Home > Reviews > Album Reviews > Predawn- 手のなかの鳥
自主制作で発売されたCD-Rやライヴがすでに口コミで話題になっているPredawn。このたびリリースされる全国流通盤を聴き、ライヴを観て、さらに本人から話を聞いて、すっかり筆者もぞっこんになってしまった。
Predawnは、新潟生まれ/東京の郊外育ちの23歳、清水美和子がギターで弾き語るソロ・ユニット。6歳頃にピアノの課題で作曲をはじめて以来、少しずつ曲を書きとめるようになった。いまでは作曲は日常のいち部であり、ときにはセラピーにもなっているという。すべてのパートを自身で演奏し、セルフ・レコーディングにこだわって制作された7曲入りのミニ・アルバム『手のなかの鳥』は、そうして生まれてきた曲のなかでも、比較的明るめなものばかりだそうだ。
清廉として、愛くるしい歌声とメロディ。ときにアルペジオでつま弾かれるアコースティック・ギターは、森の日だまりが似合うような心地よいサウンドを奏でる──。そんな形容詞の似合う日本の女性シンガーソングライターは数多くいるだろう。しかし彼女の音楽は、英語で歌っていることもあるが、非常に洋楽的なセンスを感じさせる。個人的には、アン・ブリッグスなど60~70年代のブリティッシュ・フォークの情景と、ザ・サンデイズ(90年代のイギリスのギター・ポップ・バンド)のピュアな躍動感をここに感じたが、欧米のネイティヴかのような土着感と、オルタナティヴな感性を同時に感じさせるのが、Predawnの魅力だ。
ちなみに手元の資料で彼女がフェイヴァリットに挙げているのは、スパークルホース、ヴェルベット・アンダーグラウンド、ウィリー・メイソン、ポール・ウェスターバーグ、マイルス・デイヴィス、エリック・サティ、ジェシー・ハリス、レディオヘッド、デス・キャブ・フォー・キューティーなど。インタヴューではグラスゴーの音楽ばかり聴いていた時期もあると言っていた。
ライヴはというと、曲間のMCでは「この林檎のお酒が美味しいんです」みたいに、ふにゃふにゃ~っとした一面を見せるいっぽう、演奏になると途端に凛とした表情を見せる。やさしい歌の魅力はもちろん、中学生からやっているというギターの演奏力もたしかだ。
インタヴューでは、自然体でありつつも、たしかなクリエイティヴィティとセンスを感じさせる発言が多々あった。演奏から録音までをすべてひとりでおこなったのも、彼女の表現欲求の高さや、手作り感を大切にしたい部分ももちろんありつつ、他人には委ねられないセンシティヴな世界観があるからなのだろう。女性らしい可愛らしさの奥に、時折、表現者としての強い眼差しを感じた。
岩崎一敬