでは、「LOVE」っていうと、二次元になっちゃうんですよね(笑)。アニメでカップルが宇宙見てる感じっていうのが、僕のなかで『SKYLOVE』ですね。
■抽象的な概念として。
PD:そうですね。そう言われてみると、思い切ってますね。
まずこの絵、地球じゃないじゃないですか。それから、すべて揃っているところ。雲もあるし虹もあるし、地球もあるし海もありますから。
■このアートワークはどういう風にできたんですか?
PD:コンセプトが決まって、自分でイラストレーターを選びたいなと思ったんですよ。でも制作期間がもうなかったので、これはもうpixivしかないと思って(笑)。pixivで宇宙とか空とかキーワード検索を入れて、しらみつぶしに自分の気に入る絵をずっと見てたんですよ。そしたらこのmochaさんが引っかかって、すごくいい絵を描かれるなと思って、ぜひこの絵にしてもらいたいなと。あと僕の頭のなかの映像とすごくリンクしていて。
■どういうところに惹かれましたか?
PD:まずこれ、地球じゃないじゃないですか。そういうちょっとアニメっぽいところと、あとはすべて揃っているところ。雲もあるし虹もあるし、地球もあるし海もありますから。まさにこのテーマに合ってるんじゃないかなと思ったんですよ。
■アニメは昔からお好きなんですか?
PD:昔から好きですね。
■最近は何がよかったですか?
PD:最近は……『ばらかもん』とか(笑)。知ってます?
■知ってますよ(笑)。
PD:あとは『月刊少女 野崎くん』にハマってましたね。おもしろかったです。
■あ、そこはSFには行かないんですね?
PD:いや、SFも観ますけど、今期僕が好きだったのはそのふたつかなと。『Free!(Free! -Eternal Summer-)』とか。
■今期っていうのがさすがですね(笑)。そういうアニメをいくつも見ている生活が、今回アルバムに反映されたところはあります?
PD:どうですかねえ……。あ、でも『残響のテロル』の菅野よう子さんも本当に素敵だったので。そういう感じも出てますかね……いや、出てないか(笑)。
■(笑)まあ、後半いろんな音楽的要素が入ってくるあたりは遠からずかもしれないですね。
PD:そうですね、やっぱり刺激的な音楽は作っていきたいと思ってますし。
■アニメの話が出たところで、ひとが作る映像に使われたいっていうのはありますか?
PD:もうめちゃくちゃありますね。
■それはどうしてですか?
PD:自分の音楽でカッコいい映像を流してほしいんですよね。コラボレーションっていうかはわからないですけど、それが合わさったときに、さらに曲が引き立つんじゃないかなと思って。使ってもらいたいなといつも思ってます。
■ご自身も映像を昔作られてたという話で。
PD:そうですね。そういう学校に行ってました。
この前アルバムをおじいちゃんに渡したら、「いやー寝れるわー!」って(笑)。
■今後曲に合わせて映像作りたいなって思われたりはしないですか?
PD:とりあえずいま、『SKYLOVE』の曲に合わせてPVを作ってるんですよ。トレーラーとは別に。
■ああ、そうなんですか。
PD:空ばっかり一眼レフで写して、素材はできてるんで。落ち着いたら作りたいと思います。
■それぜひ観たいですね。そういった映像喚起的ところもエレクトロニカ的というか……いま、海外でEDMに対抗するものとしてエレクトロニカの存在感が増していますよね。日本も案外EDM的な土壌が広がっているので(笑)、フォトディスコがオルタナティヴとしていてくれるのは心強いと思いますよ。
PD:テレビCMとかからもEDMが聴こえてきますもんね。そうですね、カウンターになればいいですけどね(笑)。
■バスとライヴをされてましたけど、今後ライヴはしていきたいと思われますか?
PD:そうですね、やっぱり勉強になるんですよね。ライヴってすごく発見の場だと僕は思ってるので、できれば飛び込みたいなというのはありますね。
■そこで映像を使うライヴが、僕はフォトディスコにピッタリなんじゃないかなって思います。
PD:映像を作れる友だちを作らないといけない(笑)。すべてひとりでやっちゃってるんで。
■ではそろそろ最後の質問なんですが、『SKYLOVE』はどういうときに聴いてほしいアルバムですか?
PD:東京だったら電車のなかで聴いてもらったり、帰り道に缶ビール飲みながら聴いていただけたらと。
■生活のなかに溶け込んでいるイメージですよね。
PD:僕はだいたい、夜の静かなときに聴いてほしい感じはあります。この前アルバムをおじいちゃんに渡したら、「いやー寝れるわー!」って(笑)。
■(笑)
PD:親にも渡したんだけど、寝る前に聴いてるって。兄貴も寝る前に聴いてるって言ってました(笑)。寝る前に聴く音楽なのかなって。
■いいじゃないですか、入眠ポップ。ボーズ・オブ・カナダみたいで。
PD:なるほど(笑)。