ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. 96 Back - Cute Melody, Window Down! (review)
  2. Phew ——伝説のソロ・アルバム『Our Likeness』のリイシューが決定 (news)
  3. interview with Ásgeir 買い物はやめてたまには宇宙を見上げてみよう (interviews)
  4. interview with Zaine Griff 伝説のアーティストが完成させた幻のアルバム (interviews)
  5. Brian Eno - FOREVERANDEVERNOMORE (review)
  6. Mansur Brown - NAQI Mixtape (review)
  7. Loraine James - Building Something Beautiful For Me (review)
  8. 追悼:キース・レヴィン R.I.P. Keith Levene (news)
  9. 幾何学模様 - クモヨ島 (review)
  10. interview with Dry Cleaning 壊れたるもののテクスチャー (interviews)
  11. 김도언 Kim Doeon(キム・ドオン) - Damage (review)
  12. Cholie Jo ──沖縄のラッパーCHOUJIとOlive Oilによるデュオがアルバムをリリース (news)
  13. TAAHLIAH and Loraine James ──ロレイン・ジェイムズの新曲はグラスゴーの新人プロデューサーとのコラボ (news)
  14. The Comet Is Coming ──ザ・コメット・イズ・カミングの新作がリリース、来日公演も決定 (news)
  15. interview with Gusokumuzu 勝ち組でも負け組でもない若者のリアル (interviews)
  16. interview with Mount Kimbie マウント・キンビー、3.5枚目にして特殊な新作について語る (interviews)
  17. Interview with Phew 音が導く、まだ誰もみたことのない世界 (interviews)
  18. Special Interest - Endure (review)
  19. interview with IO KoolBoyの美学 (interviews)
  20. interview with Kikagaku Moyo 無国籍ロウファイ・サイケデリア (interviews)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Twin Sister- Color Your Life

Twin Sister

Twin Sister

Color Your Life

Infinite Best

Amazon iTunes

野田 努   Aug 17,2010 UP

 これはもう......チルウェイヴというよりもステレオラブである。クラウス・ディンガーのドラミングをさらにライトにして、コクトー・ツインズめいたギターが煌めいているなか、女は息を吹きかけるように歌っている。1曲目の"ジ・アザー・サイド・オブ・ユア・フェイス"はクラウトロックのドリーム・ポップ・ヴァージョンだ。お洒落だが、イージーではない。そして2曲目の"レディ・デイドリーム"を聴きながら、昼の1時になると缶ビールを手にしてしまう自分がいる、というわけだ。この猛暑を楽しむには、このぐらいのことをしなければ......。まるでこんな気持ちを先回りするように、"レディ・デイドリーム"は涼しい水の音で終わっていく。ロング・アイランド出身のブルックリンの4人組はなかなかツボをわかっている。
 "ミルク&ハニー"はどう聴いてもビョークからの影響だ......が、曲の展開にはステレオラブ的な軽快さがあり、音は窓の外の眩しい光に溶け込んで、聴き惚れているうちに思わず冷蔵庫に手が伸びてしまう。いかんいかん。大人のソーダ水だからといってもほどほどにしないとな......。
 問題は"オール・アラウンド・アンド・アウェイ・ウィ・ゴー"だ。これをチルウェイヴと呼ばず何と言おうか。この曲はディスコビートに乗ったフレンチ・ポップであり、キラキラとしたキッチュな夢想である。続く"ギャラクシー・プラトー"は、バンドの音楽的野心を示すドローン/アンビエントの曲で、1970年代初頭のクラスターに接近する。最後の曲"フェノメノンズ"もまたチルウェイヴィな曲だが、洗練されていて、このバンドの底力を感じる......そしてその前に、大人のサイダーをもう1本手にしている自分がいる、というわけだ。無理もない。この素晴らしい天気になんともドリーミーな音楽、そして夏のあいだ自分はひとりだ。
 ツイン・シスターに限らず、おおよそUSインディ・シーンは夢から醒めようとしない。キャンディ・クロウズのアルバムには早くもポスト・アニマル・コレクティヴの予兆を感じる。まどろみのなかで新しい場面が着々と用意されているようである。
 
 ツイン・シスターのこれはまだミニ・アルバムだ。ウォッシュト・アウトと同様に、というか、その他多くのUSインディと同様に、ヴァイナルが先行発売されて、デジタルはパスワードでダウンロードするという仕組みだ。この形態は、この1~2年でゆっくりだがUSインディ・シーンで拡大している(日本では誰が、どこがそれを先にやるのだろう)。
 アルバムのなかにはインサートが1枚あるが、そこには家のなかのカラフルな部屋の写真がいくつかデザインされている。そのあたりの感覚は、僕にとって今年のベストな1枚、ビーチ・ハウスの3枚目とも近いと言えば近いのかもしれない、が、ツイン・シスターのほうがポップでファッショナブルである。より多くの人間がアプローチできるのはこちらのほうかもしれない。ヴァンパイア・ウィークエンドは数年後に中古屋に出回るだろうけれど、ツイン・シスターは......、まあ、微妙なラインだろう。逆に言えばそれだけポップということで、そしてこの手のベッドルーム・ポップは今後もっとたくさん出てくるのだろう。

野田 努