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Matias Aguayo

Matias Aguayo

Ay Ay Ay

Kompakt/Octab-Lab

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野田 努   Nov 26,2009 UP
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 ミニマルの将来だって? 知ったこっちゃないわよ。昨年のシングル「ミニマル」(DJコーツェによるリミックスを含む)によってヒットを飛ばしたチリ人で、かつてクローザー・ミュージックのひとりとして活動しながら、初期〈コンパクト〉の名声にも一役買っていたマティアス・アグアーヨは、しかしミニマルが同じところをぐるぐる回っている事態を許さない。2005年の『Are You Really Lost』以来のセカンド・アルバムとなる本作は、おおよそスペイン語の声だけで作られたミニマルである。15歳の石野卓球も同じことをしていた。高校1年生の彼は、自分の声をボスのギター用のコンパクト・サンプラーに取り込んでループさせ、その上にシンセをかぶせながらデペッシュ・モードの"ニュー・ライフ"をカヴァーしていた。あの時代とは、機材も状況もぜんぜん違う。で、可笑しいのが、アグアーヨがこのアルバムで展開している"実験"は、どうにもテクノ・ポップめいていることなのだ。声のサンプルを楽器代わりに使うという発想が、まあ、80年代的ではある。

 シングル・カットされている"Rollerskate"は良くできたポップ・ミニマルで、男の低い声と女の声が絶妙に交わっているトラックにディスコ・ソングが乗っかる。〈コンパクト〉らしい無邪気な音楽だ。"Ritmo Tres"は『ピッチフォーク』によれば「トーキング・ヘッズ・オン・E」だそうで、まあ、「ミニマル」もそうだったが、たしかにそのアフロビートはテクノ・サウンドのなかで咀嚼され、ユーフォリックに変換されている。僕はこの人のフェイクなエキゾティズムが気に入っていて、だから僕に言わせれば「マーティン・デニー・オン・E」となる。アルバム最後の曲"Juanita"は、ケルンのクラブとポリネシアの海岸を繋いでいるようだ。一瞬、何か騙されたような気持ちになるかもしれないが、しばらくすれば心地よくなる。ユーフォリックに変換されているから。"Koro Koro"も好きな曲のひとつ。これはまるで......リオの海岸でクラフトワークがサンバを演奏しているようだ。

 だいたいiTUNESでこのアルバムを取り込むと、ジャンルは"Easy Listening"となる。まあ、たしかにそうかもな~。

野田 努