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Woodsist

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野田 努 Feb 08,2010 UP

 ザ・ドラムスほどあからさまではないにせ、ニュージャージーを拠点とするのこのバンドのデビュー・アルバムにも流行のヴィンテージ・サウンドが加味されている。良くできたアルバムで、そつがないと言えばそつがない。品が良く、控えめだが確実に聴き惚れてしまうローファイ・サウンドだ。ギター・サウンドが好きな方はぜひ試聴して欲しい。キラキラとしたエレクトリック・ギターの音色の美しさが、このバンドの最大の魅力である。

 "アトランティック・シティ"や"サバーバン・ビベレイジ"などはテレヴィジョンからトゲを抜いてやわらかく口当たりをよくしたようでもある。ヨ・ラ・テンゴっぽくもあるが、日焼けしたレトロスタイルが適度なエコー・エフェクトとともに響く。"プール・スイマーズ"はまるで水中で聴くオールディーズのようだ。"ブラック・レイク"のような面白味のある3拍子の曲でさえも、懐かしさと地味なエフェクトがある。どの曲も古くて、キュートで、スウィートで、ほんのわずかだけダビーだったりする。微妙なディレイがバンドの音に色を与えているのだ。"フェイク・ブルース"にはコーネリアス風のミニマリズムがあって、リアル・エステイトがただのオールディーズではないことを証す。6分にもおよぶ"サバーバン・ビベレイジ"は水浸しのミニマル・ポップで、最初の数分はファウストの名作『ソー・ファー』を想起させる。"レッツ・ロック・ザ・ビーチ"は夏が恋しくなる曲だが、夏まで僕がこのアルバムを聴いているかはわからない。

 ある意味では曖昧で、とらえどころがないが、間違っても悪いアルバムではない。ケレンミもなく、素直だが、ディテールは凝っている。眠くなるアルバムだが、その眠りは心地よい。......しかし、〈ウッドシスト〉レーベルって、USでは評価高いよな~。

野田 努