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Guy Gerber

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My Invisible Romance

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渡辺健吾   Feb 05,2010 UP
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 06年の出世作「Sea of Sand」(Cocoon)辺りからこのイスラエルの才人に注目した僕は、まぁ最初に彼を見出したトランスやプログレッシヴ・ハウス畑のひとたち(それこそディグウィードとかさ)から見たら、遅いよって感じだろうけども、自ら"遅咲き"を名乗っちゃう彼のそこからのさらなる躍進はほんとーに目を見張るものがあった。卓球が〈Sterne〉に呼んだときにDJを、スヴェンが恵比寿ガーデンホールで〈Cocoon〉のパーティをやったときにライヴを聴いてるんだけど、実は現場でのプレイは期待が大きすぎたのか死んでもいいわぁ! と悶絶するほどいいってこともなく、どっちかというとスタジオのひとなのかなとも思ってる。しかし、出すもの出すものほとんど外しがなく、しかもトランスとテクノとミニマルとその狭間の微妙なキモチイイツボをクリクリと(グリグリじゃないんだよね)押してくる感じは、絶妙すぎて勝手に神格化したいくらいなんだが、どーもあまり日本では評判になったりする感じでもないようだ。元サッカー少年で、突然ニュー・オーダーだとかを聴いて音楽に目覚めたという微笑ましい経歴含め、とっても好きなんだけどな、ガイ・ガーバー(と読むのかどうかは謎、英語読みでいいのか?)。

 さて、今回のリリースは、昨年末に出たEPで、アナログだと2枚組で4曲、約40分。デジタル配信だとさらに4曲追加で計8曲、70分超というアルバム並のヴォリュームで迫ってくる。基本DJ向きのリリースだし、CDも出てないのでメディアにもスルーされている感じだが、これはぜひぜひ、iTunes StoreとかBeatportとかで買って、DJ以外のひとにも聴いてほしいリリースだ。以前のはっきりしたメロディ感や、トランス的なキラキラ感はいささか後退し、よりディープなトリップ感、ミニマルなフロアと交感した後の気分を素直に曲にしたような恍惚感が充満してる。――と思ったら、制作期間は昨夏で、ちょうどイビサに住み込んで〈SPACE〉でレジデントDJをやったり、各地のフェスを回っていた時期に作られたトラックらしい。春頃にリリースされたルシアーノとの共作曲「Arcenciel」が超ディーーーーーーーーーープで、昨年のフォルクローレや生音/トライバル一色だった〈Cadenza〉にあってはちょっと異色な1枚だったけど、あれが好きだったひとなら間違いなく気に入るであろう傑作だ。ただ今作はディープさやガイの持ち味だった精緻なプロダクション、美しい世界観だけでなく、チャント的なヴォイスであったり、ポリリズム的なパーカッションが大きくフィーチャーされていたり、"Jango Records"のようにギターをフィーチャーした曲まであって10分を越える長尺であってもまったく飽きずに楽しめる。

 これだけタイプの異なる曲をギミック的にならずに料理できる腕は業界随一と言えるレヴェルになってきたんじゃなかろうか。どの曲も甲乙つけがたいが、去年はEkloや、ガイのレーベルである〈Supplement Facts〉からもヒットを飛ばしたフランスの3人組dOPとの共作曲"Ei Sheket"あたりが白眉か。今年中に出るというセカンド・アルバムも楽しみだ。野外で聴きたいから夏にどこかのフェスに来てくれないかなぁ。

渡辺健吾