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Night Slugs Allstars Vol.1

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名倉和哉   Dec 15,2010 UP
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E王

「ガター・ハウス(GUTTER HOUSE)」と「ヘヴィー・ベース」! 彼らのイヴェント・フライヤーにおけるお決まりのキャッチフレーズはいつだってこのふたつ。「ハウスでもベースラインでもポスト・ダブステップでも、正直何でもいいんだよね。かかってる音楽を言ってるんじゃなくて、あくまで雰囲気的なものだよ」レーベル・オーナーのひとりであるボク・ボク(BOK BOK)は言う
 ボク・ボクとエルヴィス1990(L-Vis 1990)のふたりが主宰するロンドンでも指折りの良質イヴェント「ナイト・スラッグス」は、このしみったれた長い冬の季節を無事に越えることができたなら、来年の春にはいよいよ3周年を迎えることになる。2010年は待望のレーベル運営にも着手、「パーティ」というローカルな、属地的な営みからの脱却により大きく知名度をアップ、ワールドワイドな躍進へ向けての新たな一歩を踏み出す門出の1年となった。『ナイト・スラッグス・オールスターズ』は、そんな彼らのレーベル活動を総括する初めてのコンピレーションだ。

 アイコニカやコード9、ベン・UFO、ジョイ・オービソンらをゲストにフィーチャーしたり、ときにはブルックリンからトラブル&ベースの面々を招へいしてみたり、過去2年間にわたる継続的、そして精力的なイヴェント・オーガナイズの実績があったとはいえ、彼らがレーベル活動を本格化させたのはまだ今年に入ってすぐのことだった。それを考えると、この年の瀬に、初めてのショウケースをアルバム・パッケージのかたちで(早くも)耳にすることができたというのは、設立当初より単なる興味関心以上の思いを彼らに寄せていたとはいえ、ちょっとした嬉しい誤算だった。それだけ向こうでは期待されたレーベルなのか、はたまた彼らの自信の顕れなのか、まぁ、1年生にして「オールスターズ」を名乗るくらいだから、それなりに自信はあるんだろうけど。

 アルバムは、モスカによるレーベルからの記念すべき最初のシングル『スクエア・ワン』のタイトル曲にアップグレードを施した強力な未発表ヴァージョンで幕を開ける。まるでキックス・ライク・ア・ミュールか何か、レイヴ黎明期のブレイクビート・ハウスがファンキー経由でゾンビ化したようなハイブリッド・ベース・サウンドで、〈ナイト・スラッグス〉というレーベルの現在地をストレートにマニフェストする、コンピのトップに相応しいチョイスである。続くリル・シルヴァは、「パルスvs.フレックス」が〈ソウル・ジャズ〉のコンピ『リディム・ボックス』にもフックアップされ、注目を集めた弱冠20才の新進プロデューサー。この「ゴールズ・トゥ・ゲット」は、申しわけ程度のシンセ・リフが際立たせる、まるでデモみたいな隙間だらけのビートが何とも痛快で、ストレートな現場仕様の1曲だ。
 今後レーベルの看板アーティストとして大きくジャンプ・アップしていきそうなガール・ユニットは、センセーションを巻き起こした"IRL"のボク・ボクによるリミックス・ヴァージョンと"WUT"のオリジナルの2曲をピックアップ。仰々しいオーケストラ・ヒットを散りばめた"IRL"は、原曲のシカゴ・マナーを大胆にそぎ落としたシンプルなストラクチャーで、インパクトは大きい。なんと言ってもボク・ボクのリワークは圧巻だ。
 そのボク・ボクとニューヨークのキュービック・ジルコニアの共同作品となる"リクラッシュ"は、デトロイティッシュな疾走感が何とも心地よい、レーベルの振れ幅の広さを印象付ける佳曲で、ここからのオプティマム"ブロークン・エンブレース"への流れは秀逸という他ない。アイコニカの現在のプロダクション・パートナーであるオプティマムによるこの新曲と、それに続くモントリオールのクリエイター、ジャキス・グリーンによる"ホワット・ユー・ウォント"は、ちょうどシングル・カットされたばかりだ。
 他にも、エルヴィス1990とT・ウィリアムスのタッグを筆頭に、エジプトリックス、ジャム・シティ、キングダムにヴェロアと、「オールスター」の名に相応しいストロングな楽曲が並ぶ。キングダムなんかも、フールズ・ゴールドの曲よりこっちのほうが断然タフで聴き応えがあるんじゃないかと。
 全体の流れもよく練られていて、単なるシングル曲や未発表の寄せ集め、というより、きちんとアルバムとして成立している。シャッフル・モードではなく、ぜひアタマからそのままかけっぱなしで聴かれることを、お薦めします。
 気がつけば2010年も残りわずか。あちらこちらで年間ベストの話が出てくる頃かと思いますが、どこかで「ルーキー・レーベル・オブ・ザ・イヤー」みたいなものがあるとしたら、少なくとも候補リストには載せてあげたい。いまもっとも勢いのあるレーベルで、引き続きブックマークしておきたいレーベルである。

名倉和哉