Home > News > Jeff Mills - ──ジェフ・ミルズが雑誌を創刊、しかも無料で読めます
このコロナ禍、まったく沈黙することなく作品をばんばん積極的に発表しているジェフ・ミルズが今度は雑誌を創刊した。タイトルは『The Escape Velocity(脱出速度)』(https://ziniy.com/newsstand/edition/509)。
ご覧の通り、デザインもかなり凝っているこの雑誌(表紙はアブカディム・ハック)、ジェフが興味を持っているミュージシャンのインタヴュー記事がメインだが、写真家のインタヴューやSF小説のコラムもある。そのほとんどはジェフ・ミルズが取材し、ジェフ・ミルズが書いている。質問もジェフらしく、未来についての話が目につく。
テクノDJ/プロデューサーが多いが、サン・ラー・アーケストラの女性メンバー、June Tysonのインタヴュー記事もある。
なかなか他では読めないものばかりで、日本のファンにもgoogle翻訳を使って読んで欲しいとのこと。ただ、挨拶文と巻頭言のみはジェフのパートナー、Yoko Uozumiによる日本語訳があるので、ここに掲載しておきます。
読者の皆さんへ、
エレクトロニック・ミュージックにはより良い注意力、常時の観察力が必要とされている側面があります。イベントの告知、業界のサービス、アーチスト育成やオーディエンスが集うことを取り巻く全ての情報をフォローすることを我々は当然だと思っています。しかし何よりも音楽制作そのものが一番肝心な要素です。1980年代半ばに始まったとされるエレクトロニック・ミュージックの誕生から、音楽制作のアートフォームに対する注目が少なすぎると業界に身をおく私は個人的に感じていました。我々が頻繁に目にするのは音楽を聴いた結果、効果なのです。そこに至るまで、音楽制作において公衆に触れるまでの過程はほとんど注目されていません。アーチストの名前や出身地以上にどんなシチュエーションがあったのか?この世のものとは思えないアイディアを音とリズムで表現するこの人たちは誰なのか?我々が聴くことができる音のどこまでがアーチストのパーソナリティに寄与するものなのか?何をみて、何を信じるのか?必ずしも全てのアーチストに公平に発表の機会を与えているとは言えない業界において、クリエイティビティ、意見交換やエレクトロニック・ミュージックを想像の壁を超えて拡げていくことなどを話し合う余地は常にありました。
The Escape Velocity (エスケープ・ヴェロシティ)アーチスト・プログラムと雑誌はこのようなトピックに貢献すべく生まれました。クリエイティビティのメカニズムにまつわる様々なことを検証していきます。一見、聴く音楽とは関連性がないように思えるものも、実際にはエレクトロニック・ミュージックやアーチストが長年にわたり多くの創造的な努力を促進するのに役立ってきているのです。この雑誌は季刊(3が月ごと)にデジタルで発行されますが、その間インタビュー、記事やパフォーマンスなど色々なことが起きることを予想して季刊の間にサプリメントを発行することも考えています。デジタル形式のため様々な利点があります。雑誌の形態を取りながらビデオを挿入したり、ページ制限がないので記事は好きな長さにすることができます。ページは拡大してみていただくことができます。物理的な発送がないため環境にも優しく、より早く皆さんに届けることができます。そして何より、無料です。
The Escape Velocity マガジンはwww.axisrecords.com から簡単にアクセスすることができます。Axis RecordsとThe Escape Velocityより、皆さんの引き続きのサポートを感謝します。
ジェフ・ミルズ
P.S. 日本語訳をご希望の場合はリンクよりPDFをダウンロードしていただき、Google Translateを利用していただくことになります。
The Escape Velocityマガジンへようこそ。
(本誌P.4-5翻訳)
この雑誌の内容に飛び込む前に、このアイデアがどこから生まれたのか、そしてどのようにしてこの地点に到達したのかを説明させてください。The Escape Velocityプロジェクトは、2020年の世界的パンデミックによる急激なスローダウンへの反応として生まれました。懸念や現状への反応から文化をじっくりと見つめ、何が最も重要かを認識することになりました。そこで既成概念からはみ出して考え抜く自由で無限の能力を再認識することになります。夢を見ること、その夢を創造性に変換すること。未来派、サイエンスフィクション、宇宙科学、または「何か前向きなことについて」作成された作品の影響を強く受けたスタイルは、これまでも最も影響力のあるアートフォームのいくつかを生み出しました。 元の要素、つまり必要なコンポーネントがまだここにあり、利用可能であることを認識することも重要です。
エスケープ・ヴェロシティ「脱出速度」の教科書上の定義は、宇宙空間に出るために地球の引力から解放されるのにかかる速度(時速25,000マイル)を指します。私がこのテーマを選んだのは音楽に当てはめることができるからです。大きな変化を起こすには、アーチストやプロデューサーは同じような極端な精神的体験を通り抜けなくてはならず、クリエイティブ業界でしばしば邪魔になる正常性と自己満足から自分自身を引き離す必要があります。このプロジェクトは、アートフォームを通じて創造性のバリアを超えて探求する人たちを支援し、長年アーチストをサポートしてきた人たちが進歩を確認する機会を提供するために始まりました。二つのセクター間のギャップを狭めることはポジティブにこのアートフォームの拡大を支援することにつながります。
この1年間、私たちはさまざまな文化分野で最も才能があり想像力に富んだアーティストを見つけて招待し、エスケープ・ヴェロシティのコンセプトに合わせて自分で選んだテーマで制作するように依頼しました。彼らのアイデアとそれらを分析する準備ができているオーディエンスとの間の連絡役として 彼らの機会を増やすことが我々の使命です。特別なコンセプト作品を、創造性とは何かを真に理解している熱心な聴衆に提示すること。これまで、招待された各アーティストは宇宙科学やそれを超越するさまざまな主題に関するコンセプチュアルなアルバムとアートを制作してきました。参加アーティストの数が増えてきたので、彼らの作品やアイデアをまとめて、彼らが誰であるかをもっと知る方法を見つける必要がありました。デジタルカタログの形で、私たちはこの雑誌のアイデアを思いつきました。アーティストの足跡を追い、彼らの作品に触れ、進歩を確認できるより濃密な方法と考えています。
Escape Velocityに関わる全員を代表して今後のサポートを感謝し、この雑誌を楽しんでもらえれば嬉しいです。
──ジェフ・ミルズ