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赤い花、青い花、白いことば

赤い花、青い花、白いことば

――ウォッシュト・アウトの“リリック”・ヴィデオが素晴らしい

Jun 26,2013 UP

 ゆっくりと落下していく鮮やかな花々は若冲を、あるいはオキーフを思わせ、その滞留するような時間感覚(最初のEP『ライフ・オブ・レジャー』で世界を遠慮がちに揺すぶった――あの感覚だ)のなかに言葉が咲いていく。

 昨日公開された"ドント・ギヴ・アップ"のミュージック・ヴィデオは「リリック・ヴィデオ」と銘打たれたもので、その名のとおり歌詞がカラオケのように歌に合わせて表示される。だが、カラオケというと少しニュアンスがずれる。ニコニコ動画で目にするようなボカロ音楽の動画や、あるいはアニメ『進撃の巨人』のOP部分などをイメージするほうが近いかもしれない。詞とその文字表現による訴求が、曲の展開やアートワークの一部として有効に機能している。同じひとつの潮流だと関連づけるのは早計だが、「文字PV」は国内の感覚に照らしてもあきらかにインである。名作はこのような偶然を引き寄せるものだ。
"ドント・ギヴ・アップ"におけるそれが、システマチックに詞を伝えるための図らいでないことは、表示のされ方が均等ではないことからも自明である。ミニマルでスタイリッシュな画面構成がかえって文字の点滅をエモーショナルに見せている。

 無意識にも偶然にもせよ、ウォッシュト・アウト(・チーム)が視覚的に文字をつかみだし、言葉を切り出してきたことの意味は大きい。かつて彼がヴィジュアリティから――あの「ホルガ風の海ジャケ」によって――シーンを更新したことをまだ誰も忘れていないのだから。       (橋)



"Don't Give Up"リリック・ヴィデオ(2013.8.7発売『Paracosm』収録)

8月7日に日本先行発売されるウォッシュト・アウトのセカンド・アルバム『パラコズム』より、セカンド・シングル「ドント・ギヴ・アップ」のリリック・ヴィデオを公開!

J.R.R.トールキンの「中つ国(ミドル・アース)」やC.S.ルイスの『ナルニア国物語』、ヘンリー・ダーガーの『非現実の王国で』などで描かれる架空の世界と同種の事象を探求する当アルバム『パラコズム』で、アーネスト・グリーン(=ウォッシュト・アウト)はベン・アレン(アニマル・コレクティヴ、ディアハンター、MIA、ナールズ・バークレー他)をプロデュースに再度起用。コンピューターやシンセに加え、メロトロンやチェンバリンといったオールドのキーボードを中心とした50以上もの楽器を導入し、新たな創造性を獲得。美しい自然の中で外にいるようなイメージを持って作られた当アルバムは、結果、ミニマルでモノクロそしてノクターナルな内容だった前作『ウィズイン・アンド・ウィズアウト』(全米26位)とは逆に、オプティミスティックで真昼のアルバムのようなサウンドに仕上がった。

2009年のEP『ライフ・オブ・レジャー』のリリースにより、ウォッシュト・アウトはチルウェイヴのパイオニア的な存在として語られ、瞬く間にアーネスト・グリーンは時代の寵児となってしまった。史上初めてネット上で起きたこの音楽のムーヴメントは様々な議論を呼ぶこととなったが、今ここでそのサウンド等を定義することはナンセンスなのかもしれない。なぜなら『パラコズム』にはチルウェイヴにリスナーが求める全ての要素が詰まっているからだ。言い換えれば、チルウィエイヴは音楽のジャンルではなくウォッシュト・アウトを説明する為に作り出された言葉だった、と思い起こさせてくれるからだ。

このアルバムは間違えなく2013年の夏の一枚となるであろう。そしてタイトルの通り、このアルバムはあなたに一つの約束をする。別の、そしてより良い世界にリスナーをエスケープさせてくれるのだ。

■WASHED OUT "PARACOSM"
■2013.8.7 ON SALE 【日本先行発売】
■2,300円(税込)/2,190円(税抜)
■解説/歌詞/対訳付
★日本先行発売(UK/EU:8月12日、US:8月13日)
★日本盤ボーナス・トラック収録