ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Memotone - How Was Your Life? | メモトーン、ウィル・イエイツ (review)
  2. Boris ──02年作『Heavy Rocks』がジャック・ホワイトのレーベルから再発、メルヴィンズとの合同USツアーも | ボリス (news)
  3. Jam City - Jam City Presents EFM (review)
  4. interview with Kassa Overall ジャズ×ラップの万華鏡 | カッサ・オーヴァーオール、インタヴュー (interviews)
  5. B. Cool-Aid - Leather BLVD | ピンク・シーフ (review)
  6. interview with Alfa Mist UKジャズの折衷主義者がたどり着いた新境地 | アルファ・ミスト、インタヴュー (interviews)
  7. 韓国からポン復興の使者、イオゴンが日本上陸 (news)
  8. Cornelius ──2023年、私たちはあらためてコーネリアスと出会い直す。6年ぶりのニュー・アルバムとともに (news)
  9. YoshimiOizumikiYoshiduO - To The Forest To Live A Truer Life | YoshimiO, 和泉希洋志 (review)
  10. Ben Vida, Yarn/Wire & Nina Dante - The Beat My Head Hit (review)
  11. Lucy Railton & YPY - @表参道 WALL&WALL (review)
  12. Jam City - Classical Curves | ジャム・シティ / ジャック・レイサム (review)
  13. 250 ──韓国からポンチャックの救世主、イオゴン待望のアルバムが発売開始 (news)
  14. Jam City - Dream A Garden | ジャム・シティ (review)
  15. Jean Grae - (Church of the Infinite You's Minister Jean Grae Presents) You F**king Got This Sh!t: Affirmations For The Modern Persons | ジーン・グレイ (review)
  16. Columns 追悼ジョン・ハッセル ──その軌跡を振り返る (columns)
  17. JPEGMAFIA x Danny Brown - SCARING THE HOES | Jペグマフィアとダニー・ブラウン (review)
  18. Bob Marley & The Wailers ──ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズのTシャツが期間限定受注販売 (news)
  19. Columns グレッグ・テイト『フライボーイ2』日本版に寄せて、それからグレッグを師とした、東京在住のKinnara : Desi Laとの対話へ (columns)
  20. Wolf Eyes ——「現代USノイズの王様」、結成25周年のウルフ・アイズが〈Warp〉傘下の〈Disciples〉からアルバムをリリース (news)

Home >  Reviews > shame- Food for Worms

shame

Indie RockPost-Punk

shame

Food for Worms

Dead Oceans / ビッグ・ナッシング

小山田米呂 Mar 30,2023 UP

 そろそろ我々はシェイムへの認識をあらためるべきかもしれない。
 サウス・ロンドンのインディ・コミュニティの魁としてシーンの先頭を突っ走り、道を切り開いてきたシェイム。彼らのパブリック・イメージといえば典型的なイギリスのエクストラな若者。2018年ごろ僕が見たライヴではチャーリー・スティーン(Vo.)は登場時から上裸で、唾を吐き、体に塗りつけ、ステージ上から観客を睨みつけ煽り、我々オーディエンスを極限まで興奮させた。ジョシュ・フィナティ(Ba.)はステージ中を走り回り、足を引っ掛けてひっくり返っていた。
 しかしその荒唐無稽な10代の若者たちのアルバムもついに三作目になった。

 1stアルバム『Songs of Praise』では満ち溢れるエネルギーを余すことなく落とし込み、2ndアルバム『Drunk Tank Pink』は感情的で張り詰めた危うさを感じる挑戦的なアルバムだった。三作目となる『Food for Worms』ではより彼らの成長を感じる。
 歌詞やインタヴューを読むに、今作のテーマは恋愛や自己についてではなく仲間や友人関係についてだ。それは彼ら自身そう言ってるんだし間違いないんだろうが、僕にはチャーリー・スティーンが若さへ別れを告げているように聞こえる。

 前作『Drunk Tank Pink』の転びそうなくらいな複雑さから一転、今作一曲目 “Fingers of Steel” は遠くで響き、静かに迫ってくるようなピアノから始まる。そこにはもう前作のような刺々しさや焦燥感のような若さの灰汁みたいな苦いところは感じられず、春の風に吹かれたような清々しさがある。“Yankees” では1stの “One Rizla” を思い起こすような少し歪んだベースと小気味いいギターのチョーキングが耳に心地良い。これからのシェイムのアンセムになるであろう “Adderall”。これに感動しないなら嘘だろう。緩急の付け方も気持ちいいしブレイクのシンプルだが繊細なドラムも素晴らしいし、やはりスティーンのシャウトは一級品。このアルバムの中でいちばんギターが泣ける音を出している。
 全体としていままでのような体の中を駆け抜けるような疾走感はないが、腹の底から沸き返るようなエネルギーはいままで以上にこもっている。

 シェイムといえば詩を叫び読み、煽るようなシンギング・スタイルがほとんどだったが、今作からスティーンが実際に歌い始めたのは大きな変化であると思う。陳腐なセリフだがシェイムは一皮むけたのがわかる。前作のように過度に複雑で内省的ではなく、自身の音楽に正直で前向きに、より自然にシェイムのバンド・サウンドを表現できるようになってきているのがわかる素晴らしいアルバムであると思う。

小山田米呂

RELATED

shame- Drunk Tank Pink Dead Oceans / ビッグ・ナッシング

Reviews

Shame- Songs Of Praise Dead Oceans / ホステス

Reviews Amazon iTunes