ele-king Powerd by DOMMUNE

MOST READ

  1. Kenmochi Hidefumi - たぶん沸く〜TOWN WORK〜 (review)
  2. There are many many alternatives. 道なら腐るほどある 第11回 町外れの幽霊たち (columns)
  3. interview with Trickfinger (John Frusciante) ジョン・フルシアンテ、テクノを語りまくる (interviews)
  4. Politics 都知事選直前座談会 「今回の都知事選、どう見ればいいか」 (columns)
  5. Moodymann - Take Away (review)
  6. Boris ──世界的に評価の高いヘヴィロック・バンド、ボリスが完全自主制作による新作をリリース (news)
  7. interview with Mhysa ジャネット・ジャクソンとブランディが好きな〈NON〉~〈ハイパーダブ〉のシンガー (interviews)
  8. Random Access N.Y. vol.128:迷惑な花火ブーム? (columns)
  9. interview with Baauer 大ヒットメイカー、その後の展開 (interviews)
  10. Speaker Music - Black Nationalist Sonic Weaponry (review)
  11. RILLA ──これが噂のリラ、ついにデビュー作を発表 (news)
  12. Jun Togawa──戸川純がまさかのユーチューバーになった! (news)
  13. Gary Bartz & Maisha - Night Dreamer Direct-To-Disc Sessions / Archie Shepp, Raw Poetic & Damu The Fudgemunk - Ocean Bridges (review)
  14. Arca ──アルカがニュー・シングルをリリース……って62分も!? (news)
  15. Karl Forest ──〈TREKKIE TRAX〉からリリースのある Miyabi が新名義で新曲をリリース (news)
  16. Kenmochi Hidefumi - 沸騰 沸く ~FOOTWORK~ / Xiangyu - はじめての○○図鑑 (review)
  17. Columns 「実用向け音楽」の逆襲 ──ライブラリー・ミュージックの魅力を紐解く (columns)
  18. Columns JPEGMAFIA『Veteran』の衝撃とは何だったのか (columns)
  19. KOTA The Friend - EVERYTHING (review)
  20. A Certain Ratio ──ア・サートゥン・レシオが12年ぶりに新作 (news)

Home >  Reviews >  Album Reviews > The Samps- The Samps EP

The Samps

The Samps

The Samps EP

Mexican Summer

Amazon iTunes

野田 努   Sep 02,2010 UP
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 大きくはネオン・インディアン系と言えるが、わけのわからなさではこちらのほう上手。強いて喩えるなら、ザ・レジデンツがいま蘇って、チルウェイヴ・ディスコの波に乗ったとしたら......サンプラーに投げ込まれたR&B、ファンク、カートニッシュ・サウンドの断片、安っぽいレイヴ・サウンド、古びたグラム・ロック、スキゾフレニックで、いわばフリーキーなディスコ・ショーのハイパーモダン・ヴァージョン、それがザ・とうもろこし(サンプス)のデビュー12インチである。で、耳の早い方はよーく知っての通り、ザ・サンプスとは先頃、アルバム『ビフォア・トゥデイ』を発表したばかりのサンプル・マニア集団、アリエル・ピンクス・ホーンティッド・グラフィティのメンバーによるプロジェクトである。

 もっとも......最初に自分で書いておいてこんなことを言うのは恐縮だが、このお茶目な3人組の音楽をチルウェイヴと括るには抵抗がある。何故なら彼らのDIY音楽には、チルウェイヴやドリーム・ポップ、グロー・ファイなどと呼ばれているものに共通するメランコリーがない。アリエル・ピンクがそうであるように、つまりシューゲイズがない。『ラヴレス』でもなければゲンイチでもないのだ。この音楽から聴こえる感情とは、ナンセンスな笑い、乾いた感情、バカバカしさ、喜び、大雑把に言ってそんなものである。むしろ『ビフォア・トゥデイ』以前の、アニマル・コレクティヴのレーベル〈ポウ・トラックス〉時代のアリエル・ピンクに近いと言えよう。

 アッハッハッハッハ~というバカ笑いとお決まりのロック・ギターからはじまる1曲目の"ウィザードスリーヴ"は、途中、間抜けな男の声「あふあふあふあふ」によって転調すると途端クラウトロックに変わる。2曲目の"F.X.N.C."はベースラインがうねるスペース・ディスコ・ファンクだが、いわば発狂したジャズン・クルーとなって爆発する。3曲目の"イエロージャケット"は酔っぱらったアーバン・ディスコ・ソウルで、驚くほど楽天的なフィーリングを展開する。4曲目の"Thy"は脈絡のないシュールなエレポップ、5曲目"ハイパーボリック"にいたっては......Bボーイによるドタバタ喜劇である。そして、最期の曲"ペッパーグッド"虹色のミラーボールによる悪ふざけでこのインパクトの塊のようなレコードは終わる。

 そう、これはまだヴァイナルのみの発売で、レコードしかない。〈メキシカン・サマー〉の戦略であり、それがUSインディの出したひとつの回答である。そして、ザ・とうもろこしにはサンプリング・ミュージックの最高に滑稽な現在が詰まっている。「自分が何をやっているのか本当によくわからないんだ」、とはザ・とうもろこしのひとり(そしてアリエル・ピンクのギタリスト)、まるで故スネークフィンガーを思わせる変人ギタリスト、コール・マーズデン・グライフ-ニールの言葉だが、たしかにこの音楽は「本当によくわからない」。それでも......惹きつける何かがある。ちなみに全6曲中、3分台が2曲、2分台が2曲、1分台が2曲、まるで初期のワイヤーである。

野田 努