ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Miley Cyprus - Telephone Banking / Slot Canyons - Sketches (review)
  2. Tenderlonious - The Piccolo - Tender Plays Tubby / Tenderlonious - Tender in Lahore (review)
  3. Sun Araw ──サン・アロウ『ロック経典』の日本盤が登場 (news)
  4. interview with COM.A パンク・ミーツ・IDM! (interviews)
  5. John Carroll Kirby ──LAの鍵盤奏者ジョン・キャロル・カービーが奏でるアンビエント・ジャズ、〈Stones Throw〉より (news)
  6. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  7. Kevin Richard Martin - Frequencies for Leaving Earth - Vol​.​1 / Kevin Richard Martin - Frequencies for Leaving Earth - Vol​.​2 / Kevin Richard Martin - Frequencies for Leaving Earth - Vol​.​3 (review)
  8. interview with Julianna Barwick 聞きたくない声は、怒りのラップ、怒りのメタル。“グォォォーッ”みたいなやつ (interviews)
  9. R.I.P.:エンニオ・モリコーネ (news)
  10. Jun Togawa──戸川純がまさかのユーチューバーになった! (news)
  11. Run The Jewels ラン・ザ・ジュエルズは何がすごいのか (interviews)
  12. すずえり - Fata Morgana (review)
  13. interview with Wool & The Pants 東京の底から (interviews)
  14. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第11回 町外れの幽霊たち (columns)
  15. Moodymann - Take Away (review)
  16. Politics 都知事選直前座談会 「今回の都知事選、どう見ればいいか」 (columns)
  17. Columns マキ・ザ・マジック追悼文 ――女神にKiss ケツにKiss どっちにしても墓場で笑う (columns)
  18. Kenmochi Hidefumi - たぶん沸く〜TOWN WORK〜 (review)
  19. 169 - SYNC (review)
  20. Speaker Music - Black Nationalist Sonic Weaponry (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > Twin Sister- Color Your Life

Twin Sister

Twin Sister

Color Your Life

Infinite Best

Amazon iTunes

野田 努   Aug 17,2010 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 これはもう......チルウェイヴというよりもステレオラブである。クラウス・ディンガーのドラミングをさらにライトにして、コクトー・ツインズめいたギターが煌めいているなか、女は息を吹きかけるように歌っている。1曲目の"ジ・アザー・サイド・オブ・ユア・フェイス"はクラウトロックのドリーム・ポップ・ヴァージョンだ。お洒落だが、イージーではない。そして2曲目の"レディ・デイドリーム"を聴きながら、昼の1時になると缶ビールを手にしてしまう自分がいる、というわけだ。この猛暑を楽しむには、このぐらいのことをしなければ......。まるでこんな気持ちを先回りするように、"レディ・デイドリーム"は涼しい水の音で終わっていく。ロング・アイランド出身のブルックリンの4人組はなかなかツボをわかっている。
 "ミルク&ハニー"はどう聴いてもビョークからの影響だ......が、曲の展開にはステレオラブ的な軽快さがあり、音は窓の外の眩しい光に溶け込んで、聴き惚れているうちに思わず冷蔵庫に手が伸びてしまう。いかんいかん。大人のソーダ水だからといってもほどほどにしないとな......。
 問題は"オール・アラウンド・アンド・アウェイ・ウィ・ゴー"だ。これをチルウェイヴと呼ばず何と言おうか。この曲はディスコビートに乗ったフレンチ・ポップであり、キラキラとしたキッチュな夢想である。続く"ギャラクシー・プラトー"は、バンドの音楽的野心を示すドローン/アンビエントの曲で、1970年代初頭のクラスターに接近する。最後の曲"フェノメノンズ"もまたチルウェイヴィな曲だが、洗練されていて、このバンドの底力を感じる......そしてその前に、大人のサイダーをもう1本手にしている自分がいる、というわけだ。無理もない。この素晴らしい天気になんともドリーミーな音楽、そして夏のあいだ自分はひとりだ。
 ツイン・シスターに限らず、おおよそUSインディ・シーンは夢から醒めようとしない。キャンディ・クロウズのアルバムには早くもポスト・アニマル・コレクティヴの予兆を感じる。まどろみのなかで新しい場面が着々と用意されているようである。
 
 ツイン・シスターのこれはまだミニ・アルバムだ。ウォッシュト・アウトと同様に、というか、その他多くのUSインディと同様に、ヴァイナルが先行発売されて、デジタルはパスワードでダウンロードするという仕組みだ。この形態は、この1~2年でゆっくりだがUSインディ・シーンで拡大している(日本では誰が、どこがそれを先にやるのだろう)。
 アルバムのなかにはインサートが1枚あるが、そこには家のなかのカラフルな部屋の写真がいくつかデザインされている。そのあたりの感覚は、僕にとって今年のベストな1枚、ビーチ・ハウスの3枚目とも近いと言えば近いのかもしれない、が、ツイン・シスターのほうがポップでファッショナブルである。より多くの人間がアプローチできるのはこちらのほうかもしれない。ヴァンパイア・ウィークエンドは数年後に中古屋に出回るだろうけれど、ツイン・シスターは......、まあ、微妙なラインだろう。逆に言えばそれだけポップということで、そしてこの手のベッドルーム・ポップは今後もっとたくさん出てくるのだろう。

野田 努