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Home >  News > 手塚治虫記念館で「忌野清志郎展」 - ──「少年マルス」をシングル・カット

手塚治虫記念館で「忌野清志郎展」

──「少年マルス」をシングル・カット

Oct 27,2014 UP

 クラブで会うような若い人に忌野清志郎が誰かを説明しなければならない時代になってしまった。クラブ・クラシックスでさえ、あまり聴かれていな いんだから、それはそうかと思うしかないのかもしれないし、自分だって若い時は目の前の音楽しか聴かなかった。それこそ忌野清志郎のラジオ番組で構成をやらせてもらえることになり、知らないとは言えずにロックの古典を聴き始めなければどうにも痩せた音楽観しか身につかなかったかもしれな い。アイク&ティナ・ターナー、ミラクルズ、遠藤賢司、リトル・リチャード、クレイジー・キャッツ……清志郎さんに教えてもらった音楽世界は計り知 れない。あまり知られていないところではシルヴィ・バルタンも彼は好きだった。ガロン・ドランクにインタヴューをした際、ジョン・リー・フッカーの話題で盛り上がった時は、どれだけ忌野清志郎に感謝したことか。『ボブ・ディランは何を歌ってきたのか』を萩原健太さんに書いてもらったのも、 個人的には清志郎さんの宿題を片付けたようなものだったと思っている。これについてはあまりにも多くのことを考えたので、それはまた別な機会があれば。

 彼の生前、僕は『忌野清志郎画報 生卵』(河出書房新社)という本を編集したことがある。『新明解国語辞典』の編集部をモデルにしたらしき石井裕也監督『船を編む』(13)を観ていて、その時のことをあれこれと思い出した。400ページもある辞書みたいな本だったからである。あまりにも作業量が多く、地下鉄サリン事件が起きたこと にも気がつかなかったほど忙しかったので、いまになって本を読み返しても思い出せないことは多い。どこでどうしてこのようなページがつくられることになったのか。ダブソニックの丈ちゃんが竜平くんのページが目当てで買ったと言ってくれたことは覚えているけれど、そのページが出来上がるまでのプロセスがまったく記憶にはない。イアン・デューリーの写真もどこで撮ったか、まったく覚えていない。僕だけではない。誰も覚えていないのが「新宿コナ劇場」のページで、そこには忌野清志郎が強く影響を受けた人たちのポートレイトがズラッと並べられているのだけれど、それがどうして「新宿コナ劇場」というフォーマットに収まることになったのか。わからない……

 覚えているのは、オーティス・レディングやヘッセの顔写真を並べようと言いだしたのは清志郎さんで、「手塚治虫も入れないと」と彼が言ったことだった。冷静に考えれば小学生の時にひとりでマンガ雑誌をつくったりしていたのだから、マンガ家の名前がひとりでもそこにあるのはごく自然なこと である。だけど、やはり、それは唐突に聞こえてしまった。「え、手塚治虫?」と僕は聞き返したかもしれない。それ以前にも以後にも清志郎さんと手塚治虫の話はしたことがなかったので、もうちょっと訊いておくんだったと後悔するだけである。そう、「忌野清志郎と手塚治虫」は僕のなかではわかるようなわからない組み合わせとして、そのまま宙ぶらりんになっていた。長い間、それは忘れていたに等しい。

 それからちょうど20年が経って、宝塚の手塚治虫記念館で『忌野清志郎展」が開かれることになった。またしても「え?」というしかなかった。企画したのは手塚治虫の長女で、実は忌野清志郎のファンでもあった手塚るみ子さん。どこでどうやって二人を結びつけたのか。展示の内容は僕は何も知 らない。それこそ想像もつかない。実際に行ってみるしかない。なんでまた宝塚とは思うけど、手塚治虫が生まれた場所なのだから仕方がない。そこに記念館があるのは理にかなっている。同会場では忌野清志郎が歌う手塚アニメ『ジェッター・マルス』のエンディング・テーマ『少年マルス』も販売されるという。リリース元はやはり手塚るみ子さんが主宰する〈ミュージック・ロビタ〉。同展示の特別入館券とセットでローソン・HMV でも限定発売されている。「少年マルス」の歌詞はいかにも清志郎らしい。悪を倒すことは正しいことかもしれないけれど、しかし……と、正義の味方が 躊躇してしまう歌詞である。もしかすると、彼の作詞法にも影響を与えたような気がしないでもない。これがコーザ・ノストラ(当時)の演奏を得てロック・ヴァージョンで蘇っている。元々は手塚治虫生誕70周年記念トリビュート・アルバム『アトム・キッズ・トリビュート・トゥ・ザ・キング“O.T."』(ワーナー)に収められていた曲で、16年を経てのシングル・カットとなる。(三田格)

●忌野清志郎 with KANAME (ex.COSA NOSTRA) 『少年マルス』(Music Robita)
HMV

●開館20周年記念 第63回企画展「忌野清志郎展~手塚治虫ユーモアの遺伝子~」
【会場】  宝塚市立手塚治虫記念館 2階 企画展示室
【会期】 2014年10月31日(金)~2015年2月20日(金)
http://www.city.takarazuka.hyogo.jp/tezuka/kikakuten.html#imawano

●手塚治虫の美女画展
【会場】  吉祥寺Gallery KAI
【会期】 2014年11月3日(月)~11月9日(日)
http://gallery-kai.jp/