ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. interview with FINAL SPANK HAPPY メンヘラ退場、青春カムバック。 (interviews)
  2. FilFla - micro carnival (review)
  3. KODAMA AND THE DUB STATION BAND - かすかな きぼう (review)
  4. interview with Kode9 〈ハイパーダブ〉15周年記念 (interviews)
  5. 羊とオオカミの恋と殺人 - (review)
  6. BUSHMIND ──ニューエイジ/アンビエントのミックスCDをリリース (news)
  7. Mark De Clive-Lowe ──マーク・ド・クライヴ=ロウがライヴ盤をリリース (news)
  8. Columns 元ちとせ 反転する海、シマ唄からアンビエントへ (columns)
  9. interview with Kazufumi Kodama 不自由のなかの自由 (interviews)
  10. ブラック校則 - (review)
  11. Burial ──ベリアルの新曲が公開、〈Hyperdub〉の新コンピもリリース (news)
  12. Gang Starr - One Of The Best Yet (review)
  13. Jagatara2020 ──80年代バブル期の日本に抗い、駆け抜けた伝説のバンド、じゃがたらが復活! (news)
  14. Columns FKA Twigs スクリュードされた賛美歌 (columns)
  15. じゃがたら新世界2015〜Reborn of a ravel song - @西麻布「新世界」 (review)
  16. Fat White Family ──次世代のスリーフォード・モッズ!? ファット・ホワイト・ファミリーが〈Domino〉から新作をリリース (news)
  17. Moor Mother - Analog Fluids Of Sonic Black Holes (review)
  18. Burial ──ベリアルがコンピレーション盤をリリース (news)
  19. interview with Kikuchi Naruyoshi デート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの復活 (interviews)
  20. OGRE YOU ASSHOLE - 新しい人 (review)

Home >  Reviews >  Album Reviews > The Samps- The Samps EP

The Samps

The Samps

The Samps EP

Mexican Summer

Amazon iTunes

野田 努   Sep 02,2010 UP
このエントリーをはてなブックマークに追加

 大きくはネオン・インディアン系と言えるが、わけのわからなさではこちらのほう上手。強いて喩えるなら、ザ・レジデンツがいま蘇って、チルウェイヴ・ディスコの波に乗ったとしたら......サンプラーに投げ込まれたR&B、ファンク、カートニッシュ・サウンドの断片、安っぽいレイヴ・サウンド、古びたグラム・ロック、スキゾフレニックで、いわばフリーキーなディスコ・ショーのハイパーモダン・ヴァージョン、それがザ・とうもろこし(サンプス)のデビュー12インチである。で、耳の早い方はよーく知っての通り、ザ・サンプスとは先頃、アルバム『ビフォア・トゥデイ』を発表したばかりのサンプル・マニア集団、アリエル・ピンクス・ホーンティッド・グラフィティのメンバーによるプロジェクトである。

 もっとも......最初に自分で書いておいてこんなことを言うのは恐縮だが、このお茶目な3人組の音楽をチルウェイヴと括るには抵抗がある。何故なら彼らのDIY音楽には、チルウェイヴやドリーム・ポップ、グロー・ファイなどと呼ばれているものに共通するメランコリーがない。アリエル・ピンクがそうであるように、つまりシューゲイズがない。『ラヴレス』でもなければゲンイチでもないのだ。この音楽から聴こえる感情とは、ナンセンスな笑い、乾いた感情、バカバカしさ、喜び、大雑把に言ってそんなものである。むしろ『ビフォア・トゥデイ』以前の、アニマル・コレクティヴのレーベル〈ポウ・トラックス〉時代のアリエル・ピンクに近いと言えよう。

 アッハッハッハッハ~というバカ笑いとお決まりのロック・ギターからはじまる1曲目の"ウィザードスリーヴ"は、途中、間抜けな男の声「あふあふあふあふ」によって転調すると途端クラウトロックに変わる。2曲目の"F.X.N.C."はベースラインがうねるスペース・ディスコ・ファンクだが、いわば発狂したジャズン・クルーとなって爆発する。3曲目の"イエロージャケット"は酔っぱらったアーバン・ディスコ・ソウルで、驚くほど楽天的なフィーリングを展開する。4曲目の"Thy"は脈絡のないシュールなエレポップ、5曲目"ハイパーボリック"にいたっては......Bボーイによるドタバタ喜劇である。そして、最期の曲"ペッパーグッド"虹色のミラーボールによる悪ふざけでこのインパクトの塊のようなレコードは終わる。

 そう、これはまだヴァイナルのみの発売で、レコードしかない。〈メキシカン・サマー〉の戦略であり、それがUSインディの出したひとつの回答である。そして、ザ・とうもろこしにはサンプリング・ミュージックの最高に滑稽な現在が詰まっている。「自分が何をやっているのか本当によくわからないんだ」、とはザ・とうもろこしのひとり(そしてアリエル・ピンクのギタリスト)、まるで故スネークフィンガーを思わせる変人ギタリスト、コール・マーズデン・グライフ-ニールの言葉だが、たしかにこの音楽は「本当によくわからない」。それでも......惹きつける何かがある。ちなみに全6曲中、3分台が2曲、2分台が2曲、1分台が2曲、まるで初期のワイヤーである。

野田 努